当記事では、北海道のオホーツク海側に位置し、流氷観光などでも知られる「紋別市」の気候の特徴について、季節ごとの詳細や札幌市と比べた場合の状況などを詳しく解説・考察していきます。
紋別市の気候「全体的な特徴」
降水量 | 平均気温 | 日照時間 | 平均風速 | 降雪量 | 最深積雪 | |
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年間平年値 | 860.8mm | 6.7℃ | 1675.2時間 | 2.8m/s | 338cm | 63cm |
紋別市は、宗谷岬~知床半島を結んだ北海道のオホーツク海側の中では地理的に中央部に位置する市です。
気候としては、オホーツク海からの湿った冷たい気流の影響を受けやすい海洋性の気候であり、気温は道内の海沿いとしては低めの地域で、特に海水温が影響する春から夏にかけての平均気温は低い傾向が強くなっています。但し、後述するように十勝平野から山を越えて風が吹き込む「フェーン現象」によって、極端な高温・猛暑になる可能性があるという対照的な特徴も持ち合わせています。
天候については、湿った気流の影響でどんよりした天気も多いものの、太平洋からの暖かく湿った気流・日本海からの季節風の影響は限定的なため、降水量が全国的に見ても、道内の中でも少ない地域であり、結果として晴れの日が長続きすることもあります。
世界的な気候区分(ケッペン)で見た場合、紋別市は亜寒帯の「亜寒帯湿潤気候(Df)」となり、道内の多くの地域と同じ区分となっています。
市内は市街地のある海沿いの地域のみならず、南側には広大な山間部も広がっているほか、渚滑方面など内陸側の地域もあります。海から離れた地域では海洋性の気候としての特徴はやや薄れ、朝晩はより強い冷え込みになるなど、市内でも場所によって気候は一定程度違いがあります。
紋別市「季節ごとの気候」
【春の気候】気温は低め・但し5月には極端な高温も
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 | 降雪量 | 最深積雪 | 降雪日数 |
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3月 | -1.2℃ | 2.3℃ | -5.0℃ | 35.4mm | 160.1時間 | 62cm | 54cm | 22.9日 |
4月 | 4.6℃ | 9.0℃ | 0.7℃ | 45.7mm | 174.7時間 | 16cm | 16cm | 11.3日 |
5月 | 9.6℃ | 14.2℃ | 5.6℃ | 58.4mm | 179.3時間 | 1cm | 1cm | 2.2日 |
観測史上最高気温 | 37.0℃(2019年5月26日) |
流氷終日 | 4月3日(平年値) |
紋別市の春は、その訪れは道内でも遅い地域です。雪は低気圧が発達する場合などは3月が雪のピークとなる年もありますし、流氷も観測される期間のうち4割程度は3月にあたりますので、3月までは春ではなく冬の一部と考えて頂いてよいくらいです。
4月以降は海水温が非常に低いオホーツク海の影響をもろに受け、海からの気流の影響を受けにくい地域と比べ、気温が大幅に低くなる傾向があります。気温は5月でも時に最高気温5℃以下になるほどで、冬に近いような寒さを感じることすらあります。
一方で、オホーツク海側の地域は、南から暖かい風が吹き込む際に、石狩山地や北見山地を越える際に「フェーン現象(山を登る前と比べ下りた後で空気の温度が上がる現象)」が発生することで、全国的に見ても類を見ない極端な気温上昇に見舞われることもあります。
紋別市で観測された「観測史上最高(過去最高)気温」は、夏ではなく2019年の5月末に観測された37℃。この他にも過去の記録を見ると、5月中に最高気温が30℃以上となる真夏日を観測したことが10回ほどあり、平均気温9.6℃、最高気温平均14.2℃という気温の低さからは考えられないような気温上昇が時々発生しています。
極端な事例としては、1996年5月には、最高気温「1.5℃」と最高気温「30.6℃」が同じ月に観測されており、このような気象状況は全国の他地域では見られないかなり特殊な事例となっています。
気温ではなく天候面においては、春は雨が非常に少なく比較的晴れる日が多いという安定した状態が続きやすい時期です。但し、オホーツク海からの冷たい気流の影響を受けやすい年は、一定期間曇りや雨、場合によっては雪やみぞれの天気が見られることもあり、道内の日本海側ほど晴れやすいとは言えません。
【夏の気候】オホーツク海高気圧の影響大・年ごとの差が目立つ
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 |
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6月 | 13.0℃ | 16.7℃ | 9.9℃ | 69.8mm | 154.7時間 |
7月 | 17.1℃ | 20.6℃ | 14.4℃ | 108.6mm | 143.2時間 |
8月 | 19.3℃ | 22.9℃ | 16.4℃ | 122.0mm | 145.0時間 |
紋別市の夏は、オホーツク海からの冷たい気流の影響を受ける度合いによって気候が決まります。冷たい空気をもたらす要因としての「オホーツク海高気圧」は、6月から8月までが主に影響を与える期間であり、この高気圧が発達すると北東側の海から冷たく湿った空気が流れ込み、低い雲に覆われた天気となり、小雨や霧雨になることが多くなります。
日照時間で見た場合、オホーツク海高気圧が強い冷夏の年は夏場に月100時間を切ることもある一方、そうでない年には200時間を超える場合もあり、気温も晴れ間の多さによって大きく変動しますので、オホーツク海からの冷たい気流の影響を受ける場合と受けにくい場合で、気候に大きな差が生じます。
なお、北海道に「梅雨」はありませんが、6月頃から一定期間この高気圧の影響で曇りや小雨・霧雨がオホーツク海側で続くことも多いため、こういったケースを「蝦夷梅雨」と呼ぶこともあります。
晴れる場合の気温については、5月と同様に南側から暖かい空気が山を越えてきた場合(フェーン現象)に急に気温が高くなって真夏日となるのが特徴で、長期間暑い日が続くことはありません。
【秋の気候】比較的天気が安定するシーズン
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 | 降雪量 | 最深積雪 | 降雪日数 |
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9月 | 16.6℃ | 20.7℃ | 12.8℃ | 127.6mm | 157.3時間 | なし | なし | なし |
10月 | 10.5℃ | 14.9℃ | 6.2℃ | 88.1mm | 149.3時間 | 0cm | 0cm | 2.2日 |
11月 | 3.6℃ | 7.2℃ | 0.0℃ | 64.6mm | 103.5時間 | 21cm | 9cm | 15.9日 |
初雪 | 10月27日 |
初積雪(1cm以上) | 11月16日 |
秋の紋別は、1年間では最も安定した気候となる時期と言えます。
春先は寒い中で急に猛暑になったり、夏場はオホーツク海高気圧次第で気候がガラリと変わるなど特徴が大きい紋別の気候ですが、秋は比較的ブレが小さくなっています。
大きな流れで見ると、9月は秋雨前線の影響でやや雨が多くなり、季節が進むにつれて降水量は減っていく傾向がはっきりしています。日照時間は10月までは多く、11月は昼間の時間が短くなる関係もあり晴れ間は減りますが、日本海側と比べると天気はかなり安定しています。
気温は9月にはまれに真夏日になることもありますが、秋を通して全体的にはどんどん下がっていき、11月以降は氷が張るような寒さが一般的です。但し、海水温は春とは逆に秋は「下がりにくい」傾向がありますので、道内の内陸部と比べると秋の気温は高くなる傾向が見られます。
雪については、秋の間に20cm以上などのまとまった雪になる可能性はそれほと高くはありませんが、10月中から初雪が降る可能性があり、多くの年で11月中から積雪が観測されるなど、冬の足音は比較的早くやってきます。
【冬の気候】雪は平均的・流氷接岸は気温を下げる
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 | 降雪量 | 最深積雪 | 降雪日数 |
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12月 | -2.6℃ | 0.3℃ | -6.0℃ | 59.3mm | 114.2時間 | 75cm | 28cm | 27.4日 |
1月 | -5.2℃ | -2.3℃ | -8.7℃ | 44.4mm | 98.7時間 | 87cm | 46cm | 28.7日 |
2月 | -5.3℃ | -2.0℃ | -9.4℃ | 33.2mm | 95.2時間 | 77cm | 58cm | 24.8日 |
積雪深 | 日降雪量 | 年間降雪量 | |
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観測史上最大の記録 | 127cm(1958年2月13日) | 55cm(1972年3月2日) | 533cm(2012年) |
流氷接岸日 | 流氷終日 | 接岸期間 | |
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平年値 | 1月23日 | 4月1日 | 69日 |
紋別市の冬は、沿岸部ということで内陸部のような-20℃以下の冷え込みなどは基本的にありませんが、道内の海沿いの地域としては気温が低い地域となっています。
これは、太平洋に面しておらず温暖な空気が入りにくい地域であり、その上緯度が高いといった要因もありますが、冬から春先にかけての平均約70日間程度「流氷」が接岸することも一つの大きな要因となっています。
海の上が通常通り海水に覆われている状況では、気温ほど上下しない海水温の影響を受け、冬場の海沿いの気温は上がりやすくなりますが、流氷が来るとその密度にもよりますが、海の上も一般的な地面と同じような環境になりますので、結果海沿いの地域であっても気温が下がりやすくなります。
このメカニズムは、本来1月よりも平均気温がわずかに高くなるはずの2月に平均最低気温が更に下がっていることで裏付けられており、流氷の接岸期間が長いほど紋別市の気温が低くなりやすいという特徴を持っています。
冬場の雪については、道内では多いとも少ないとも言えず、ごく平均的な積もり方をする地域と言えます。降水量自体は少なく、雪はオホーツク海周辺・太平洋周辺で低気圧が発達する場合にはまとまって積もりますが、日本海側とは異なり冬型の気圧配置の際に降る量は目立ちません。比較的効率的に積もり、気温が低いこともありそれが長期間残りやすいため、結果それなりの積雪量となっていると言えます。
日本海側ではないため冬場の晴れ間は比較的多く、流氷観光などをする際にも悪天候ではなくすっきり晴れた環境で美しい風景を見られる機会も多くなっています。
札幌と比較する
年間平均気温 | 冬の平均気温 | 年間降水量 | 年間降雪量 | 年間最深積雪 | 年間日照時間 | |
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札幌管区気象台 | 9.2℃ | -2.3℃ | 1146.1mm | 479cm | 97cm | 1718.0時間 |
紋別特別地域気象観測所 | 6.7℃(-2.5℃) | -4.3℃(-2.0℃) | 860.8mm(-285.3mm) | 338cm(-141cm) | 63cm(-34cm) | 1675.2時間(-42.8時間) |
紋別市は、札幌市と比べ気温は年間を通して低めです。5月~9月頃にフェーン現象で突然気温が上がる場合は例外ですが、そうでない場合は札幌よりも涼しい・寒い日が大半となります。気温は低い海水温の影響や流氷の影響を受ける真冬~夏場にかけて差が大きい一方、海水温が逆に気温を押し上げる秋についてはその差がかなり小さくなります。
降水量については、日本海からの雪雲・雨雲が流れ込みにくいため、秋から春先にかけては紋別は札幌の半分程度~半分以下となっており、この時期の差が年間降水量が1000mmを割り込む要因を作りだしています。
なお、雪については札幌よりも量が少ない傾向にありますが、気温が低いこともあり「根雪(積雪が残り続ける状態)」で考えるとその期間に大差はありません。
また、日照時間は冬場に多く夏場にやや少ない結果、総合的には札幌との差は少なく、年間ではわずかに少ないくらいになっています。
紋別市のある網走地方の気候については、上記の記事で別途解説しております。