札幌の「猛暑日」について【過去の観測記録・気温が上がる条件を考える】

自然・気候

札幌の夏。と言えば、気温は本州と比べかなり涼しく、「避暑地」は言い過ぎかもしれないとしても、しのぎやすく過ごしやすい地域である。そういったイメージを持つ方が多いかもしれません。

こちらでは、観光をする際にも知っておきたい札幌の夏の「暑さ」について、最も暑い日の区分である「猛暑日(最高気温35℃以上を観測した日)」というテーマに絞ってその頻度・過去の観測事例などを見ていきたいと思います。

札幌で「猛暑日」となった回数は?

札幌の「猛暑日」。こう言うと、涼しいイメージがある以上余りしっくり来ないかもしれませんが、札幌でも「かなり少ない」とは言え、過去に観測されたこと自体はあります。

但し、日数が少なく毎年のことではありませんので、グラフ化するほどのこともありません。明治時代に観測が開始されてからの全ての猛暑日日記録は、以下の通りです。

2023年2日観測36.3℃(8月23日・観測史上最高)・35.0℃(8月24日)
2021年3日観測35.1℃(7月28日)・35.0℃(8月6日)・35.0℃(7月19日)
2000年2日観測36.0℃(7月31日)・35.9℃(8月1日)
1999年1日観測35.2℃(8月8日)
1994年1日観測36.2℃(8月7日)
1978年1日観測35.2℃(8月3日)
1972年1日観測35.1℃(8月7日)
1950年1日観測35.1℃(7月22日)
1943年1日観測35.8℃(7月21日)
1924年1日観測35.5℃(7月11日)

これまで札幌の気象台で真夏日が観測された日数は、100年以上の歴史の中でわずか10日少々です。

頻度で見ても、2001年から2020年、1951年から1971年までといったように、20年以上観測されない期間があるように、真夏日自体は極めて「レアケース」と言えます。また、多くの年で年1日だけの観測であり、2021年に3日も観測されたケースが「過去最多」の年間観測日数となっています。

気温の幅で見ても、首都圏や京阪神で時に見られるような40℃に迫る暑さではなく、最高気温の最高記録で36.3℃と、流石に北の大地ということもあり、本州の主要都市ほどの高温記録にはなっていません。

なお、2021年・2023年のデータだけを見ると、「温暖化=猛暑の増加」の影響が感じられるようにも見えますが、過去30年単位など全体として見た場合、最高気温30℃以上の「真夏日」は増加傾向にある一方、30℃を大幅に上回る特別に高い気温・猛暑日がはっきり増えているデータはまだ明確には見えてきません。札幌の気温上昇は「最低気温」データや「夏日・真夏日日数の増加」で見ればはっきりしていますが、猛暑日に関するデータから急速な温暖化の傾向を見出すようになるのは、もう少し猛暑日日数が頻繁に観測されるようになってからと言えそうです。

札幌で猛暑日となる条件は?

かなり珍しい「札幌の猛暑日」ですが、このような条件になるケースとは、一体どのような気圧配置・大気の特徴があるのでしょうか。

2021年7月19日の天気図
2021年7月28日の天気図
2021年8月6日の天気図
各天気図の出典:気象庁「日々の天気図」(https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/hibiten/index.html)※トリミングの上利用

上記の天気図は、過去最多年間3日の猛暑日を観測した2021年、その猛暑日を観測した日の天気図です。この時期は、猛暑日以外にも最高気温30℃以上の「真夏日」が札幌の観測史上最長となる18日連続に達し、今までにない暑さが続く「異常気象」となりました。

いずれの天気図を見ても、「梅雨前線(秋雨前線)」が日本付近に見えず、太平洋高気圧の影響を受けやすい気圧配置になっています。また、北海道の北側や中国大陸方面には、低気圧が見られることも通常少なくありませんが、低気圧はシベリア方面などに見られるのみで、高気圧の影響が広範囲に及んでいます。そして、北海道に冷たい空気をもたらす「オホーツク海高気圧」の存在もはっきりしておらず、勢力の弱い台風が日本周辺を進む中で南寄りの風をもたらしやすいことで、暖かい空気が入りやすい状況になっています。

特に、7月28日については、北海道の南にそれほど勢力の強くない台風が接近しており、この台風から南風が吹き込んだことで胆振方面から山を越えた風が熱風となって吹き込む「フェーン現象」が生じ、気温をより上昇させることになりました。

地上の天気図だけでは読み取れない内容としては、この年はアフリカ・南アジア方面から日本付近の広範囲を覆うことがある「チベット高気圧(この高気圧は地上付近ではなく、高度10km以上など「高層」のみ観測される高気圧)」が、北海道付近にまで影響を及ぼしていた状況もありました。地上から概ね高度5km少々まで影響を及ぼす「太平洋高気圧」、更にその上空を覆う「チベット高気圧」、この高気圧のダブル効果、そして台風などから吹き込む南風によって、札幌では観測史上最長となる18日連続の真夏日と、3日間の猛暑日が観測されることになったのです。

札幌の様々な「気温」に関するテーマ・札幌における「ヒートアイランド現象」については、上記の記事で別途解説しております。