北海道の道東・太平洋側に位置し、日本の食料供給を支える国内一の農業地域でもある「十勝地方(十勝総合振興局管内)」。
こちらでは、十勝地方の気候について、その全体的傾向・季節ごと、地域ごとの特徴・札幌市との比較などを詳しく見て行きたいと思います。
十勝地方(管内)の気候「全体的特徴」

十勝地方は、北海道内ではやや東寄り(道東)、かつ「太平洋」に面する側に位置する地域です。
地形はゆるやかな台地が広がる「十勝平野」が海沿いから中央部にかけて広い範囲を占めます。また、北側は北海道で最も標高の高い「石狩山地」一帯、西側も険しい山々が連なる「日高山脈」一帯となっており、平野・山地という特徴がくっきり分かれた地理的特徴を持ちます。
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 平均風速 | 最深積雪 |
---|---|---|---|---|---|
帯広 | 7.2℃ | 919.7mm | 2020.1時間 | 2.2m/s | 71cm |
広尾 | 7.2℃ | 1709.2mm | 1815.8時間 | 2.9m/s | 98cm |
浦幌 | 6.6℃ | 1005.9mm | 2024.0時間 | 1.7m/s | 56cm |
陸別 | 4.8℃ | 831.8mm | 1792.0時間 | 1.6m/s | 75cm |
ぬかびら源泉郷 | 4.0℃ | 1382.6mm | 1776.0時間 | 0.7m/s | 106cm |
十勝地方には、合計20か所以上もの気象庁の観測地点があります。主な地点の基本的な観測データは上記の通りです。
十勝地方の気候面での全体的特徴としては、主に以下のようなポイントが挙げられます。
・十勝地方は、ほぼ全域が夏を除きよく晴れる地域です。
・全国的に見ても日照時間が長く、年間平均2,000時間以上の観測地点もあります。
・山地を除き雨も少なく、平野部の中央は道内(国内)屈指の「少雨地域」となっています。
・よく晴れる十勝地方ですが、夏場は天候が安定しない傾向です。
・晴れ間が減る要因は、太平洋から流れ込む「海霧」の影響などが大きく、温暖な年も、冷夏の年もどちらも日照不足になる可能性があります。
・但し、晴れるタイミングでは気温が上がりやすく「真夏日」日数は道内でも多めとなります。
・冬はほぼ「晴れ続ける」十勝地方は、降雪の頻度はかなり少な目です。
・一方で、低気圧が急発達する際には「ドカ雪(大雪)」となる場合があり、一度に降る量だけで見ると日本海側を上回る傾向が見られます。
春の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
---|---|---|---|---|
帯広 | 5.8℃ | 188.6mm | 599.6時間 | 57cm |
広尾 | 5.0℃ | 368.7mm | 540.9時間 | 85cm |
浦幌 | 4.9℃ | 219.1mm | 590.4時間 | 43cm |
陸別 | 3.6℃ | 164.1mm | 512.1時間 | 63cm |
ぬかびら源泉郷 | 2.3℃ | 279.0mm | 540.7時間 | 98cm |
・海沿いを除き、気温の上昇は比較的早めです。
・3月はまだ寒く、地域によって-20℃台の冷え込みとなる場合があります。
・4月以降も朝晩は冷え込みますが、昼間はポカポカ陽気となる日が多くなっていきます。
・5月に日高山地を越えて乾いた風が吹き下ろす「フェーン現象」が生じる場合、まれに最高気温が30℃以上の「真夏日」となり「厳しい暑さ」を感じる場合があります。
・概ねよく晴れるシーズンです。
・天気は3月が最も安定し、その後は周期的に天気が変わりやすい傾向になっていきます。
・5月はまとまった雨となる場合もあり、特に広尾方面など南側では雨量が多くなる傾向が見られます。
・積雪のピークは「3月」となる場合が目立ちます。
・3月は天気が安定する時期ですが、時折低気圧が発達しながら進む場合があり、その際にはまとまった雪となります。
・低気圧通過時は、1日の降雪量が50cm前後の「ドカ雪(大雪)」となり、積雪が一気に増えることもあります。
・4月以降の雪は減りますが、道内では比較的遅くまで積もりやすい地域です。
・「根雪」は平地では3月下旬~4月上旬頃まで残る場合が多くなっています。
夏の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 |
---|---|---|---|
帯広 | 18.2℃ | 329.6mm | 395.3時間 |
広尾 | 16.0℃ | 533.1mm | 348.9時間 |
浦幌 | 17.0℃ | 337.8mm | 406.6時間 |
陸別 | 17.3℃ | 310.5mm | 394.2時間 |
ぬかびら源泉郷 | 16.0℃ | 472.2mm | 460.8時間 |
・平均気温は天候不順傾向のため、それほど高くありません。
・一方「暑い日」で見ると、最高気温が30℃以上(真夏日)となる頻度は道内でも多くなります。
・「晴れた日」には気温がかなり上がりやすい地域です。
・釧路地方と同様、全域で天候不順傾向が見られます。
・温暖な年は南の「太平洋高気圧」から吹き出す風が「海霧」を発生させ、冷夏の年はオホーツク海側からの湿った風を受けて雲が広がりやすく、結果多くの年で日照時間が少なくなります。
・雨量は帯広周辺ではそれほど多くありませんが、山か海に近いほど多く、広尾やぬかびら源泉郷では、かなりの大雨が記録される場合があります。
秋の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
---|---|---|---|---|
帯広 | 10.2℃ | 280.0mm | 473.6時間 | 7cm |
広尾 | 11.0℃ | 584.4mm | 448.2時間 | 4cm |
浦幌 | 9.9℃ | 320.8mm | 495.5時間 | 4cm |
陸別 | 7.8℃ | 252.5mm | 438.8時間 | 8cm |
ぬかびら源泉郷 | 6.5℃ | 469.9mm | 419.8時間 | 17cm |
・平野部のため冷え込みやすく、早い時期から朝晩の寒さが目立ちます。
・帯広に近い場所も含め、9月中から霜がおりるような気温となる場所も多くなっています。
・広尾など南側の海沿いは、下がりにくい海水温の影響を受け、道内はやや温暖な環境です。
・9月は1年で最も雨が多いシーズンです。
・広尾など海沿いの一部、山地は月間の平年降水量が200mmを超える道内屈指の「多雨地域」です。
・太平洋を台風が通過する場合などに、秋雨前線が活発化して大雨となる場合もあります。
・10月後半以降は天気が急速に安定傾向へ向かいます。
・初雪は11月の初め頃の場合が多くなっています。
・秋の間の「積雪」はかなり少な目で、ほとんど積もらない年も多く、まとまった雪が降る年は少数派です。
冬の気候
観測地点 | 平均気温 | 降水量 | 日照時間 | 最深積雪 |
---|---|---|---|---|
帯広 | -5.5℃ | 124.3mm | 550.4時間 | 69cm |
広尾 | -3.1℃ | 227.3mm | 475.9時間 | 90cm |
浦幌 | -5.5℃ | 130.9mm | 528.9時間 | 52cm |
陸別 | -9.4 ℃ | 98.6mm | 444.8時間 | 71cm |
ぬかびら源泉郷 | -8.9℃ | 165.3mm | 354.6時間 | 96cm |
・道内でも特に厳しい寒さの地域です。
・よく晴れるため「放射冷却」が起きやすく、一部を除き朝の最低気温が-20℃以下となる場合も頻繁に見られます。
・とりわけ「陸別町」は冷たい空気が溜まりやすい地形で、「国内で最も寒い地域」として知られます。
・大半の地域で「天気が非常に良い(よく晴れる)」ことが特徴です。
・日照時間は夏の倍程度に達する場合があり、1か月間ほぼ「晴れ続ける」年もあります。
・上川地方寄りの山間部(新得・鹿追・上士幌町北部)では、日本海から流れ込む雲の影響で、平野部ほどの晴れ間は見られません。
・天気は安定している一方、積雪は比較的多めです。
・雪は西側ほど多く、東側ほど少ない傾向が見られます。
・雪は低気圧が通過する際に「一気にまとまって降る」特徴があり、1日に50cm前後の「ドカ雪」となる頻度は、日本海側を上回る水準です。
・十勝地方では「日高山脈」が「寒気」をせき止めるダムのような役割を果たし、胆振・日高地方が雨の場合でも雪となる場合が多くなっています。
各地域ごとの傾向まとめ
十勝地方(十勝総合振興局管内)の気候について、これまで解説してきた気候の特徴・差を「各地域(自治体)」ごとに大まかにまとめると、以下のような形になります。
帯広市 音更町 芽室町 士幌町 幕別町 池田町 | ・平野部は雨が少なくよく晴れる「十勝平野」の典型的気候です。 ・夏場は晴れる場合気温が上がりやすく、「真夏日」日数は道内でも多めの傾向です。 ・雪は本別など十勝地方の東側よりはやや多くなります。 |
上士幌町 | ・山の斜面で雨雲が発達しやすいため、北側(山間部)へ行くと降水量が多くなります。 ・雪もぬかびら源泉郷など山間部で多い一方、平地は十勝地方でも雪が少ない地域です。 |
足寄町 本別町 | ・十勝地方で最も降水量が少ない地域です。 ・冬場の降水量は年によって「ほぼゼロ」の月があり、市街地の雪は十勝地方で最も少な目となります。 |
陸別町 | ・放射冷却が特に強まりやすく、国内(道内)では最も寒い地域です。 ・冬場は年によって-30℃を下回る最低気温を観測することがあります。 ・過去には「8月」でも5℃前後の最低気温が観測されたことがあります。 |
新得町 清水町 鹿追町 | ・東側または平野側は帯広などの気象条件と大きな差はありません。 ・西側、北側の山地に近づくほど「日本海側」からの気候的影響を受けやすく、冬は雪の頻度がやや増えます。 |
豊頃町 浦幌町 | ・沿岸部でも冷え込みは比較的厳しくなります。 ・雪は十勝地方でも最も少ない地域です。 |
中札内村 更別村 大樹町 | ・十勝平野中央部と比べ、降水量が増える傾向があります。 ・帯広方面と比べ雪が多くなりやすく、積雪1m以上も一般的な地域です。 |
広尾町 | ・海からの気流が入りやすく、例外的に降水量がかなり多い地域(帯広の倍程度)です。 ・冬場は雪が多く、海沿いながら1m以上の積雪も一般的です。 ・夏場は海からの風を受け、帯広方面ほど暑くなりません。 |
拠点都市である帯広市の気候については、上記の記事で別途解説しております。
十勝地方(管内)と札幌の気候を比較すると?
十勝地方の気候を、北海道の中心都市「札幌市」と比較すると、主な項目では以下のような違い・共通点が挙げられます。
・一貫して平均気温は札幌より低くなります。
・十勝平野中央部ほど「真夏日(最高気温30℃以上)」は札幌より多く観測されやすい傾向があります。
・冬場の冷え込みは比較にならない水準で、札幌と比べ20℃程度の気温差が生じるケースもあります。
・1年を通して見ると、十勝地方の「晴れやすさ」が目立ちます。
・冬は日本海からの雪雲が入らない十勝地方で「札幌の倍程度」の日照時間となる場合があります。
・夏は天候が逆転し、札幌の方が安定した天気になりやすい傾向です。
・雪の「降る頻度」や「降雪量」自体は札幌が大きく上回ります。
・十勝地方の西側ほど「最深積雪(積雪の深さ)」は余り変わらない場合があり、一度の「ドカ雪」で一気に雪を増やす十勝地方の特徴が見られます。
・十勝地方の東側へ行くほど、積雪が札幌より少なくなる傾向が強くなります。
道内各地方の気候については、それぞれ個別の記事において解説しております。