こちらのページでは、中部地方では最も西側に位置し、近畿圏とのつながりも大きい「三重県」について、「雪」の降る・積もる傾向などを地域ごとに見ていきます(内容は全て「過去の一般的な傾向」に基づくものです)。
掲載情報は2023年時点のものです。その後状況が変化していく可能性もありますので、その点はご留意下さい。
三重県内「雪に関する基本データ」
観測地点名 | 年間降雪量 (cm) | 年間最深積雪 (cm) | 積雪5cm≧ 年間平年日数 | 年間降雪日数 | 過去最大の積雪深 (cm) |
---|---|---|---|---|---|
津 | 6 | 4 | 0.6 | 26.5 | 26(1951/2/14) |
四日市 | データなし | データなし | データなし | 28.3 | 53 (1995/12/26) |
上野 | データなし | データなし | データなし | 38.7 | 37(1951/2/14) |
尾鷲 | データなし | データなし | データなし | データなし | 5(2005/2/1) |
【参考】東京 | 8 | 6 | 1.2 | 8.5 | 46(1883/2/8) |
津以外の観測地点は、平成時代に降雪量・積雪深の観測を廃止
気象庁による降雪量・積雪深の観測は、三重県内では2023年現在「津」のみで実施されています。それ以外の主要な観測地点では、平成の半ば頃までに観測が廃止されたため、最新のデータを確認することは出来ません。
観測記録が残る場所で最も多い積雪の記録は、四日市で1995年12月26日に観測された53cmとなっています。
三重県内「地域ごとの雪の傾向」
三重県内の雪事情について、「地域ごと」の大まかな傾向・「降る要因」をまとめると、下記のような形となります。
北勢地域
雪の頻度 | ・いなべ市や鈴鹿山脈周辺では雪は珍しくない ・四日市、桑名市街地など多くの平地では冬型の気圧配置の際に時折降るような状況 ・暖冬年には雪がほとんど降らないケースあり |
雪の量 | ・いなべ市が最も多く、岐阜県や滋賀県に近い山沿いではまれに50cm以上も ・四日市、桑名市街地でも年によっては最大10cm以上の積雪が見られる(過去には30cm以上の大雪も) ・湯の山温泉周辺など鈴鹿山脈沿いも雪が比較的増えやすい ・積もる場合概ね海沿いほど少なくなる傾向 |
雪の時期 | ・平地では12月~2月が大半 ・平地で3月の雪は少ない ・鈴鹿山脈一帯では3月の雪も一般的 ・鈴鹿山脈の標高が高い場所では3月も含め根雪が長期間残る場合あり |
雪の要因 | ・「冬型の気圧配置」が多くを占める ・若狭湾周辺から滋賀県内を通って流れ込む雪雲の影響を受けやすい ・「南岸低気圧」による雪はまれで比率は小さい ・大雪となる事例は「JPCZ(日本海寒帯気団収束帯)」の影響が大きい |
四日市市の「雪事情」については、上記の記事で別途解説しております。
中勢地域
雪の頻度・量 | ・平地の雪は比較的珍しい存在 ・北勢地域と比べ雪は少ない傾向 ・南側ほど雪の頻度、量は一層減少 ・平地の場合津方面より松阪方面の積雪機会はより少ない ・市街地で10cm以上の積雪はかなりまれ ・美杉方面など人が住む地域でも標高が高い場合雪となる機会、雪の量がやや増える傾向 ・大台ヶ原、高見山、三峰山周辺などは全く環境が異なり根雪となる年も一般的 |
雪の時期 | ・平地で降る場合12~2月が大半 ・標高が特に高い山は3月などに雪となるケースも珍しくなく、根雪が長期間残る年も |
雪の要因 | ・津方面は「冬型の気圧配置」による影響の比率が高い ・平地は南側ほど「冬型」の影響を受けにくくなる ・「南岸低気圧」による雪は少ない、但し過去のまれな大雪記録は南岸低気圧も目立つ ・大台ヶ原、高見山、三峰山など標高が高い山地は様々な状況で雪が降りやすい |
津市の「雪事情」については、上記の記事で別途解説しております。
伊賀地域
雪の量・頻度 | ・雪は多くないが時折積もる場合あり ・多くの年で1回以上は雪が積もる環境 ・山地を除き積もる場合うっすら~数cm程度の積雪が大半 ・10cm以上の大雪はまれに見られる程度 |
雪の時期 | ・主に12月~2月 ・3月の雪はまれ |
雪の要因 | ・頻度は「冬型の気圧配置」、まれな大雪は「南岸低気圧」が目立つ ・「冬型」の場合かなり北寄りから雲が入る場合に降りやすい(北勢地域とは若干降りやすい風向きが異なる) ・ごくまれな強い冬型では西側から雲が入ることもあり(大阪湾・奈良方面から) ・南岸低気圧は内陸側のため、沿岸部で積もらない場合も積雪となるケースあり |
南勢地域
雪の量・頻度 | ・概ね雪は珍しい存在 ・平地の場合雪が一度も積もらない年も多い ・とりわけ熊野灘側の地域は全国的に見ても雪が特に少ない ・鳥羽、伊勢など伊勢湾側などは極めてまれに南岸低気圧により積雪がまとまるケースあり |
雪の時期 | ・まれに降る場合主に12月~2月 ・ごくまれな南岸低気圧の影響は1~2月がほとんど ・3月の雪は標高が高い山地などを除きほとんどない |
雪の要因 | ・「冬型の気圧配置」によるケースは、まれに降っても津方面と比べ一層頻度は少ない ・「南岸低気圧」によるケースは、ごくまれに降る場合も伊勢湾側や山地に限られやすい |
東紀州地域
雪の量・頻度 | ・人が住む地域では雪が降ることもかなりまれ ・温暖な太平洋に面するため、全国的に見ても特に雪が降りにくい環境 ・平地(沿岸部)では雪が一度も積もらない年が多くを占める |
雪の時期 | ・冬場であっても降りにくい ・過去のまれな降雪はほとんどが12月~2月 |
雪の要因 | ・ごくまれな「かなり強い冬型の気圧配置(強烈な寒気の流入)」で降る場合あり ・「南岸低気圧」による雪は滅多に見られないくらいまれ(2011年に例外的に尾鷲などで積もったことも) |
三重県の雪事情「ここがポイント」
豪雪地帯はないものの…
三重県は、太平洋側に位置する県であり、どちらかと言えば「温暖」なイメージが持たれている通り県全体を平均すれば雪は少ない地域です。
但し、「冬型の気圧配置」の場合日本海側からの雪雲は、雲が北北西~北西などから流れ込む場合、若狭湾一帯から琵琶湖周辺(雲が衰えにくい)を通り、そのまま三重県境にあたる鈴鹿山脈にぶつかるような形で三重県内(北勢が主)に流れ込むことがあります。
雪雲が比較的入りやすいいなべ市や鈴鹿山脈に近いエリアでは、時にかなりの大雪となる場合もあり、四日市・桑名のような都市部でも年によっては最大10cm以上の積雪となるケース(ごくまれに20~30cm以上も)があります。
国により豪雪地帯の指定を受けた自治体は県内にはありませんが、北勢地域では「太平洋側」でありながら、「日本海側」に似たような気象上の特徴が時に現れることがある点に留意が必要です。
道路交通への影響に注意
三重県内は、関西~中京~関東を結ぶ交通の大動脈である新名神高速道路・名阪国道などが通っています。
これらのルート上は、豪雪地帯ではないものの、冬場は積雪となるケースがそれほど珍しくない区間(新名神の滋賀県境付近などを筆頭に)があり、大阪や名古屋で積雪がない場合でも、ある区間だけ積雪がまとまり混雑・渋滞・まれに立ち往生などが生じることがあります。
一般にこれらのルートを通る車は「冬用タイヤ(スタッドレス)」の利用が当たり前となっていますが、都市部からの車などにはノーマルタイヤで走行不能となる車両も時折見られます。雪が降ることが十分にあり得る点を理解した上で、注意深い対応が求められると言えるでしょう。
過酷な山岳地帯・沿岸部など様々な環境
三重県内は、温暖な海からの影響もあり熊野灘周辺の沿岸部は極端に雪が少ない地域です。
一方で、県南部は国内屈指の過酷な環境とも言える「紀伊山地」の分厚い山々がそびえ立つ環境も有します。
例えば、尾鷲市街地からは、奈良県境(大台町側)に位置する「大台ヶ原」山までは単に直線距離で見た場合は15km程度ですが(実際には市内から直接アクセスできる訳ではありません)、標高にして1,500mほどの差があるため気候は全く異なり、大台ヶ原一帯は年によってはまとまった雪に覆われるなど、環境に大きな差があります。
なお、県内では例えば津・松阪市街地と同じ市内にあたる高見山・三峰山周辺、伊勢湾周辺と鈴鹿山脈周辺などで見た場合も「積雪なし・大量の積雪(根雪)」など極端な違いが生じることがあり、当たり前といえばそれまでですが、行政上の区分では同じ自治体であっても、海沿い・内陸部・標高が高い山地など環境に応じて「雪」の状況も多様です。