札幌市内の「雪」を「地域ごと」に考える【雪の多い所・少ない所】

自然・気候

日本国内の都道府県庁所在地の中では、青森市に次いで(ほぼ同じ)雪の多い都市である札幌市。市内では、どの地域であっても冬場は毎年比較的多くの雪に覆われ続けますが、毎年の降雪量や、あるタイミングで降る雪の量を見て行くと、地域ごとに一定の違いも見て取ることが可能です。

本サイトでは、別途区ごとの「雪事情」も詳しく解説していきますが、こちらでは市内全体で比較した地域ごとの「雪事情」の基本について、なるべくシンプルな形で解説していきます。

札幌市内で「雪が多い」所は?【山地・市内北部】

特に多い地域市内山間部の全域(特に海に近い山間部・倶知安寄りの山間部)
平地(市街地)で多い地域北区の特に北側(あいの里方面等)・東区の特に北側(モエレ沼公園周辺等)・南区の標高の高い(山沿い)の住宅地・西区西野地区

札幌市内の中で比較した際に、特に雪が多くなる地域は当然のことながら山地(山間部)です。標高にもよりますが、高い山であれば10月~5月くらいまでは雪が当たり前のように降ることもあり、平地で雪が積もらない時期から積雪が増えていきます。公式的な統計はありませんが、スキー場の積雪量などを参考にして考えれば、積雪3~5m程度は決して珍しくないと言えるでしょう。

なお、同じ山地・同じ標高でも傾向に大きな違いはあり、手稲区・西区や南区の特に西側(方角的には倶知安寄り)の山地では雪がより多く、南区の東側(国営滝野すずらん丘陵公園方面等)や清田区内の山地といった標高がそれほど高くなく、地理的にも雪雲の流入が少ない場所ではそこまでの量にはなりません。但し、どの地域でも山地である以上、平地よりは雪が多くなります。

山地であれば都心周辺でも雪はかなり深くなり、例えば藻岩山・盤渓(ばんけい)地区などでも少なくとも毎年必ずメートル単位の積雪にはなり、スキー場があるため多くの観光客でにぎわいを見せます。

生活に直結する、平地または市街地一帯で雪の多い場所を見て行くと、必ずしも標高だけに比例する訳ではなく、北区や東区の「北側」といった標高が非常に低い市内の北部地域でも雪が多くなります。特に北区「あいの里」エリアは市内の平地では最も雪が多い地域とも言え、日本海・石狩湾から入って来る雪雲が真っ先に流れ込むことで、都心部と比べてもかなり積雪が多くなり、風が強いことから「ブリザード」のような気象条件になる場合があります。

北区・東区以外で見た場合、平地とは言い難いかもしれませんが、雪が多い場所としては標高が高く山にも囲まれ、気温も低い「南区」一帯の住宅地(豊滝・簾舞・藤野)も挙げられます。但し、南区の場合は「雪雲の流れ込み」自体は決して市内の中では目立って多い訳ではないため、特に冬の早い時期では各年ごとの天気の「ぶれ」が大きく、都心部より雪が少なくなるようなケースもあり得る環境です。

都心に比較的近い場所で見ると、中央区でも宮の森15丁目より南側・円山西町、また西区の西野エリアといった山のすぐそばで標高がやや高い地域では、積雪量は明らかに体感できる程度に増える場合が多くなります。都心と比べ劇的に多いほどではありませんが、概ね2~3割くらいは多い傾向があるかもしれません。

札幌市内で「雪が少ない」所は?【白石方面など】

やや少ない地域白石区の南側・豊平区及び清田区の一部(白石区寄りのエリア)
非常に少ない地域市内にはなし

札幌市内で「雪が少ない所」はどこか?という問いは比較的多く目にするものですが、これについては、「少ない」を「ない」と勘違いすると痛い目に合うことになります。

札幌市内では、先に述べた通り「どこでも」それなりの量の雪は降ることが実質的に「確約」されたような地域です。1年で一番雪が深い時期の積雪量が50cmを下回るようなことは、市内のどこであってもこれまで基本的に起こったことがありません。50cmというと、本州の日本海側ではそれなりの「まとまった雪」に値する量ですので、まずその大前提を理解する必要があります。

そのような条件の中で、それでも市内の中で「比較的雪が少ない場所」はどこか?と考えた場合、まず最も少ない場所として挙げられるのは「白石区」方面です。白石区については、区内の北側については日本海側からの雪雲がやや通りやすくなるため雪の量は少なくありませんが、区内でも南側(南郷13・18丁目駅周辺や平和駅周辺など)は、「海から遠い」・「山からも遠い」・「標高も低い」という雪の量が減りやすくなる複数の条件を満たしています。このため、市内では最も降雪量が減りやすく、積雪記録で見ても少ない場合で50~60cm台と最下位となるケースが目立ちます。

豊平区・清田区方面についても、白石区に近い標高の低い市街地は概ね同様の理由でやや降雪量は減り、標高が低く山から離れた場所であれば、海からの距離が遠いほどに雪の量は減る傾向があります。

但し、先述したように南区の山沿いなど「明らかに標高が高い」地域や「山に囲まれた」住宅地は海から離れた場所でも雪は多くなりやすい傾向となっている他、海から最も離れた清田区南部の市街地も山に近いため、雪が最も少ない場所という訳ではありません。また、海に最も近い手稲区の平地は、風向きなどの関係上北区と比べ雪が少なくなり、海に近いから雪が最も多くなるという訳ではありません。

日本海から離れ、太平洋側に近づくほど平地・市街地一帯で雪の降る量が減りやすいことは確かですが、雪の少なさは単純な距離だけではなく「山の近さ・標高・風向き」といった要素も勘案して考える必要があるのです。

都心部は多い?少ない?

これまで「雪が多い地域」・「雪が少ない地域」の2つに分けて解説してきましたが、上記の区分では肝心な札幌市の都心部については一切言及してきませんでした。

これは何故かと言えば、札幌管区気象台で観測される「札幌の積雪」は、市内で見た場合「多いとも少ないとも言えない」まさに平均的な雪の量となっているためです。

札幌の都心部は、市街地全体で見た場合「海からの距離」がちょうど中間的な距離であり、白石区や豊平区・清田区のように遠いとも、北区のように近いとも言えない地域です。雪雲が流れ込む場合も、北区ほど降りやすい訳ではなくても、白石区・豊平区・清田区よりは降りやすい。ちょうど平均的な環境という訳なのです。

都心部は「ヒートアイランド現象」の影響で気温は周辺と比較してかなり高くなりますが、札幌自体が寒冷な地域ですので、都心部の気温が高いからと言って雪が積もらなくなる程ではなく、結果として海からの距離が中間的な位置にある都心部は、雪の量も平均的な状況に落ち着く傾向があります。

なお、市内ではこれまで解説してきた「多い・少ない」地域ではなく、都心部である中央区一帯・厚別区・西区の標高の低い市街地・手稲区・東区の南側・南区の都心側に近い市街地などは、状況に応じ一定の差はありますが、平均すればさほど大きな積雪量の差は見られない場合が多くなっています。

多くの日本海側の地域では、まちの中心または海沿いへ行くほど雪が減る。というイメージで語られる(例:金沢市や新潟市など)ことが多いですが、気温が十分に低く、海沿いほど雪が降りやすい札幌については、必ずしもそういったイメージは通用しません。確かに山沿いへ行けばどこでも雪が多いですが、札幌の市街地一帯で見た場合、都心部だから特に雪が少ないという訳ではない。という点はしっかりご確認頂いたほうがよいでしょう。

地域ごとの「雪が降りやすい条件」は

札幌市内で降る雪は、その大半は「冬型の気圧配置」に関するもので、シベリアからの強い寒気の流れ込みによって、日本海で雪雲が発生し雪を降らせるパターンがほとんどです。

但し、「冬型の気圧配置による雪」といっても、雪雲が流れて来る向き(風向き)の状況次第で「どこで雪が降りやすいか」は全く異なる場合があります。

風向きと雪の傾向について大まかにまとめると以下の通りです。

風向き主な降雪地特徴
北からの風市内広範囲・海から離れたエリアも含め雪が比較的降りやすい
・「よく降る」場合と「全く降らない」場合あり
・変則的な冬型気圧配置の際のみ発生、風向きの頻度としては少ない
北北西からの風市内広範囲・海から離れたエリアも含め雪が比較的降りやすい
・この風向きで「降らない」ことはほぼない
・条件次第では都心周辺でも大雪に
北西からの風市内の北側中心・都心周辺でも比較的雪が降りやすいパターン
・市内の南側などではやや雪が降りにくい
西北西からの風北区の北部のみ・市内の広い範囲が「快晴」、岩見沢で雪が増えるパターン
・北区(あいの里)一帯のみ雪になる可能性もあり
西からの風市内の西側・市内では余り雪が増えず「快晴」の場合も
・山地を含む南区や西区一帯、都心部周辺では時に雪雲が流れ込む場合も

札幌では、年による差はありますが「西北西」の風となることが近年特に多く、市内に雪雲が流れ込みにくい状況も目立ちます。このような場合、市内では北区の一部では雪が比較的降りやすくなることがある一方、それ以外は晴れ渡ることが多く、天候の差は際立ちます。

なお、「冬型の気圧配置」による雪は、冬型が緩みかけた場合に発生することが多い「石狩湾小低気圧」という渦を巻く強い雪雲が発生した場合や、海上で異なる風向きの風がぶつかって雪雲が発達した際(西岸収束帯)に、特に強く降ることがあります。

また、強い冬型の気圧配置であれば、風に乗って内陸部まで雪雲が流れ込みやすい一方、冬型の気圧配置が緩みかけて風が弱くなっている場合は、沿岸部に近い手稲区・北区・都心一帯だけで雪が増えることもあるなど、風の強弱にも応じてそのパターンは非常に多岐に渡ります。

札幌市内の雪事情は、風向きが最も基本的な決定要因で、それに加えて上記のような各種のパターンが加わることで、地域ごとに・各年ごとに様々な積雪・降雪の状況を作り出しているのです。

なお、都心に隣接し美しい眺めで知られる「藻岩山」エリアも南区に含まれ、こちらにも「藻岩山スキー場」がありますが、全体としては都心に近いこともあり雪は極端に多くはならず、近年では1月に入ってからもスキー場の雪が少ない状態になったこともあるなど、南区内のより深い山地とは雪の状況が異なります。

札幌市内各区ごとの「雪事情」についても、別途解説しております。