函館市の「気候の特徴」とは?季節ごとの傾向などを解説【道内最南端の都市】

自然・気候

当ページでは、北海道で最も南側に位置する「函館市」の気候について、その特徴を主に季節ごとの傾向をまとめながら、札幌との比較なども交えて詳しく見て行きます。

函館市の気候「全体的な特徴」

函館地方気象台の雨温図
降水量平均気温日照時間平均風速降雪量最深積雪降雪日数
年間平年値1188.0mm9.4℃1744.9時間3.6m/s306cm45cm118.7日

函館市は、北海道内にある都市としては最も南側に位置し、本州(青森県)から近い地理的条件を持つ地域です。

気候は津軽海峡に面していることもあり、日本海を流れる温暖な対馬海流(海からの気流)の影響を受けやすく、緯度面でも最も南側に位置することから、道内の中では比較的温暖な地域の一つとなっています。

内陸部のような極端な冷え込みもなく、世界的な気候区分(ケッペン)としては温帯の「温暖湿潤気候(Cfa)」と、本州と同じ区分に当てはまる状況です。

雪は降りますが道内で見た場合それほど多くはなく、降るものとしては夏から秋にかけての雨の量が冬場の降水量よりも多い状況です。

なお、市内は広い面積を持ち、恵山など市街地から40km程度離れた場所も函館市に含まれます。市内各地は平地・海沿いでは気候面での変化はそれほど大きくはありませんが、広大な山間部の気候は平地とは大きく異なり、より寒冷で雪も多い傾向が見られます。

函館市「季節ごとの気候」

【春の気候】よく晴れやすいシーズン・気温は上がりにくい

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
3月1.9℃5.8℃-2.2℃64.1mm158.7時間41cm28cm21.3日
4月7.3℃12.0℃2.8℃71.9mm186.1時間2cm1cm6.4日
5月12.3℃17.0℃8.0℃88.9mm198.5時間なしなしなし
いずれも平年値(1991年~2020年)
函館市の桜(平年値)
開花日4月28日
満開日5月 2日

函館市の春は、全体的に見ると4~5月は1年の中で最も「晴れ」の頻度が多い時期であり、行楽日和となる日も多くなっています。

雪については3月まではごく一般的で、時に10~20cm単位のまとまった雪が降ったり、根雪が上旬~中旬頃まで残る年もありますが、下旬にかけて雪の頻度や量は一気に減り、4月の雪は毎年積もることはなく、ごくまれに数センチ程度の雪が降る程度となります。

気温は全国的に見れば低く、とりわけ海沿いということで低い海水温の影響を受け、道内他地域よりもむしろ4・5月以降やや低い平均気温となり、昼間の気温は旭川の方が高いようなことも多くなります。冬場などは道内でも温暖な傾向がある函館ですが、春の気温はそれほど温暖さは目立たないというのが大きな特徴と言えるでしょう。

なお、3~4月を中心に、日本海を発達しながら低気圧が通過することで、年によっては最大瞬間風速25~30m/sといった暴風に見舞われる日が見られます。

桜については、道内では最も早く開花する場所であり、近年は早い場合4月20日頃に開花する事例も見られるようになっています。

【夏の気候】やませの影響で日照不足の場合あり

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間
6月16.2℃20.4℃12.6℃79.8mm172.6時間
7月20.3℃24.1℃17.3℃123.6mm134.4時間
8月22.1℃25.9℃18.9℃156.5mm148.0時間
いずれも平年値(1991年~2020年)

函館の夏は、道内で見た場合やや温暖な地域となっている一方、海に近い海洋性の気候であるため昼間の最高気温がやや低く、朝の最高気温がやや高い傾向が強いため、道央の内陸側やフェーン現象の影響を受けやすいオホーツク海側で見られるような暑さにはならない地域です。

例えば札幌では過去に猛暑日(最高気温35℃以上)となったことがありますが、函館では猛暑日となったことは一度もありません。

雨について見ると、北海道は「梅雨」がないとされている通り、6~7月の雨量は多くなりにくい傾向がありますが、道内で見ると最も梅雨前線の影響を受けやすい場所であるため、時に梅雨のような天候に見舞われることもあります。

なお、雨のピークはあくまでも梅雨時ではなく、「秋雨前線」が次第に活発化する8月~9月が1年の中で最も雨が多くなりやすいシーズンとなります。

日照時間という観点からは、6月はよく晴れることが多いですが、夏が深まると東北の太平洋側に冷夏をもたらす湿った東寄りの風「やませ」が太平洋・津軽海峡方面を通り函館に影響を及ぼすことも多く、結果7~8月の日照時間が大幅に減る年が時折見られるなど、年による晴れ間の多さ・少なさの差が大きくなります。

台風は、頻度は多くありませんが夏場から影響を及ぼす場合もあり、函館より西側・日本海上を通る場合は特に警戒が必要です。

【秋の気候】急速に晴れ間が減る・気温は道内ではかなり温暖

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
9月18.8℃23.2℃14.6℃150.5mm160.8時間なしなしなし
10月12.5℃17.1℃7.8℃105.6mm163.9時間なしなし1.2日
11月6.0℃10.0℃1.8℃110.8mm109.4時間18cm9cm12.8日
いずれも平年値(1991年~2020年)
初霜初氷初雪初積雪(1cm以上)
平年値10月22日11月2日11月1日11月18日

秋の函館は、9月~10月初め頃までは「秋雨前線」の影響、年によっては接近する台風の影響(前線を活発化させる)を受けやすく、1年で最も雨が多い時期となります。

もっとも、夏の「やませ」のような現象はほぼないため、晴れ間・日照時間という意味では夏場よりもむしろ天気が良くなる頻度は増える傾向があり、特に9月は春と同じくらいの日照時間の長さ(年によっては200時間以上)となることもあります。

台風は、青森~函館を結ぶ青函連絡船「洞爺丸」の沈没で知られる「洞爺丸台風」で知られる通り、函館より西側の日本海などを進むルートを取った場合、暴風・海上の大荒れが特にひどくなるケースがあります。但し、一般論として北日本・北海道に大きな影響を及ぼす台風が襲来する頻度は、西日本・本州太平洋側の地方と比べると少ないため、函館の台風被害が特に多いという訳ではありません。

冬の兆しは道内では遅く、海水温の影響もあり、晩秋の気温は春とは違い道北との気温差がかなり大きくなります。但し、雪は11月の後半以降やや降りやすくなり、11月中に初めての積雪となることが一般的で、本州各地と比べるとかなり早くなっています。

【冬の気候】寒いが道内では温暖・雪もそれほど多くない

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
12月-0.1℃3.2℃-3.6℃94.6mm91.5時間79cm22cm25.8日
1月-2.4℃0.9℃-6.0℃77.4mm103.1時間91cm34cm27.9日
2月-1.8℃1.8℃-5.7℃64.5mm117.9時間74cm41cm24.6日
いずれも平年値(1991年~2020年)
積雪深日降雪量年間降雪量
観測史上最大の値91cm(2012年2月27日)60cm(1983年12月25日)510cm(2018年)

冬の函館市は、全国的に見ればとても寒い地域ですが、道内では海に近く最も南側に位置するため、比較的温暖な傾向がはっきりしています。道内で函館より暖かい場所は、江差・松前・奥尻・室蘭など海からの気流の影響をより受けやすい場所に限られます。

気温は昼間の気温以上に朝の冷え込みが比較的弱く、内陸部のように-10℃以下の冷え込みが多い訳ではありません。なお、気象台は市街地ではやや内陸側にありますので、函館駅周辺など海に突き出した場所では気温がより高くなっていることも推定できます。

雪はごく当たり前に降り、本州の日本海側との比較では特に少ないという訳ではありませんが、道内で見た場合より大きな規模の札幌市・旭川市と比べ雪はかなり少なくなっており、気温の関係上実際の積雪の深さでは降雪量では上回る帯広と比べても少なくなるなど、特に雪が多い地域という訳ではありません。

根雪については、大暖冬で期間が短くなった2007年・2020年のような例外もありますが、多くの年で12月下旬~3月上旬頃まで積雪が続くことが多くなっています。

但し、上記の雪の傾向は気象台のある場所における状況であり、より海に近い函館空港に設置された高松アメダスでは雪の量が一気に減り、根雪状態とは言えない期間が目立つなど、市内でも海への近さ・わずかな標高の違いなどによって雪の量はかなり変化します。

なお、冬場の晴れ間は雪の頻度の割には多く、すっきりとした青空が広がる日も一定数見られます。

函館市・札幌市の気候を比較する

札幌と函館「月間平均気温」の比較
札幌と函館「月間降水量」の比較
年間平均気温冬の平均気温年間降水量年間降雪量年間最深積雪年間日照時間
札幌管区気象台9.2℃-2.3℃1146.1mm479cm97cm1718.0時間
函館地方気象台9.4℃(+0.2℃)-1.4℃(+0.9℃)1188.0mm(+41.9mm)306cm(-173cm)45cm(-52cm)1744.9時間(+26.9時間)
いずれも平年値、括弧内は札幌との比較

函館市の気候を札幌市と比較した場合、気温の面からは「冬は函館がやや温暖」で「夏は札幌がやや温暖」な傾向が見られます。

温度差はそれほど大きくはなりませんが、冬は札幌がより北側に位置することから寒気が流れ込みやすい点、夏場はやや内陸側に位置し、ヒートアイランド現象の影響も大きい札幌市で昼間の気温が上がりやすい点が気温差を引き起こしています。

降水量や日照時間については、年間の合計・季節的な傾向も含め比較的似ていますが、札幌は冬場の降水量がやや多く、函館は夏場~秋の降水量がより多いという点で一定の違いがあります。

雪は札幌の方がずいぶんと多く、最深積雪で見た場合函館は札幌の半分にも満たない水準です。まとまった雪が降る頻度も札幌の方がかなり多く、函館と比べ生活上における「雪対策」の比重はより大きい都市となっています。

函館市のある「渡島地方」の気候については、上記の記事で別途解説しております。