大安寺(奈良市)

【大安寺】がん封じの笹酒で有名なお寺は飛鳥時代からの歴史を持つ

ごあんない

概要

大安寺(だいあんじ)は、奈良駅の南側にあり田園風景も残る「大安寺」地区の地名の由来となっている高野山真言宗の寺院です。本尊は奈良時代の木造十一面観音立像(秘仏・重要文化財)であり、毎年秋に特別公開が実施されます。現在の境内はそれほど大きくありませんが、かつて巨大寺院として栄えたお寺は周辺に複数の関係遺跡を持ち、境内の外側には「塔跡」などの空間も別途広がっています。

歴史—奈良時代の「巨大寺院」は飛鳥時代にそのルーツを持つ

大安寺の歴史は「元興寺」などと同様非常に古いものであり、創建の由来をさかのぼると、聖徳太子が現在の大和郡山市額田部(ぬかたべ)にある額安寺付近にあったとされている「熊凝精舎」を建て、その後立派な寺院にするように改めて要請したという時点まで遡ります。

熊凝精舎はその後現在の桜井市にある「吉備池廃寺」と呼ばれる空間に「百済大寺」として立派に整備され、その後天武天皇2年(673年)には高市の地(現在の明日香村周辺)に高市大寺として移転し、更にその後天皇のお寺という意味も持つ「大官大寺」と改称され、飛鳥の地の中で再び移転するなどする中で伽藍が整備されていくことになりました。

しかしながら、藤原京から奈良の平城京へと遷都することになると大官大寺も移転することになり、遷都からやや遅れた霊亀2年(716年)には現在の地に移転し、「大安寺」になったとされています。

奈良時代に移転した後の大安寺の繁栄ぶりは著しく、「南都七大寺」に数えられ、東大寺や興福寺に匹敵する大伽藍を有する国家の拠点的役割を果たす寺院として、また仏教研究を行う「887人」の学侶を擁するほどに繁栄したとされています。多数の仏像や多数の経典を備えるお寺は道慈と呼ばれる僧侶の活躍もあり、南都六宗の一つである「三論宗」の本拠ともなり、インドや唐などからの渡来僧も滞在することになるなど、仏教研究の国際拠点とも言えるような壮大な空間であったとされています。

境内(伽藍)の状況としては、高さ70メートルを超えるとも言われる東西の七重塔や、金堂・南大門・三面僧坊などが配置されていたとされ、東西の塔と金堂が離れた位置関係となっているその伽藍配置は「大安寺式伽藍」とも呼ばれました。

そのような大寺院であった大安寺ですが、奈良から京都の地へと遷都した平安期以降は衰退の一途をたどることになります。平安時代には弘法大師空海が一時期別当を務めるなどの歴史を辿ったものの、平安時代後半には火災で境内の主要な建造物が大きな被害を受け、その後も復興へと力強く進むことはなく、江戸時代になる直前の慶長の地震などを経て伽藍にあった建造物はほぼ全て消失し荒廃が進むことになり、江戸時代から明治初頭には長らく廃寺同然の状況となってしまいます。その後は少しづつ復興が行われ、平成になると複数のお堂が新築されるなど復興が急速に進められている状況となっています。

文化財-建物は失われるも、奈良時代の仏像を多数安置

大安寺には国宝の文化財はありませんが、重要文化財に指定されている奈良時代の仏さまが多数安置されており、かつての建造物が全て失われているものの、奈良時代の面影をしっかりと感じて頂けるようになっています。

木造十一面観音立像(重文・奈良時代)

大安寺の本尊である木造十一面観音立像は、左手に宝瓶をお持ちになり、垂れた右手は与願の印を結ばれるお姿となっています。仏像の頭部は欠損して後世に補われ、胴体部分などは奈良時代のものがそのまま残された仏さまとなっており、つぎはぎの要素も目立つものの、身に着けている衣装である「条帛・天衣」や装身具である「瓔珞」を含め肉付きの良い佇まいは実に優雅かつ上品な「観音様」と言えるものとなっています。なお、公開は通年ではなく、毎年10月1日~11月30日のみが特別公開期間となっています。

木造馬頭観音立像(千手観音・重文・奈良時代)

本堂の裏手にある「嘶堂(いななきどう)」に安置されている木造馬頭観音立像は、文化財としての登録上は「千手観音」となっている仏さまで、「馬頭観音」さまの一般的な意匠として見られる頭部に乗せられた「馬頭」が一切なく、その代わりに足首にが巻き付いたり、獣皮を身に着けるという特異なお姿をした仏さまとなっており、大いに怒りを見せた表情が特徴的な存在にもなっています。なお、馬頭観音は紀州徳川家の二代藩主「徳川光貞」が分厚い信仰を寄せたことでも知られています。

公開については毎年3月1日~31日のみとなっています。

木造不空羂索観音立像(重文・奈良時代)

収蔵庫に安置されている木造不空羂索観音立像は、奈良時代の仏さまとなっており、どっしりとした重厚なお姿をしておられる一方で、装飾性の余りない簡素な佇まいともなっており、古い時代の素朴なやさしさを感じて頂けるようになっています。

木造楊柳観音立像(重文・奈良時代)

病魔を防ぐ仏さまとしても知られる木造楊柳観音立像は、怒りの表情の一方で身に着けておられる衣の結び目や首飾りなどが華やかな印象を与える仏さまとなっており、収蔵庫に安置されています。「楊柳観音」さまは一般的に女性的な佇まいとして絵画・図像として描かれるケースが多く、この大安寺のものは実際に楊柳観音と名乗る数少ない仏像となっています。

木造聖観音立像(重文・奈良時代)

「十一面」観音・「千手」観音様のような「変化観音」ではなく、一面二臂(一つの顔に二本の腕)のお姿をした観音様である木造聖観音立像は収蔵庫に安置されており、やや劣化が進んでいる様子が見受けられますが、どっしりとした重厚感の中にも穏やかな雰囲気とあふれる慈悲を感じさせる仏さまとなっています。

木造四天王立像(重文・奈良時代)

収蔵庫に安置されている大安寺の木造四天王立像は、広目天以外の持国天・増長天・多聞天は右手を上にかざし、左手を腰に据えたお姿となっており、とりわけ多聞天の怒りの表情と今にも動き出しそうな勢いのあるお姿、また歯を見せる広目天のお姿が特徴的な存在となっています。これら四天王像は後世に補われた部分も多くなっていますが、基本的には奈良時代の終わりごろに造立されたものと考えられています。

その他の文化財

大安寺には、重要文化財に指定されているもの以外にも、弘法大師坐像二体・修行大師像・阿弥陀如来坐像・不動明王立像・虚空蔵菩薩坐像二体・弁財天像・道慈律師像・勤操大徳坐像など多数の仏像があるほか

「がん封じ」と「竹」で良く知られたお寺です

現在の大安寺は、主に「癌封じ」で高齢者を中心に厚い信仰を集める寺院となっており、毎年1月23日には光仁会と呼ばれる「癌封じ」の笹酒祭りが行われ、その日に限り門前に直行するバス便が運行され、境内では太い竹筒に入れられた笹酒が振る舞われます。

また境内には奈良市内のお寺では珍しく立派な「竹林」もあり、生涯の大半を「文化人」として政治から離れた環境で過ごされた「光仁天皇」が大安寺境内の竹林でお酒を飲まれた伝説などにちなみ、6月にも「癌封じ夏祭り」として「竹供養」の行事が行われます。

大安寺のみどころ・風景

山門

大安寺の山門

かつての規模は失われ、現在はひっそりとした小さなお寺となった大安寺ですが、平成12年にかつての興福寺塔頭寺院である「一乗院」の山門を移築・復元整備した大変立派な「山門」は境内では例外的に分厚い存在感を放っており、周辺でも目立った存在となっています。

本堂

大安寺「本堂」

境内地は建造物よりも自然が多い環境となっていますが、山門から少し西寄りに進んで頂くと小ぶりな「本堂」が見えてきます。本堂自体は明治時代の建築であり、文化財などに指定されているものではありませんが、内陣には特別公開時のみ拝観可能な本尊「十一面観音立」像がお祀りされています。

【大安寺本堂】天平時代の本尊「十一面観音立像」をお祀りする空間

竹林(いのちの小径)

大安寺の竹林

本堂と山門の間にあたる境内南側の一部は、奈良市内のお寺では比較的珍しい立派な「竹林」があり、この竹林ががん封じを祈念しつつ「竹」へ感謝を捧げるお祭りとして6月23日に実施される「竹供養」の舞台となっています。なお、竹林は「いのちの小径」として内部を歩いて頂けるようになっています。

【大安寺の「竹林(いのちの小径)」】光仁天皇の生涯に思いをはせる涼やかな空間

噺堂

大安寺噺堂(いななきどう)

少し変わった名前のお堂である「噺堂(いななきどう)」には、強い怒りの表情が印象的な「馬頭観音立像」が安置される空間となっています。

護摩堂

嘶堂の近くには、新築されて間もない「護摩堂」の建物もあり、毎月第二日曜日午後1時からは護摩供養が実施される空間となっています。

讃仰殿(宝物殿)

大安寺讃仰殿(宝物殿)

大安寺収蔵の文化財が多数展示されている讃仰殿(宝物殿・収蔵庫)。こちらは本堂の拝観料を支払うことで拝観して頂けるようになっており、木造不空羂索観音立像・木造楊柳観音立像・木造聖観音立像・木造四天王立像などが安置される空間となっています。

その他境内の風景

大安寺中門跡

山門の近くには、大安寺の「中門跡」と呼ばれる空間があり、石塔や石仏なども多数並ぶエリアにもなっています。

境内の北側には大安寺歴代住職の供養碑があり、立派な五輪塔が設置されています、

余り知られていない存在としては、「稚児大師像(弘法大師七才像)」があり、人間国宝である鹿児島寿蔵氏が高野紙で作られた稚児大師像を石像にしたものが設置されています。

境内外の関連スポット

大安寺塔跡

大安寺の山門から南にしばらく進んだ位置には、かつての巨大な東西の「七重塔」の遺跡(大安寺塔跡)があります。塔ははるか昔に失われていますが、現在は遺跡としての整備が行われており基壇などが一部復元されています。

【大安寺】70m以上の塔が2つあった「大安寺塔跡」ってどんなところ?歴史などを詳しくご案内!

八幡神社(元石清水八幡宮)

大安寺塔跡と現在の境内の間には、かつて大安寺の鎮守神として信仰を集めた「八幡神社」があります。この神社は「石清水八幡宮」のルーツであるという伝説も残されているなど歴史が深く、現在も多数の境内社や重厚な本殿・中門などが残された空間となっています。

【八幡神社(元石清水八幡宮)】大安寺の鎮守神としての長い歴史を持つ市内有数の神社

大安寺北面中房跡

境内から北にしばらく進むと、かつての「僧坊」跡の基壇が復元された「大安寺北面中房跡」があります。

【大安寺北面中房跡】かつての巨大寺院を支えた僧坊の跡

大安寺杉山瓦窯跡

境内から徒歩5分程度離れた住宅街の一角には、大安寺で使用した瓦を焼きあげた場所である「大安寺杉山瓦窯跡」もあり、瓦窯の様子が復元されています。

【大安寺杉山瓦窯跡群】古墳の横にあるリアルな「窯」の復元模型

年中行事

1月1日~3日 修正会(大般若会)

・新年を迎えて初めて行われる祈祷である「修正会(大般若会)」。3が日は祈祷が終日続けられるほか、除夜の鐘が鳴らされ新年が訪れるタイミングでは、境内が108本の竹明かりで美しく照らされるほか、松三宝に乗せた昆布・お米の授与、またおなじみの「笹酒」の振る舞いが行われます。

1月23日 光仁会(がん封じ笹酒まつり)

・大安寺で最も有名な行事である「光仁会(がんふうじ笹酒まつり)」は、この大安寺の境内で竹を割りお酒を注いで優雅に飲んだという「光仁天皇」の伝説にちなんで行われるもので、薬効のあるとされる笹酒が当日は「拝観料」を支払うだけで頂けるようになっており、奈良の食べ物を販売する露店なども並ぶほか、「がん封じ」の祈祷も行われます。

1月28日 行教忌

2月3日 節分会(開運星祭り)

・当日は午後2時から開運厄除けの護摩が焚かれるほか、午後3時からは「豆まき」がその他のお寺と同様行われ、甘酒の接待も行われます。

2月22日 聖徳太子御忌

3月午の日 馬頭観音厄除法要(厄除け)

・日本最古のものとも言われる大安寺の「馬頭観音」の大祭として行われる馬頭観音厄除法要は「ニの午法要」と呼ばれ、厄除祈願とともに競走馬の安全なども祈願されます。

3月彼岸入り~彼岸明けまでの7日間 春彼岸会

4月21日 正御影供(弘法大師)

・大安寺とつながりが大変深い存在である弘法大師の御入定日にその御影を飾って供養を行う法会である「正御影供」では、勤行式・柴灯大護摩、また僧侶らが本堂周辺を回る形でお砂踏みの儀式が行われます。

4月30日 本願天皇御忌(推古帝)

5月7日 勤操忌

6月4日 伝教大師忌

6月15日 青葉祭(弘法大師誕生法要)

・弘法大師のお誕生を祝うお祭りであり、境内にある稚児大師像に甘茶をかける儀式などが行われます。

6月23日 竹供養(癌封じ夏祭り)

・古代中国の「竹酔日(竹供養)」にちなんで行われる竹供養では、境内の竹林を舞台に供養が行われ、竹に感謝を捧げるために尺八の演奏も実施されるほか、1月23日の光仁会と同様笹酒の振る舞いやがん封じの祈祷が行われるため境内は多数の参拝者でにぎわう1日となります。

7月7日 弁財天夏祭り

8月1日~15日 お盆聖霊会

9月11日 真然忌(高野山第二世)

9月彼岸入り~彼岸明けまでの7日間 秋彼岸会

10月1日 崇道天皇忌

11月2日 開山忌(道慈律師・三論の祖師)

・大安寺の伽藍を整備し三論宗を伝えた僧侶である道慈律師の遺徳を偲び、大般若経の転読などが行われます。

拝観情報

拝観料(本堂・収蔵庫)

大人400円・高校生300円・中学生200円・小学生100円(秘仏特別公開時は100円増し)

※団体の場合30名以上は1割引(僧侶による案内・法話あり)、障害者の方も手帳呈示で1割引

※境内拝観は無料で自由に行って頂けます。

拝観時間

午前9時~午後5時(受け付けは午後4時まで・12月31日のみ拝観不可)

特別拝観期間

本尊十一面観音立像:10月1日~11月30日

木造馬頭観音立像:3月1日~31日

◇リンク

大安寺ホームページ

アクセス

各駅からのアクセス

奈良交通バス

・JR、近鉄奈良駅から「白土町」「シャープ前」「イオンモール大和郡山」「杏南町」「杏中町」行き乗車、「大安寺」下車、南西に徒歩10分

※大安寺バス停を降り、南側すぐの交差点を渡り、西に5分くらい進んで頂くと「大安寺北面中房跡」の遺跡が見えてきます。その遺跡沿いの道を南に少し進んで頂くと、西側一帯が大安寺境内となっており、途中の交差点前に山門があります。

JR奈良駅から南に徒歩25分

※境内東側(山門前にある交差点の東側)に駐車場あり

近隣スポット

大安寺八幡神社から北にすぐ、大安寺塔跡から北に徒歩2分、大安寺北面中房跡から南に徒歩2分、杉山古墳から南に徒歩5分、佐保川の桜並木(高橋)から南西に徒歩14分

大安寺周辺地図