一般に冬は非常に寒い地域として知られる札幌市。
一方で、都市化によって気温が高くなりやすい。といった話もあり、近年は「寒いけど、寒い日は昔より減っている」というイメージを持たれる方も少なくないようです。
本記事では、札幌の「寒さ」について、寒い日を最もわかりやすく表す指標である「真冬日(最高気温0℃未満」・「冬日(最低気温0℃未満)」のデータを確認しながら、その状況や変化について見て行きます。
真冬日・冬日の平年日数は?
「寒い日」を象徴する気象データとして、「真冬日(最高気温0℃未満」・「冬日(最低気温0℃未満)」の観測日数(平年値)という基本中の基本とも言えるデータを見て行きます。
月 | 真冬日日数(平年値) | 冬日日数(平年値) |
---|---|---|
10月 | 0.0日 | 0.0日 |
11月 | 0.9日 | 9.7日 |
12月 | 9.5日 | 27.6日 |
1月 | 16.7日 | 30.6日 |
2月 | 13.3日 | 27.4日 |
3月 | 3.2日 | 23.3日 |
4月 | 0.0日 | 3.2日 |
5月 | 0.0日 | 0.2日 |
年間合計 | 43.6日 | 123.8日 |
札幌管区気象台の年間の平年値を見ると、12月から2月までは、最低気温が0℃以上になる日はほとんどなく、ほぼ全てが冬日となっています。真冬日についても、1・2月は1か月の半分くらいは観測されるのが一般的で、日本の中では極寒の地とは言わずとも、かなり寒い地域と言って差し支えありません。
全体としてみると真冬日は11月~3月頃、冬日は11月~4月(場合によっては5月)頃から観測される場合があり、1年の半分近くは霜や氷が見られる可能性のある時期となっています。
観測地点名 | 留萌 | 函館 | 苫小牧 | 室蘭 | 釧路 | 札幌 | 小樽 | 帯広 | 根室 | 倶知安 | 網走 | 稚内 | 旭川 |
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真冬日日数 | 27.3 | 28.0 | 30.9 | 32.2 | 40.8 | 43.6 | 47.5 | 49.6 | 54.9 | 65.1 | 71.4 | 72.6 | 73.7 |
冬日日数 | 134.5 | 121.0 | 140.2 | 106.3 | 145.8 | 121.8 | 123.5 | 152.5 | 134.5 | 153.9 | 146.2 | 130.8 | 157.6 |
北海道内の各地点と比較すると、札幌は必ずしも「一番温暖な場所」ではありません。
真冬日日数は札幌寄り緯度の低い道南方面、またはより沿岸部に位置し海からの比較的温暖な空気が流れ込みやすい留萌などでは札幌より少なくなっています。
札幌は「都市化」が進んでいる一方で、北海道内では特別に南側に寄った場所という訳でもありません。また、海からは少し(10km以上)離れており、海の風が当たる場所で観測する場合よりは昼間の気温は低めになりやすい傾向があります。
一方で、冬日日数で見ると、札幌は函館とほぼ同じで道内では最も少ないレベルとなっています。これは、まさに都市化によって朝の冷え込みが弱くなった状況を裏付けていると言えるでしょう。
観測地点名 | 福岡 | 大阪 | 東京 | 新潟 | 仙台 | 札幌 |
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真冬日日数 | 0.0 | 0.0 | 0.0 | 0.4 | 0.8 | 43.6 |
冬日日数 | 2.5 | 3.9 | 15.2 | 38.9 | 65.1 | 121.8 |
全国の各地と比較すると、札幌の寒さは他とは比べ物になりません。そもそも、西日本の大都市では「冬日」すらかなりまれな存在で、仙台のような比較的寒冷な地域まで行ってもなお、真冬日は1年に平均1回もない頻度であり、北海道・札幌は段違いに寒い場所であるということがはっきりしています。
寒い日が減った?観測日数の変化を見る
札幌の「真冬日」と「冬日」の状況について、平年のデータではなく、これまでの100年以上の歴史で観測されて来た日数全体を比較した場合、どのような傾向が見えて来るでしょうか。
都市化でどんどん減る冬日日数
まず、冬日(最低気温0℃未満の日)で見てみると、札幌の冬日は、かなりはっきりと減少傾向にあることが見て取れます。明治時代には年間160日以上が当たり前で170日以上の場合すらあったものが、平成以降は140日以上になる事はなく、平均120日前後となり、特に近年では100日程度の年すらあるなど、少なくとも25%以上冬日が減少しています。
この要因は、地球の温暖化・気候変動の影響もゼロではありませんが、どちらかと言えば「都市化」で冷え込みが弱くなった(ヒートアイランド現象)が最大の要因です。札幌の急速な都市化はとりわけ第二次世界大戦が終わる頃から進みましたが、ちょうどそれくらいの時期から減少ペースがより早くなっており、ビルやマンション、様々な店舗などが街を埋め尽くすようになるにつれて、一層気温の下がり方は鈍くなっていきました。
人工的な物体(建物など)は熱を溜め込みやすく、都心部ではビルなどが並ぶことで空が見える範囲が減り、空中への熱の放出も妨げられます。結果、夜になってからも都心部・市街地であるほどに冷え込みにくくなり、このような状況を招いてしまったのです。
減少傾向も年ごとの差が大きな真冬日日数
真冬日(最高気温が0℃未満の日)日数の変化をグラフ化しても、やはり長期的には減少傾向が際立っています。
但し、冬日日数と大きく異なる点は、冬日日数の場合、戦前など古い時代に観測されたような日数は近年一切記録されなくなっているのに対し、真冬日日数の場合は、年によって差が極端に大きく、近年でも古い時代に観測された日数より多くなることもある。という点が挙げられます。
すなわち、こちらは都市化のみならず、長期的な気候変動(温暖化)の影響の方も大きく、逆に言えば寒い年に当たれば近年でもある程度は真冬日が多くなり、暖冬であれば極端に真冬日が少なくなるというパターンが見られるということになります。
もちろん、都市化の影響も否定できませんが、朝の冷え込みほどにははっきりした傾向は見られません。
なお、札幌におけるヒートアイランド現象の詳細については、上記の記事でも詳しく解説しています。
市内・周辺地域でも観測日数は全く違う?
真冬日日数や冬日日数が減っていく傾向が見られる札幌のまち。一方で、このデータ自体は、札幌市の中央区、都心部に位置する札幌管区気象台で観測されたものです。
温暖化の影響も否定できないとは言え、どちらかと言えば都市化の影響の方がより大きいと言える札幌の気温上昇は、必ずしも札幌市内の「どこでも」同じような気温の変化が見られるとは限りません。
大まかに言えば、札幌市内やその近辺であっても、札幌都心よりは旭川に近いくらいの寒い地域・真冬日(冬日)日数である場所もあれば、昔と比べての冬日・真冬日日数の減少が札幌ほどの減り方ではない地域があるということになります。
気象データ自体は、札幌市の土木事務所でも観測が行われていますが、札幌管区気象台と比較する上で同じ条件ということ(気象庁が設置した観測機器)という意味で、札幌周辺の概ね30km前後の範囲にあるアメダス(気象観測施設)の平年データを見てみましょう。
観測地点名 | 札幌 | 厚田 | 小樽 | 山口 | 千歳 | 石狩 | 恵庭島松 | 長沼 | 江別 | 新篠津 | 支笏湖畔 |
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真冬日日数 | 43.6 | 46.3 | 47.5 | 45.8 | 51.1 | 53.1 | 56.3 | 60.1 | 62.2 | 64.4 | 66.7 |
冬日日数 | 121.8 | 144.2 | 123.5 | 138.3 | 158.8 | 140.0 | 159.3 | 146.9 | 151.5 | 148.1 | 145.3 |
地点標高 | 17m | 5m | 24m | 5m | 22m | 5m | 30m | 13m | 8m | 9m | 290m |
そもそも札幌が都心部で一番温暖である以上、それよりも寒い地域しかない。というのは当たり前と言えばそれまでですが、札幌から比較的近い場所であっても、札幌と比べてかなり多くの真冬日・冬日が観測されている地点があります。
支笏湖畔のような標高が高い場所で寒くなるのはもちろんの事として、江別・長沼といった平地であり、札幌と同じような標高が0mに近いような場所でも、観測される数字は札幌よりは旭川に近いものであり、都市化が進んでいない地域・自然が残る地域では気温は大幅に低くなっていることが伺えます。
札幌市内で考えた場合、札幌駅・大通駅周辺の都心部から離れていくほどに気温は下がる傾向にありますので、川下など白石区の郊外寄りの地域、厚別区方面、南区の山沿いの地域、またあいの里方面など北区の北側の地域などへ行くと、やはり気温は大きく異なります。「札幌管区気象台」を基準とした気温のイメージだけで捉えると、郊外へ行くほど体感との差が大きくなっていくのです。
札幌の様々な「気温」に関するテーマについては、上記の記事で別途解説しております。