札幌の「真夏日(最高気温30度以上)」はどのくらい一般的か【データから考える】

自然・気候

札幌の夏。というと、一般的には涼しいイメージを持たれることが多く、実際にそれは正しく平均気温は東京などと比べかなり低い地域です。

一方で、札幌であっても暑い日は暑い。エアコンがないとしんどい。といったような声を耳にすることもあります。確かに2021年の夏など、異例の暑さが続いた年もありました。

こちらでは、観光をする際にもあらかじめ知っておきたい「札幌の夏の暑さ」について、「夏らしい暑さ」の一般的な一つの基準とも言える「真夏日(最高気温30度以上)」にテーマを絞って、どれくらいの頻度で真夏日になる傾向があるのかなど、実態をデータに基づいて見ていきたいと思います。

各月ごとの「真夏日」日数の平年値

札幌の真夏日日数東京の真夏日日数大阪の真夏日日数
5月0.1日0.6日1.1日
6月0.5日3.6日7.9日
7月2.9日16.8日22.6日
8月4.5日22.6日28.3日
9月0.6日8.2日14.4日
10月0.0日0.3日0.6日

1991年~2020年の観測データから算出された「真夏日日数」の平年値は上記の通りです。

データから分かるように、平年値を見る限りは、札幌における「真夏日」はまだまだ一般的とは言えず、夏のうちに数日だけ観測されるやや珍しい暑さ。とも言える状況です。

東京や大阪では7~8月の間はかなりの割合で真夏日が観測される一方、札幌は一番多い8月でも平均4.5日。6月の初夏や9月の残暑などの時期には、真夏日はわずかにしか観測されておらず、その「涼しさ」は明らかです。

近年真夏日が増えたってほんと?2つのグラフから見る

近年の真夏日日数の推移(札幌管区気象台)

平年値で見る限り、真夏日が極端に多い訳ではない札幌。しかしながら、「体感」として「近年暑い日が増えた」と感じる人が多いのも確かなようです。

平成に入ってからの約30年間について、上記のグラフのように真夏日日数のデータを取ってみると、確かに真夏日が平均すれば増えているように見えてきます。特に平成の中頃までは真夏日がゼロの年、または1~3日程度の年が珍しくない一方、それ以降は真夏日が極端に少ない年がほぼなくなっています。

また、2010・2012年には合計20日、そして2021年には27日と、かなり真夏日が多い年というのが出てきており、涼しい札幌という常識が年によっては覆されつつあるというのも嘘とは言えません。

先の項で解説した「真夏日日数の平年値」は、上記グラフの1990~2005年頃という比較的真夏日が少ない期間を含んでいるため、例えば2005~2021年の平均値で取ってみた場合、真夏日の平均日数はより多くなるなど、近年平成の初頭に比べ、真夏日が増加傾向にあることは間違いありません。

観測開始以降の真夏日日数の推移(札幌管区気象台)

一方で、より長いスパンで見てみるとどうでしょうか。平成以降のデータで見ると、近年急増しているように見えますが、記録がはっきり残る19世紀末から現在までの約140年ほどの観測データから見ると、増えている時期と減っている時期に分かれており、昔は真夏日がゼロだった。という訳でもありません。

大まかには、19世紀末頃にやや多くその後急減し、戦前戦中期は昭和の終わり~平成の初頭と同じくらい、その後戦後しばらくの時期は一時的に急増し、高度成長期周辺で減り、その後は近年の増加までは目立った特徴なし。と言ったところです。

5年ごとの平均値を算出してみたりすると、近年の真夏日日数が史上最も多い水準であることはやはり間違いはありませんが、ゼロから急増。というのではなく、ある時間軸ごとに、真夏日が多い期間と少ない期間の数年~十数年程度の周期のようなものを繰り返しながら、現在の増加傾向に至っている。という複雑な仕組みがあることも確かです。

真夏日が増加する理由は?

様々な周期・変動を繰り返しながらも、札幌で近年真夏日が過去最も多い水準に増加している理由としては、一体何が考えられるでしょうか。

まず1つは世界的な「気候変動=温暖化」の影響が考えられます。札幌であろうが山間部・沿岸部の農漁村であろうが、気象観測が行われている北海道各地、また全国各地では近年の平均気温がおしなべて上昇しています。気温は夏も冬も、春も秋も上昇傾向にあり、一般的に言われる世界的な温暖化の状況を日本でも裏付けるものとなっています。

但し、これは先に説明したように一定の期間ごとに気候の傾向があり、100年以上前でも気温が上がりやすかった時期もあれば、平成初頭のようにさほど暑くならなかった時期もあるなど、全体としては「上昇」傾向ではあっても、毎年一直線に上昇し続けるものではありません。

なお、暑い日の増加は温暖化だけでは説明がつかない場合もあります。特に周辺地域と比べ、札幌市の気温は都市化によって上昇の傾向(いわゆる「ヒートアイランド現象」)がはっきりしており、朝の最低気温は昔と比べ数℃程度の上昇が見られ、そういった影響も無視できません。

昼間の気温については、平均気温ベースでは朝の冷え込みと比べはっきりした上昇は見られず、ヒートアイランド現象の影響が見えにくい状況が続いていますが、気象庁の分析によれば、夏の晴れて暑い日には札幌の都市部と周辺地域で2℃ほどの気温差があると指摘(ヒートアイランド監視報告, 気象庁, 2012年6月)されており、東京・大阪など主要な都市部で顕著な現象が、都市化著しい札幌圏でもやはり起きているようです。

札幌の様々な「気温」に関するテーマ・札幌における「ヒートアイランド現象」については、上記の記事で別途解説しております。