北海道道東地域の太平洋沿岸に位置し、日本で最も東側に位置する「人口10万人以上の都市」である一方、一般には「夏の涼しさ」でも有名な釧路市。
当ページでは、釧路市の気候の特徴について、各季節ごとの傾向・札幌市との比較等を詳しく解説・考察していきます。
釧路市の気候「全体的な特徴」
降水量 | 平均気温 | 日照時間 | 平均風速 | 降雪量 | 最深積雪 | |
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年間平年値 | 1080.1mm | 6.7℃ | 1957.6時間 | 5.0m/s | 127cm | 34cm |
釧路市は、北海道の中では道東地域の太平洋側に位置します。気候は海が近いため海洋性の気候と言える特徴を持っており、特に気温は海水温の影響を強く受け、海水が冷やされた春~夏は内陸部よりも低く、逆に水温の低下が遅い秋は内陸部よりも高い傾向がはっきり見られます。
天候も海からの気流の影響を受けやすく、春の終わり~夏にかけては「海霧」に沿岸部一帯は覆われる頻度が上がるほか、雨も道内では多い地域となります。但し、日本海からの雪雲などの影響をほぼ一切受けず、秋の後半~春先にかけてよく晴れるため、年間全体で見ると必ずしも天気が悪い傾向のある地域ではなく、むしろ道内では「最も晴れやすい地域」の一つとなっています。
なお、市内は市街地は海から近いものの、中心部から50km前後離れた阿寒湖・雄阿寒岳・雌阿寒岳一帯までが市内に含まれます。内陸部では海の影響を受けにくいため、冷え込みが極端に強まり雪も増える傾向が強く、山間部では1m以上の積雪も一般的であるなど、市内でも場所によってかなり気候の差がある点は確認しておく必要があります。
釧路市「季節ごとの気候」
【春の気候】気温が上がらず寒い時期・天候は次第に変化
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 | 降雪量 | 最深積雪 | 雪日数 | 霧日数 |
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3月 | -0.4℃ | 3.3℃ | -4.2℃ | 55.9mm | 200.8時間 | 31cm | 23cm | 15.1日 | 4.0日 |
4月 | 4.0℃ | 8.0℃ | 0.7℃ | 79.4mm | 182.2時間 | 7cm | 5cm | 9.8日 | 8.7日 |
5月 | 8.6℃ | 12.6℃ | 5.4℃ | 115.7mm | 177.5時間 | 0cm | 0cm | 1.4日 | 12.3日 |
積雪深 | 月間降雪量 | |
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観測史上最大の値 (春シーズン) | 123cm(1939年3月9日) | 127cm(1984年3月) |
釧路の桜 | |
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開花日 | 5月16日 |
満開日 | 5月19日 |
釧路市の春は、端的に言えば「気温が低い・上がりにくい」時期です。
3月まではまだ冬の装いであり、雪は低気圧が通りやすくなる影響で、3月になってからまとまって降る年もあり、過去最も多い積雪・月間降雪量はいずれも3月の観測となっています。
4月以降は雪が積もる可能性はかなり低くなりますが、気温の上昇は鈍く、4月で首都圏の真冬並みより少し寒い位、5月で九州南部の真冬並みと同じくらいの気温と、本格的な春らしい陽気は5月の半ば以降、日本で最も遅く(平年日の場合)桜が開花してからとなります。
天候は、3月~4月は概ね晴れやすい傾向がありますが、道内の多くの地域と比べ雨が増える時期が早く、5月には既に平年の月間降水量は100mmを超えます。また、夏場に影響を及ぼす「海霧」も5月から観測される頻度が増え、夏にかけて晴れ間(日照時間)は次第に減っていきます。
【夏の気候】海霧が多く晴れにくい・とても涼しい
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 | 霧日数 |
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6月 | 12.2℃ | 15.8℃ | 9.5℃ | 114.2mm | 126.8時間 | 15.9日 |
7月 | 16.1℃ | 19.6℃ | 13.6℃ | 120.3mm | 118.9時間 | 16.2日 |
8月 | 18.2℃ | 21.5℃ | 15.7℃ | 142.3mm | 117.6時間 | 15.2日 |
近年の「日照時間が少ない月」 | |
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1位 | 58.0時間(2005年7月) |
2位 | 71.4時間(2001年7月) |
3位 | 77.7時間(2018年7月) |
4位 | 84.1時間(2019年7月) |
5位 | 85.7時間(2006年6月) |
釧路市の夏は、1年の中で最も「晴れにくい」時期で、全国の平地・海沿いの都市で見ると、同じく道東の根室市に次いで気温が低い地域で、実質的には「夏がない」と言って差し支えないような気候です。
日照時間の少なさは、大きな要因としては3点挙げられます。
1点目は「釧路の天気」を代表する存在である「海霧」です。海霧は、夏の暑い空気をもたらす「太平洋高気圧」から吹き出す暖かく湿った南寄りの風が、釧路沖を流れる海流(冷たい「寒流」)」である「親潮」の上を通って冷やされ、結果水蒸気の逃げ場が無くなって海の上で濃霧が発生するというものです。
2点目は、道東の気候に大きな影響を及ぼす冷たい空気を伴った「オホーツク海高気圧」で、この高気圧の勢力が強い場合、湿った冷たい風が北側から流れ込み、結果としてどんよりした悪天候になる傾向が強まります。
3点目としては、前線や低気圧の影響を受けやすく、海からの湿った気流が加わることで雨が降る機会が多い点も挙げられます。
市内の場合、海霧の影響は沿岸部ほど受けやすく、内陸部では影響を受ける可能性は低くなりますが、オホーツク海からの湿った気流の影響は逆の傾向があり、山沿いほど雨が増えやすい傾向もあることなどから、必ずしも内陸部でよく晴れるとは限りません。
気温については、低い海水温・海霧の影響を強く受けるため低くなり、海に近い釧路地方気象台で真夏日(最高気温30℃以上)が観測される頻度は平均で3年に1回程度と、道内では「最も暑い日が少ない地域」と言えるでしょう。但し、山を越えて吹く暖かい風の影響(フェーン現象)もあり、内陸部では真夏日を観測する頻度が一気に増え、平均で年間数日程度は暑い日となっている状況です。
雨については、道内では多い地域にあたり、特に8月以降は秋雨前線・台風の影響を受けて「まとまった雨」となることも増え、本州で降るような月間降水量(月300mm~400mm程度)が観測されることもあります。
【秋の気候】前半は雨が比較的多い・気温は道内では温暖
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 | 降雪量 | 最深積雪 | 雪日数 |
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9月 | 16.5℃ | 20.1℃ | 12.9℃ | 153.0mm | 143.9時間 | なし | なし | なし |
10月 | 11.0℃ | 15.1℃ | 6.1℃ | 112.7mm | 177.0時間 | なし | なし | 1.0日 |
11月 | 4.7℃ | 8.9℃ | -0.3℃ | 64.7mm | 167.6時間 | 4cm | 3cm | 5.7日 |
初霜 | 初氷 | 初雪 | 初積雪(1cm以上) | |
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平年日 | 10月20日 | 10月22日 | 11月7日 | 12月1日 |
秋の釧路市は、季節が進むに連れて天候は大きく変わります。
9月は1年で最も雨が多い時期で、秋雨前線の影響を受けやすく、台風からの湿った気流が加わるとかなりの大雨となることもあります。2010年以降で見ると、1日100mm以上の大雨が半数の年で観測されており、その中でも9月に降る頻度が最も多くなっています。
雨は10月にかけてもまとまる場合がありますが、10月後半以降は雨の頻度は減り、11月になると乾燥した気候へと一気に変わっていきます。夏の間少なかった「晴れ間」も秋が進むにつれ多くなり、冬にかけて日本海側とは全く異なった比較的過ごしやすい天候が続きます。
気温を見ると、沿岸部では春から夏とは逆で海水温が「下がりにくい」ため、結果道内では気温が高めの地域となります。但し、市内でも内陸部へ行くと冷え込みは早い時期から厳しくなり、北海道らしい寒さの地域が目立ちます。
雪は日本海側でないため雪雲が流れ込むことは少なく、初雪は11月以降のことが多くなります。近年は11月中の積雪がかつてより減る傾向も見られ、温暖な秋の間は雪とは無縁の年も目立ちます。
【冬の気候】道内で最も天気が良い地域・雪は地域差あり
月 | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 | 降水量 | 日照時間 | 降雪量 | 最深積雪 | 雪日数 |
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12月 | -1.9℃ | 2.5℃ | -7.0℃ | 56.6mm | 175.6時間 | 26cm | 17cm | 12.6日 |
1月 | -4.8℃ | -0.2℃ | -9.8℃ | 40.4mm | 186.7時間 | 32cm | 23cm | 14.3日 |
2月 | -4.3℃ | -0.1℃ | -9.4℃ | 24.8mm | 183.1時間 | 27cm | 26cm | 13.9日 |
積雪深 | 日降雪量 | 年間降雪量 | |
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観測史上最大の値 | 123cm(1939年3月9日) | 59cm(1975年1月17日) | 264cm(1966年) |
冬の釧路市は、道内の比較で見ると「雪が少なく、良く晴れる地域」と言えます。
晴れ間(日照時間)は十勝平野と並び道内では最も多く、昼間の時間が短い12月でも平均175時間程度と、平均25時間程度の場合がある日本海側の一部地域と比べ、なんと7倍程度の日照時間となることすらあります。
晴れが多い理由はシンプルで、「冬型の気圧配置」となる際に日本海側から雪雲が流れ込まないためで、寒気が強い「寒い年」ほど天気が良い傾向も見られます。
雪は、毎年必ず積もるものの道内では少ない地域の一つで、市街地では50cm以上の積雪は珍しい状況です。雪は主に太平洋側を低気圧が通過する際に降りますが、帯広などで大雪になっても、海からの暖かい空気が入りやすい釧路市街地では雨・みぞれのケースもあり、海沿いほど雪が降りにくい環境となっています。
逆に言えば、釧路市内でも内陸部へ行くほど雪は多く、山間部の阿寒湖畔まで行けば「積雪1m以上」がごく一般的な地域ですので、釧路市街地で雪が少ない・ないからと言って油断してはいけません。気温も同様で、釧路市街地と比べ内陸部の冷え込みは厳しく、場所によっては-20℃以下になることも一般的です。
流氷については、ごくまれにオホーツク海側から流れ出した流氷が接岸することがありますが、観測されない年が圧倒的に多いため、一般的な存在ではありません。
札幌と比較する
年間平均気温 | 冬の平均気温 | 年間降水量 | 年間降雪量 | 年間最深積雪 | 年間日照時間 | |
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札幌管区気象台 | 9.2℃ | -2.3℃ | 1146.1mm | 479cm | 97cm | 1718.0時間 |
釧路地方気象台 | 6.7℃(-2.5℃) | -3.6℃(-1.3℃) | 1080.1mm(-66.0mm) | 127cm(-352cm) | 34cm(-63cm) | 1957.6時間(+239.6時間) |
釧路市の気候を札幌市の気候と比較した場合、その違いは一目瞭然です。
気温は海水温の影響が反映され、釧路は海が冷たい春~夏にかけて札幌より大幅に低く、逆に海水温が下がりにくい秋以降は差が大幅に縮まります。
降水量は、冬型の気圧配置で雪になりやすい札幌は晩秋~春先まで降水量が大幅に多く、逆に海からの湿った気流や太平洋周辺を通る低気圧・前線の影響を受けやすい釧路では、春から夏にかけて雨量が多くなります。
雪の違いも日本海側・太平洋側ということで歴然としており、札幌は釧路よりも3~4倍程度雪が多い地域となっています。
日照時間については、夏場は札幌が多くなるものの、秋~冬に大差が付くため、結果として釧路の方が多い状況です。
「釧路地方」全体の気候については、上記の記事で別途解説しております。