こちらのページでは、近畿地方では最も西側に位置する「兵庫県」について、「雪」の降る・積もる傾向などを地域ごとに見ていきます。
掲載情報は2023年時点のものです。その後状況が変化していく可能性もありますので、その点はご留意下さい。
兵庫県内「雪に関する基本データ」
観測地点名 | 年間降雪量 (cm) | 年間最深積雪 (cm) | 積雪5cm≧ 年間平年日数 | 年間降雪日数 | 過去最大の積雪深 (cm) |
---|---|---|---|---|---|
神戸 | 1 | 1 | 0.0 | 26.9 | 17(1945/2/25) |
豊岡 | 204 | 45 | 34.2 | データなし | 186 (1936/2/3) |
香住 | 202 | データなし | 23.3 | データなし | 140(1985/1/14) |
兎和野高原 | 669 | 124 | 84.6 | データなし | 208(2022/2/24) |
和田山 | 170 | 29 | 17.0 | データなし | 80(2000/2/17) |
【参考】東京 | 8 | 6 | 1.2 | 8.5 | 46(1883/2/8) |
兵庫県内では、気象庁による積雪などの観測は南部は神戸地方気象台の1か所のみ、北部は豊岡など4か所の計5か所で実施されています。
神戸と北部の観測地点の状況は比較にならないほどの違いがあり、神戸は実質的にほぼ雪が積もらない状況に近い一方で、北部では数十cm単位の積雪が一般的に見られ、兎和野高原のような山地では1m以上の積雪も珍しくないなど、極端な差があります。
豊岡の平年の年間降雪量は200cmを越えており、山地を除く主要な気象観測地点として見た場合、豊岡は京都府京丹後市の峰山と並び、西日本では最も雪が多い水準となっています。
兵庫県内「地域ごとの雪の傾向・降る要因」
兵庫県内の雪事情について、「地域ごと」の大まかな傾向・「降る要因」をまとめると、下記のような形となります。
阪神・神戸地域
雪の量 | ・海沿いほど少なく、ほとんど積もらない地域もあり ・神戸や阪神エリアの都市部では5cm以上の積雪は極めてまれ(ほぼ見られない) ・猪名川町や三田市の山地など北側は時折まとまった積雪が見られる ・六甲山上など標高が特に高い場所は環境が異なり、時に積雪が多くなる場合あり |
雪の頻度 | ・全体的に少なく、基本的に南側ほどより少ない ・平地では雪がほとんど降らない年あり ・冬型の気圧配置が多い年は、猪名川町や三田市の山地などはやや頻繁に降る場合あり |
雪の時期 | ・まれな雪は12月~2月が大半 ・3月の雪は少ない ・六甲山上など特殊な環境では3月の雪も珍しくない場合あり |
雪の要因 | ・降る場合「冬型の気圧配置」が大半 ・「南岸低気圧」による雪はより少ない(六甲山上などは状況が異なる場合あり) ・神戸方面など沿岸部で積雪となる事例は、「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」の影響が大きい |
神戸市の「雪事情」については、上記の記事で別途解説しております。
播磨(播州)地域
雪の量 | ・南北で地域差がかなり大きい ・瀬戸内海沿岸は雪が積もること自体少なく、5cm以上の積雪はかなりまれ ・最も積雪が少なくなりやすい地域は加古川、明石方面 ・特に西播磨側は中国自動車道沿いより北側で雪が積もる量が増えやすい ・同じ「緯度」であれば佐用、宍粟より西脇方面の方が雪が少な目 ・宍粟市の北部は実質「但馬地域」に準ずるレベルで数十cm~の積雪も見られる地域 ・宍粟市の北部は「戸倉峠」周辺など標高が高い場所の場合根雪も一般的 |
雪の頻度 | ・南北で地域差がかなり大きい ・瀬戸内海沿岸は降ることも含めまれな地域、ほとんど雪が降らない年もあり ・北側へ行くほど雪が降る頻度は増える傾向 ・宍粟市の北部や多可町、神河町などは暖冬でない限り降雪は一般的 |
雪の時期 | ・降る場合12~2月が大半 ・山地では3月の雪も一般的 ・宍粟市北部山間部の一部などでは、根雪が長期間残る場合あり(3月以降のケースも) |
雪の要因 | ・「冬型の気圧配置」による影響が大半 ・北から雪雲が強い風に乗って入る際に雪が降りやすい(西風の冬型では通常降らない) ・「南岸低気圧」はよりまれな現象 ・姫路方面など瀬戸内海沿岸部の積雪、内陸側の集中的な大雪といった現象は「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」の影響が大きい |
姫路市の「雪事情」については、上記の記事で別途解説しております。
丹波地域
雪の量 | ・阪神地域など瀬戸内海沿岸と比べると多い ・但馬地域と比べると少ない ・平地でも年によっては時折10~30cm程度の積雪があり得る環境 ・北側ほど雪が降りやすく、丹波篠山市よりは丹波市の雪が多め ・平地で根雪となることは通常ない(山地は根雪となる場合あり) |
雪の頻度 | ・雪が降ること自体は特段珍しくない地域 ・年ごとの差が大きい ・よく降る年は何度も「積もる雪」が降る場合あり |
雪の時期 | ・主に12月~2月 ・3月の雪は近年は目立たない(山地では降雪も一般的) |
雪の要因 | ・「冬型の気圧配置」による影響が大半 ・北寄りの風が強い場合に雪が降りやすい(西風の冬型では通常降らない) ・「南岸低気圧」による雪の割合は少ない ・集中的な大雪は「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」の影響が大きい |
淡路地域
雪の量 | ・全域で少なく積もることもまれ ・平地で5cm以上積もるケースは非常に少ない ・山地でもまとまった量の積雪は見られにくい |
雪の頻度 | ・降ること自体が少ない地域 ・暖冬の年などほぼ一切雪が降らないことも ・強い冬型の気圧配置が多い年などは時折降る場合あり ・洲本より岩屋の降雪がより少ない傾向があるなど若干の地域差あり |
雪の時期 | ・主に12月~2月 ・3月の雪は非常に少ない |
雪の要因 | ・まれな雪は「冬型の気圧配置」によるケースが目立つ ・強い寒気の流入などで「播磨灘」で雪雲が生じ洲本などにまれな雪をもたらす事例あり ・「南岸低気圧」による雪はゼロではないものの、一層まれな現象 |
淡路島の「雪事情」については、上記の記事で別途解説しております。
但馬地域
雪の量 | ・豪雪地帯のため増えやすい ・平地では数十cm程度、山地では1m以上の積雪が一般的に見られる場合あり ・平地で1m以上積もるケースは近年まれ ・氷ノ山周辺など標高が高い場所は「豪雪年」には2~3m台の積雪もあり得る ・山地では根雪が一般的、平地の根雪は近年まれ ・寒気の程度によって沿岸部では積もらないみぞれや雨、山沿いのみ大雪のケースあり |
雪の頻度 | ・暖冬でない場合は繰り返し何度も「積もる雪」が降りやすい ・気圧配置によっては連日雪が降るようなケースも ・暖冬年は日本海側であっても雪の頻度が少ない場合あり |
雪の時期 | ・主に12月~2月 ・3月の雪は平地では近年少な目、山地では一般的 ・山地の根雪は4月以降も残っている場合あり |
雪の要因 | ・「冬型の気圧配置」による影響が大半 ・西寄りの風では沿岸部に近い地域、北寄りの風では内陸側で雪が降りやすい ・集中的な大雪は「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」の影響が大きく、1日で50cm以上積もるケースも ・「南岸低気圧」による雪の割合は小さい |
豊岡市・養父市・香美町の「雪事情」については、上記の記事で別途解説しております。
兵庫県の雪事情「ここがポイント」
日本有数の「南北差」
兵庫県は、但馬地域や播磨地域北西部・丹波地域の一部は豪雪地帯であり、県の北側はかなり雪深い場合があります。
一方で、神戸の雪は沿岸部では福岡・京都・広島・名古屋・東京など太平洋側の各地と比べても更に大幅に少ないと言える状況で、日本屈指の雪の少ない地域となっています。
豪雪地~雪がほとんど積もらない場所は100kmも離れておらず、「冬型の気圧配置」の際に車で県内の南北を移動していると、全く雪がない風景から急激に豪雪・大雪の風景へと変化する場合があり、交通への影響も地域によって全く異なります。
同じ県内でこれほどの差が見られるケースは、岡山県・広島県・群馬県・栃木県など国内でも一部に限られます。
瀬戸内海・日本海という全く異なる環境の双方に接している地理的特徴が、この南北差を生み出す要因となっています。
JPCZの影響を比較的受けやすい
兵庫県は、但馬地域を中心に「強い冬型の気圧配置」には日本海で異なる向きの風がぶつかって発生する巨大な雪雲の塊・帯である「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」の影響を比較的受けやすい地域です。
JPCZの雲は風向きによって「上陸」する場所は様々ですが、北西方向などから雲が入る場合などは兵庫県内を直撃し、豊岡など但馬地域の平地でも1日30cm以上、まれに1日50cm以上のドカ雪となる場合があります。
雲の帯は基本的に内陸側へ行くと弱まりますが、JPCZの雲は通常よりも強く大きいため南側まで入りやすく、丹波地域や播州地域の内陸側で大雪をもたらしたり、ごくまれに神戸・阪神地域にも積雪をもたらす要因となることがあります(神戸で21世紀以降の記録的積雪となった2005年12月・2023年1月の事例はいずれもJPCZによる影響)。
関西で一番雪が多い県?
兵庫県は、雪が多く降る地域の「面積」で見た場合、その広さは京都府と大きな違いはありませんが、関西(近畿地方)で最も雪が多く降るエリアが広い県と言えます。但馬地域の全域のみならず、播磨北西部にあたる宍粟市北部、丹波市の北部といった地域も雪がかなり多くなっており、比較的広い県の面積の3分の1程度は豪雪地帯となっています。
一方で、人が住むような地域について個別の「積雪深」で見た場合、関西では唯一「特別豪雪地帯」に指定されている滋賀県長浜市では、余呉地域の一部(中河内)において兵庫県内の山間部以上に雪が多いと推定される場所が見られます。但し、兵庫県側もハチ高原周辺などは標高が高い関係上、積雪も滋賀県の特別豪雪地帯に匹敵する多さとなるため、ピンポイントで見た雪の多さは判断が難しいと言えるでしょう。