札幌は世界一雪の多い大都市なのか【唯一無二の気候】

自然・気候

毎年必ず50cm以上の積雪が観測され、数年に1回は1mを超える積雪となり、12月~3月まではほぼ常に雪に覆われ続ける札幌のまち。

居住者やよく訪れる人からすれば、この雪の季節はごく当たり前のものかもしれませんが、実のところ、この雪の量・雪のある生活というものは、世界の中でもかなり特殊な存在であるようなのです。

本ページでは、札幌の雪が世界的に見ても極端に多いという事実について、各都市との比較などから改めて確認していきたいと思います。

「人口100万人以上」で見れば圧倒的な札幌の降雪量

札幌市で毎年降る雪の量は、平年値では479cm。最も深い積雪量の平年値は97cm。要は、札幌のまちではひと冬の間に合計4m以上もの雪が降り、一番多い時期で1m程度の雪が積もっている。そういった「日常」があります。

この雪の量は、世界にある人口100万人以上のいわゆる「大都市」として見た場合、他の追随を許さない圧倒的な「豪雪都市」です。世界にある様々な都市の特徴を見て行くと、そもそも雪が余り降らない地域がほとんどです。また、雪が降る場合でも年に数回程度、時にまとまった雪が降るという程度の場合が多くなります。例えば、パリ・ロンドン・ベルリン・ニューヨークといった世界の名だたる大都市は、緯度こそ北日本並みに高い地域にあるものの、気温も温暖で雪の頻度もそう多くありません。

なお、寒い地域では、モスクワなどのように札幌と同様冬は「根雪」に覆われる大都市もありますが、そういった地域も基本的に海からの気流の影響が少ないため、乾燥した天気となりやすく、雪の降る絶対量は少なくなります。

例外的な存在としては、カナダのモントリオール・オタワやノルウェーのオスロのように頻繁に雪が降りやすい規模の大きな都市もありますが、やはり降雪量は札幌よりも少なくなり、そもそもオスロは市域の人口は100万人に満たない状況となっています。

世界の雪の多い都市は?

世界の「雪の多い都市」について、札幌のような100万人規模を越える大都市だけではなく、10万人程度といった比較的規模の小さな都市を含めて考えた場合はどうでしょうか。

弘前・青森・旭川・小樽・長岡・北見・上越

札幌市弘前市青森市小樽市旭川市長岡市北見市上越市
479cm679cm567cm556cm557cm477cm414cm413cm
年間平年降雪量が4m以上の都市(10万人以上)

札幌と並ぶ世界レベルの「豪雪都市」は、その全体像を見た場合、その多くを日本が占めていると言えます。

例えば、同じ北海道内でも小樽市・旭川市は札幌とほぼ同等レベルか少し多い降雪量を持つ地域で、人口は10万人を越えています(旭川に至っては30万人以上)。北見市も比較的雪が多く、降雪量合計は4mを越えています。

また、札幌以上に雪が多い国内の県庁所在地としては、青森市があり、こちらは年間の降雪量が5mを越えています。なお、青森県内では弘前市の年間降雪量は679cmに達し、これは全国の都市部では最大となっています。

新潟県内についても、長岡市と上越市はいずれも人口が多く(上越:20万弱・長岡:約25万)比較的規模のある都市でありながら、年間降雪量の平均値は4mを越えており、特に長岡は札幌とほぼ同じ水準になっています。

この他には年間降雪量が4m単位の10万規模を越える都市はありませんが、国内で例えば函館市・会津若松市・富山市・山形市・秋田市なども比較的雪が多い都市と言えるでしょう。

なお、降雪量の観測については、観測機器の性質上、気象台のある都市とそれ以外(アメダス)では、それ以外の降雪量が多めに出やすい傾向がありますので、例えば青森と弘前を比較して、本当に弘前の方が雪の多い都市なのか。という点については一定の留意が必要です。

ペトロパブロフスク カムチャツキー(ロシア)

様々な「降雪ランキング」の記事にはほとんど掲載されない都市ですが、北海道から比較的近いロシア・カムチャッカ半島の最大都市「ペトロパブロフスク カムチャツキー」は、世界の人口10万人以上の都市としては日本の各都市に匹敵する「豪雪都市」です。

気象データを見ると、冬は旭川に匹敵するほど寒く、降水量は月100mm単位と多い環境など雪が増えやすい条件となっており、降雪量自体は札幌と大きな差がありません。

なお、冬の期間が札幌より長く、5月でも積雪が残ることがある地域ですので、積もっている期間など、降雪量に留まらない雪の状況全体を見た場合、見方によっては世界で唯一札幌よりも「雪が多い(身近な)都市」と言える可能性があります。

ケベックシティ・サグネ(カナダ)

カナダのケベック州の州都であるケベックシティ、また州内の主要都市であるサグネも、北アメリカ一帯の都市部ではアメリカのシラキュースと並び、最も雪が多い地域です。年間降雪量は300cm程度と、札幌には到底及びませんが雪の多い都市となっています。

シラキュース(アメリカ)

アメリカ合衆国の国内で最も雪が多い人口10万規模以上の都市は、ニューヨーク州にあるシラキュース市であり、こちらの降雪量は年間300cm少々と、カナダのケベックシティなどと同水準となっています。札幌と比べると雪は少ないですが、富山や山形よりは少し多く、最深積雪がメートル単位となる年もあるようです。

オスロ(ノルウェー)

ノルウェーの首都であるオスロは、世界の首都としては最も雪が多く降る都市と言えます。冬の気温は札幌とほぼ同じくらいで、冬場は旭川より少し少ないくらいの降水量があるため、雪の頻度も比較的多く、積雪も数十cm単位でまとまることがある地域です。但し、降雪量の合計はせいぜい札幌の3分の2程度のため、せいぜい函館と同じくらいと言えるでしょう。

なお、オスロは市域のみの人口規模では100万人に満たない地域であり、首都でありながら札幌よりはやや小さな規模の都市となっています。

その他

フィンランドのオウル、ロシアのムルマンスク・ノヴォシビルスク・ユジノサハリンスク、カナダのオタワ・モントリオール、アメリカのアンカレッジなども世界的には雪の多い都市(人口10万人以上の規模)で、概ね200~300cm程度の年間降雪量があるエリアですが、札幌と比べれば半分程度かそれ以下となっており、帯広や釧路より少し多い程度に過ぎず、さほど多いとは言えません。

南半球についても見た場合、山間部などでは一部豪雪地はありますが、一定の規模を持つ都市では札幌はおろか、その半分の降雪量を有する都市も基本的に見当たらない状況で、札幌がいかに特殊な気象条件かが良く分かります。

札幌市の「降雪量」一般・日本全国の降雪量(都道府県庁所在地)については、上記の記事で別途解説しております。