美しい風景やテレビドラマによる知名度によって多くの人が訪れ、道内でも屈指の観光地として知られる富良野市。当ページでは、富良野市の気候について、各季節ごとの特徴・札幌市との比較等を詳しく解説・考察していきます。
富良野市の気候「全体的な特徴」
降水量 | 平均気温 | 日照時間 | 平均風速 | 降雪量 | 最深積雪 | |
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年間平年値 | 1032.1mm | 6.7℃ | 1496.2時間 | 1.8m/s | 628cm | 78cm |
富良野市は、地理的に道内でも最も海から遠い地域の一つであり、山に囲まれた内陸部に位置します。その影響で朝晩の気温差が大きく、冬は極めて寒くなる内陸型の気候(地上の熱がどんどん逃げる放射冷却が起きやすい)となり、気温面での特徴が特に目立ちます。
天候面では内陸に位置するため風もかなり弱く、日本海からの雪雲の流れ込みは沿岸に近い地域よりは少なくなるものの、太平洋側と比べると影響を受けやすく、秋から冬は晴れ間がかなり少なくなるほか、気温が低いため雪が降る量も毎年一定以上となります。
また、北海道を代表する山地である石狩山地(大雪山)・夕張山地に挟まれ、日高山脈からも距離が近いことから、山の斜面で発達した雨雲の影響をやや受けやすく、夏の終わり~秋の初め頃の雨量は道内にあるその他市と比べやや多い傾向も見られます。
市内全体を見ると、全域が山に囲まれた内陸部ということで、市内各地の気候差は標高の高さによるものを除いて大きくありません。市内には富良野アメダスに加え麓郷地区にも麓郷アメダスがありますが、標高が150mほど高い麓郷の方が1℃程度低い点を除くと、ほぼ同じようなデータを示しています。
富良野市「季節ごとの気候」
【春の気候】気温の上昇ペースが早い・5月は特によく晴れる
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 | 降雪量 | 最深積雪 |
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3月 | -2.2℃ | 2.7℃ | -7.8℃ | 49.8mm | 124.0時間 | 110cm | 71cm |
4月 | 5.3℃ | 10.9℃ | -0.2℃ | 55.4mm | 159.9時間 | 22m | 23cm |
5月 | 12.1℃ | 18.4℃ | 6.0℃ | 67.5mm | 190.5時間 | なし | なし |
過去最大の積雪深 | 119cm(2021年3月2日) |
春の富良野市は、時期による気候の差は極端に大きくなります。
3月は特に前半にかけてはまだ真冬寄りの気候で、最高気温0℃未満の真冬日も一般的で、低気圧の通過等により大雪となる年もあり、1年の積雪を見ると、3月の初めにピークを迎えることも少なくありません。積雪は、長期間続いた「根雪」が3月の後半以降急速に解け始めますが、年によっては4月に入ってからも少しの期間残る場合があります。
一方で、4月以降は急速に気温が上がり、内陸部ということで朝晩は寒い場合でも、昼間にはポカポカ陽気となる日が増えていきます。山に囲まれた地域ということで、山を乾いた風が吹き下ろす「フェーン現象」が起こる場合もあり、5月には最高気温30℃以上の真夏日が観測されたケースもあります。
天候は1年の中で最も安定した時期で、降水量も最も少なく、日照時間は特に5月に大きく増え、1年の中で最も日差しが多い時期になります。
【夏の気候】道内では特に昼間が暑い地域・雨は次第に増える
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 | 真夏日日数 |
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6月 | 16.8℃ | 22.9℃ | 11.0℃ | 64.5mm | 176.8時間 | 1.5日 |
7月 | 20.6℃ | 26.2℃ | 16.0℃ | 116.0mm | 171.8時間 | 4.7日 |
8月 | 20.8℃ | 26.3℃ | 16.3℃ | 168.6mm | 154.9時間 | 5.2日 |
夏の富良野市は、内陸部の気候らしく朝晩の気温差が比較的大きい状況が続きます。
気温を詳しく見ると、昼間の気温は熱が溜まりやすい地形のため上がりやすく、最高気温30℃以上の真夏日を観測する日数は道内では帯広とほぼ同じで、最も多い地域となっています。一方で、朝は真夏でも10℃前後まで冷え込むことがあり、結果として平均気温は特段高い数字にはなっていません。
天候は、道内では夏場の日照時間が多い地域であり、オホーツク海からの冷たい気流の影響を受ける典型的な「冷夏」の場合でも、他地域ほど極端な日照不足にはなりません。
但し、富良野市は周辺に石狩山地(大雪山)・夕張山地・日高山脈といった規模の大きな山地があり、山の斜面沿いで雨雲がやや発達しやすいことから、結果として8月の雨量は道内の市としては多めとなります。なお、山沿いのため夏場の「夕立」もイメージされるかもしれませんが、可能性はあるとしても、実際に晴れた日の午後に雷雨となるケースは極めてまれとなっています。
【秋の気候】急速に強まる冷え込み・天候も大きく変化
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 | 降雪量 | 最深積雪 |
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9月 | 16.1℃ | 21.9℃ | 11.1℃ | 147.3mm | 140.2時間 | なし | なし |
10月 | 9.2℃ | 14.9℃ | 4.1℃ | 106.8mm | 121.9時間 | 2cm | 2cm |
11月 | 2.1℃ | 6.4℃ | -2.1℃ | 104.2mm | 67.7時間 | 72cm | 23cm |
秋の富良野市は、気候の変化が慌ただしい季節です。
気温はほぼ一貫してどんどん下がっていき、9月の終わりには霜がおりるような気温になる年もあるなど、道内の海沿い・都市部と比べ寒さを感じる時期が早くなっています。但し、9月の時点では昼間は暑くなることもあり、1日の気温差が最大15~20℃程度まで広がる日も見られます。
11月以降は毎日が氷点下の厳しい寒さとなり、秋というよりは冬に近い気温となります。雪も道内では早い方で、年によっては10月に雪化粧するほか、11月には20~30cm程度のある程度まとまった積雪となり、根雪の期間が始まることもあります。
天候の流れを見ると、秋の初めについては、秋雨前線の影響を受けやすく比較的雨が多い時期で、まれにまとまった雨量となるケースがあります。その後は次第に季節風の影響を受けた雨(雪)が降りやすい傾向に変わり、結果として降水量が大幅に減ることなく冬を迎えます。また、日照時間は季節風の影響で雲が広がりやすくなる11月には急減し、晴れ間は非常に貴重な存在に変わっていきます。
【冬の気候】全国で3番目に寒い「市」・雪は平均的に降る
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 | 積雪差合計 | 最深積雪 | 真冬日日数 |
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12月 | -5.1℃ | -1.2℃ | -10.2℃ | 71.2mm | 45.7時間 | 159cm | 46cm | 20.1日 |
1月 | -8.3℃ | -3.7℃ | -14.4℃ | 44.3mm | 64.3時間 | 145cm | 64cm | 26.0日 |
2月 | -7.4℃ | -2.3℃ | -14.0℃ | 36.5mm | 78.5時間 | 121cm | 73cm | 20.7日 |
積雪深 | 月間降雪量 | 年間降雪量 | |
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観測史上最大の値 | 113cm(2021年3月2日) | 291cm(1982年12月) | 975cm(1986年) |
冬の富良野市は、非常に寒いことが大きな特徴で、日本国内にある「市」としては、名寄市・士別市に次いで3番目に平均気温が低い都市となっています。
最低気温は晴れた場合には-20℃前後まで冷え込むことも多く、2020年2月9日には-31.9℃の最低気温記録が観測されたことがあります。極寒の地ということで、空気中の水蒸気が直接凍って舞う「ダイヤモンドダスト」も比較的確認されやすい環境です。
雪については、海から遠いため沿岸部一帯ほどのまとまった積雪にはならない一方、太平洋側と比べると雪雲が入りやすく、結果として毎年平均して80cm程度の雪がコンスタントに積もります。気温が低く雪が積もりやすいことから、年ごとの積雪差が大きくならないことも特徴で、暖冬の年に雪が一気に減る海沿いと比べ、いつでも一定の雪が見られる地域と言えるでしょう。
天候で見た場合、雪が最も降りやすいシーズンは12月で、これは海水温が高い時期は日本海上で雪雲が発達しやすく、結果として内陸の富良野まで雪雲が届きやすい点が影響しています。12月は雲に覆われる時間も長く、晴れ間は非常に貴重な存在です。
一方で、海水温が下がる1月以降は降水量がどんどん減り、晴れる頻度もやや増加していきます。但し、気温が低いため、降水量の差ほど降雪量の差は大きくなりません。
札幌と比較する
年間平均気温 | 冬の平均気温 | 年間降水量 | 年間降雪量 | 年間最深積雪 | 年間日照時間 | |
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札幌管区気象台 | 9.2℃ | -2.3℃ | 1146.1mm | 479cm | 97cm | 1718.0時間 |
旭川地方気象台 | 6.7℃(-2.5℃) | -6.9℃(-4.6℃) | 1032.1mm(-114.0mm) | 628cm(※) | 78cm(-19cm) | 1496.2時間(-221.8時間) |
※降雪量については観測手法が異なるため、単純な比較は不可能(富良野の方が多く出やすい)
富良野市の気候を札幌市の気候と比較した場合、内陸部と比較的海に近い地域の差、また小さな街と都市化が極端に進んだ地域の差がわかりやすく示されます。
気温を見ると、冬場の気温差が極端に大きくなり、春から夏は差が少なくなります。これは、都市部であり「ヒートアイランド現象」の影響で冷え込みにくい札幌と、強い「放射冷却」で冷え込みが厳しい一方、気温が上がる時期は熱が溜まりやすくなる富良野の差を反映したもので、夏場は真夏日・猛暑日となる可能性は富良野の方が高く、内陸部の極端な寒暖差が浮き彫りになります。
降水量については、札幌では日本海からの雪雲が流れ込みやすい冬場に特に多くなり、富良野では山地が近く雨がやや増えやすい夏場に特に多くなります。なお、日照時間は降水量がそれほど増えない冬場に富良野で少なく、雪が降りやすいはずの札幌でむしろ多いという特徴も見られます。
雪のデータを見ると、富良野の方が降雪量が多く見えますが、これは計測方法の特徴によるもので、必ずしも富良野は札幌より雪がよく降る地域とは言えません。但し、気温が低いため、一度積もった雪は富良野の方が残りやすい環境です。
富良野市のある「上川地方」全体の気候については、上記の記事で別途解説しております。