日本の首都である東京(23区・特別区エリア)は、気候は概ね温暖で、冬場は乾燥した晴れの天気が続きやすい特徴があります。一方で「雪」については降る機会はかなり少なく、基本的に珍しい存在ですが、例えば大阪などと比べれば積もる機会はまだ多く、少ないながらも積もることはある地域です。
こちらでは、東京23区内の「雪事情」について、基本的な傾向(降る・積もる状況など)を解説していきます。
※当記事内の情報は主に東京23区、とりわけ東京の観測地点(気象庁)における「過去の一般的な傾向」を解説するものです。実際の状況はその時々の気象条件・地域に応じ異なります。
雪の降る時期は?
11月 | ・基本降らない ・過去に一度だけ積雪記録有り(2016年11月24日) |
12月 | ・ほとんど降る機会がない ・「積もる雪」は10年に1回すら見られないような頻度 |
1月 2月 | ・まれに雪が降る場合あり ・大半の年で1〜2月の間に一度は「積もる雪」となる ・気圧配置次第では複数回まとまった雪が降る年も ・まれに積雪が一度も記録されない場合も |
3月 | ・ごくまれに雪が降る場合あり ・一部の年で「積もる雪」となる場合も |
4月 | ・過去に雪が降った、積もった記録あり ・頻度としては極めてまれ |
東京23区内は、雪が降る機会は少ない環境ですが、「全く降らない」という訳ではありません。
ごく一部の年では、ほとんど雪を観測しないこともありますが、基本的には多くの年で、少なくとも一度は「雪が降った」と「体感」出来る程度の雪が降ることはあります。
東京の雪は、後述の通り「南岸低気圧」の状況次第ですので、一部の南岸低気圧が通過する頻度が多く、寒気の影響も受けやすいシーズンの場合、雪がまとまって降る機会が複数回見られる年もあります。
なお、降る場合は「舞う程度」といった降り方よりは、ある程度の時間「しっかり降る」ような降り方となるケースが多くなっています。
雪の量はどのくらい?
一般的な「積もるケース」 | ・ごくうっすら〜10cm未満程度 ・1cmに満たないような「ごくうっすら」の観測機会もあり ・23区内であれば「5cm以上」のケースは大雪の扱い |
「まれな大雪」となるケース | ・10cm以上積もる ・ごく一部のケースで20cm以上の場合も ・気温が低い場合日陰でしばらく残りやすい |
備考 | ・積雪は1シーズンに複数回観測される年もあり ・まれに一度も積雪しない年あり |
東京23区内では、「一度は積雪する」年の方が多くなっています。
雪が全く積もる機会がない年と、複数回積もるような年であれば、複数回積もる年の方が多めです。
積もる場合、頻度としてはごくうっすら〜10cm未満の積雪に収まるケースが多くなっています。
一部の年では、気温が低い状況や降る強さ・時間の状況などに応じ、10cm以上のしっかりした「大雪」に見舞われる場合もあります。都心で20cm以上積もるケースは、平均すれば10年に1回あるかないかといった状況で、ごく一部のまれな現象ですが、そういった事例も全くない訳ではありません。
■雪に関する基本データ
降雪の深さ (cm) | 最深積雪 (cm) | 積雪0cm以上 (日) | 積雪1cm以上 (日) | 積雪5cm以上 (日) | 積雪10cm以上 (日) | 積雪20cm以上 (日) | 降雪日数 | |
11月 | — | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
12月 | 0 | 0 | 0.2 | 0.1 | 0 | 0 | 0 | 0.6 |
1月 | 4 | 3 | 1.7 | 1.4 | 0.7 | 0.2 | 0.1 | 2.8 |
2月 | 4 | 3 | 1.5 | 1.1 | 0.5 | 0.4 | 0.2 | 3.5 |
3月 | 0 | 0 | 0.4 | 0.2 | 0 | 0 | 0 | 1.4 |
4月 | — | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0.1 |
年 | 8 | 6 | 4 | 2.8 | 1.2 | 0.5 | 0.2 | 8.5 |
雪が降る条件は?
南岸低気圧(ほとんどのケース)
頻度 | ・少ないが、東京の雪はほぼ全て南岸低気圧が要因 ・大半の年で一度は積もる雪をもたらす ・影響を受けやすい年は複数回、何度か雪をもたらす場合も |
要因 | ・太平洋上を低気圧が通過し、北から寒気がしっかり入る場合に低気圧の北側の雲により雪が降る ・ごく小さな気圧の谷程度のケース、低気圧が明瞭でない前線の影響を受けるケースも |
雪の降り方 | ・低気圧の規模、速度により雪が降る時間は様々 ・数時間程度のこともあれば、過去には丸1日程度雪が降ったことも ・寒気の状況次第では、雨〜みぞれ〜雪に途中で変化する場合も多い |
積雪の量 | ・ごくうっすら〜まれに10cm以上〜極めてまれに20cm以上など様々 |
南岸低気圧は、東京に雪をもたらす基本的、かつ最大の要因です。
あくまでも頻度自体はそれほど多いとは言えませんが、大半の年で一度は南岸低気圧によって積もる程度ような雪に見舞われ、何度か雪となる年もあります。
南岸低気圧といってもバリエーションは様々で、発達するもの・しないもの、寒気が強めのもの・それほど強くないもの、関東沿岸すぐの場所を通るもの・比較的離れた場所を通るものなど、ケースによって雪の状況は大きく変化します。
東京の場合、それほど気温が低い地域ではないため、最初から最後まで「しっかりした雪」で降るとは限らず、雨から雪へと変わって行ったり、逆に雪から雨へと変わって行ったりするケースも目立ちます。
雪の積もり方も状況に応じ様々で、雪が長期間降る場合でも、気温が1℃程度など高めの場合、大量には積もらないことがある一方、まれに氷点下で降る場合などは、短時間でも比較的まとまった雪となることもあります。
シアーライン
頻度 | ・極めて少ない ・影響を受けるほど降るケースは、南岸低気圧と比べてもかなり少ない(概ね数年に1回あるかどうか) |
要因 | ・異なる風向きの風がぶつかることで上昇気流→雲が発生 ・冬型の気圧配置に切り替わるタイミングで見られることが大半 |
雪の降り方 | ・比較的短時間雪が降る場合が多い ・降り方は弱い場合も、かなりしっかり降る場合も |
積雪の量 | ・ほぼ全てうっすら〜5cm未満 |
シアーライン型は、南岸低気圧よりも更にまれな現象であり、積もるようなケースは数年に一度あるかどうかといった状況ですので、そこまで注目される存在ではありません。
降る要因は南岸低気圧とは全く異なり、冬型の気圧配置に切り替わるタイミングなどに、異なる風向きの風がぶつかることにより雲が生じ、主に関東北部周辺から雲が南下する形で、東京付近でも雪を降らせると言うパターンです。なお、積もるほどの雪にはならない場合も目立ちます。
長時間降り続くことはなく、積もってもうっすら程度の場合が多いため、極端に大きな影響はもたらしませんが、南岸低気圧と比べ局地的で直前まで予測がなされないケースもあるため、極めて頻度は少ないとは言え、「意外性の雪」をもたらす事例も存在します。
各地との地域差は?
大阪と比較 | ・東京の方が雪の頻度、積もる量はかなり多い |
名古屋と比較 | ・名古屋の方が雪がの頻度、積もる量はやや多い ・雪の要因は異なる場合が多い |
福岡と比較 | ・雪が降る頻度は福岡の方が多い ・雪が積もる量は東京の方が多くなりやすい |
仙台と比較 | ・仙台の方が雪の頻度、積もる量は圧倒的に多い |
首都圏エリア | ・内陸側、山に近いエリアと比べ雪は少なめ(例:八王子) ・横浜とはほぼ同じ傾向 ・さいたまとも大きな差なし ・千葉とは雪のタイミングが大きく異なる場合あり |
東京23区内の「雪」を、様々な地域と比較した場合、東京より雪が多い場所もあれば、一層少ない場所もあります。
わかりやすいのは大阪との比較であり、大阪は東京と比べても極めて雪が積もりにくい場所であるため、東京の方がまだ雪の機会が多い状況となっています。
首都圏一帯で見た場合、横浜やさいたまとの地域差は余り見られませんが、八王子など内陸側よりは雪の機会が少なくなっており、千葉とは異なるタイミングで雪が積もることがあるなど、それほど離れていないエリアであっても、相応の地域差が生じることはあります。
東京23区内での差はある?
23区内で積雪がやや増えやすい地域 | 練馬区・杉並区など特に内陸側の地域 |
23区内で積雪がやや少なくなりやすい地域 | 東京湾岸周辺・羽田空港 |
その他状況 | 過去に「大手町」と「北の丸公園」で比較観測を実施した際に差が生じたことから分かる通り、公園(緑地)などの自然の多い環境では多く積もりやすい場合あり |
東京23区内で雪が降る場合、23区内という範囲内であっても、雪の状況には差が生じる事が一般的です。
大まかには、練馬など内陸側の地域は、都心と比べ気温がやや低くなりやすいため、同じように雪が降る天気でも、より積雪は多くなることがあります。また、海に直接面するような地域は、海からの影響を受けるため、23区内では最も雪が増えにくい・積もりにくいと言えます。
頻度として多いとは言えませんが、一部の事例では23区内でも「積雪ありの場所」と「積雪なしの場所」に分かれたこともあるため、どこでも同じように雪が積もるとは限りません。