札幌で「雪が少なかった年」はどんな感じ?過去の「少雪記録」を追う

自然・気候

日本国内では、青森市に次いで雪の多い地域である札幌市。降雪量は北陸の2倍以上、本州太平洋側の50~100倍程度、世界的に見ても雪が極めて多い地域となっています。

一方で、その年ごとに雪の降る傾向には差があり、ドカ雪が続く年もあれば、雪の量が少なくなる年もあります。本記事では、余りテーマとしては扱われにくい札幌の「雪が少ない年」について、どれくらいの少なさで、どれくらいの頻度であるのか。そもそも本当に「少ない」のか。どうして少なくなったのか。といった基本的な内容を確認していきたいと思います。

雪が少ないと言っても…

これまで「無積雪」はなし

当たり前と言えば当たり前ですが、札幌市でこれまで積雪がなかった。などというようなことは一度もありません。

札幌の最深積雪量の変化(記録が残る1954~2020年)

札幌市の年間降雪量を見て行くと、これまでで一番少なかった1989年は合計「311cm」。一番少ない年でも、累計すれば3mの雪が降っている訳であり、これは北陸のほとんどの平地の「普通の年」よりも雪が多いということになります。

近年の場合だと、山陰から北陸(新潟)までの地域の場合、大暖冬になると「ゼロ」ではなくても年間わずか1cm~数センチくらいしか雪が降らない年が見られますが、こと札幌に関しては、そのような状況は全く見られません。

これまでで一番雪が多い年と、これまでで一番雪が少ない年の差は倍にはなっておらず、どんな年でもそれなりに降るというのが一つの特徴となっているのです。

最深積雪69cm未満となったことはない

どんなに少ない年でも、今のところ合計すれば3mの雪が降っている札幌市。

札幌の年間最深積雪量の変化(記録が残る1962~2020年)

雪が比較的少ない年の「最深積雪」も、やはり一定の量となっており、これまでで一番「浅い雪」であった1963年・1989年はいずれも最深積雪量が69cmと、それなりの積雪量となっています。

合計の降雪量と同様、北陸や山陰の日本海側では、寒い年には50cm~1m単位になることがある一方、暖冬になると数センチに留まるケースもあるのですが、札幌では一番積雪が多かった年と、一番少なかった年の差がやはり2倍以下に抑えられており、どんな年でもそれなりにしっかり積もる状況が見られます。

どんな年でも100日以上積雪する

雪が比較的コンスタントに降る札幌のまちは、最も積雪量・降雪量が少ない年でも年間合計で100日以上は積雪が観測されています。

年間積雪日数の推移

長期間に渡り積雪状態が続く「根雪」の期間も含め100日を越えることがほとんどで、11月や3月(場合によっては10月や4月)に無積雪状態から新しく雪が積もるなどして、更に積雪日数が積み増しされ、結局は一番少ない年でも110日前後、通常は120~140日程度の積雪日数となるのです。

重ねて先述したように、本州の日本海側(北陸・山陰など)では年による積雪の状況が大きく異なるため、この積雪日数も数日~10日程度の年から、50日~80日程度の年も見られるなど、倍どころではない差が生じますが、札幌の場合は倍どころか1.5倍の差もなく、110~150日の範囲に全てが収まるようになっています。

過去の代表的な「少雪年」

札幌で雪が少ない目安としては、年間降雪量が400cm(合計4m)を下回る年が一つの目安となりますが、その中でも特に雪が少ない年であった3シーズンについて、その状況・要因・特徴などを見てみましょう。

1962年~63年シーズンの「少雪」

冬の降雪量合計393cm
最深積雪69cm(1963年2月12日)
積雪継続期間11月26日~3月15日(110日間)
根雪(気象庁定義)期間11月24日~3月15日(112日間)
初積雪日・最終積雪日11月24日・4月11日

1962年~63年シーズンの冬は、1月を中心に西日本から北陸周辺にかけて極端に強い寒気が流れ込み続けたことで、歴史上類を見ない積雪となった「38(サンパチ)豪雪」の年です。

一方で、寒気の流れ込み方が偏ったため北海道付近は寒気の通り道になりにくく、その年の札幌は、気温は平年並み~やや温暖な冬になった上、風向きが本来雪雲が流れ込む北西方向からではなく、南や東寄りの風となることが多くなったことから、雪の量はかなり減ることになり、結果観測史上最も少ない最深積雪である69cm(1989年に並ぶ)を記録した年になりました。

1988年~89年シーズンの「少雪」

冬の降雪量合計311cm
最深積雪69cm(1988年12月25日)
積雪継続期間12月10日~3月13日(94日間)
根雪(気象庁定義)期間11月26日~3月18日(113日間)
初積雪日・最終積雪日11月30日・3月29日

これまでで一番雪が少なかった年と言えるのは、1989年(平成元年)の冬です。

この年は、12月までは比較的冬型の気圧配置が強まりやすく、12月25日にその冬の最深積雪(69cm)を観測しましたが、年明け以降暖冬の傾向が強まり、雪は途切れ途切れにしか降らず、1日20cm以上のまとまった雪が降ることは1度もなく春を迎えました。12月中に積雪のピークを迎えた年は、しっかり記録が残る中ではこの1989年と1991年のみであり、極めて珍しい現象が起きたことになります。

世界的な気候面では、この年は本来寒い冬になりやすいとされる「ラニーニャ現象」が発生していたにも関わらず、記録的な暖冬と雪の少なさになったという面でも、かなり特異な年であったと言えます。

2018~2019年シーズンの「少雪」

冬の降雪量合計335cm
最深積雪72cm(2019年2月7日)
根雪期間12月10日~3月13日(94日間)
初積雪日・最終積雪日11月22日・4月6日

2018年~2019年シーズンの冬は、1989年に次ぐ雪の少なさになりました。

この年は、寒さ自体は札幌では平年並みであり、必ずしも北海道付近でははっきりとした「暖冬」と言えるような条件ではありませんでしたが、全国的には暖冬傾向であり、北海道付近で低気圧が発達するようなことも少ない条件でした。

結果発達した雪雲が流れ込むことがなく、2月以降はそもそも降水量が極めて少ない状態になったことから、冬の降雪量は少なくなり、過去2番目の「少雪」シーズンとなりました。

札幌の降雪量一般については、上記の記事で別途解説しております。