【釧路地方の気候】全体の傾向・季節や地域ごとの特徴は?

自然・気候

北海道の「道東」地域の太平洋側に位置する「釧路地方(釧路総合振興局管内)」。

一般には「釧路湿原」や「摩周湖」などの観光・冷涼な環境で知られ、長期滞在される方も多い地域です。

こちらでは、釧路地方の気候について、その全体的な特徴や季節ごと・各自治体ごとの大まかな傾向などを解説していきます。

釧路地方の気候「全体的特徴」

釧路地方の位置(出典:地理院地図・一部作図)

釧路地方は、北海道の道東地域の太平洋側に位置し、東側を根室地方・西側を十勝地方と接しています。

地形は比較的平坦な地域が目立ちますが、北側は火山地形の山地で、雌阿寒岳や摩周岳といった比較的標高の高い山が見られます。

観測地点平均気温降水量日照時間平均風速最深積雪
釧路6.7℃1080.1mm1957.6時間5.0m/s34cm
太田5.8℃1195.2mm1914.9時間2.9m/s61cm
標茶5.4℃1054.9mm1719.0時間1.8m/s59cm
川湯4.7℃962.2mm1514.2時間1.5m/s98cm
阿寒湖畔4.3℃1197.9mm1546.0時間1.7m/s120cm
年間の平年気象データ

広い網走地方には、16か所の観測地点がありますが、主要な観測地点の年間の気象データは上記の通りです。

釧路地方の気候面での全体的特徴としては、主に以下のようなポイントが挙げられます。

気候のポイント【その1】「太平洋の影響」

・釧路地方は、南側を太平洋に面しており、沿岸部ほど海からの気候的影響が大きい地域です。
・暖かい気流と冷たい海水温がもたらす「海霧」は代表的な現象です。
・海からの湿った気流を受け、早い時期から雨量が増えやすい傾向もあります。

気候のポイント【その2】「夏の天候不順」

・釧路地方は、広い範囲で夏の天候不順が目立ちます。
・要因は、温暖な傾向の夏は「海霧」に包まれやすく、冷夏の年はオホーツク海からの湿った気流の影響を受けて雲が広がりやすい点にあります。
・「よく晴れる夏」は少数派で、結果気温が低く「夏がない地域」と呼ばれることもあります。

気候のポイント【その3】「冬場の晴天(沿岸部)」

・沿岸部は夏の天気とは対照的に、冬場は雲が流れ込む頻度が極めて少なく「晴天」が長期間続きます。
・昼間の時間が短い時期でも「日照時間」が月200時間を超える場合があり、国内で見ても冬に最もよく晴れる地域と言えるでしょう。
・但し、内陸部にはこの傾向は当てはまりません。

春の気候

観測地点平均気温降水量日照時間最深積雪
釧路4.1℃251.0mm560.5時間24cm
太田3.4℃259.3mm536.1時間54cm
標茶3.5℃230.8mm493.2時間52cm
川湯2.7℃205.9mm450.5時間90-cm
阿寒湖畔2.2℃266.6mm460.3時間111cm
春の気象データ<3~5月の平均値または合計値>
気温

・根室地方と同様に、道内で最も春の気温が低い地域です。
・内陸部、山間部は厳しい冷え込みが残りやすく、4月に-10℃以下の最低気温が観測される場合もある一方、昼間の気温は5月以降比較的高くなります。
・海からの気流を受ける沿岸部は「冷え切った海水温」が上がらない影響で、昼間の気温がかなり低い状態が続きます。

天気

概ね晴れやすい天候です。
・但し、5月にかけて次第に天気が崩れる日も増えていきます。
・太平洋からの湿った気流の影響もあり、降水量が増えるペースは道内でも特に早く、5月には平年の雨量が月100mm以上となる場所が多くなります。

3月が積雪のピークとなるケースが目立ちます。
・低気圧が急発達する場合は沿岸部も含む全域で大雪となる場合がありますが、頻度は多くありません
・根雪は内陸部と山間部では概ね4月、海沿いの地域では3月まで残ることが多くなっています。
・オホーツク海からの寒気が入りやすい弟子屈方面を中心に、5月に入ってから雪が積もることもまれに見られます。

夏の気候

観測地点平均気温降水量日照時間
釧路15.5℃376.9mm363.3時間
太田15.1℃407.8mm369.7時間
標茶16.1℃375.1mm352.1時間
川湯16.1℃295.5mm355.6時間
阿寒湖畔16.1℃347.5mm394.2時間
夏の気象データ<6~8月の平均値または合計値>
気温

海に近い場所ほど気温が低くなります。
・暑い日の頻度は海沿い(釧路市街地周辺)が最も少なくなります。
・内陸側へ行くほど暑い日はやや増え、毎年平均数日の「真夏日(最高気温30℃以上)」が観測されています。
・海沿いは真夏でも最高気温20℃前後の日が多く「夏がない地域」とも言える状況です。

天気

・十勝地方および根室地方と同様、夏場の天候不順傾向が強い地域です。
・まれに月間日照時間が50時間台となる場合があるなど、日本海側の冬並みに「晴れにくい」場合があります。
・要因としては、「オホーツク海高気圧」が強い冷夏の年は北側から湿った気流が入りやすく、「太平洋高気圧」が強い温暖な年は「海霧」が発生しやすい点が挙げられ、「夏に天気が良くなる条件」は少ない状況となっています。
夏の雨量は比較的多めです。

秋の気候

観測地点平均気温降水量日照時間最深積雪
釧路10.7℃330.4mm488.5時間3cm
太田9.7℃396.7mm481.1時間4cm
標茶8.7℃334.6mm426.6時間4cm
川湯8.1℃305.3mm369.2時間8cm
阿寒湖畔7.4℃388.7mm345.0時間12cm
秋の気象データ<9~11月の平均値または合計値>
気温

・冬にかけて沿岸部と内陸部の気温差が広がっていく時期です。
・沿岸部は、夏に上がった海水温が「下がりにくい」ため、春~夏とは異なり他地域よりもやや温暖な傾向が見られます。
・内陸部は早い時期から冷え込みが厳しい傾向があります。

天気

秋の後半ほど天気は安定します。
・特に沿岸部では、10月以降晴れ間が一気に増えていきます。
降水量は9月がピークで、時に台風などの影響も受けて大雨となることもあります。

・初雪は内陸部では10月、沿岸部では11月に入ってから降る場合が多くなっています。
・秋の間は積雪は少な目で、沿岸部では積雪が一切ない年の方が多くなっています。

冬の気候

観測地点平均気温降水量日照時間最深積雪
釧路-3.6℃126.1mm543.9時間32cm
太田-4.7℃135.0mm523.1時間54cm
標茶-6.7℃117.8mm445.4時間53cm
川湯-7.8℃157.8mm337.4時間90cm
阿寒湖畔-8.6℃198.9mm312.6時間111cm
冬の気象データ<12~2月の平均値または合計値>
気温

・海沿いも含め非常に寒い地域です。
・内陸部の冷え込みは特に厳しく、まれに-30℃前後まで冷え込むこともあります。

天気

沿岸部は非常によく晴れる時期です。
・釧路など海沿いの観測地点では、真冬の日照時間が月200時間を超え、天候不順となる夏場の倍以上となる年があります。
・雲が入り込みやすい弟子屈、阿寒湖方面では晴れる頻度は半分近くに減ります。

道内では雪がやや少ない地域となっています。
・雪は釧路市街地周辺~厚岸湾の外側一帯で特に少な目です。
・北へ行くほど雪が増える傾向にあり、弟子屈方面や阿寒湖周辺では積雪1m以上もごく一般的です。

流氷

・かつては頻繁に釧路方面まで流氷が流れ込む時代がありましたが、近年はその頻度が急速に減少しており、21世紀以降は4回のみとなっています。

各地域ごとの傾向まとめ

釧路地方(釧路総合振興局管内)の気候について、これまで解説してきた気候の特徴・差を「各地域(自治体)」ごとに大まかにまとめると、以下のような形になります。

釧路市
釧路町
・沿岸部は釧路地方で最も冬場の気温が高く、雪も少ない地域です。
・一方、沿岸部では夏場の「暑い日」が極めて少なくなっています。
・阿寒湖畔周辺など山間部は雪が多く、冬場の降水量もやや増える傾向があります。
・内陸部は冷え込みが厳しい一方気温が上がりやすく、「真夏日(最高気温30℃以上)」も年数日程度見られます。
・釧路市内の旧音別町は白糠町の気象条件に近い環境です。
厚岸町
浜中町
・尻羽岬周辺は道内で最も夏の気温が上がりにくい地域で、雪も特に少ない地域です。
・沿岸部でも厚岸湾の内側に入ると冬の寒さはやや強まり、雪もやや増える傾向にあります。
白糠町・沿岸部も含め、釧路市街地と比べると冷え込みやすい環境です。
・雪は釧路市街地より多めの傾向があり、北へ行くほど増えていきます。
標茶町
鶴居村
・内陸のため、冷え込みがかなり厳しい地域です。
・雪は釧路市街地より多めの傾向があり、北へ行くほど増えていきます。
弟子屈町・非常に寒い地域です。但し、朝の冷え込みの強さは地形により差が見られます。
・釧路地方ではかなり雪が多い地域で、1m以上の積雪も頻繁に見られます。

拠点都市である釧路市の気候については、上記の記事で別途解説しております。

釧路地方と札幌の気候を比較すると?

釧路地方の気候を、北海道の中心都市「札幌市」と比較すると、主な項目では以下のような違い・共通点が挙げられます。

気温

・平均気温は釧路側が常に低めで、海沿いを含め例外はありません。
・海沿いでは春~夏の気温差がかなり大きくなります。
・札幌で暑い日も、釧路地方沿岸部では涼しい場合が大半です。
・内陸部では-30℃前後まで下がる場合があり、札幌とは比べ物にならない冷え込みが特徴です。

天気

夏は札幌の方が天気が良い傾向があります。
冬場は釧路側の天気が「圧倒的に良い」傾向があります。
・札幌では「海からの気流」がもたらす影響はやや限定されるため、釧路側とは気象条件は全く異なります。

海沿いほど札幌と比べ雪の量が少なくなります。
・弟子屈町や阿寒湖周辺など内陸部、山間部では札幌より積雪が多い場合もあります。但し、降水量は少ないため、雪が「効率的に積もる」特徴があると言えるでしょう。

道内各地方の気候については、それぞれ個別の記事において解説しております。