北陸三県の中では最も南側に位置する「福井県」は、雪というテーマで見た場合、比較的緯度が低い地域でありながら、全国屈指の豪雪に見舞われる地域もあるなどその「多さ」が目立つ地域でもあります。
こちらでは、福井県内の「雪事情」について、地域ごとの大まかな傾向などをまとめて見ていきます。
福井県内観測地点の「基本雪データ」
観測地点名 | 年間降雪量 (cm) | 年間最深積雪 (cm) | 積雪5cm≧ 年間平年日数 | 過去最大の積雪深 (cm) |
---|---|---|---|---|
九頭竜(大野市) | 815 | 157 | 100.5 | 301(2018/2/13) |
今庄(南越前町) | 442 | 88 | 60.8 | 244(2011/1/31) |
大野(大野市) | 458 | 83 | 62.7 | 262(1981/1/15) |
福井(福井市) | 186 | 48 | 33.9 | 213(1963/1/31) |
武生(越前市) | 262 | 47 | 35.2 | 130(2018/2/13) |
敦賀(敦賀市) | 126 | 39 | 17.4 | 196(1981/1/15) |
小浜(小浜市) | 157 | 33 | 22.4 | 135(1984/2/9) |
【参考】東京 | 8 | 6 | 1.2 | 46(1883/2/8) |
順序は「年間最深積雪」の多い順
福井県内で気象庁が観測を実施している地点は、7地点あります。最も雪が多い場所は、最も山深く標高も高めの「九頭竜」アメダスであり、こちらは1m以上の積雪となる年が大半を占める、全国的に見ても有数の豪雪地となっています。
また、大野市の「大野」アメダスは、山地以外の地域として見た場合、全国的に見ても雪が特に多い場所の1つとなっています。
福井市の福井地方気象台については、小浜・敦賀といった嶺南地域の観測地点と比べ雪が多い傾向が見られます。
福井県内「地域ごとの雪事情」とは?
福井・坂井地域
雪の量 | ・山間部、内陸部ほど多い傾向 ・日本海沿岸の雪は内陸部と比べかなり少ない場合あり ・1m以上の積雪は平地でも内陸部ではまれに見られる ・根雪は一部の雪が多い年で内陸部を中心に見られる |
雪の頻度 | ・一部の暖冬を除き頻繁に雪が降りやすい ・海沿いほど状況により雨、みぞれになりやすい |
雪の時期 | ・12~2月が多い ・3月に雪が降るケースもあり ・11月、4月の雪は山地を除き極めてまれ |
雪の要因 | ・「冬型の気圧配置」が大半 ・JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)の影響で大雪となる ・ほぼ真西から雲が入るケースで雪がまとまりやすい ・海沿いの一部に限り北からの風で雪が降りやすい場合あり |
福井市・あわら市・坂井市の雪事情の概要については、上記の記事で別途解説しています。
丹南地域
雪の量 | ・今庄方面で特に多い傾向(過去には駅周辺で積雪1.5m以上の記録も) ・鯖江など北側ほど福井市周辺と似た傾向に ・日本海に直接面する場所は増えにくい |
雪の頻度 | ・一部の暖冬を除き頻繁に雪が降りやすい ・海沿いほど状況により雨、みぞれになりやすい |
雪の時期 | ・12~2月が多い ・3月に雪が降るケースもあり ・11月、4月の雪は山地を除き極めてまれ |
雪の要因 | ・「冬型の気圧配置」が大半 ・JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)の影響で大雪となる ・雲の動きは北側ほど「真西」寄り、今庄方面(南側)ほど若干「西北西寄り」からの場合に雪が増えやすい |
越前市・鯖江市の雪事情の概要については、上記の記事で別途解説しています。
奥越地域
雪の量 | ・福井県内で最も雪が多い地域 ・勝山、大野市街地でも積雪1m以上のケースあり ・山間部では積雪2〜3m台のケースも |
雪の頻度 | ・冬場は雪が頻繁に降りやすい地域 ・暖冬の年でも県内のより海沿いよりは雪の頻度が増える |
雪の時期 | ・12~2月が特に多い ・3月の雪も一般的 ・11月、4月の雪はまれ ・山沿いの根雪は4月にも残っている場合あり |
雪の要因 | ・「冬型の気圧配置」が大半 ・JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)の影響で大雪となる ・真西から雲が入る場合に大雪になりやすい ・西北西方向から雲が入る場合も雪がまとまる場合あり |
大野市・勝山市の雪事情の概要については、上記の記事で別途解説しています。
嶺南地域
雪の量 | ・敦賀市街地以西は福井県内では雪がそれほど多くない地域 ・但し、まれに平地でも50cm以上積もるようなケースあり ・敦賀市の山沿いは極端な豪雪の場合あり |
雪の頻度 | ・一部の暖冬を除き、時折雪が降る地域 ・海に直接面した地域ではみぞれ、雨に変わりやすい場合あり |
雪の時期 | ・主に12〜2月 ・3月の雪も山地を中心に見られる場合あり ・11月、4月の雪は極めてまれ |
雪の要因 | ・「冬型の気圧配置」が大半 ・JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)の影響で大雪となる ・風向きは北西から雲が入るケースで雪がまとまりやすい ・近畿北部の雪の傾向に近い |
敦賀市・小浜市の雪事情の概要については、上記の記事で別途解説しています。
福井県の雪「ここがポイント」
場所によっては平地で1m以上の積雪も
福井県は、場所により頻度に大きな差はありますが、嶺北地域では平地で1m以上の積雪が時折見られることがあります。福井市でも平成・令和以降に1m以上の積雪記録が複数回あり、内陸部の大野・勝山方面においては1m以上の積雪はそれほど珍しいものではありません。
長期間積雪が残る「根雪」についても、その年の雪が多い場合は一般的に見られます(暖冬の年との差が非常に大きい)。
近畿以南では、特殊なケースを除き平地で1m以上の積雪はほぼ見られませんので、山地以外も含め「典型的な雪国」と言える地域としては、国内で最も南側にある地域と言ってよいかもしれません。
集中豪雪が多いエリアあり
福井県は、強い雪雲の帯・塊であるJPCZ(日本海寒帯気団収束帯)の影響を受けやすいため、短時間で一気に降り積もる集中的な豪雪が比較的生じやすいエリアが見られます。
JPCZによる影響は、とりわけ嶺北地域・敦賀市で多く見られ、南越前町(今庄)付近などは特に降水量がまとまりやすく、一部の年では1日で50cm以上のドカ雪に見舞われることもあります。
同じ県内でも、わずかな距離で積雪に大きな差が出る場合があるため、運転などには注意です。
嶺南・嶺北の特徴は大きく異なる
福井県の嶺南地域については、とりわけ小浜方面など敦賀以西の地域については、地理的な関係上、嶺北側とは雪がしっかり降る・積もるタイミングが異なる場合が目立ちます。
小浜で雪が増えるケースは、京都府北部(舞鶴)や滋賀県北部(高島)などで雪が増えるタイミングと一致する場合が多く、この場合は福井市などでは必ずしも大雪にはなっていない場合が多くなっています。
大まかに言えば、真西から雲が進んで来る場合は嶺北側で、北西側から雲が進んで来る場合は嶺南側で雪が降りやすい状況で、福井市で大雪となっている場合に、小浜市など嶺南側では晴天が見られるケースも少なくありません。
雪の状況に関しては「福井県の状況は〜」と1つにまとめにくく、少なくとも嶺北・嶺南側の2つに分けて考えた方が実態に即したものと言えるでしょう。
まとめ
- 日本海側のため雪が多い地域
- 地域差あり、沿岸部より内陸側、嶺南側より嶺北側の雪が多い傾向
- 福井市など平地でも時に1m以上の積雪記録あり
- 一部山間部では年によっては2〜3m台の豪雪も
- 小浜など嶺南側の多くは「近畿北部」に近い雪の傾向
- 雪の要因はほぼ全て「冬型の気圧配置」、大雪は「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」の影響
- 雲が西側から進む場合嶺北地域、北西側から進む場合主に嶺南地域で雪がまとまりやすい