一般に寒冷で雪が多い都市として知られている札幌市。
一方で、近年は「温暖化」や「暖冬」の影響もあり「突然の大雪」と「雪が少ない年」の二極化が進んでいるという解釈もあり、札幌市の冬の気候を取り巻く環境は変わりつつあります。
こちらの記事では、真冬(1・2月)の時期に「札幌で雪が積もらない」ような状態はあり得るのか?というテーマで、過去のデータなどを見ながらその実態を考えていきたいと思います。
積雪ゼロの冬は「これまで一度もなし」
札幌の積雪に関するデータは、概ね1961年からしっかりとした形で揃っています。その年以降、2022年までのデータを見てみても、札幌で積雪がない冬など一切存在しません。
また、どんな年でも累計の降雪量は3mを越えており、これは大雑把に言えば北陸などで「通常」降る雪の量よりも多いことになります。
1月で雪が少なかった年はいつ?
少しマニアックな記録を見ることになりますが、具体的に各年ごとの状況として「1月」に雪が少なくなった年を見て行きます。
2020年
12月までの雪が非常に少なく、1月に入ってからも半ばまでは「積雪10cm未満」という極めて雪が少ない状態が続きました。
その後一度だけまとまった雪が降り積雪が増えたものの、結局月末まで40cm以上になることはなく、月間の平均で見た場合過去最も積雪が少ない1月と言える年になりました。
2009年
序盤は極端な積雪の少なさではありませんでしたが、月末にかけて雪がほとんど増えず、1月末時点の積雪が26cmと、その時期としては1983年に並び「過去最も雪が少ない」1月となりました。
1997年
1か月を通して、雪の量が余り変化をせず、約20~30cm程度の積雪が一貫して続きました。
この月の月間降雪量は35cmと過去最低、1日10cm以上の「まとまった雪」が一度もなく、道路や生活上の影響という意味では、2020年以上に雪の存在感が少ない1月と言える異例の年でした。
1989年
積雪の量自体は最も少ない訳ではありませんが、月間降雪量(降った雪の量)は過去2番目に少なくなり、雪が道路交通や生活に支障を及ぼすことがほぼない1月となりました。
1984年
12月から年明けの降雪量が極めて少なく、上旬には2020年並みの「積雪10cm未満」という異常な雪の少なさとなりました。一方で、その後は降雪量がある程度まとまりました。
1983年
1997年に近い年で降雪量が少な目のため積雪量の変化も少なく、約15~35cmの間で推移しました。1月20日の段階でも積雪は20cm少々で、月末の積雪も26cmとこの時期の積雪としては記録が残る時期としては最も少なくなっています。
1980年
後半にかけて積雪は増えて行った年ですが、1月4日には「積雪0cm(但し、記録上は「1cm未満で積雪はあるという意味)」を観測しており、しっかり記録が残る時期としては、唯一「1月に積雪が0cm」となった年となっています。
1979年
後半にまとまった雪が降り、1月末にはほぼ通常通りの雪の多さになりましたが、上旬は日によって10cm未満、中旬も多くの日で20cm未満など、途中までかなり雪が少ない状況が続きました。
1973年
1月2日には雨が降って積雪が5cmまで減るなど、年明けすぐの時期はかなり雪が少なく、その後はある程度まとまった雪もありましたが、24日の段階でも積雪24cmに留まるなど、少ない時期が目立つ月でした。
このように見て行くと、1月については必ずしも近年に雪が少ない年が集中しているとは言えず、昭和の時期も含め、上旬には10cm未満となるなど「少ない年はかなり少ない状況」が見られることが分かります。
また、気温がやや高い年には「降雪量」が月間100cm以上の場合でも「雪が増えにくい」場合があり、「降っている」イメージの割には雪が少ない年というものも存在します。
2月に雪が少なかった年はいつ?
やはり少しマニアックなデータになりますが、観測記録が残る中で「雪が少なかった2月」を見て行くと、以下のような形となっています。
2021年
雪が降る量自体が少ない(月間降雪量75cm)2月で、1か月を通して積雪が増えず、概ね40~60cm程度が続きました。積雪50cm未満の日数は月の半分を越え、平均の雪の量としてはかなり雪が少ない年となりました。
2016年
月末など一部にまとまった雪が降ったものの、積雪が40cm台の日も多く、全体的な平均としては雪がかなり少ない2月となりました。
2015年
「積雪」は極端に少ない訳ではありませんでしたが、積もった雪が「12月・1月」に積もったものがほとんどで、2月に降った降雪量は39cmと、観測史上最も少なくなりました。
2009年
一か月を通して見ると、まとまった雪が多く降雪量自体は比較的多い状況でしたが、1月末時点での雪の少なさの影響で、月の初めについては極めて雪が少なくなりました。
1997年
この年も、2009年と同じで1月の雪の少なさの影響で2月の初めの積雪は30cm未満と極めて少なくなりました。但し、以降の雪は比較的多く、月全体としては雪が少ない月ではありませんでした。
1992年
2021年と同様に積雪が50cm前後からほぼ動くことがなく、平均的な雪の量としては非常に雪が少ない月となりました。
1989年
月間の降雪量も過去3番目に少ない上、気温もかなり高めであったため、1か月を通しての平均的な雪の量は「過去最も少ない」2月となりました。
1983年
1月の雪が極めて少なかったため、2月上旬には積雪22~23cmの日が続くなど「過去最も雪が少ない」時期がありましたが、月末には積雪1mを越え、月内の積雪量の差が極端な月となりました。
1973年
気温や降雪量の割には積雪が増えない年で、下旬の積雪は40cm未満となる日が多いなど、全体的にはかなり雪が少ない2月となりました。
1967年
1月までに積もった雪があったため、積雪量自体は少ないとは言えませんでしたが、降雪量が異常に少なく、2015年に次いで過去2番目に少ない「月間40cm」に留まりました。
こう見ると、やはり「近年」に雪の少なさが偏っているとは言い切れず、昭和の頃にも雪が少ない2月が多々見られたことがわかります。
少ない雪の落とし穴?注意点
上記で見てきたように、1月・2月に通常と比べ大幅に雪が少ない場合がある札幌ですが、雪の少なさ・多さというものは、1m単位のドカ雪になるような場合(2022年のようなケース)を除いては、単純には議論できない難しいテーマでもあります。
例えば、札幌の場合気温が本州より低く雪は基本的に解けにくいため、前に降った雪がずっと積もっているだけであれば、新しく道路に積もらない限りは生活に大きな支障はない。そういったケースも多いため、積雪の量と生活への支障が(少なくとも50cm程度であれば)一致しない場合があります。
一方で、暖冬の年などには雪が比較的コンスタントに降っても、積雪が増えない年もありますが、重く湿った雪が新たに20cm降って積雪50cmになるのと、しばらく雪が降らず、ずっと積もっているだけの雪が75cmあるのとでは、前者の方がその時点での生活上の支障は大きくなります。
2月の初めに20cm台だった雪が月末に1mになった1983年が典型的ですが、雪が少ないと油断していると、同じ冬の間に思いもよらぬ大雪に見舞われる場合があります。
また、3月に入ってからや、12月中がその年の雪のピークになる年もあるため、この場合「真冬」に雪を警戒していさえすればればよい。という話ではなくなります。
札幌の冬は、本州の冬と比べるとずいぶんと期間が長いですので、雪の多さ・少なさは冬全体を見た上で判断する必要もあるのです。
まとめ
札幌市で真冬に「積雪がゼロ(完全にない状態)」になったことは、基本的にありません。
札幌市では、どんなに少ない場合でも年間合計300cmもの降雪量を観測しています。
1月・2月に「雪が少ない年」を見てみると、近年に留まらず昭和の頃から時折かなり少ない年があります。
なお、「少ない」はあくまでも札幌基準での「少なさ」です。1月こそ上旬に10cm未満という「確かに少ない」ケースがある一方、2月であれば40~50cm程度の積雪が続く状態が「かなり少ない」年にあたります。
また、絶対的な積雪の量よりもその時々に一気に降る雪の量が生活に影響を及ぼす場合もあるほか、一時的に雪が少なくても、冬全体では大雪になるケースなど、「雪の少なさ」は「積雪量」・「真冬」以外も含めた広い視点で考える必要があります。
札幌における雪が少ない年・降雪量一般については、上記の記事で別途解説しております。