北海道のオホーツク海側に位置する「網走地方(オホーツク総合振興局管内)」。
一般には「流氷」や「知床」の自然で知られ、観光で訪れる方も多い地域です。
こちらでは、網走地方の気候について、その全体的な特徴や季節ごと・各自治体ごとの大まかな傾向などを解説していきます。
網走地方の気候「全体的特徴」
網走地方は、北海道のオホーツク海側のかなりの範囲を占める地域で、東西200km以上の幅を持つかなり大きな地域区分です。
地理的には、北側をオホーツク海に面し、内陸側へ行くほど山が多く標高が高い地域となっており、北見山地・石狩山地・知床連山といった道内を代表する山々があります。
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 平均風速 | 最深積雪 |
---|
網走 | 6.9℃ | 844.2mm | 1850.0時間 | 3.3m/s | 63cm |
北見 | 6.4℃ | 774.8mm | 1724.3時間 | 2.0m/s | 83cm |
紋別 | 6.7℃ | 860.8mm | 1675.2時間 | 2.8m/s | 63cm |
雄武 | 6.0℃ | 916.5mm | 1638.3時間 | 3.3m/s | 73cm |
宇登呂 | 6.4℃ | 1202.1mm | 1527.2時間 | 1.7m/s | 122cm |
年間の平年気象データ
広い網走地方には、30か所近い観測地点がありますが、主要な観測地点の年間の気象データは上記の通りです。
網走地方の気候面での全体的特徴としては、主に以下のようなポイントが挙げられます。
気候のポイント【その1】「気温差が極端」
・気温は全体的に「寒冷」ですが、朝晩の気温差、日ごとの気温差が極端なくらい大きい傾向があります。
・特に春には「最高気温30℃前後」と「最高気温5℃以下」が同じような時期に観測されるケースも見られます。
気候のポイント【その2】「猛暑」
・気温差が大きい網走地方は、道内で最も「猛暑」となりやすい地域です。
・要因は北見山地、石狩山地(大雪山系)から吹く乾いた風が「フェーン現象(山を越える前より空気の温度が上がる現象)」を引き起こすことによります。
気候のポイント【その3】「オホーツク海の影響」
・網走地方は、北側をオホーツク海に面するため、海からの気候的影響も大きい地域です。
・特に春の終わり~夏にかけては、「オホーツク海高気圧」の勢力次第で冷たく湿った気流が流れ込み天候不順になる場合があり、年ごとの天候の差が大きくなっています。
春の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
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網走 | 4.3℃ | 154.5mm | 538.1時間 | 52cm |
北見 | 4.8℃ | 136.3mm | 498.0時間 | 69cm |
紋別 | 4.3℃ | 140.8mm | 514.1時間 | 54cm |
雄武 | 3.8℃ | 144.7mm | 513.1時間 | 63cm |
宇登呂 | 3.9℃ | 274.9mm | 462.8時間 | 117cm |
春の気象データ<3~5月の平均値または合計値>
気温
・朝晩と昼間、各日ごとの「気温差」が極端な時期です。
・全体的には平均気温はやや低めの数字となります。
・5月には「フェーン現象」によって全域で「猛暑」となる場合がまれに見られます。
・5月には寒気も入りやすく、最高気温が5℃以下となる場合もあります。
天気
・1年の中では最も「よく晴れる」時期です。
・降水量も少なく「まとまった雨」は知床半島周辺を除き降りにくい状況です。
・オホーツク海から寒気が入る場合、どんよりとした曇り空、弱い雨・みぞれ・雪となる場合があります。
雪
・3月までは雪が比較的降りやすく、積雪のピークとなる場合があります。
・場合によっては5月にも雪を観測するなど、「雪の季節」の終わりが遅い地域です。
・根雪は4月まで残る場合もあり、特に知床半島沿いの宇登呂では「5月初め」まで見られるケースがあります。
・オホーツク海、太平洋沿岸周辺で低気圧が猛発達する際に「大雪・ドカ雪」となる場合があります。
夏の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 |
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網走 | 16.9℃ | 269.2mm | 503.7時間 |
北見 | 18.2℃ | 289.7mm | 459.1時間 |
紋別 | 16.5℃ | 300.4mm | 442.9時間 |
雄武 | 15.9℃ | 323.7mm | 417.1時間 |
宇登呂 | 16.5℃ | 314.3mm | 505.9時間 |
夏の気象データ<6~8月の平均値または合計値>
気温
・道央、道南と比べると平均気温はやや低めです。
・「真夏日」や「猛暑日」となる頻度は内陸の一部で道内で最も多くなっています。
・気温差が大きいため、海沿いを除き8月でも朝の気温が10℃以下になる場合があります。
天気
・よく晴れる年と、天候不順(日照不足)年の差が大きい特徴があります。
・オホーツク海から冷たく湿った気流をもたらす「オホーツク海高気圧」の勢力が強い年は、どんより曇った天気、霧雨や小雨が長続きする場合があります。
・天候不順の傾向が生じる場合、北側の地域(雄武・紋別・興部など)で特にはっきり見られます。
・降水量は知床半島一帯を除きそれほど多くありません。
秋の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
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網走 | 10.6℃ | 261.3mm | 441.5時間 | 7cm |
北見 | 9.4℃ | 229.3mm | 428.7時間 | 5cm |
紋別 | 10.2℃ | 280.2mm | 410.1時間 | 9cm |
雄武 | 9.6℃ | 306.8mm | 408.4時間 | 13cm |
宇登呂 | 9.8℃ | 379.1mm | 354.2時間 | 13cm |
秋の気象データ<9~11月の平均値または合計値>
気温
・内陸部では冷え込みが早くから厳しく、11月中から-15℃以下が観測される年もあるなど、気温低下はハイペースで進みます。
・沿岸部は海水温が下がりにくい影響で、春~夏と比べ温暖な傾向があります。
天気
・秋の天気は概ね安定傾向です。
・但し、北側の山間部や知床半島一帯は11月以降の晴れ間が減る傾向にあります。
・雨量は9月がピークですが、太平洋側のように降水量が大幅に増えることはありません。但し、知床半島一帯はやや雨量が多めです。
天気
・初雪は10月に降る場合があります。
・11月の降雪量は多くありませんが、知床半島一帯(宇登呂)や北側の山間部(西興部)などではまれに40~50cm程度の雪が降るケースもあります。
冬の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
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網走 | -4.3℃ | 160.2mm | 365.9時間 | 61cm |
北見 | -6.8℃ | 121.2mm | 335.7時間 | 77cm |
紋別 | -4.3℃ | 137.1mm | 307.9時間 | 59cm |
雄武 | -5.0℃ | 142.3mm | 299.8時間 | 68cm |
宇登呂 | -4.5℃ | 250.7mm | 205.0時間 | 110cm |
冬の気象データ<12~2月の平均値または合計値>
気温
・海沿いも含め、道内でも特に寒い地域です。
・内陸部の冷え込みは極めて厳しく、-30℃前後まで下がる場合があります。
・沿岸部では流氷の影響を受け、2月の最低気温が下がりやすい傾向も見られます。
天気
・比較的晴れ間が多い地域が目立ちます。
・降水量は少ない地域が多く、北見周辺などは真冬の平年1か月降水量が20~30mm台となります。
・但し滝上町、西興部町、斜里町などは雪雲が流れ込みやすく、日照時間が少ない日本海側のような気象条件となります。
雪
・知床半島一帯、北側の山間部は豪雪地で、1m以上の積雪が一般的です。
・網走など沿岸部も含め一定量の雪が降り、「雪が少ない」地域はありません。
・降水量が少ない割に積雪は増えやすく、「気温の低さ」ゆえに「効率的な降り方」が特徴となっています。
流氷
・網走地方沿岸は、道内で流氷が最も長期間接岸する地域です。
・接岸期間は平年値では1月末~3月末頃の約2か月間に及びます。
各地域ごとの傾向まとめ
網走地方(オホーツク総合振興局管内)の気候について、これまで解説してきた気候の特徴・差を「各地域(自治体)」ごとに大まかにまとめると、以下のような形になります。
北見市 訓子府町 置戸町 | ・北見市は道内の主要都市で「最も寒い地域」かつ「夏場の真夏日が特に多い」対照的な特徴を持ちます。 ・市街地も含め-30℃近い冷え込みになる場合があります。 ・朝晩と昼間の気温差がかなり大きくなります。 ・雪は「少ない降水量」で「多く降る」傾向が見られます。 |
網走市 | ・海沿いのため内陸部ほどの冷え込みはありません。 ・春の後半は日ごとの気温差がかなり目立つ地域です。 ・雪は網走地方の中では最も少ない降雪量となっています。 |
紋別市 | ・冬場の日照時間がやや少ない点を除き、網走市に極めてよく似た気候です。 |
大空町 美幌町 津別町 小清水町 清里町 | ・内陸のため冷え込みは厳しい地域です。 ・美幌、津別周辺は道内で最高気温30℃以上の「真夏日」が最も多い地域です。 |
斜里町 | ・知床半島側へ行くほど雨がやや多く、冬場は道内屈指の豪雪地となります。 |
遠軽町 佐呂間町 湧別町 | ・内陸部は冷え込みが厳しい地域です。 ・遠軽周辺は「真夏日」となる頻度が道内でも多めの地域です。 |
滝上町 興部町 西興部村 雄武町 | ・内陸部へ行くほど「日本海側」に近い気候的特徴となります。 ・冬場は内陸部で雪がかなり多くなります。 |
拠点都市である網走市・北見市・紋別市の気候については、上記の記事で別途解説しております。
網走地方と札幌の気候を比較すると?
網走地方の気候を、北海道の中心都市「札幌市」と比較すると、主な項目では以下のような違い・共通点が挙げられます。
気温
・網走地方の気温がかなり低めで、特に春~夏の気温差が目立ちます。
・「猛暑の頻度」では札幌より多くなる場合があります。
・札幌よりも日ごとの気温差、朝晩と昼間の気温差が大きい傾向があります。
・内陸部の冷え込みは札幌とは比べ物にならず、最大20℃以上差が生じます。
天気
・知床半島一帯を除き、札幌より大幅に降水量が少ない地域です。
・晴れ間(日照時間の長さ)は年間の数字では大きな差はありません。
・網走地方の南側ほど、冬場の晴れ間が多くなります。
・春の後半~初夏の天候は札幌と比べ変化が激しくなります。
雪
・網走地方内陸部の積雪は、札幌に比較的近い数字となる場合も目立ちます。
・網走、紋別など斜里町を除く沿岸部は札幌より雪が少な目です。
・「降る頻度」は札幌の方がかなり多く、網走地方は「効率的に積もる」地域と言えます。
道内各地方の気候については、それぞれ個別の記事において解説しております。