毎年多くの雪が降り、少なくとも100日程度は雪に覆われ続ける札幌のまち。市内ではどの地域でも一定量の雪が降りますが、降る量や降る条件・各年ごとの違いといった状況を見て行くと、区ごと・地域ごとの差は比較的はっきり分かり、どこでも同じ感覚でよい。という訳ではありません。
本記事では、札幌市内の市街地としては最も西側に位置し、小樽とも比較的近い「手稲区」の「雪事情」をピックアップしてご紹介してまいります。
海に近い一方雪は平均的
手稲区一帯は、札幌市内では最も海に近いエリアであり、小樽市(銭函地域)と隣接しています。
札幌市内の場合、基本的な傾向としては日本海に近いほど雪が降りやすい。太平洋に近いほど雪が降りにくい。という特徴が全体的には言えますが、最も海に近いはずの手稲区は、雪は少なくはないものの、必ずしも市内で特に雪が多い地域ではありません。
年 | 年間降雪量 | 順位 | 最深積雪 | 順位 |
---|---|---|---|---|
2022年冬 | 492cm | 11位/11地点 | 137cm(2月23日) | 9位/11地点 |
2021年冬 | 335cm | 9位/11地点 | 98cm(3月3日) | 4位/11地点 |
2020年冬 | 332cm | 11位/11地点 | 70cm(2月25日) | 9位/11地点 |
2019年冬 | 387cm | 7位/11地点 | 88cm(2月8日) | 4位/11地点 |
2018年冬 | 485cm | 6位/11地点 | 109cm(3月2日) | 3位/11地点 |
2017年冬 | 528cm | 3位/10地点 | 103cm(2月27日) | 3位/10地点 |
比較は平地・市街地の観測地点に限る
降雪量・積雪量については、長いスパンで見た場概ね平均的か、年によっては中央区等都心一帯よりもかなり多くなる場合もあります。海に近い一方「ヒートアイランド現象」の影響は小さいこともあり、同じ量の雪が降った場合でも都心より手稲区内の方が解けにくい=降る雪の量に対し積雪量が多くなりやすい。といった傾向もあります。
他方で、近年の雪の降り方だけを見ると、合計の降雪量は市内の中で最も少ないことすらあるなど、年ごとの差がかなり大きくなっており、はっきりとした特徴・傾向を見出すことは難しい状況です。
雪の量は、同じく海に比較的近いエリアの中では北区の北側(あいの里・拓北・太平)などの方が安定的に多くなる傾向があります。
この差については、必ずしも断定的なことは言えませんが、主に2つの理由が考えられます。
雪雲の方向転換 | 日本海からの雪雲の通り道について見た場合、風向きの関係上わずかに「曲線」を描きながら札幌市内へと入って来ることがあります。 典型的な例としては、陸からやや離れた海上では概ね北西から南東へ向かっていた雪雲が、陸地に掛かる頃にはどちらかと言えば西北西から東南東への向きへと変わり、手稲区をやや避けるようにして石狩市・札幌市北区方面に掛かりやすい。こういったパターンが散見されます。 |
小樽市の存在 | 上記の「曲線を描く雪雲」の場合でも、風向きが合えば手稲区方面へ流れ込む可能性がありますが、その際は雪雲の通り道に小樽市域の陸地が構えており、雪雲が「削り取られる」ような形となりやすい状況です。 |
もちろん、石狩湾から真っすぐ入って来る雪雲、分厚い塊で直撃する雪雲の方が多いため、全ての雪雲が手稲区を避ける訳ではありません。但し、気象レーダーなどを見た場合上記のようなパターンが時折見られるため、その分が市内では主に北区内やその他の地域に回り、手稲区よりも雪が多くなる状況を引き起こしていると推定出来ます。また、陸地による壁がない小樽市街地も、手稲区よりも雪が多くなる傾向がはっきりしています。
手稲区だけで雪が降ることはあるの?
手稲区は、地理的には札幌市街地の中では最も西側に位置し、清田区や厚別区内に行くよりも、小樽市街地へ行く方が距離的に近いといった特徴があります。そのため、他の地域と全く天気が違うというイメージを持たれる人もいるかもしれません。
確かに、天候の違いで見た場合は、手稲区で雪が降っていても、中央区・厚別区では雪が降っていない。というような状況が時間帯によって生じることは頻繁にあります。また、真西から強い風に乗って岩内・赤井川などの陸地を越えて雪雲が流れ込む場合、手稲区で降る雪の量が市内で最も多くなるケースが目立ちます。
但し、手稲区で降雪量が観測されたにも関わらず、他の地域で1日を通して「全く」雪が積もらない日。というのは実は余り見られません。少なくとも、「大雪の北区あいの里」と「快晴のそれ以外」のように、白か黒かのごとくはっきり天気が分かれるようなケースは少ないと言えるでしょう。
参考程度に解説すると、手稲区一帯のみに限ってピンポイントで降りやすくなるパターンは、どちらかと言えば冬型の気圧配置が完全に弱まり、北海道の少し南に低気圧がある際などに、石狩湾の北北東側~北側から雪雲がまとまって直撃するようなケースが挙げられます。但し頻度としてはそう多くなく、極端な大雪になることも余りないため、特段注意が必要な対象とまでは言えないでしょう。
初冠雪は「手稲山」で観測・スキー客も
手稲区は、平地の降雪は市内で特別に多い地域とは言えませんが、区内の南側、面積にして半分程度が山地であり、標高が高い山沿いは平地とは比べ物にならない豪雪地となっています。
札幌の冬の始まりを告げる「初冠雪」は、西区と手稲区の境界線上にある「手稲山」で観測しており、標高1023.1mと高い山であることから、10月の前半に初冠雪を観測することも多くなっています。
手稲山一帯は「サッポロテイネスキー場」として札幌市内屈指のウインタースポーツの拠点として多くの人が訪れる地域でもあり、かつての「札幌オリンピック」が開催された会場跡も残されています。
札幌市内各区ごとの「雪事情」についても、別途解説しております。