名寄市の「気候の特徴」とは?季節ごとの傾向などを解説【内陸部】

自然・気候

北海道「道北」地域の内陸側に位置し、冬の厳しい寒さで知られる「名寄市」。

こちらの記事では、名寄市の気候の特徴について、各季節の傾向・札幌との比較などを詳しく解説していきます。

名寄市の気候「全体的な特徴」

名寄アメダスの雨温図
降水量平均気温日照時間平均風速降雪量最深積雪
年間平年値1006.8mm5.8℃1367.8時間2.0m/s829cm109cm
平年値(1991年~2020年)

名寄市は、北海道の道北地域、名寄盆地と呼ばれる内陸部の平地を中心に広がる市です。

気候は晴れた日には地表の熱がどんどん奪われる「放射冷却」が非常に起きやすいことから、1年を通して昼間と夜・早朝の気温差が大きいという「内陸型」の典型的な気候的特徴を持つ地域で、冬場は極寒となります。

天候面を見ると、海から離れているため風も穏やかで、荒れた天気になることも少なくなっていますが、冬場は雪が多く、日本海から雲が流れ込みやすいため晴れ間が非常に少なくなるなど、寒い時期は気温だけではなく天候も比較的厳しい環境が続きます。また、オホーツク海側からの冷たく湿った空気の影響も受けやすく、夏にかけても晴れ間が少ない年が見られます。

市内全体を見た場合、ピヤシリスキー場等のある山間部ではより雪が多いといった一般的な差はありますが、名寄市は海に面しておらず、全域が内陸部のため同じ標高であれば気候の差はそれほど目立ちません。

世界的な気候区分としては、亜寒帯の「亜寒帯湿潤気候(Df)」に当てはまり、函館等一部を除く道内の大半と同じ区分となっています。

名寄市「季節ごとの気候」

【春の気候】急速に気温が上昇・3月までは雪が多い

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間積雪差合計
(降雪量目安)
最深積雪
3月-3.0℃2.0℃-9.1℃44.2mm116.2時間128cm103cm
4月3.8℃9.3℃-1.7℃45.5mm147.9時間33cm58cm
5月10.8℃17.5℃4.1℃60.6mm178.1時間なしなし
平年値(1991年~2020年)
3月の月最深積雪
1位151cm(2013年3月12日)
2位150cm(1987年3月16日)
3位145cm(1982年3月10日)
4位134cm(1994年3月11日)
5位132cm(2018年3月4日)

名寄市の春は、3月までは真冬に近い環境で、特に前半は最高気温0℃以下の真冬日となることも多く、朝晩も頻繁に-10℃以下となるなど、非常に寒い状況が続きます。雪もまだ多く、1日10cm以上のまとまった雪が降ることがあるほか、1年間の「積雪のピーク」は3月になる年も目立ちます。

一方で、気温の上昇ペースは比較的早く、元の気温が寒いことから春の間は朝晩に寒さが残りますが、5月になると最高気温20℃以上の日も見られるなど、気持ちの良いポカポカ陽気となる日も増えていきます。

雪は基本的に4月までで、積雪状態が続く「根雪」は雪の多い年は4月下旬まで、早く解ける年は4月の初め頃まで続きます。なお、オホーツク海側沿岸のように5月に雪が降ったり、昼間1℃台になるようなことはありません。

春の天気は概ね安定しており、雨量はそれほど多くならず、5月は1年で最も晴れやすい時期となります。

【夏の気候】昼と夜の気温差大・暑い日も多い

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間真夏日日数
6月15.6℃22.3℃9.6℃65.2mm159.7時間1.0日
7月19.5℃25.6℃14.4℃129.4mm148.7時間3.7日
8月19.9℃25.7℃15.1℃136.1mm142.0時間3.7日
平年値(1991年~2020年)
観測史上最高気温36.4℃(2021年7月28日)

夏の名寄市は、大きく2つの特徴を持つと言えます。

1点目は、海からの風が届きにくい内陸部特有の「暑さ」であり、名寄市は緯度の高さ・冬の寒さの割には比較的気温が上がりやすい地域となっています。

例えば釧路のように、「夏がない」と言われるほど涼しい地域も道内にはありますが、名寄は平均の最高気温でも25℃以上で、年に平均数日程度は最高気温30℃以上の「真夏日」がある地域です。エアコンが必要かどうかは別として、名寄は「夏がある」地域です。

但し、内陸部特有の暑さは、裏返せば夜になると急速にその熱が逃げて冷やされる「放射冷却」が起きやすい状況の裏付けでもあります。最高気温・最低気温の差は真夏でも15℃以上に達する場合があり、昼間30℃程度でも、朝晩は15℃程度のことも決して珍しいとは言えませんし、冷え込む日には10℃以下になることすらあります。

昼間が暑くても、夜や早朝には、日によっては「肌寒さ」を感じることもあるのが名寄の特徴と言えるでしょう。

2点目の特徴は、内陸部とは言え、距離的にも比較的近い「オホーツク海」からの影響を受けやすい点が挙げられます。夏場のオホーツク海では、「オホーツク海高気圧」と呼ばれる冷たく湿った空気をもたらす高気圧が発達する場合があり、年によっては北海道の特にオホーツク海側に近い場所ではぐずついた天気になりやすく、オホーツク海沿岸部から50kmほどの距離に位置する名寄も例外ではありません。

特に8月は秋雨前線の影響を受けやすい傾向もあるため、札幌など日本海側の地域と比べると晴れ間は少なくなりやすい傾向があります。

【秋の気候】冷え込みも雪も早い・日差しは急減

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪
9月15.2℃21.4℃9.9℃138.1mm139.4時間なしなし
10月8.3℃14.2℃3.1℃115.6mm109.9時間3cm2cm
11月1.5℃5.3℃-2.3℃108.5mm50.7時間104cm33cm
平年値(1991年~2020年)

名寄市の秋は、急速に気温が下がっていくことが大きな特徴です。

沿岸部では冷やされにくい海水温の影響を受け、秋は比較的温暖ですが、内陸部である名寄では、晴れた日には強い放射冷却が、寒気が流れ込んだ場合はその寒さをダイレクトに受け、結果として道内の平地では最も気温の下がり方が急な地域となっています。

最低気温で見ると、9月中から霜がおりるレベルの寒さになることがあり、10月以降は氷点下の冷え込みも次第に増えていき、11月にはほぼ毎日が氷点下で、北陸地方の真冬よりも寒いような気温が日常となり、本州の感覚では「冬」そのものとなります。

天候で見た場合、9月は秋雨前線の影響を受けやすく、まれに台風の影響等を受けて雨量がまとまるようなケースもある一方、10月以降はシベリアからの寒気(冬型の気圧配置)の影響を受け、天候も次第に「冬モード」へ変わっていきます。冬型の気圧配置が増えると雲に覆われる頻度が一気に増えるため、日照時間も急減し、11月には晴れ間が貴重なものになっていきます。

雪の便りも早く、10月中から雪が降ることも一般的で、11月には積雪がまとまり「根雪」が始まる年が多くなっています。大雪となるケースもあり、2021年11月24日には24時間で約60cmもの降雪が観測されました。

【冬の気候】全国で最も寒い「市」・雪も多い

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間積雪差合計
(降雪量目安)
最深積雪
12月-5.4℃-1.8℃-10.1℃83.1mm37.6時間225cm71cm
1月-8.6℃-4.2℃-14.7℃49.4mm58.6時間186cm93cm
2月-8.0℃-2.7℃-14.9℃38.7mm79.1時間147cm105cm
平年値(1991年~2020年)
積雪深日降雪量年間降雪量
観測史上最大の値151cm(2013年3月12日)74cm(2004年2月23日)1309cm(1987年)

名寄市の冬は、わかりやすく言えば「極寒で雪も多い」地域です。自治体の区分で「市」として見た場合、名寄市よりも寒い「市」はなく、「全国で一番寒い市」となっています。

気温は朝晩は-15℃以下も一般的で、特に冷え込む場合は-25℃以下になることがあります。冷え込みが極端なため、晴れた場合には空気中の水蒸気が直接凍って舞う「ダイヤモンドダスト」が比較的確認されやすい環境です。

昼間の気温も非常に低く、1月のデータを見ると、まれに「1か月の間一度もプラスの気温にならなかった」年があるほどです。

雪も比較的多い地域で、気温が低いことから降水量で見ると少ない量でも、降雪量としては比較的しっかり降るような「効率的な降り方」が特徴で、積もった雪はほぼ解けないため、積雪は1mを超える年が多くなります。

なお、寒さが強まると日本海の海水温も次第に下がるため、温度差による雪雲の発達が抑えられるようになります。その影響で、名寄では平均すれば12月が雪のピークで、それ以降は次第に雪の降る量が減る傾向が見られます。日照時間もそれに比例し、12月は晴れ間が非常に少ない一方、2月は倍以上と、冬の間でも晴れやすさにはかなり違いが見られます。

札幌と比較する

札幌と名寄「月平均気温」の比較
札幌と名寄「月降水量」の比較
年間平均気温冬の平均気温年間降水量年間降雪量年間最深積雪年間日照時間
札幌管区気象台9.2℃-2.3℃1146.1mm479cm97cm1718.0時間
名寄アメダス5.8℃(-4.4℃)-7.3℃(-5.0℃)1006.8mm(-139.3mm)829cm
(※)
109cm(+12cm)1367.8時間(-350.2時間)
平年値、括弧内は札幌との比較
※降雪量は計測方法が異なるため比較には注意が必要

名寄市の気候について札幌市との違いを見て行くと、主に冬場の違いが目立ちます。

気温を見ると、最高気温が上がりやすい夏場は、名寄は時に札幌よりも暑くなることもあるため、平均気温の差は小さめですが、冷え込みが強まる冬場は、都市化で冷え込みにくい札幌市との気温差は平均5℃前後とかなりの差が生じます。

降水量については、札幌の方が冬場の降水量はかなり多くなっており、これは海水温が南側の方が高く雪雲が発達しやすいこと・太平洋側を通る低気圧の影響を受けやすいこと・発達した雲の動きが札幌を向きやすいこと等が影響しています。但し、「雪の量」で見た場合は、低い気温で効率的に雪が積もる名寄は、札幌よりも多くなる場合がほとんどです。

日照時間は、冬場を中心に1年を通して名寄の日照時間が少な目であるため、冬場も含め比較的晴れやすい札幌との差が大きくなっています。

名寄市のある「上川地方」の気候については、上記の記事で別途解説しております。