北海道の中央部に南北に細く伸びる地域で、海に一切面していない内陸部に位置する「上川地方」。
内陸ということで「寒い地域」として広く知られる一方、拠点都市である旭川市は道内第2の都市で、30万人以上の人口を持つ地域となっています。
こちらでは、上川地方の気候について、その全体的傾向・季節ごと、地域ごとの特徴・札幌市との比較などを詳しく見て行きたいと思います。
上川地方(管内)の気候「全体的特徴」

上川地方は、北海道の内陸部に位置する地域で、南北に細長く伸びた区域を持っています。南側は太平洋側に近い一方、北側は「道北」と呼ばれる地域区分にあたり稚内方面に近い場所もあるなど、同じ地方の中でも地理的にはかなり異なる環境を持ち合わせています。
地形は上川盆地・名寄盆地・富良野盆地といった平地に多くの人が住む一方で、北海道で最も大きな「石狩山地(大雪山系)」を有する上、北見山地・天塩山地・夕張山地・日高山脈の一部に囲まれるなど全体的には山の多い険しい地形が特徴となっています。
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 平均風速 | 最深積雪 |
---|---|---|---|---|---|
旭川 | 7.2℃ | 1104.4mm | 1566.5時間 | 3.0m/s | 89cm |
名寄 | 5.8℃ | 1006.8mm | 1367.8時間 | 2.0m/s | 109cm |
富良野 | 6.7℃ | 1032.1mm | 1496.2時間 | 1.8m/s | 78cm |
音威子府 | 5.7℃ | 1391.2mm | 1260.4時間 | 2.0m/s | 平年値なし |
朱鞠内 | 4.7℃ | 1698.8mm | 1328.5時間 | 平年値なし | 235cm |
上川地方には、合計30か所近い気象庁の観測地点があります。主な地点の基本的な観測データは上記の通りです。
上川地方の気候面での全体的特徴としては、主に以下のようなポイントが挙げられます。
・冬の寒さは非常に厳しい地域です。
・真冬の最低気温は特に冷え込みやすい場所では-30℃前後まで下がる場合があります。
・内陸部のため、朝晩の気温差がかなり大きい地域です。
・夏は盆地地形のため熱が溜まりやすく、沿岸部と比べ昼間に暑い日が目立ちます。
・全体的に雪の量は多めです。特に北側や西側へ行くほど雪が多くなりやすい傾向です。
・気温が低いため雪が効率的に積もりやすく、「降水量」の割に「降雪量」が多い地域です。
・道内の観測地点で最も雪が多い「朱鞠内」アメダスも上川地方にあります。
春の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
---|---|---|---|---|
旭川 | 5.5℃ | 170.1mm | 508.1時間 | 82cm |
名寄 | 3.9℃ | 150.2mm | 442.2時間 | 103cm |
富良野 | 5.1℃ | 172.7mm | 474.4時間 | 71cm |
音威子府 | 3.7℃ | 193.6mm | 416.2時間 | 186cm |
朱鞠内 | 2.3℃ | 254.4mm | 451.8時間 | 225cm |
・気温は当初はかなり低く、3月は-20℃台の冷え込みが観測される場合があります。
・4月以降の気温上昇は急なペースで進み、昼間の気温は海沿いの地域と比べ上がりやすい環境です。
・特に富良野方面では、5月中に最高気温が30℃以上の「真夏日」となる場合があります。
・4月~5月は1年で最も天気が良いシーズンです。
・3月は日本海から雪雲がやや入りやすいため、北へ行くほど日照時間は少な目です。
・降水量も最も少なく、まとまった雨が降ることはかなり稀です。
・3月はまだ雪が多いシーズンで、時に大雪となる場合があります。
・音威子府など北側ほど4月になってからも雪が積もりやすい環境です。
・根雪は旭川、富良野周辺の平地では3月下旬~4月上旬頃まで残りやすい状況です。
・朱鞠内、音威子府といった豪雪地では5月以降も雪が残っている年があります。
夏の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 |
---|---|---|---|
旭川 | 19.6℃ | 353.8mm | 490.9時間 |
名寄 | 18.3℃ | 330.7mm | 450.4時間 |
富良野 | 19.4℃ | 349.1mm | 503.5時間 |
音威子府 | 17.5℃ | 349.3mm | 430.6時間 |
朱鞠内 | 17.0℃ | 410.5mm | 459.3時間 |
・夏でも朝晩と昼間の気温差が大きくなります。
・日中は道内でも気温が上がりやすい地域で、特に富良野方面は最高気温が30℃以上の「真夏日」となる頻度が特に多い地域です。
・朝晩は冷え込みやすく、真夏でも最低気温が10℃以下になる場合があり、ごく稀に朱鞠内などで「霜がおりる」ような気温が観測されることがあります。
・全体的には、晴れる日は「多くも、少なくもない」傾向が見られます。
・6月までは雨が少ない一方、7月の降水量が道内でも特に多い地域です。
・オホーツク海高気圧の勢力が強い年などは、北側へ行くほど天候不順となりやすい傾向です。
・急峻な山地が多いことから、道内では夏の「夕立」が起きやすい地域です。
秋の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
---|---|---|---|---|
旭川 | 9.4℃ | 356.5mm | 337.9時間 | 27cm |
名寄 | 8.4℃ | 362.2mm | 300.0時間 | 33cm |
富良野 | 9.1℃ | 358.3mm | 329.7時間 | 24cm |
音威子府 | 8.5℃ | 490.2mm | 284.3時間 | 45cm |
朱鞠内 | 7.2℃ | 578.1mm | 290.8時間 | 66cm |
・海沿いと異なり温暖な海水温の影響を受けないため、気温低下は急速に進みます。
・場所によっては9月中から「氷が張る」ような冷え込みとなり、10月以降は氷点下の冷え込みが増え、11月には-10℃以下の気温が観測されることもあります。
・但し、9月までは昼間の気温が上がりやすいため、特に旭川以南では最高気温が30℃前後となり「残暑」を感じる場合もあります。
・それほど天気が良い季節ではありません。
・9月は秋雨前線の影響でやや雨が多く、10月以降は「冬型の気圧配置」が次第に増えるため、晴れ間の減少傾向が加速します。
・11月は日照時間が平均月50時間前後となり、晴天は貴重な存在となります。
・初雪は10月中に観測される場合が目立ちます。
・秋に降る雪の量は道内で最も多い地域で、時に1日30cm以上の大雪が降る場合があります。
・11月中から積雪が50cmを超えることもあり、雪への十分な備えが求められる状況です。
・11月に降る雪の量が「2月」に降る雪の量より多くなる場合も目立ちます。
冬の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
---|---|---|---|---|
旭川 | -5.7℃ | 222.4mm | 230.6時間 | 85cm |
名寄 | -7.3℃ | 170.8mm | 175.7時間 | 107cm |
富良野 | -6.9℃ | 152.3mm | 189.4時間 | 75cm |
音威子府 | -6.8 ℃ | 331.6mm | 126.5時間 | 189cm |
朱鞠内 | -7.8℃ | 451.7mm | 128.9時間 | 228cm |
・とにかく「厳しい寒さ」が特徴です。
・厳しい寒さは内陸特有の「放射冷却」現象(風が弱い晴れた日に地上の熱がどんどん奪われる)が特に発生しやすいことが要因です。
・朝の冷え込みは地形にもよりますが、占冠、江丹別、幌加内、朱鞠内など最も寒い地域では-30℃以下を観測する年も一般的です。
・放射冷却が強すぎるため、日中に気温が上がるタイミングがごくわずかで、昼間の気温もプラスにならない場合が大半を占めます。
・日本海から流れ込む雪雲が断続的に掛かり続けるため、晴れる頻度は少な目です。
・日照時間は12月が極端に少なく、2月にかけて緩やかに増えていく傾向です。
・特に音威子府など北側、朱鞠内や幌加内など西側の地域では、日本海沿岸部に近い日照時間となり、12月は「ほぼ晴れない」まま1か月を終える場合があります。
・全体的に雪が多い地域です。
・雪は海水温が高い12月に最も多く降りやすく、2月にかけて降る量はやや減る傾向があります。
・特に音威子府村や幌加内町方面は道内で雪が最も多い地域で、朱鞠内と幌加内のアメダスでは積雪3m以上を観測したことがあります。
各地域ごとの傾向まとめ
十勝地方(十勝総合振興局管内)の気候について、これまで解説してきた気候の特徴・差を「各地域(自治体)」ごとに大まかにまとめると、以下のような形になります。
旭川市 鷹栖町 東神楽町 当麻町 比布町 愛別町 東川町 | ・年間の最深積雪は山地を除き1m以下の場合も多くなっています。 ・冷え込みは厳しく、市街地も含め-20℃以下となる場合があります。 ・盆地地形の場所は夏は熱が溜まりやすく、道内の中でも暑い日が目立つ地域です。 |
上川町 | ・山の斜面の影響で夏~秋の雨量が多くなります。 ・雪の量や寒さは、市街地では旭川周辺と大きな違いはありません。 |
士別市 名寄市 和寒町 剣淵町 下川町 美深町 | ・北へ行くほど積雪が増える傾向があります。 ・一定の都市がある地域としては、道内で最も寒い地域です。 ・市街地も含め「ダイヤモンドダスト」が比較的見られやすい環境です。 |
富良野市 美瑛町 上富良野町 中富良野町 南富良野町 | ・雪は上川地方北部より少な目です。 ・暑くなりやすく、道内でも夏の「真夏日(最高気温30℃以上)」が最も多い地域の一つです。 |
占冠村 | ・太平洋側の気候的特徴(十勝地方)が混ざる地域です。 ・雪はやや多めですが、冬場の降水量がかなり少なく、晴れ間が上川地方で最も多くなります。 ・道内では陸別に次ぐ水準の寒さで、-30℃以下が観測される年が目立ちます。 ・険しい山地に囲まれており、斜面で雨雲が発達しやすいため夏~秋の雨量が特に多い地域です。 |
音威子府村 中川町 | ・道内屈指の豪雪地で、音威子府方面では2m以上の積雪も一般的です。 ・秋の後半~12月頃の降水量(雪の量)がかなり多い特徴があります。 |
幌加内町 | ・一般的に人が住む地域としては、北海道内で最も雪が多い地域(積雪3mの観測記録あり)です。 ・気温もまれに-30℃を下回ることがあるなど、極寒の地となっています。 ・秋の後半~12月頃の降水量(雪の量)がかなり多い特徴があります。 ・夏は冬の寒さとは対照的に、昼間の気温はが上がりやすい環境です。 |
上川地方の拠点都市「旭川市・名寄市・富良野市」の気候については、上記の記事で別途詳しく解説しています。
上川地方(管内)と札幌の気候を比較すると?
上川地方の気候を、北海道の中心都市「札幌市」と比較すると、主な項目では以下のような違い・共通点が挙げられます。
・一貫して平均気温は札幌より低い地域です。
・朝の冷え込みは比べ物にならない差があり、冬場は20℃程度の差が生じる場合があります。
・旭川、富良野、名寄など比較的多くの地域で札幌より夏の「真夏日(最高気温30℃以上)」が多くなります。
・札幌の方が「晴れやすい」地域です。
・冬場は上川地方に日本からの雲が継続的に入りやすく、北側や西側ほど札幌との日照時間差が目立ちます。
・降水量は山間部では夏~秋の前半の雨量が、日本海からの雲が入りやすい北側、西側では秋から冬の降水量が札幌を上回る傾向が見られます。
・音威子府、朱鞠内などの豪雪地は「札幌の倍」前後の雪が一般的です。
・旭川以南では札幌より積雪が少ない傾向が見られますが、差は大きくありません。
・気温が低いため、札幌と比べ「少ない降水量」で「多くの降雪量」となる傾向が強くなります。
道内各地方の気候については、それぞれ個別の記事において解説しております。