奈良を代表する観光地の一つであり、奈良時代に都(平城宮)が置かれた場所であり複数の復原建築をはじめ多数のみどころを有する「平城宮跡」。
平城宮跡は、日本の観光地の中でもかなり広い部類に入るため、徒歩でエリア内を移動するだけでも一定の時間が掛かることもあり、みどころをじっくり巡っていると「丸1日」平城宮跡を満喫できるほどのスケールとなっています。
こちらの記事では、平城宮跡エリアにある各観光スポット・みどころについて、知名度が決して高くはないような穴場的スポット・知られていないスポットも含めて一覧でご紹介をしてまいります。
平城宮跡の全体地図・基本事項
平城宮跡エリアには、奈良時代の状態を復原した「第一次大極殿」や「朱雀門」をはじめ多数のみどころがありますが、非常に広々としたエリアであるため、全体を巡る場合はある程度の時間と徒歩移動距離が必要となります。
2018年には平城宮跡の拠点として「朱雀門ひろば」エリアが整備されましたので、基本は朱雀門ひろばを拠点に各所を巡るのがおすすめです。
平城宮跡エリアにある各施設の入館料・入場料は原則「すべて無料」です。第一次大極殿・平城宮跡以降展示館・平城宮いざない館など、その他の観光地であれば一定の入場料がかかりそうなスポットでも、「すべて無料」です。
なお、平城宮跡を散策する場合、一般の観光地と異なり屋根のある場所が少なく、徒歩移動がメインとなるため夏季には熱中症対策、冬季には寒さ対策をした上で訪れるのが無難です。
第一次大極殿

規模 | 高さ27m・幅44m |
見学時間 | 9時~16時半(入場は16時まで) ※平城宮跡エリアの各スポットは全て「入場・入園・見学無料」です。 |
休館日 | 月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)・年末年始 |
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第一次大極殿(だいいちじだいごくでん)は、平成22年(2010年)に復原された高さは27メートル、正面の幅は44メートルに及ぶ巨大な建物であり、現在の奈良では東大寺大仏殿の次に巨大な建造物となっています。
大極殿という施設は、かつては天皇が重要な政務を行う「朝議」の空間として用いられていたと考えられており、天皇の住居である内裏などと並び平城宮では最も重要な建物の一つであったと考えられています。
なお、復原にあたっては、正確な歴史資料は残されていないことから発掘調査や同じく奈良時代の法隆寺・薬師寺の建築などを参考にかつての姿が想定され、復原されたものとなっています。
また、南側には2022年に完成した「第一次大極殿院」もあります。
朱雀門ひろば

朱雀門ひろばは、平城宮跡エリアの南側「朱雀門」周辺の通称であり、ランドマークである朱雀門以外にも平成30年春に国に整備されてオープンした「平城宮いざない館」と呼ばれる展示施設及びその他グルメ・物販施設なども設けられる「平城宮跡の拠点」ゾーンとなっています。
関連記事:【朱雀門ひろば】歴史展示からグルメ・おみやげまですべてが揃う「平城宮跡観光」の一大拠点
「朱雀門ひろば」エリア内のみどころは、以下一覧でご紹介してまいります。
朱雀門

規模 | 高さ約20m・東西約25m(平城宮跡内では第一次大極殿に次ぐ規模の建築) |
見学時間 | 9時~16時30分(入場は16時まで) ※見学時間外でも外観を間近でご覧頂けます。 ※第一次大極殿のように内部に展示施設がある訳ではなく、門の下を通ることが出来るのみとなっています。 ※平城宮跡エリアの各スポットは全て「入場・入園・見学無料」です。 |
休館日 | 月曜日(月曜が祝日の場合はその翌日)・年末年始(12月29日~1月3日) |
関連記事:【平城宮跡朱雀門】復原された平城宮の「正門」は電車の中からもよく見える
朱雀門(すざくもん)は、平成10年(1998年)に復原工事が完成した建物であり、かつての「平城宮」への入り口にあたる巨大な門となっています。
高さ20メートル・東西25メートルに及ぶ巨大建築は、第一次大極殿完成後も平城宮跡内でよく目立つ存在となっており、ライトアップされた姿も美しいほか、近鉄電車の車窓から間近に見ることが出来ることでも知られています。
平城宮いざない館

開館時間 | 9時~17時(最終入場16時30分) ※平城宮跡エリアの各スポットは全て「入場・入園・見学無料」です。 |
休館日 | 2月・4月・7月・11月の第2月曜日(祝日の場合は翌日)・年末年始期間 |
平城宮いざない館は、平城宮跡の歴史、文化財などについて総合的に楽しみながら学ぶことができる巨大な展示施設であり、平成30年(2018年)にオープンした真新しい施設になっています。
展示空間は大きく4つに分かれており、「出土品」や「遺構」を実際にご覧いただけるコーナーもあるなど、「ここでしか見られない」貴重な展示も多くなっています。なお、こちらも入館料は無料となっています。
観光交流施設

平城宮いざない館の西側には、遣唐使に関する展示やレストラン・カフェ・特産品の物販のある「天平うまし館」、休憩スペースや待合所のある「天平みつき館」・「天平つどい館」、VRシアターや展望台のある「天平みはらし館」など飲食・物販も含めた「観光交流施設」が設けられています。
平成30年のオープンまでは長らく平城宮跡には自動販売機しかない状況でしたが、現在はグルメも含めて平城宮跡内でお楽しみいただけるようになり、「観光拠点」にふさわしい環境が整備された状況になっています。
各施設の営業時間については、同じ施設の中でも「店舗」などが併設されている場合やスペースに応じ、様々な時間が設定されている場合があります。全て同じ営業時間ではありませんので、その点はあらかじめご留意下さい。
とりわけ、飲食関連などの営業状況については、別途公式的な情報などを事前によくご確認頂くことをおすすめします。
※観光交流施設は基本的に無休、天平みはらし館は月曜日(祝日の場合は翌日休)、年末年始休業
復原遣唐使船

見学時間 | 8時30分~18時(時期により時間が延長される場合や、悪天候に伴い見学が出来ない場合などがあります) ※平城宮跡エリアの各スポットは全て「入場・入園・見学無料」です。 |
関連記事:【復原遣唐使船】奈良では珍しい「船」の展示からかつての「大航海」に思いをはせる
復原遣唐使船(ふくげんけんとうしせん)は、朱雀門ひろば内「天平うまし館」内の受付を通った先の屋外に展示されている巨大な船の模型であり、かつて奈良時代などに日本から中国(唐)へ先進文化・技術を学ぶために派遣された「遣唐使」らが乗っていた船をイメージして再現したものとなっています。
「船」という存在自体が海のない奈良県では珍しいものですが、遣唐使船はスケールもまた大きなものとなっているため、周辺では巨大な朱雀門と同じくらい目を引く存在になっており、近くを通る「大宮通り」を走る車からもよく見えるようにもなっています。
天平みはらし館
天平みはらし館は、朱雀門ひろばエリアの北西側に位置する施設であり、眺望をお楽しみいただける展望スペースが設けられているほか、平城宮に関するVRシアターをお楽しみ頂けます。
またレンタサイクルの受付などもこちらで行うことが出来ます。
朱雀大路

朱雀門の南側には、かつての平城京のメインストリートである「朱雀大路(すざくおおじ)」が再現されています。
道幅は約74メートルと現在では考えられないようなスケールとなっており、実に広々とした空間が広がっています。
二条大路

朱雀門の正面には東大寺方面などと平城宮を結んだ「二条大路」も再現されています。こちらも道幅約37メートルと広々とした空間となっています。
東院庭園

開園時間 | 午前9時~午後4時30分(入園は16時まで) ※平城宮跡エリアの各スポットは全て「入場・入園・見学無料」です。 |
休園日 | 月曜日(月曜日が祝日の場合はその翌日)・年末年始休園 |
東院庭園(とういんていえん)は、平城宮跡の南東端に位置する「奈良時代の庭園」を丁寧な考証のもとに復原した空間であり、国の特別名勝にも指定されています。
庭園はいわゆる「日本庭園」が生み出される前のものであり、中国文化の影響と日本の独自性が混じり合いはじめた時期の折衷的な風景をご覧いただけるようになっており、秋には紅葉が美しいことでも知られています。
遺構展示館

開館時間 | 9時~16時30分(入館は16時まで) ※平城宮跡エリアの各スポットは全て「入場・入園・見学無料」です。 |
休館日 | 月曜日(月曜が祝日の場合その翌日)・年末年始期間(12月29日~1月3日) |
関連記事:【平城宮跡遺構展示館】平城京の「発掘調査」の成果をそのままご覧いただける貴重な空間
遺構展示館は、平城宮跡エリアの発掘調査において実際に発掘された「遺構」を保存しながらそのまま展示するというユニークな施設であり、井戸枠やレンガ積みの建物跡、発掘された柱や瓦など様々な遺構・出土品が展示されています。
その他の展示施設とは違い、歴史を学ぶというよりは発掘の成果を「ありのまま」に知ることが出来る空間となっており、考古学に関心のある方には必見の施設にもなっています。
平城宮跡資料館

開館時間 | 9時~16時30分(最終入場16時) ※平城宮跡エリアの各スポットは全て「入場・入園・見学無料」です。 |
休館日 | 月曜日・年末年始(12月29日~1月3日) |
平城宮跡資料館は、発掘調査・研究を担う「奈良文化財研究所」が運営する資料館であり、発掘の成果などについてわかりやすく展示が行われています。
実際の研究の立場からの展示ということで、修学旅行生などにもおすすめの「学べる」展示内容となっており、朱雀門・大極殿からは少し離れたエリアではありますが、ぜひ訪れておきたい施設となっています。
第二次大極殿跡

第二次大極殿跡は、奈良時代の後半に「第一次大極殿」の東側に新たに設けられた大極殿の跡であり、第一次大極殿が完全な復原を目指しているのに対しこちらの復原は基壇部分のみとなっています。
建物が復原されていないことから基壇上からの眺めは非常によく、平城宮跡エリアの「自然」を味わいながらゆったりとした時間を過ごして頂ける空間になっており、「何もない」ことがむしろ魅力とも言える穴場スポットになっています。
推定宮内省

推定宮内省は、遺構展示館の南側に位置する「復原建物」の一つであり、かつて天皇の身の回りに関わる業務を行う「宮内省」の建物が再現されています。
建物は質素な檜皮葺となっており、再現されている机などの執務に関わる用具も含め、きらびやかな「大極殿」などとは異なる「普段の平城宮」とも言える雰囲気を味わって頂けるようになっています。
造酒司井戸

造酒司井戸(ぞうしゅしいど)は、遺構展示館の近くにある井戸の遺跡(現在の井戸枠は復原されたもの)であり、かつて宮中で用いる「お酒」を造る役所であった「造酒司」がお酒を造るための水を汲み上げるために使用していたとされています。
宮跡庭園(平城京左京三条二坊宮跡庭園)

入場時間 | 9時~17時(入園は16時30分まで) ※平城宮跡エリアの各スポットは全て「入場・入園・見学無料」です。 |
休園日 | 毎週水曜日(祝日を除く) その他一部の日程・年末年始期間(12月26日~1月5日) |
関連記事:【平城京左京三条二坊宮跡庭園】知られざる奈良時代の遺構は商業施設などに囲まれる市街地に
宮跡庭園(平城京左京三条二坊宮跡庭園)は、現在の平城宮跡エリアからは少し離れた「ミ・ナーラ」と呼ばれる商業施設の南側に広がる「奈良時代の庭園」です。
この庭園は復原された「東院庭園」とは違い、奈良時代の庭園の遺構がそのまま残されており、知名度の低さとは裏腹に非常に貴重な場所となっています。
その他
建部門

建部門(たけべもん)は、東院庭園のすぐそばにある重厚な門であり、かつての「東院」エリアの正門を法隆寺の東大門をモデルに復原したものとなっています。
内裏

内裏跡(だいり)は、かつて奈良時代に天皇がお住まいになっていた居住空間(お世話をする方々の空間も含む)の跡であり、基本的には柱の跡に植栽が設けられているのみですが、井戸のみ一部復原されています。
平城宮跡のススキ

平城宮跡エリアは、ほぼ全域が秋になると「ススキ」の名所と言える空間となっており、「紅葉」とはまた異なった日本の原風景のようなのどかな風情が広がります。
中央区朝堂院跡・東区朝堂院跡


「大極殿」を拠点施設とする形で宮城(大内裏)の中心部一帯は「朝堂院」と呼ばれ、大極殿のほか天皇が政務を行う「朝堂」や官人らの控室である「朝集殿」があったとされており、それら施設があったとされる東西2つの広大なエリアは現在は平城宮跡エリア最大規模の広場・草原となっています。
推定大膳職・推定内膳司
第一次大極殿などの北側一帯はかつて官人らの食事に関する業務等を行った大膳職、また天皇のお食事に関する内容を担当した内膳司と呼ばれる役所があったとされ、植栽で柱の跡が示されています。
兵部省跡

朱雀門の東側には奈良時代の軍事に関する管理などを行った「兵部省(ひょうぶしょう)」と呼ばれる役所の跡地があり、柱などの一部のみ復原が行われています。
式部省跡

兵部省跡の東側には、奈良時代の役人の「人事」に関する役所であった「式部省(しきぶしょう)」の跡地があり、こちらも一部のみ復原されています。
壬生門跡

式部省の近くには「壬生門跡」と呼ばれる門の基壇部分のみ復原されており、比較的眺めの良い空間となっています。
小子部門(的門)

東院庭園の西側には、小子部門(的門)と呼ばれる門の基壇部分のみが復原されており、のどかな「憩いの場」となっています。
南面大垣

平城宮跡エリアの南東側、「ミ・ナーラ」に近いエリアでは一部の垣根が復原されています。
長屋王邸跡
関連記事:【長屋王邸跡】巨大商業施設が営業を行う「失われた遺構」には案内板のみが残される
現在は案内板以外ありませんが、大型商業施設「ミ・ナーラ」の敷地は奈良時代の有力貴族でありつつ非業の死を遂げた「長屋王」の巨大な邸宅跡であった場所となっています。