東京と横浜。近い距離にあるため一般的に気候は比較的似ているとされることがほとんどです。
こちらでは、東京でも横浜でも見られる機会はまれな「雪」というテーマについて、東京・横浜の雪の量や頻度を比較して見ていきます。
【注意点】雪は基本的に少ない・比較は「相対的基準」
東京、横浜の「雪事情」を比較する上での基本は、当たり前のことですがどちらの都市であっても雪はそう多くない、少ない傾向があるということです。
まれに20cm級の大雪に見舞われることは確かにありますが、それは毎年のことではなく、かなりまれなケースです。
雪をもたらす「南岸低気圧」の影響を受けにくい年は、東京・横浜のいずれも「一度も雪が積もらない」年すら見られます。
比較をするというのは、全体的に「少ない」中でも、どのような違いがあるのか、ないのかという点を見るという意味であり、2つの都市に劇的な違いがある訳ではありません。
気象庁の基本データで雪の量を比較する
観測地点 | 平年降雪量 | 平年最深積雪 | 平年降雪日数 |
---|---|---|---|
東京 | 8cm | 6cm | 8.5日(目視観測) |
横浜 | 9cm | 7cm | 17.7日(自動観測) |
観測地点 | 積雪0cm≧ 平年日数 | 積雪1cm≧ 平年日数 | 積雪5cm≧ 平年日数 | 積雪10cm≧ 平年日数 | 積雪20cm≧ 平年日数 |
---|---|---|---|---|---|
東京 | 4.0日 | 2.8日 | 1.2日 | 0.5日 | 0.2日 |
横浜 | 3.9日※参考値 | 2.4日 | 1.5日 | 0.8日 | 0.2日 |
※積雪0cmは気象庁の定義として「1cmに満たないが積雪がある(地表の半分以上が白い)状態」
観測地点 | 初雪平年日 | 終雪平年日 |
---|---|---|
東京 | 1月3日 | 3月9日 |
横浜 | 12月15日 | 3月19日 |
気象庁の最も基本的なデータと言える「平年データ」で見た場合、年間あたりの「雪」に関する量や頻度は上記の通りです。
東京・横浜の「観測地点」の比較で見た場合、平年値自体にそれほど差はなく、ほとんど同じ状況に近いと言えます。
唯一差が目立つは「降雪日数」の項目ですが、こちらは観測の方法が東京は「目視」、横浜は「自動(計算)」と大きく異なり、基本的に自動観測の場合日数がずいぶん多くなる傾向があるため、必ずしも横浜で雪が降りやすいという意味は持ちません。初雪から終雪までの期間が横浜の方が明らかに長いのも、自動観測の影響と推定されます。
過去の積雪記録を具体的に比較する
東京・横浜の「観測地点」のデータについて、「各年ごと」の降雪量・最深積雪をそれぞれ比較してグラフに表すと、下記のような形となります(2023年冬までのデータ)。
各年ごとの「年間降雪量」
年間に降った雪の量を合計した年間降雪量は、多くの年で東京・横浜のデータは比較的近い数字となっています。細かく見れば差はありますが。いずれかの都市だけが突出して多いような年はほぼ見られません。
年 | 東京 | 横浜 |
---|---|---|
2001年 | 12cm | 30cm |
2002年 | 0cm | 0cm |
2003年 | 3cm | 3cm |
2004年 | 0cm | 0cm |
2005年 | 6cm | 3cm |
2006年 | 12cm | 11cm |
2007年 | なし | なし |
2008年 | 4cm | 7cm |
2009年 | なし | なし |
2010年 | 2cm | 1cm |
2011年 | 2cm | 4cm |
2012年 | 6cm | 5cm |
2013年 | 8cm | 13cm |
2014年 | 49cm | 44cm |
2015年 | 3cm | なし |
2016年 | 6cm | 5cm |
2017年 | なし | なし |
2018年 | 24cm | 20cm |
2019年 | なし | なし |
2020年 | 1cm | 1cm |
2021年 | なし | なし |
2022年 | 12cm | 8cm |
2023年 | なし | なし |
各年ごとの「年間最深積雪」
1年の間で「最も多く雪が積もった時の量」である年間最深積雪の比較で見ると、やはり比較的近似した傾向が見られますが、年によっては倍以上の差が生じているケースもあります。
また、昭和後半~平成の途中までは「横浜」の最深積雪が多い傾向が確認されます。
年 | 東京 | 横浜 |
---|---|---|
2001年 | 8cm | 17cm |
2002年 | なし | なし |
2003年 | 1cm | 3cm |
2004年 | 0cm | なし |
2005年 | 2cm | 2cm |
2006年 | 9cm | 11cm |
2007年 | なし | なし |
2008年 | 3cm | 7cm |
2009年 | 0 | なし |
2010年 | 1cm | 1cm |
2011年 | 2cm | 4cm |
2012年 | 4cm | 5cm |
2013年 | 8cm | 13cm |
2014年 | 27cm | 28cm |
2015年 | 3cm | 0cm |
2016年 | 6cm | 5cm |
2017年 | 0cm | 0cm |
2018年 | 23cm | 18cm |
2019年 | 0cm | なし |
2020年 | 1cm | 1cm |
2021年 | なし | なし |
2022年 | 10cm | 8cm |
2023年 | なし | なし |
2015年から傾向が変わった?【観測地点移転】
上記のグラフは、各都市で降った雪の傾向を見る一つの資料にはなりますが、「東京」の観測地点は2014年12月にビルなどが立ち並ぶ「大手町」から、緑に囲まれた「北の丸公園」に移転しています。
年間降雪量・年間最深積雪のデータともに、2015年冬以降は「東京」の方がやや多いか、ほぼ同等の傾向となっており、それまでの時期は「横浜」の方が多い年も一般的であった状況から変化しています。
北の丸公園はビル街と比べ気温はやや低く、降雪時には周辺と比べると効率的に雪が積もりやすい傾向があります。大手町~北の丸公園はわずかな距離の移動に過ぎませんが、積雪の状況は変わる場合があるため、東京・横浜の積雪データとして示されている数字を、23区内・横浜市内全体のイメージに当てはめ過ぎないように注意が必要です。
雨・雪で分かれたケースなどはある?
東京と横浜で、片方が「雪」、片方が「雨」となったようなケースがあるかどうかを見ると、そういったケースもゼロではないと言えますが、時間・場所・全体的な天気の経過・積雪の有無など、様々な状況を考慮しなければなりません。
気象台の記録で見た場合、雪が降る・積もる場合は両都市とも降る・積もるケースが最も多く、みぞれ程度で終わった時・ほとんど雨であった時は両都市ともそうなっているケースが目立つなど、2都市の傾向はやはり似た特徴を持ちます。
一方で、寒気の入り込む(気温が下がる)タイミングなどが少しずれ、同じ時点で降っているものが東京では雪、横浜では雨(またはその逆)となり、雪が降り出す・雨に変わるタイミングが少し違うようなケースはそれほど珍しくありません。
次項で述べる通り、地域差も重要で、内陸側の東京「練馬区」では雪が降ったにも関わらず、海沿いの横浜「金沢区」では雨であった。というようなケースもあり得ます。
また、大雪にならないようなケースでは、どちらも雪が降ったものの、片方しか積雪しなかった。というようなケースも時に見られます。
東京とはどこ?横浜とはどこ?
雪がやや積もりやすい | 雪が積もりにくい ※一切積もらない訳ではありません | |
---|---|---|
23区内 | 内陸側 練馬区・杉並区など | 沿岸部一帯 大田区・品川区・江東区・江戸川区など |
横浜市内 | 内陸側 旭区・緑区・青葉区など | 沿岸部一帯 特に金沢区・磯子区など |
23区内、横浜市内は決して狭い訳ではなく、海からの距離・内陸への進み具合などにより、気温などは多少の違いが生じることは一般的にも知られている通りです。
東京都心と練馬で、積雪が結構な違いがあった。というケースは時折見られ、それは横浜市内の内陸部・沿岸部でも同様の現象が生じる場合があります。
例えば、山間部などでは1世紀に1度あるかないか。と言われるような大雪となった2014年2月14~15日のケースでは、東京・横浜都心の積雪は30cm弱であった一方、横浜市の内陸部では40~50cm程度に達したと推定される地域も一部あるなど、場所によって積雪には差が生じることは十分に考えられます。
積雪の差は、一般的な南岸低気圧では微妙な気温の違いによる所が大きいほか、低気圧が弱いなど特殊なケースでは雪雲の掛かる程度に違いが生じて差が生じることもあります。