【渡島地方の気候】全体の傾向・季節や地域ごとの特徴は?

自然・気候

当記事では北海道の道南地域に位置する「渡島地方」の気候について、その全体的な特徴や季節ごとの傾向・各自治体ごとの大まかな特徴などを解説していきます。

渡島地方の気候とは?

渡島地方の位置(出典:地理院地図・一部作図)

渡島地方は、道内では最も南側に位置する地域です。地理的には、南北130km以上の長さを持つため、最も北側は道央寄りの気候的特徴、最も南側は本州寄りの気候的特徴を持つ場合があります。

気温は「津軽海峡」周辺では緯度が低い上に日本海からの暖流の影響を受け「温暖」な傾向が強い地域ですが、内浦湾周辺は冷たい海水温の影響で、逆に気温が上がりにくい傾向が見られます。

天候面では地域差がありますが、比較的雨が多い傾向があり、海からの湿った気流の影響を受けて晴れ間が少なくなりやすい地域も目立ちます。

雪は大きな地域差があり、函館周辺の一部ではかなり「少雪」の地域が見られますが、隣接する檜山地方の日本海沿岸部(江差など)と比べると雪がやや多い傾向があります。

観測地点函館松前長万部熊石
年間平均気温9.4℃10.5℃8.2℃7.7℃9.4℃
年間平均最高気温13.5℃13.5℃12.4℃11.9℃12.8℃
年間平均最低気温5.5℃7.7℃3.9℃3.3℃6.1℃
年間降水量1188.0mm1251.3mm1074.8mm1296.1mm1383.3mm
年間平均風速3.6m/s4.6m/s2.8m/s2.1m/s2.2m/s
年間日照時間1744.9時間1518.5時間1608.9時間1578.5時間1454.5時間
年間降雪量(積雪差合計)306cm観測なし465cm611cm観測なし
年間最深積雪45cm観測なし平年値なし95cm観測なし
雪日数118.7日観測なし観測なし観測なし観測なし
年間真冬日日数
(最高気温0度未満)
28.0日20.3日47.8日40.9日33.4日
年間冬日日数
(最低気温0度未満)
121.0日87.2日140.8日150.1日114.1日
年間真夏日日数
(最高気温30℃以上)
4.1日1.2日2.9日1.1日2.0日
年間夏日日数
(最高気温0度未満)
43.4日36.3日38.8日25.0日33.7日

檜山地方内には各所に気象庁の観測地点がありますが、主要観測地点の基本的な気象データ(年間)は上記の通りです。

春の気候

観測地点函館松前長万部熊石
平均気温7.2℃7.8℃5.9℃5.2℃6.8℃
降水量224.9mm235.9mm221.1mm251.2mm289.7mm
日照時間543.2時間481.4時間510.0時間495.7時間457.9時間
降雪量(積雪差合計)43cm観測なし87cm113cm63cm
最深積雪28cm観測なし53cm63cm31cm
冬日日数
(最低気温0度未満)
28.3日16.7日38.9日43.0日26.4日
真冬日日数
(最高気温0度未満)
1.7日1.3日4.3日3.3日2.5日
春の気象データ<3~5月の平均値または合計値>

春の渡島地方は、緯度が低いということで、「雪の季節」が終わる時期は道央・道北よりもかなり早い傾向があります。

但し、3月までは特に長万部方面など北側の地域では雪が一般的に降り、時にはかなりまとまった量が積もることがあります。根雪については、3月頃までは残る地域が多く、福島町の内陸部・八雲町・長万部町等では4月まで雪が残るケースも見られます。但し、亀田半島の一部など「根雪がない」状態が珍しくない地域もあり、雪の量には地域差が目立ちます。

気温は内浦湾寄りの地域ほど、冬に冷やされた海水温の影響を強く受け、気温の上昇が鈍い傾向があります。道東のように山を越えて暖かい風が吹き込む「フェーン現象」が起きやすい地形的条件もないため、春の間に「汗ばむ陽気」となる頻度はかなり少な目です。

天候は1年の中では最も安定した時期となり、晴れ間は多くなります。但し、周期的に低気圧が通過する影響で、特に5月はまとまった雨が降ることも時折見られます。

夏の気候

観測地点函館松前長万部熊石
平均気温19.5℃18.5℃18.5℃17.9℃19.4℃
降水量359.8mm344.5mm344.5mm422.6mm455.4mm
日照時間455.1時間466.9時間440.9時間380.6時間448.5時間
夏日日数
(最高気温25℃以上)
35.1日30.0日31.7日20.6日26.4日
真夏日日数
(最高気温0度未満)
3.6日2.0日2.4日1.0日1.6日
夏の気象データ<6~8月の平均値または合計値>

夏の渡島地方は、道内では緯度が最も低い地域ながら、道央などと比べ「夏らしさ」を感じる度合いがやや低い地域と言えます。

気温は特に内浦湾周辺では海水温の影響を直接受けるため、春から引き続き上昇が鈍く、例えば長万部・八雲の夏の気温は富良野・旭川・札幌等と比べてもかなり低めです。函館方面などは気温はやや高めとは言え、海からの気流が入りやすいため、最高気温が30℃を超える真夏日となることは少なく、「暑い日」が少ないという点では夏らしさが抑えられる傾向に変わりはありません。

天候で見た場合、東北太平洋側を中心に「冷夏」をもたらす湿った東風「やませ」の影響を受けやすい地域のため、夏場の天候不順が目立つ地域で、年によっては晴れる日が非常に少ない状況も見られます。

雨については、「梅雨がない」北海道の中では最も「梅雨前線」の影響を受けやすく、8月以降は「秋雨前線」の停滞による雨も多いため、特に亀田半島一帯・八雲方面は道内でも雨量の多い地域となっています。

秋の気候

観測地点函館松前長万部熊石
平均気温12.5℃13.9℃11.2℃10.7℃12.6℃
降水量366.9mm393.6mm328.1mm387.0mm374.1mm
日照時間434.1時間406.5時間412.8時間414.0時間383.5時間
降雪量18cm観測なし19cm24cm14cm
最深積雪9cm観測なし8cm8cm5cm
冬日日数
(最低気温0度未満)
9.8日3.3日15.1日19.2日7.0日
夏日日数
(最高気温25℃以上)
8.0日6.2日5.5日3.9日6.4日
秋の気象データ<9~11月の平均値または合計値>

秋の渡島地方は、北海道のため寒さは早く訪れますが、道内で見ると特に津軽海峡沿い・日本海に面する地域(内浦湾周辺を除く地域)は温暖な傾向が顕著です。

最低気温を見ると、内陸部では9月から肌寒さを感じるなど早い時期から冷え込む一方、最も温暖な松前町では秋の間に氷点下の冷え込みが一度も観測されない年があるなど、地域による差も比較的目立ちます。

天気を見ると、9月は全体的に秋雨前線の影響を受けやすく、1年の中でも雨が比較的多い時期となります。また、11月以降は季節風(冬型の気圧配置)の影響を受けやすくなり、日本海からの距離が近い地域ほど、日照時間の減少傾向がはっきり見られます。

台風については、北海道のため影響を受ける頻度は少ないものの、日本海上を通過する場合にはかなりの暴風となるケースもあり、接近時は注意が必要です。

雪は緯度が低いため、道内では最も遅く、11月に初雪が降るものの、まとまった量の雪が積もることは少なくなっています。

冬の気候

観測地点函館松前長万部熊石
平均気温-1.4℃0.5℃-2.8℃-3.1℃-1.0℃
降水量239.1mm271.5mm187.4mm236.7mm266.7mm
日照時間311.9時間163.3時間240.8時間286.8時間153.7時間
降雪量(積雪差合計)244cm観測なし357cm464cm367cm
最深積雪44cm観測なし68cm74cm49cm
冬日日数
(最低気温0度未満)
82.6日66.9日86.7日87.5日77.9日
真冬日日数
(最高気温0度未満)
25.5日18.7日42.8日35.9日24.6日
冬の気象データ<12~2月の平均値または合計値>

冬の渡島地方は、緯度が低く海水温もオホーツク海・日本海側北部ほど下がらないため、平均して見ると北海道内では檜山地方に次いで温暖な地域となります。

地域ごとに見ると、松前町に関しては檜山地方の江差・奥尻町と並ぶ「道内で最も温暖な場所」で、それ以外についてはやや気温は低く、沿岸部は概ね函館周辺では「室蘭より少し寒い」くらいで、内浦湾周辺は「札幌と同じような気温」となる地域が目立ちます。

天候は地域差が大きく、日本海に面する松前方面は日照時間が大幅に少なくなる一方で、日本海から最も遠い亀田半島周辺では比較的よく晴れるなど、日本海から筋状の雲が流れ込みやすい場所ほど天気が悪くなる傾向がはっきりしています。

一方で「雪」については、日本海に近い地域では内陸・山間部でかなり多く降る一方、海沿いで見ると内浦湾周辺の八雲・長万部町の雪が多くなります。函館周辺は道内ではやや雪が少なく、特に函館市街よりも東に位置する「亀田半島の南側」はかなり雪が少ない傾向で、道内で最も雪が少ない地域の一つとなっています。

各地域ごとの傾向

渡島地方(渡島総合振興局管内)の気候について、これまで解説してきた大まかな気候の特徴・差を改めて「各地域(自治体)」ごとにまとめると以下のような形になります。

函館市
北斗市
・概ね温暖も、冬は室蘭や江差と比べると寒い
・函館市東部のうち、亀田半島南側は雪がかなり少ない
・東へ行くほど冬場の日照時間が多い
知内町
木古内町
・気温や全体的な天気の傾向は函館に比較的近い
・冬場の雪は函館より多め
松前町
福島町
・渡島地方の中で最も温暖
・松前町は道内では江差、奥尻周辺と並ぶ気温の高さ
・内陸部(福島町千軒)は渡島地方では特に雪が多い
七飯町
鹿部町
森町
・七飯など内陸部は函館方面と比べ寒い傾向
・雪は函館と比べると増えやすい
八雲町・日本海側(熊石地区)よりも冬場は内浦湾側が温暖
・春~夏は気温が逆転し内浦湾側がやや寒い
・雪は内浦湾側で多い
長万部町・渡島地方では最も気温が低い地域
・黒松内寄りの内陸部では雪がかなり多くなる場合も

渡島地方の中心都市「函館市」の気候については、上記の記事で別途詳しく解説しています。

札幌との違いは?

渡島地方の気候的特徴を山間部を除く「平地」について、北海道の中心都市である「札幌市」の市街地と比較した場合、概ね以下のような相違点・共通点が見出せます。

気温・秋~冬は札幌に近い平均気温の地域が多い
・春~夏は海からの気流の影響を受け、渡島側で気温が低めの傾向
・内陸部は札幌よりも冷え込みはやや強め
降水量・一部を除き、冬場の降水量は札幌が多い
・春から秋は渡島地方の降水量が多め、一部地域ではかなりの差も
日照時間(晴れ間)・晩秋~冬は雲が常に流れ込みやすい渡島地方で少ない
・但し、函館市東部(亀田半島)は例外的に札幌より冬場に晴れやすい
・夏も海からの湿った気流の影響を受ける渡島地方で少ない
・年間ベースで見た場合、札幌より良く晴れる地域はほぼ皆無
・多くの地域で札幌より雪が少ない傾向
・ごく一部の内陸部では札幌より雪が多い地域も(福島町千軒・長万部町の一部等)

都市化の影響を受けて「気温が上がりやすい」札幌は、緯度が低い渡島地方のデータと照らし合わせてみると、特に「寒い季節の気温データ」では似たような数字になることが多くなっています。但し、その他のデータでは比較的差が目立つ状況です。

道内各地方の気候については、それぞれ個別の記事において解説しております。