北海道の太平洋側に位置し、道内の山地でも特に急峻な日高山脈がある一方、海沿いは雪が少なく「冬」はしのぎやすいことで知られる「日高地方」。
こちらでは、日高地方の気候について、その全体的傾向・季節ごと、地域ごとの特徴・札幌市との比較などを詳しく見て行きたいと思います。
日高地方(管内)の気候「全体的特徴」
日高地方は、北海道の太平洋側に位置する地域で、えりも岬を南端に、海に向かって突き出したような区域を持っています。
地形は道内でも特に急峻で標高が高い「日高山脈」の西半分が広い範囲を占めており、平地は沿岸部の一部を除き多くありません。
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 平均風速 | 最深積雪 |
---|
浦河 | 8.2℃ | 1118.3mm | 1839.1時間 | 4.2m/s | 19cm |
静内 | 8.2℃ | 1043.3mm | 1849.9時間 | 2.1m/s | 21cm |
日高 | 6.3℃ | 1324.3mm | 1403.0時間 | 1.5m/s | 84cm |
えりも岬 | 7.4℃ | 987.1mm | 1926.2時間 | 8.1m/s | 観測なし |
目黒 | 観測なし | 2140.6mm | 観測なし | 観測なし | 91cm |
年間の平年気象データ
日高地方には、合計13か所の気象庁の観測地点があります。主要な地点の基本的な観測データは上記の通りです。
日高地方の気候面での全体的特徴としては、主に以下のようなポイントが挙げられます。
気候のポイント【その3】「雪が少ない」
・多くの人が住む「沿岸部」の大半は、道内で最も「雪が少ない」地域です。
・真冬でも「積雪がない」場合があり、30cm以上積もるようなケースは極めてまれです。
・日高山脈一帯、えりも岬より十勝側の地域(目黒)は例外となります。
気候のポイント【その2】「海水温と気温」
・沿岸部は、「下がりにくく上がりにくい」海水温の影響を強く受けます。
・気温は秋~冬は温暖な傾向が強く、春~夏は逆に気温がやや上がりにくい状況です。
気候のポイント【その1】「多雨地域日高山脈」
・分厚くそびえる「日高山脈」の斜面で雨雲が発達しやすい環境です。
・海から湿った風が吹き込む夏~秋には、山間部では雨が多い西日本のような雨量となる場合があります。
・但し、海に近づくほど雨量は一気に減る傾向が見られます。
春の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
---|
浦河 | 5.3℃ | 252.0mm | 569.3時間 | 10cm |
静内 | 5.8℃ | 235.4mm | 578.9時間 | 13cm |
日高 | 4.4℃ | 284.9mm | 434.8時間 | 78cm |
えりも岬 | 3.6℃ | 203.2mm | 588.6時間 | 観測なし |
目黒 | 観測なし | 511.8mm | 観測なし | 81cm |
春の気象データ<3~5月の平均値または合計値>
気温
・気温は全体的に低めで、特に沿岸部の「昼間の気温」が上がりにくくなっています。
・海沿いの気温が低い理由は、冬に冷えた海水温がなかなか上がらない中で、海からの気流の影響を受けることによるものです。
・特にえりも岬の「5月」平均気温は、道内では「納沙布岬(根室)」に次ぐ低さで、11月と同じくらいの寒さになっています。
天気
・概ね天候は良い時期(1年で最もよく晴れる時期)ですが、周期的に天気は変わり「まとまった雨」となる場合もあります。
・降水量は道内でも特に早い時期から増える傾向があり、4月から平年降水量が月間100mmを上回る地点があります。
・日高町などの内陸部は日本海側の気候的特徴が見られ、3月までは晴れの頻度がやや少な目です。
雪
・積雪は一部を除き少ないですが、3月に最も多くなる場合があります。
・浦河、静内など多くの沿岸部は雪が極めて少なく、「根雪」は3月初頭から既にない場合が目立ちます。
・えりも岬より東側(目黒方面)では、低気圧の発達により「ドカ雪」が降る場合があります。
夏の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 |
---|
浦河 | 17.1℃ | 399.0mm | 396.6時間 |
静内 | 18.0℃ | 388.9mm | 435.9時間 |
日高 | 18.4℃ | 441.8mm | 457.3時間 |
えりも岬 | 14.7℃ | 343.2mm | 390.6時間 |
目黒 | 観測なし | 605.4mm | 観測なし |
夏の気象データ<6~8月の平均値または合計値>
気温
・沿岸部は涼しい傾向が強く「暑い日」はかなり少な目です。
・6月は海水温の影響が大きく、沿岸部では気温が特に低くなります。
・えりも岬周辺は最高気温が25℃を越えることもまれで、「夏がない」地域と言える状況です。
・日高町北部など内陸部は昼間の気温が上がりやすく、最高気温が30℃以上の「真夏日」も一定数見られます。
天気
・海沿いほど晴れ間が減りやすく、特に7月は天候不順の傾向が見られます。
・6月は5月と比べ一旦雨量が減る傾向がありますが、7月以降は雨が多めで、一部地域を除き8月が1年の「雨量のピーク」となります。
・海沿いの天候不順は、雨がやや多いことも一つの理由ですが、最大の要因は温暖な気流が冷たい海上に入ることで「海霧」が発生する影響によるものです。
秋の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
---|
浦河 | 12.0℃ | 345.5mm | 457.2時間 | 2cm |
静内 | 11.6℃ | 310.3mm | 423.4時間 | 2cm |
日高 | 8.7℃ | 428.8mm | 315.9時間 | 9cm |
えりも岬 | 12.0℃ | 336.6mm | 477.2時間 | 観測なし |
目黒 | 観測なし | 737.0mm | 観測なし | 4cm |
秋の気象データ<9~11月の平均値または合計値>
気温
・一度暖まった海水温が今度は「下がりにくく」なるため、気温は沿岸部では高めです。
・内陸部は冷え込みやすく、気温は急速に下がっていきます。
・えりも岬周辺は室蘭より温暖な環境で、道内では檜山地方の一部に次ぐ気温の高さとなっています。
天気
・海沿いは比較的天気が良いシーズンです。
・雨量は9月までは多めですが、10月以降減少傾向が加速します。
・但し、えりも岬の東側は秋が雨量のピークで、台風の影響などを受ける場合、月間降水量が500mm前後に達する場合もあります。
・日高町の北部など内陸の一部は日本海側の気候的特徴を受け、11月以降晴れ間が大幅に減少します。
雪
・初雪も、積雪も「遅い」地域です。
・内陸部も含め、11月中までに「まとまった雪」が降ることはかなりまれな環境です。
冬の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
---|
浦河 | -1.4℃ | 122.5mm | 416.3時間 | 19cm |
静内 | -2.4℃ | 110.5mm | 408.2時間 | 21cm |
日高 | -6.4℃ | 162.6mm | 197.2時間 | 82cm |
えりも岬 | -1.0℃ | 91.9mm | 473.9時間 | 観測なし |
目黒 | 観測なし | 291.4mm | 観測なし | 83cm |
冬の気象データ<12~2月の平均値または合計値>
気温
・海沿いは概ね「道内では温暖」な傾向です。
・沿岸部の気温はえりも岬周辺が最も高く、日高町方面が最も低くなります。
・日高町北部など内陸部は非常に寒い地域で冷え込みが厳しく、-25℃前後の最低気温が観測されることもあります。
天気
・沿岸部は比較的よく晴れる地域です。
・但し、「冬型の気圧配置」の際に太平洋から雲が流れ込む場合があるため、十勝平野ほどの「晴れやすさ」にはなりません。
・日高町北部(内陸部)は雪の日も多く、日照時間がかなり少ない「日本海側に近い気候的特徴」を持っています。
雪
・沿岸部は一部を除き「道内で最も雪が少ない地域」です。
・日高町北部は日本海側にやや近い気候で、雪の量は比較的多めです。
・沿岸部ではえりも岬の東側(目黒地域)のみ条件が異なり、低気圧通過時の「ドカ雪」、1m以上の積雪が多い地域です。
各地域ごとの傾向まとめ
日高地方(日高総合振興局管内)の気候について、これまで解説してきた気候の特徴・差を「各地域(自治体)」ごとに大まかにまとめると、以下のような形になります。
日高町 平取町 | ・内陸側は冬場は寒く、雪も多い地域です。 ・海沿いは雪はかなり少な目ですが、浦河方面など日高地方の東側と比べやや気温は低めです。 ・日高町の旧日高町地区は、日本海側の気候的特徴が一部見られます。 ・内陸側は夏に気温が上がりやすく、最高気温が30℃以上の「真夏日」がやや多くなります。 |
新冠町 新ひだか町 浦河町 様似町 | ・海沿いは冬場の温暖な傾向、雪の少なさが顕著です。 ・やや内陸側も含め、夏場はそれほど暑くなりません。 ・降水量は山地では極めて多く、海沿いでは道内の平均水準程度となります。 |
えりも町 | ・えりも岬に近い地域ほど冬場は特に温暖、春はかなり寒冷な傾向があります。 ・町内でも降水量の差が倍程度ある「極端な気候差」が特徴です。 ・えりも岬より東側(十勝側)の一部は年間降水量2000mm超と、道内で最も雨がよく降る地域です。 ・雪の量も差が大きく、目黒地区では積雪が1m以上となる年も見られます。 |
日高地方(管内)と札幌の気候を比較すると?
日高地方の気候(平地・内陸側の標高が低めの地域)を、北海道の中心都市「札幌市」と比較すると、主な項目では以下のような違い・共通点が挙げられます。
気温
・海沿いの一部では、秋~冬は札幌より温暖です。特にえりも岬周辺は差が大きくなります。
・春から夏は、冷たい海の影響を受ける日高側で寒冷になります。
・「暑い日」は札幌の方が圧倒的に多い傾向ですが、一部内陸部(日高町の旧日高町地区など)では同じくらい暑くなる場所があります。
天気
・札幌と比べ、冬場の晴れ間が多い地域です。
・夏は海からの湿った気流で天候不順傾向となり、札幌よりも日照時間が大幅に減る場合があります。
・降水量は、春~夏は日高側で多く、秋の後半~冬は札幌で多い傾向がはっきりしています。
雪
・沿岸部の雪は札幌と比べ極めて少なくなっています。
・積もる量だけでなく「降る頻度」も圧倒的に少ない状況です。
・内陸(特に日高町北側)は雪が増え、札幌に近い水準の雪が降る場合もあります。
道内各地方の気候については、それぞれ個別の記事において解説しております。