福島県の「気候の特徴」とは?季節ごとに詳しく解説

自然・気候

東北地方の最も南側に位置し、東西に比較的広い面積を持つ「福島県」。こちらでは、福島県の気候の特徴について、全体的な特徴や季節ごとの傾向などを詳しく解説していきます。

福島県の気候「全体的な特徴」

福島の雨温図
若松の雨温図
小名浜の雨温図
白河の雨温図

福島県は、東北地方の南部に位置する県で、地理的には県西部は太平洋に面している一方、東西に150㎞程の幅を持つため、必ずしも全域が「太平洋側」と言う訳ではありません。

県内は南北に阿武隈高地・奥羽山脈が、また西部には飯豊山地・越後山脈の山々もそびえており、いわき方面などの浜通り、福島盆地・郡山盆地(中通り)、会津盆地といったそれぞれ人口が多いエリアは比較的離れた位置関係となっています。

気候は東北地方ということで本州南部と比べ気温は低めの傾向がありますが、標高の高い地域を除いては夏は暑く、平地は特に寒冷地とは言えません。

降水量や冬の雪の量は地域差が大きく、日本海側の気候的特徴が見られる会津地方は冬は豪雪となることもある一方、太平洋側気候の特徴が強い沿岸部(浜通り)は冬は乾燥し雪が少なく、夏から秋の雨量が増えやすいなど、同じ県でも全く違う環境となっています。

福島県「季節ごとの気候」

【春の気候】東北の中では季節の進みが早い

福島県の春は、首都圏や京阪神と比べると少し気温が上がるペースが遅れますが、平地や沿岸部は春らしさを感じやすく、1年の中では最もよく晴れる(日照時間が長い)シーズンにもなります。気温は4月中から汗ばむ陽気になる場合もあり、気温が上がりやすい福島市周辺(県北地域)では、春の間に最高気温が30℃以上の真夏日になることも毎年のように見られます。

なお、春の天気は周期的に変わり、基本的には安定した天候となる場合が多い一方、発達しながら日本海や北日本などを通る低気圧の影響を受け、頻度が多い訳ではありませんが、時に一定の強風となる場合があります。

福島気象台の「風速」の記録を見ると、強い風の記録の上位に3月・4月が多く並んでいます。観測史上最大の最大瞬間風速は1979年3月31日の32.2m/s(西)。その他3番目・5番目・6番目・7番目・10番目も春に観測されており、頻度として生活に支障が出るようなことは少ないですが、春は比較的風が強く吹きやすいシーズンと言えるかもしれません。

なお、3月中は雪が降ることもあり、低気圧の影響を受けやすい沿岸部や中通りエリアでは、3月に雪のピークが見られる年も一部で見られます。また、会津地方の山間部では冬の間に降った根雪が残り、只見・檜枝岐方面では4月になっても1~2mの積雪が残っていることもごく一般的です。

桜の開花は本州南部と比べると10日前後遅れますが、東北地方では最も早い部類にあたり、近年では3月中に開花することもあります。

福島市の桜(平年値)
開花日4月9日
満開日4月13日

【夏の気候】中通り・浜通りは日照不足の場合も

福島県の夏は、中通りや会津地域で気温が比較的上がりやすく、夏らしさを感じる日々が続くことも多いですが、太平洋に近いほど海からの気流の影響を受け、気温の上昇は抑えられる傾向があります。

気温は県北地域・福島市内で特に上がりやすく、盆地地形で熱が溜まりやすく、阿武隈高地などを風が吹き抜けるフェーン現象の影響を受けることから猛暑日になることも珍しくありません。

梅雨は東北地方ということで西日本などと比べると少し遅めの梅雨入りとなることが多く、7月に雨量がまとまりやすい傾向があります。また、8月にかけても比較的雨量が多めの地域が目立ち、梅雨前線に引き続き秋雨前線の影響を受けるような場合もあります。

晴れ間・日照時間は地域差があり、日照時間の平年値で見ると気温が高めの中通りでは意外にもやや短めで、会津で日照時間が長くなる傾向が見られます。中通り・浜通りについては、宮城県方面から冷たい北西の風「やませ」の影響を受けて時折かなりの日照不足となることがあり、それが日照時間の「平年値」の数字を押し下げています。

近年で最も「やませ」の影響が大きかった2017年8月は、福島の日照時間は1か月でわずか52.7時間。海沿いの小名浜の89.1時間よりも大幅に短く、やませの影響が小さい会津若松の139.6時間と比べると半分以下と、県内でも大きな気候の差が生じました。

【秋の気候】沿岸部を中心に雨がまとまりやすい・台風被害も

福島県の秋は、9月にかけては比較的平地で残暑が厳しくなる場合がありますが、10月からは本州南部と比べ秋らしさ・冬の兆しを早めに感じやすい気候となっています。紅葉も早く、自然が多いことから見どころが非常に多い地域でもあります。

初霜・初氷は平地では概ね11月、内陸部や山間部では10月に見られる場合が多く、近年頻度は減っていますが、福島・会津若松市内では11月中に積雪が記録されることもあります。

秋の降水量は地域差があり、中通り・浜通りでは10月中までは比較的多い傾向があり、特に浜通りでは10月の平年降水量が200㎜以上と梅雨時を上回る数字である、雨のピークは秋になっています。

雨については台風の影響による部分も大きく、過去には水害・土砂災害をもたらすような台風が複数回来襲しています。大雨は特に太平洋沿岸部(浜通り近く)を縫うように通過する台風で生じる傾向があります。

2019年の19号台風(東日本台風)による被害は記憶に新しく、中通り・浜通り一帯で多くの河川が氾濫し、県内では30人以上の犠牲者・15000棟以上の建物が全半壊という大災害となりました。

【冬の気候】県内の気候差が非常に大きい季節

福島県の冬は、東北地方と言うことで本州南部と比べ寒冷な傾向がはっきりしていますが、海からの気流の影響を直接受ける浜通り地域は南側を中心に寒さが抑えられやすいほか、気候を見ていくと県内各地で大きな差が見られます。

雪については、「冬型の気圧配置」で季節風・寒気の影響を受けやすく、日本海側の気候的特徴がはっきりしている県西部会津地方では豪雪・まとまった雪となることも多く、越後山脈や飯豊山地沿いは日本国内有数の豪雪地帯となっています。

地点年間最深積雪平年値1月日照時間平年値
只見231cm34.1時間
桧枝岐222cm48.8時間
南郷166cm55.1時間
金山162cm39.3時間
猪苗代90cm84.5時間
若松59cm78.0時間
福島26cm132.2時間
白河25cm151.4時間
小名浜5cm193.4時間

雪の量は一部標高の高い地域を除いては、ほぼ西から東に進むにつれてどんどん減っていくというわかりやすいパターンが見られます。

会津地方でも会津若松市内と檜枝岐村や只見町では積雪量が桁違いであることは当たり前であるほか、中通りまで行けば雪の影響はやや減っていき、浜通りでは雪の影響がほとんどない期間が多いなど、県内の「雪事情」とそれに伴う生活スタイルには大きな差があります。

中通り・浜通りは冬に乾燥し晴れる日も多く、とりわけ浜通りでは昼間が短い季節でありながら日照時間が1年で最も長いことが多いなど、首都圏の気候的特徴とも近い地域と言えるでしょう。

なお、浜通り(太平洋側)や中通りでまとまった雪となる場合は、関東などに雪をもたらす「南岸低気圧」の影響を受ける場合が多くなっており、こちらもやはり首都圏などと似た特徴を持っています。

福島県の気候トピック

無視できない「やませ」の影響

東北地方の太平洋側は、夏に太平洋高気圧が弱い場合に「オホーツク海高気圧」から吹き出す湿った北東の風「やませ」の影響を強く受ける場合があります。

福島県内についても、宮城・岩手県内と同様「やませ」の影響は大きく、海に面した浜通りのみならず、福島市など中通りでも「やませ」で曇りや雨が続き、日照不足と低温に見舞われる年が時折見られます。

冬用タイヤは必須

福島県内は、先述した通り冬の「雪」は東西で極端に状況が異なりますが、基本的に冬用タイヤの装備は必須です。

とりわけ、中通りについては雪が会津地方よりは少ないとは言え、特に福島市周辺などは毎週のように雪が積もったり、特に寒い年は根雪になることもあるなど、雪は身近な存在です。

浜通りについても、南側は特に雪が少ないとは言え、路面凍結のリスクや県内各地への移動を考慮すると、ノーマルタイヤはリスクが大きすぎると言えるでしょう。

猪苗代湖のしぶき氷

県中央部に位置する猪苗代湖は冬になると湖面が全面結氷することはない一方で、季節風に舞い上げられた湖の水が、水辺の木々などに吹き付けられてそのまま凍るという「しぶき氷」が見られることがあります。

この現象は、「湖自体が凍らないこと」や「地上に舞い上げられた水が凍りつく寒さ」が条件であるなど国内でも比較的珍しい存在で、この現象自体が一つの観光資源にもなっています。

東北地方各県の気候については、別途上記の各記事で詳しく解説しております。