帯広市の「気候の特徴」とは?季節ごとの傾向などを解説【十勝平野】

自然・気候

日本の農業生産の要でもあり、地理的には十勝平野の中央・道内では太平洋側寄りに位置する「帯広市」。

こちらのページでは、帯広市の気候の特徴について、各季節ごとの特徴や札幌市との比較等を詳しく見て行きたいと思います。

帯広市の気候「全体的な特徴」

帯広測候所の雨温図
降水量平均気温日照時間平均風速降雪量最深積雪
年間平年値919.7mm7.2℃2020.1時間2.2m/s198cm71cm

帯広市は、北海道内最大の農業地域と言ってよい「十勝平野」の中央部にある拠点都市で、地理的には道内の太平洋側、日高山脈の東側・石狩山地の南側にあたります。

気候の特徴は、平野部・内陸部の気候的特徴と、海や周囲の山地から受ける気候的影響などが入り混じりますが、全体としては四季の道内では穏やかで安定した傾向が強い地域です。

気温差は大きな特徴の一つで、平野部の気候らしく冬は寒く、夏は比較的暑くなり、昼と夜・早朝の寒暖差が大きくなりやすい傾向が見られ、都市部であっても-20℃以下の冷え込みになるような地域です。

天気については、「十勝晴れ」と言われる冬場等の乾燥した長期間の晴天が大きな特徴である一方、太平洋からの湿った気流・オホーツク海からの冷たい空気の影響を受けやすいこともあり、夏場は1年の中で最も天気がぐずつきやすい時期となります。

なお、天気は全体的には安定する地域ですが、主に秋~冬~春にかけては低気圧が発達する中で寒冷前線が通る場合、まれに日高山脈の影響で「日高おろし」と呼ばれる暴風が吹くことがあります。

市内全体を見ると、市街地は北東側の端にあり、日高山脈にかけて細長く伸びる区域を持っています。人が住んでいない山間部では降水量の多さや雪の多さ等、市街地とは全く違う気候になり、平野部でも標高がやや高く山に近い広野地区等は降水量が増えやすく、冬の雪も1m以上となる頻度が増えるなど、一定の違いが見られます。

帯広市「季節ごとの気候」

【春の気候】前半ほど天気は安定・大雪と厳しい暑さが同居する季節

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪雪日数
3月-0.4℃4.8℃-5.4℃43.8mm217.9時間36cm57cm16.4日
4月6.0℃12.2℃0.8℃60.1mm192.9時間9cm9cm9.1日
5月11.6℃16.2℃6.2℃84.7mm188.8時間1cm1cm0.4日
平年値(1991年~2020年)
積雪深日降雪量
過去最大の値(春期間)177cm(1970年3月17日)102cm(1970年3月16日)
観測史上最高気温38.8℃(2019年5月26日)
帯広の桜
開花日5月2日
満開日5月5日
標本木は「エゾヤマザクラ」

春の帯広市は、「差が大きい」ことが気候の特徴と言えます。

3月の段階では、まだ真冬のような寒さ・-10℃以下の冷え込みも珍しくなく、雪も太平洋沿岸等を低気圧が発達して通過する場合「ドカ雪」となることがあり、積雪のピークが3月になる年もあります。

過去最大の降雪量は、1970年の3月16日に降った「102cm」。北海道では1日1m雪が降ることは基本的にほぼありませんが、帯広は道内の平地で唯一その記録が残る地域となっています。

一方で、4月以降は気温がどんどん上がります。内陸のため朝は寒さを感じることも多いですが、昼間の気温は5月以降、道内で見ても特に高い地域となります。

特筆すべき気象条件としては、日高山脈を越えて風が吹き込む場合、既に比較的暖かい空気が、乾燥した山の上から吹き下ろすことで更に温度を上げる「ドライフェーン」と呼ばれる現象が起きやすく、特に5月は2年に1回くらいの頻度で最高気温30℃以上の「真夏日」が観測され、2019年には38.8℃という異常高温となった記録もあるなど、暑い日が見られるようになります。

桜については、太平洋側ということで咲く時期は道内ではそれほど遅いとは言えず、札幌と概ね同じくらいの時期に開花・満開を迎えます。

【夏の気候】1年で最も晴れにくい・道内では暑くなりやすい

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間真夏日日数霧日数
6月15.2℃21.3℃10.8℃81.1mm148.2時間1.4日7.0日
7月18.9℃24.3℃15.1℃107.1mm121.9時間4.4日6.6日
8月20.3℃25.4℃16.5℃141.3mm125.2時間5.3日7.2日
平年値(1991年~2020年)
近年の「日照時間が少ない月」
1位74.7時間(2019年7月)
2位81.0時間(2017年8月)
3位84.1時間(2001年7月)
4位86.2時間(2005年7月)
5位86.3時間(2002年8月)
21世紀以降の記録

夏の帯広市は、良く晴れることで有名な十勝平野一帯の1年の中では例外的に、「天気がぐずつきやすい」傾向が強い時期です。

要因としては、太平洋からの湿った気流の影響を受けて雨や曇りの頻度が増える状況、オホーツク海側から冷たい空気が流れ込みどんよりとした天気になる状況、また海からの気流が「霧」を引き起こして十勝平野の内部まで入る状況など複数挙げられます。これらは影響が小さい年・大きい年の差が激しいため、夏でも比較的よく晴れる年と、かなり日照時間が少ない年の違いが大きくなります。

過去の日照時間を見ると、かなりの日照不足と言える月100時間未満となる月が、2年に1回程度の頻度で夏場に見られ、特に7月・8月は日照不足になりやすく、湿った曇り空のイメージが強いオホーツク海側と比べても、その「晴れにくさ」は突出しています。

ネット上では、十勝平野=夏もよく晴れるイメージで様々な解説などが行われている場合がありますが、単純にデータを見ると、道内の中でも夏場の晴れが少ない地域と言わざるを得ないため、そのような理解は適切ではありません。

なお、気温は「晴れにくい」中でも「晴れるタイミング」はあるため、その際に春の項目で述べた日高山脈からの「ドライフェーン」現象が発生しやすいことで、結果北海道内では特に暑い地域となります。最高気温30℃以上の真夏日は年間10日以上、猛暑日も毎年平均1回程度は観測され、道内ではエアコンの必要性が最も高い都市と言える状況です。

【秋の気候】前半はやや雨が多い・冷え込みは早い

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪雪日数
9月16.9℃22.0℃12.7℃140.2mm137.8時間なしなしなし
10月10.3℃15.9℃5.3℃85.7mm167.6時間なしなし1.2日
11月3.5℃8.4℃-1.1℃54.2mm168.2時間10cm7cm9.8日
初霜初氷初雪初積雪(1cm以上)
平年値10月11日10月15日11月1日11月24日

帯広市の秋は、それほど大きな特徴があるとは言えませんが、大まかには「次第に天候が良くなる季節」と言えます。

秋の序盤、特に9月は秋雨前線の影響を受けやすく、台風の影響など太平洋からの湿った気流が入りやすい状況となった場合、まれにまとまった雨になることもあります。

但し、台風の接近自体は北海道のため多くはなく、過去の風の記録を見ても、道内の他地域と比べても台風による「風の影響」は比較的少ない地域と言えます。

気温は内陸部のため温暖な海の影響を受けにくく、結果として冷え込みは比較的早く進みます。9月には肌寒さを感じ、10月には氷が張るような寒さになり、11月には毎日が氷点下の冷え込みとなることが基本で、道内の太平洋側の都市部では最も寒さを感じやすい地域と言えます。

雪については、帯広では日本海側からの雪雲の影響をほぼ受けないため、11月の雪は平均すると少な目です。2015年のように11月中から40cmもの積雪が観測されたこともありますが、積もらずに秋を終える年も目立ちます。

【冬の気候】よく晴れる季節・降る量に対して積雪は多め

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪雪日数
12月-3.8℃1.0℃-8.9℃52.3mm172.0時間51cm36cm13.6日
1月-6.9℃-1.5℃-13.0℃40.5mm188.2時間52cm57cm13.8日
2月-5.7℃-0.2℃-12.0℃28.8mm191.5時間37cm63cm14.8日
平年値(1991年~2020年)
月間降雪量積雪深日降雪量年間降雪量
過去最大の値186cm(1953年1月)177cm(1970年3月17日)102cm(1970年3月16日)526cm(1970年)

帯広市の冬は、昼間の時間が短くなることを考慮すると、1年で一番よく晴れやすい時期で、すっきりと乾燥した「とかち晴れ」が続きやすく安定した天候が特徴と言えます。

海から離れた平野部のため、熱がどんどん逃げていく「放射冷却」も起きやすく、市街地でありながら-20℃以下に冷え込むこともあるなど、道内の比較的規模の大きな都市としては、旭川・北見に次ぐ寒い都市と言える状況です。

雪は、日本海側で雪をもたらす「冬型の気圧配置」の際に積もるケースは少なく、基本的には長い晴天期間の狭間に太平洋側等を低気圧が通る場合に、低気圧自体の雲が掛かってまとまった雪を降らせるケースが大半です。

低気圧は通常温暖な空気をもたらすため、例えば海から暖かい空気が入る日高・胆振方面では雨やみぞれになりやすい一方、帯広を含む十勝平野は、日高山脈が「寒気」のダムとして機能するため、結果他の地域では雪にならない条件でも、帯広ではまとまった雪になるケースが少なくありません。

雪は一度に降る量が多い特徴があり、数年に1回程度1日40cm以上のかなりの大雪となり、1日20cm以上のまとまった雪で見ると多くの年で複数回観測されています。降った後は晴天と強い冷え込みが続くため、積もった雪は引き締まり、結果としてなかなか解けることがなく、次の雪まで期間が長い場合でも残りやすいため、降る雪の量に対し積雪の量がかなり多い特徴も持っています。

札幌と比較する

札幌と帯広「月平均気温」の比較
札幌と帯広「月降水量」の比較
年間平均気温冬の平均気温年間降水量年間降雪量年間最深積雪年間日照時間
札幌管区気象台9.2℃-2.3℃1146.1mm479cm97cm1718.0時間
帯広測候所7.2℃(-2.0℃)-5.5℃(-3.2℃)919.7mm(-126.4mm)198cm(-281cm)71cm(-26cm)2020.1時間(+302.1時間)
平年値、括弧内は札幌との比較

帯広市の気候を札幌市と比べると、太平洋側・日本海側の差が大きく際立つ形となります。

気温を比較すると、札幌市は大都市のため「ヒートアイランド現象」の影響を受けやすく、朝の冷え込みが弱いため結果として平均気温では帯広の方が低く、大きな差が生じます。また、夏場は「暑い日」になる可能性は帯広の方が高いにも関わらず、札幌の方が天気が良い傾向があり、朝の気温も高めのため、結果として帯広の方がやはり低くなります。

降水量は、冬場に日本海から雪雲が流れ込む札幌と、春の後半~夏にかけて太平洋からの湿った気流などで雨が増えやすい帯広の違いがありますが、冬場の降水量の差が大きいため、年間では帯広の方が降水量が少ない地域となります。

雪はやや特徴的で、札幌と帯広では倍以上の降雪量の差がある一方、積雪の量では差がそれほど開かず、気温が低い上一度に大雪となることが多い帯広の「効率的な積もり方」がはっきり分かる形になっています。また、日照時間は冬場の差が非常に大きいため、夏場には晴れやすさが逆転するものの、帯広の方が多い結果となっています。

帯広市のある「十勝地方」の気候については、上記の記事で別途解説しております。