日本国内では主に日本海側の地方で冬場は雪が積もりますが、日本海側の各地の中でも、雪がまとまって降る機会がそれほど多くない地域もあれば、急激にドカ雪・豪雪に見舞われやすい地域もあり、その特徴は様々です。
こちらでは、日本国内でも特に局地的な集中豪雪に見舞われやすい地域の一例について、「平地・標高が低い地域・主要な交通の大動脈」を含む範囲でまとめていきます。
新潟県上越・中越地方
要因 | JPCZ(日本海寒帯気団収束帯) Tモードの雲(トランスバース型降雪ライン) |
降る量 | 多い場合1日100cm(1m)前後 |
新潟県の上越・中越地方は、「冬型の気圧配置」が強まる際に日本海上を長距離に渡り移動してきた雪雲が、北アルプスなどの影響も受けて最も強い・発達した状態で掛かることがある地域です。
標高が低い平地では国内で最も雪が多い地域の1つである高田(上越市)の観測所などでも、まれに1日で100cm(1m)前後という、凄まじい量の降雪に見舞われることもあります。
豪雪となる場合、その他の地域にも大きな影響をもたらす雪雲の塊である「日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)」の雲が直接的に長時間掛かるケースに加え、雪雲が進む向きではなく平行な向きに並ぶ「Tモードの雲」と呼ばれるパターンの影響を受ける場合もあります。
気温は海沿いに近いとそれほど低くない場合が多く、とりわけ糸魚川方面の沿岸部は気温が高めの傾向にあるため、海沿いでは雪が余りなくても、ほんの少しだけ内陸側へ進むだけで積雪が1m単位で増えるようなケースがあり、局地的な状況の違いが目立つことも特徴となっています。
滋賀県長浜市余呉町・福井県南越前町周辺
要因 | JPCZ(日本海寒帯気団収束帯) |
降る量 | 多い場合1日50cm以上 |
JR北陸本線や北陸自動車道が通る交通の大動脈にあたる、滋賀県長浜市余呉町・福井県南越前町周辺については、西北西〜北西方向から強い雪雲の塊(JPCZ)が長時間流れ込むパターンとなる場合があり、そういったケースでは1日50cm以上の集中的な豪雪に見舞われることがあります。
標高が特別に高いとまでは言えない「今庄(南越前町)」・「柳ケ瀬(長浜市)のアメダスでは、2011年の豪雪時に249cmの積雪記録があるなど、西日本寄りの地域・標高が高い山地以外の地域としては、極端に雪が多い地域と言えます。
福井県大野市・勝山市周辺
要因 | JPCZ(日本海寒帯気団収束帯) |
降る量 | 多い場合1日50cm以上 |
福井県の東部(内陸部)に位置する大野市・勝山市一帯は、平地であるものの、若干標高が高め(200m程度)ということもあり、気温が低くなりやすく、条件によっては強い雪雲が入りやすいこともあり、国内でも集中的な豪雪に見舞われやすい地域の1つです。
豪雪は、「真西」の方向から強い雪雲の塊である「JPCZ」が入り込むケースで生じやすく、上述の南越前町方面で豪雪となるタイミングとは、やや異なるタイミングで雪が増えやすい特徴が見られます。
北海道石狩湾沿岸・岩見沢周辺
要因 | 石狩湾小低気圧(札幌〜小樽方面) 西岸収束帯(札幌〜小樽方面) 村松バンド(岩見沢方面) |
降る量 | 特に多い場合1日50cm以上 ごく短時間で20〜30cm程度積もりやすい |
北海道地方では、最大の都市である札幌一帯を含む石狩湾周辺や、少し内陸側の岩見沢方面を中心に、特定の条件が揃う場合「集中的な豪雪」となることがあります。
こちらは、北陸・新潟方面と比べると雪雲の掛かり続ける時間や、雲の強さはやや抑えられるため、例えば1日で1mの雪が積もるような状態は基本的に見られませんが、気温が非常に低い場合があるため、わずか2〜4時間程度で20〜30cmという、短時間で大量の降雪に見舞われやすい傾向があります。
短時間での大雪は北海道であっても除雪が追いつかず、鉄道の運行や道路交通に支障が出る場合があるほか、乾いた大量の雪は「強風」が吹くと舞い上げられて地吹雪となり、視界が非常に悪くなる「ホワイトアウト状態」を引き起こしやすい特徴もあるため、注意が必要です。
要因としては、札幌・小樽方面では羽幌沖方面などから南に進んで来る雪雲の渦(石狩湾小低気圧)や帯(西岸収束帯)が挙げられ、こちらは冬型の気圧配置が「ゆるむ」タイミングで生じることもあります。また、岩見沢方面の豪雪はロシアの「シホテアリニ山脈」にぶつかった風の影響で生じる「村松バンド」と呼ばれる雪雲の帯が影響することが多くなっています。いずれも、局地的かつ予測が難しい現象であり、直前でも降る場所の予測が外れるようなケースがあります。
北海道十勝地方の一部
要因 | 太平洋上を発達しながら通過する低気圧 |
降る量 | 特に多い場合1日50cm以上 |
北海道太平洋側では、十勝地方の一部では1日50cm前後〜の大雪が時折見られる地域があります(広尾方面など)。
こちらは、これまで解説してきた地点とは全く異なり、冬型の気圧配置の影響ではなく太平洋上を発達しながら通る低気圧の影響で雪が降ります。
雪は札幌方面で集中的なドカ雪となるケースと比べ、長時間降る場合もあり、過去には1日70cm以上といった北陸のような豪雪記録もあります。また、降る強さが強いことも特徴で、2002年1月22日には広尾で「1時間に41.5mmの雪・みぞれ」という極端な記録が見られたこともあります(降る強さが強くても気温が高めの場合、雪が積もる量はそれほど増えない場合もあります)。
その他地域(山間部)
その他、1日50cm前後〜などの集中的な豪雪が、ある程度の頻度(数年に1回〜毎年など)で見られることがある地域について、山間部で人が住む地域を含めて見た場合、例えば下記のような地域が挙げられます。
あくまでも一例であり、全てのエリアを網羅できているとは限りませんので、その点はご留意下さい。
北海道 | オホーツク管内の山間部(滝上・西興部など) |
東北 | 八甲田山周辺(酸ヶ湯など) 月山周辺の広い範囲(西川町・鶴岡市の一部など) |
関東甲信 | 群馬県北部の一部(みなかみ方面など) 長野県北部の一部(野沢温泉・栄村・小谷村方面など) 富士山麓周辺の標高の高い地域 |
北陸 | 北陸地方全域の山間部 とりわけ富山県南砺市の山間部(五箇山)・立山町の一部 |
東海 | 岐阜県郡上市の一部(石徹白など)・白川村 |
近畿 | 京都府京丹後市・宮津市の一部山間部(世屋方面など) 京都市の一部(花脊地区) 兵庫県北部山間部の広範囲(神鍋・ハチ高原周辺など) 兵庫県宍粟市戸倉地区 |
中国 | 鳥取〜岡山県の県境付近の山間部 鳥取県若桜町の標高が高い地域(舂米地区) 広島県の北部山間部の一部 |
標高が高い山地は「西日本」であっても気温が十分に低い場所があるため、雪がしっかり降りやすい環境です。
海水温の影響などから、雲は北日本以外の地域でむしろ発達する場合があるため、雪が当たり前の地域でも集中豪雪が少ない場所もある一方、近畿・中国地方などであっても、山地では集中豪雪は珍しくありません。