北海道の「気候の特徴」とは?季節ごとに詳しく解説【北の大地】

自然・気候

こちらでは、北の大地「北海道」の気候について、全体的な特徴や季節ごとの傾向など「基本中の基本」とも言える内容のみをピックアップして詳しく解説していきます。

大半が「亜寒帯」の寒冷地・地域差も大きい

札幌の雨温図
旭川の雨温図
釧路の雨温図

北海道は全国で最も大きな自治体であり、東西・南北400キロ以上の幅を持ち、地理的にも日本海側・オホーツク海側・太平洋側の主に3つの区分に分けることが可能であるなど、決して一つの括りで気候を捉えることは出来ません。

「亜寒帯」の気候区分にあたるように、とにかく「寒冷」であるというのはどの地域でも当てはまります。但し、内陸でマイナス30℃単位の気温になることがある一方、太平洋側の沿岸部では極端な冷え込みにはならない場所もあるなど寒さの程度には幅があります。

降水量は一部の山地を除き全体的にそれほど多くはなく、特にオホーツク海側は全国的に見て最も雨量が少ない地域となっていますが、道南・日高山地周辺では時折かなりの大雨になることもあります。

地域差が特に大きいのは冬の雪の量であり、雪は日本海側では多い一方で太平洋側の一部では冬でも積雪がほとんどない場合もあります。日照時間についても地域差が大きく、特に太平洋側沿岸部では春以降「海霧」に包まれる日も多く、気温が上がりにくいという特徴も見られます。

北海道「季節ごとの気候」

【春の気候】訪れは遅い・3月は雪のピークになることも

北海道の春の訪れは、日本の最北に位置する以上、時期的に最も遅いタイミングでやってくるという特徴があります。

特に3月はまだ真冬といって良いほどの寒さであり、冬型の気圧配置がゆるむタイミングで低気圧が通るなどして、道東地域や道南地域など主に太平洋側寄りの地域では下記のように「雪のピーク(最も降雪量の多いシーズン)」は春先にやってくることが目立ちます。

都市最多降雪量を観測した月
釧路1984年3月(合計127cm)
根室2014年3月(合計113cm)
室蘭1973年3月(合計102cm)
苫小牧1978年3月(合計96cm)
都市過去最多の積雪量
帯広177cm(1970年3月17日)
富良野110cm(2021年3月2日)
苫小牧77cm(1978年3月11日)

4月になると寒さや雪の頻度は一気に減っていきますが、オホーツク海側や太平洋側の一部ではまとまった雪となることが時に見られるほか、これまで積もった「根雪」がまだ大量に残っているため、内陸部や山間部ではまだ「雪国」そのものといった光景が広がります。

本格的な春らしさは5月になってからであり、新緑の芽生えや雪解けが一気に進み、場合によっては汗ばむ陽気となることも増えていきます。

特に近年では汗ばむ陽気を越えて「猛暑」となることが道東地域・オホーツク海側の地域であり、「フェーン現象(南からの乾いた熱風が吹き込む)」が発生することで、40度近い「観測史上最高気温」が5月に観測されるという少し異常な現象も起きています。

太平洋の高気圧に沿って南から暖かい気流が流れ込んだ2019年5月26日には、真夏でも観測したことがないような「観測史上最高気温」が観測されました。

佐呂間では39.5℃とほぼ40度近い気温、その他にも北見38.1℃・女満別37.7℃紋別37.0℃など、軒並み猛暑日となりました。

なお、降水量は日本海側では春に最も少なくなる一方、低気圧や湿った気流の影響などを受けやすい太平洋側では、春から次第に増えていく傾向が見られます。

【夏の気候】梅雨はない?涼しさに地域差あり

北海道の夏は、一般に気温がそれほど上がらず「過ごしやすい=避暑地」的イメージが持たれることが多くなっています。実際に気温は本州南部と比べかなり抑えられ、札幌などの都市部でも最高気温30度以上の「真夏日」となる頻度は少なくなっています。

また、根室・釧路など太平洋側の沿岸部では南からの湿った風が「海霧」を発生させることで5月~8月にかけては霧に包まれる日も多く、気温は上がりにくい上に日照時間も少ないなど、見方によっては「夏のない地域」と言えるような気候も見られます。

都市6~8月の霧日数(平年値)
根室51.7日(全体の半分以上)
釧路47.3日(全体の半分程度)
都市8月の日照時間(平年値)
帯広125.2時間
根室124.6時間
釧路117.6時間
札幌168.1時間

但し、気温については地域差が大きく、春と同様に南風が吹き込む「フェーン現象」が発生することがあるオホーツク海側では、猛暑日になることもしばしば見られます。

「梅雨」については、梅雨前線の影響は本州までがメインで北海道では目立たないとされており、6~7月の雨量はかなり少なく、一般に「梅雨のない地域」とされています。一方で雨量のピークは8~9月頃となる場所が多く、梅雨前線とも秋雨前線とも言えそうな前線が停滞することである程度雨がまとまることもあります。

【秋の気候】急激な気温低下・台風の影響も

秋の北海道は、基本的にはどんどん季節が進んでいき、11月には冬らしい気候へと移り変わっていくという形になります。

気温は9月の時点から内陸部や山間部では霜や氷がおりる冷え込みとなる場合もあり、10月終わりには平地でも雪の便りが聞かれるようになっていきます。

本格的な寒さ・雪は11月からで、近年は雪の降り出しが遅くなる傾向もありますが、早い場合11月中から50センチ単位のまとまった雪が平地(岩見沢など雪が多い地域)でも見られる場合があります。

近年の場合、2016年に4つもの台風が北海道に接近または上陸し、大雨などで道南・道東・空知方面を中心に甚大な被害が発生しました。2021年にバス転換されたJR日高本線の廃線が決定する大きなきっかけにもなっています。

紅葉は日本で最も早く見頃を迎える地域で、大雪山など標高の高い場所では概ね9月の初め頃から、定山渓など札幌周辺の定番スポットでも概ね10月の初め頃から見頃となり、首都圏で残暑が残る時期には既に紅葉シーズンに近づいている場合があります。

【冬の気候】極寒=雪と氷の世界・積雪量は地域差大

冬の北海道は、極寒の地という名にふさわしく本州南部とは比べ物にならない寒さが続きます。上川方面や十勝方面など「放射冷却」が起きやすい内陸では、朝の気温がマイナス30℃程度まで下がっていわゆる「ダイヤモンドダスト」が発生することもあり、札幌の市街地を含め冬の間は長期間雪に覆われますので、北海道=雪と氷の世界というイメージは決して誇張ではありません。

一方で、積雪の量は地域によりかなりの差があります。道内で雪が多いのは「冬型の気圧配置」で季節風の影響を強く受ける日本海側寄りの地域で、平地では札幌周辺や岩見沢方面などの石狩地方でもメートル単位の雪はごく当たり前です。

しかしながら、「冬型の気圧配置」で雪雲が流れ込みにくい太平洋側では積雪量が少ない傾向が顕著で、特に苫小牧・室蘭・帯広・釧路・根室方面など道東・道南地域の一部は冬の前半を中心に積雪がほぼ見られない場合があります。なお、オホーツク海側は低気圧の影響を受けやすいため、太平洋側よりは早い時期から雪が降りやすい環境です。

都市最深降雪量の平年値
岩見沢120cm
札幌97cm
旭川89cm
稚内72cm
帯広71cm
網走63cm
函館45cm
釧路34cm
苫小牧31cm
根室34cm
室蘭26cm
都市冬の平均気温(12~2月の平年値)
旭川-5.7℃
帯広-5.5℃
網走-4.3℃
岩見沢-4.1℃
釧路-3.6℃
稚内-3.5℃
苫小牧-2.6℃
根室-2.5℃
札幌-2.3℃
函館-1.4℃
室蘭-0.9℃

先述したように、道東や道南の沿岸部を中心に雪のピークは「春先」となることも多いなど、北海道といっても冬の雪の降り方は様々で、北海道だから必ずこうなる。といったようなことはなく、とても大きな地域差があることを確認しておく必要があります。

北海道の気候トピック

流氷と気候の関係

北海道はオホーツク海側には毎年「流氷」が流れ込んで着岸することで知られています。

流氷の存在は、単に海面が氷で覆われるというだけでなく、実際の気候にも影響を与えるとされています。

具体的には流氷が多いと気温がより下がりやすくなる(海水による気温上昇効果がなくなる)・水蒸気が供給されないため晴れやすくなる・一部の場合では大雪をもたらす(気圧と風の関係)など、流氷の面積や有無は冬の北海道の気候(主にオホーツク海側)を左右する存在となっているのです。

北海道は「最も雪の多い地域」にあらず

日本で一番寒い場所だから、北海道は雪も最も多いと思われることも多いですが、北海道=日本一の豪雪地帯という訳ではありません。

確かに北海道日本海側の雪は人が住む場所でも1~2メートル単位とどっさり降りますが、山形・新潟県の山間部のような3~4メートル単位の雪は基本見られず、「雪は多いけど、一番とは言えない」というのが正しい理解と言えます。

蝦夷梅雨

北海道は一般に「梅雨がない」とされていますが、北海道特有の用語として「蝦夷梅雨」という単語がしばしば用いられます。

「蝦夷梅雨」にはっきりした定義はありませんが、一般に6月頃にオホーツク海側から湿った冷たい空気が流れ込み、曇りや小雨が続く天気を指す意味で用いられることが多く、本州で言う所の「梅雨」とは異なる原因と言えます。

蝦夷梅雨という言葉については、上記の記事で別途解説しております。

夏のない地域?

北海道の夏は、そもそもしのぎやすい気温でオホーツク海側など一部を除き猛暑にはならないことが多い地域です。

先述したように、釧路・根室など太平洋側沿岸部は夏場に「霧」に覆われる日が大変多く、気温が上がらずジメジメした気候が続く傾向があります。

真夏日になることはごくまれで平均気温は20℃以下。半袖を着る期間はわずかかそもそも着ない。といった環境で、道東の一部は日本で唯一はっきりした夏がない平地と言うことも可能かもしれません。

道内各地方の気候については、それぞれ個別の記事において解説しております。