網走市の「気候の特徴」とは?季節ごとの傾向などを解説【オホーツク海・流氷】

自然・気候

こちらの記事では、北海道の道東・オホーツク海側地域に位置し、一般には「流氷」で広く知られる網走市の気候について、各季節ごとの詳しい特徴や札幌市との比較などを解説・考察していきます。

網走市の気候「全体的な特徴」

網走地方気象台の雨温図
降水量平均気温日照時間平均風速降雪量最深積雪
年間平年値844.2mm6.9℃1850.0時間3.3m/s312cm63cm
いずれも平年値(1991年~2020年)

網走市は、北海道のオホーツク海側に位置する地域で、市街地は海に直接面する場所に広がっています。市内は海から最も離れた場所でも20km程度の距離で、険しい山地もないなど地理的な条件は比較的似通っており、市内各地の気候の差が目立つ環境ではありません。

気候の特徴としては、1年を通してオホーツク海の影響を強く受け続ける「海洋性の気候」という点が大きなポイントとして挙げられます。特に夏場は冷たい空気を持つ「オホーツク海高気圧」の勢力次第で天候が大きく変わり、日照不足・低温が続きやすい年もあります。

なお、気温は海からの気流・温度差が少ない海水温の影響を受けるため道内でも低い傾向の地域ですが、南から風が吹き込む「フェーン現象」が発生する場合は猛暑となることもあるなど、同じ時期の気温差がかなり大きくなりやすい特徴もあります。

天気そのものを見ると、太平洋からの暖かく湿った気流・日本海からの季節風の影響を受けにくいため、大雨が降ったり、雪がずっと降り続いたり、長期間強風が続いたりといった過酷な天気は目立ちません。気温が低いイメージからは想像しづらいかもしれませんが、日照時間は道内では比較的多い部類に入ります。

世界的な気候区分(ケッペン)で見た場合、網走市は亜寒帯の「亜寒帯湿潤気候(Df)」となり、道南の一部を除く道内全域と同じ区分に当てはまります。

網走市「季節ごとの気候」

【春の気候】寒い一方で気温差は極端・5月の降雪も

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪雪日数
3月-1.3℃2.3℃-4.9℃39.3mm172.4時間52cm52cm22.2日
4月4.5℃9.1℃0.6℃51.2mm178.6時間15cm16cm15.2日
5月9.8℃14.6℃5.8℃64.1mm187.1時間1cm1cm4.1日
網走市の桜
開花日5月10日
満開日5月13日
流氷初日1月22日
流氷終日4月6日
接岸期間75日間
いずれも平年値(1991年~2020年)・桜の品種は「エゾヤマザクラ」
5月の過去最高気温観測日
1位35.4℃(2019年5月26日)
2位32.7℃(2014年5月29日)
3位32.6℃(1922年5月30日)

網走市の春は、春とは言えないような「流氷」シーズンから始まります。

流氷は網走市沿岸に平均すると4月上旬頃まで接岸しており、これは積雪(根雪)が消える時期よりも後になっており、春らしさを感じるためには、まずこの流氷の「離岸(消失)」という現象が一つの区切りとなります。

雪については、3月までは特に降りやすく、年によっては低気圧の発達で1日20cm以上のまとまった雪となることがあります。また、4月以降も降雪は一般的で、平均すれば10年に1回程度は5月に積雪を記録しています。

気温は上記のような状況があるため低い傾向が強く、春の間に平均気温が10℃を超える月はありません。但し、気温が低いというのは「いつでも低い」ことは意味しません。

網走の場合、南西方向などから風が吹き込む場合、空気が山を越えた後に元の温度より気温が高くなる「フェーン現象」が発生することが少なくないため、5月中から最高気温25℃以上、場合によっては30℃以上の真夏日となる場合があり、2019年の5月末には35℃以上の猛暑日も観測しています。

また、2013年には同じ5月に最高気温「1℃台」と最高気温「30℃以上」の両方が観測されたこともあるなど、網走の春は季節が進むにつれ「極端な気温差」が生じることが大きな特徴と言えます。

天気については、気温の変動とは異なり春は比較的安定して晴れる日が多く、降水量も少な目の時期です。海沿いながら風が強い日も多くなく、気温を除いては比較的過ごしやすい環境と言えるでしょう。

【夏の気候】オホーツク海高気圧の状況次第・まれに猛暑も

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間
6月13.5℃17.7℃10.2℃68.1mm172.2時間
7月17.6℃21.4℃14.6℃85.8mm167.6時間
8月19.6℃23.3℃16.6℃115.3mm163.9時間
いずれも平年値(1991年~2020年)

網走市の夏は、全国的に見るととても涼しい地域ですが、毎年の気候はオホーツク海から冷たい空気を運んでくる「オホーツク海高気圧(気団)」の影響により大きな差が生じます。

オホーツク海高気圧は、その勢力が強い場合は海から冷たく湿った空気を常時もたらし、結果網走市では曇り・霧雨・小雨といった天候が一定期間続くことがあります。これが長続きする場合、1か月の日照時間が少なくなり(100時間前後など)、気温もやや低い状況が続くなどいわゆる「冷夏」となり、農業などにある程度の影響を及ぼすことがあります。

一方で、オホーツク海高気圧の影響を受けにくい年は、春以上に良く晴れ、1か月の日照時間が200時間を超えるような状況となることもあります(特に7月)。気温についても、オホーツク海高気圧の影響が少ない場合で、山を越えて暖かい風が吹き下ろす「フェーン現象」となる場合は大幅に上がることもあり、これまで「猛暑日」になった回数は札幌などを大幅に上回ります。

雨は、8月以降秋雨前線の影響でやや増えやすくなりますが、道内の他地域と比べると降水量は少な目の傾向です。

【秋の気候】天気は安定傾向・季節の進行はごく普通

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪雪日数
9月16.8℃20.7℃13.4℃115.0mm162.9時間なしなしなし
10月10.9℃15.0℃7.0℃88.2mm157.4時間0cm0cm1.9日
11月4.0℃7.6℃0.4℃58.1mm121.2時間13cm6cm14.5日
気象庁の平年データによる
初霜初氷初雪初積雪(1cm以上)
平年値10月26日10月30日10月30日11月17日

秋の網走市は、春とは逆に海水温の影響で気温は内陸部などより高めで推移します。緯度が高いことから寒さ自体は早く訪れますが、同じ緯度の旭川と比べると霜や氷が見られる時期は平均して10日~2週間程度遅い傾向があります。

天候は9月までは雨が1年の中で最も多い時期で、まれに10月にかけて台風・秋雨前線の影響でまとまった雨が降るケースもありますが、これまで1日の降水量が100mmを超える大雨となった事例は、130年以上の歴史で7回しかありません。

秋の日照時間は日本海側と比べると長く、太平洋側と比べると短い地域で、特段多いとも少ないとも言えない地域です。

台風による影響は国内でも特に受けにくい地域ですが、2004年の台風18号から変わった温帯低気圧が網走から離れた日本海上~宗谷岬付近を通過した際に、過去最大の最大瞬間風速37.5m/sを記録したことがあるなど、まれに大きな影響を受けることもあります。

雪は、降るだけであれば10月末に初雪が観測される年もありますが、通常積雪は11月半ば以降のことが多く、10cm以上のまとまった雪は数年に一度程度と、まだ雪は多くなりません。

【冬の気候】比較的晴れやすい・流氷が気温を左右

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪雪日数
12月-2.4℃0.7℃-6.0℃63.6mm117.4時間71cm29cm24.1日
1月-5.1℃-2.2℃-8.9℃53.8mm111.5時間90cm46cm27.0日
2月-5.4℃-2.0℃-9.6℃41.9mm137.9時間69cm58cm23.5日
いずれも平年値(1991年~2020年)
積雪深日降雪量年間降雪量
観測史上最大の値143cm
(2004年2月23日)
49cm
(2008年2月24日)
485cm
(2006年)
流氷初日流氷終日接岸期間
平年値1月22日4月6日75日間

網走市の冬は、道内の都市部で比較すると「やや寒い」程度の寒さの水準ですが、真冬の時期は1か月のほとんどが最高気温0℃以下の真冬日となるなど、大変厳しい寒さが続きます。

大きな特徴としては、通常道内では「1月」がデータ上寒さの底となる一方、網走では「2月」に冷え込みが強まるため、2月の平均気温が1年で最も低くなっている点が挙げられます。

この理由はシンプルで、オホーツク海からの「流氷」が例年2月に入る少し前から網走に接岸することによるものです。海が氷に覆われていない時期は、気温よりも高い海水温の影響から、海沿いだけ気温が上がりやすい・冷え込みにくい傾向が生じますが、流氷で埋め尽くされると一般の地上部分と似たような環境となり、結果海のそばも含め朝晩の冷え込みがやや厳しくなります。

流氷は概ね1月下旬から4月の上旬頃まで、約2か月半程度網走沿岸を覆い、北海道内の都市では最も流氷が見られる期間が長い地域となっています。

雪については、道東周辺で低気圧が急発達する場合には大雪となるほか、風向き次第ではオホーツク海上からの「筋状の雲」が流れ込み、日本海側のように「冬型の気圧配置」でも雪が降る場合があります。雪の量は道内では平均的な水準ですが、比較的気温が低いため、一度降ると解けずに残りやすく、雪が効率的に積もっていく地域と言えるでしょう。

札幌と比較する

札幌と網走「月平均気温」の比較
札幌と網走「月降水量」の比較
年間平均気温冬の平均気温年間降水量年間降雪量年間最深積雪年間日照時間
札幌管区気象台9.2℃-2.3℃1146.1mm479cm97cm1718.0時間
網走地方気象台6.9℃(-2.3℃)-4.3℃(-2.0℃)844.2mm(+301.9mm)312cm(-167cm)63cm(-34cm)1850.0時間(+132.0時間)
いずれも平年値、括弧内は札幌との比較

網走市と札幌市の気候を比較した場合、共通点よりも異なる点の方が多く見受けられます。

気温を見ると、海水温の影響もあり秋~冬の初めを除いて網走が一貫して低くなっています。春~夏の気温差はかなり大きく、平均でも3℃程度に及ぶ場合がありますが、過去の猛暑日日数で見ると、網走の方が圧倒的に多くなっており、網走の気温差・寒暖差の大きさが浮き彫りとなります。

降水量については、日本海からの雪雲・雨雲が流れ込みやすい札幌と比べ、網走は晩秋~春先にかけて半分程度となり、主にこの時期の差が年間降水量に大差をもたらしています。

雪の状況は、降水量が冬場に多い札幌の方が多い傾向がはっきりしていますが、気温の低い網走の方が「効率的」に積もりやすいため、降水量の差ほどの降雪・積雪量の差は見られません。

比較的似ているのは日照時間であり、晩秋~冬に札幌がやや少なくなる点を除いては、晴れる頻度にそれほど大きな差はありません。

網走地方全体の気候については、上記の記事で別途解説しております。