室蘭市の「気候の特徴」とは?季節ごとの傾向などを解説【海の影響大】

自然・気候

北海道では苫小牧に次ぐ2番目の工業都市であり、海に面することから冬場が温暖なことでも知られる室蘭市。こちらの記事では、室蘭市の気候について、季節ごとの特徴・札幌市との比較等を詳しく解説・考察していきます。

室蘭市の気候「全体的な特徴」

室蘭の雨温図
平均気温降水量日照時間平均風速降雪量最深積雪降雪日数
年間平年値8.9℃1188.9mm1728.1時間4.6m/s157cm26cm122.1日
気象庁の平年データ(1991年~2020年)

室蘭市は、北海道の中では南寄り、胆振地方に位置する市で、地理的には絵鞆半島(えともはんとう)と呼ばれる半島が内浦湾(噴火湾)と太平洋に向かって突き出した場所に市街地があるため、場所によっては海からの気流を常に受け続ける特徴を持っています。

そのため、気候は概ね道内では温暖な地域であり、特に冬場の気温は函館市より高いなど、道内の都市部では寒さが抑えられる地域と言えます。また、温度差が抑えられる海水温の影響で、夏場も暑さは抑えられ、気温の面からは温度差が小さくしのぎやすい環境と言えます。

天気の面では、晴れる機会も多い一方、海からの湿った気流の影響や北側の山地の影響も受け、夏場を中心に降水量が多くなります。海に面するため風も強く、特に冬場は強風・暴風となる頻度が増えるほか、過去には台風被害を複数回受けている歴史もあります。

なお、市内全域で見た場合は気候の差が比較的目立つのも特徴で、気象台の観測地点のある半島の先端部ではなく、室蘭工業大学など内陸寄りの場所(JR函館本線より北側)では朝晩の冷え込みが厳しくなりやすく、海のそばより雪が増え、風の強さもやや抑えられるといった差が見られます。

世界的な気候区分(ケッペン)については、北海道で一般的な亜寒帯の区分ではなく、海の影響が強く温暖な「西岸海洋性気候(Cfb)」にあてはまり、全国的に見ても珍しい区分となっています。

室蘭市「季節ごとの気候」

【春の気候】海水温の影響で「低温」傾向が目立つ・晴れ間は多い

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
3月1.4℃4.6℃-1.3℃49.9mm183.7時間27cm18cm21.4日
4月6.1℃10.1℃3.0℃70.0mm198.9時間4cm3cm6.8日
5月10.7℃14.9℃7.6℃108.3mm194.9時間なしなし0.1日
平年値(1991年~2020年)
室蘭市の桜(平年値)
開花日5月4日
満開日5月 9日
過去最大の月間降雪量
(春シーズン)
102cm(1973年3月)

室蘭市の春は、当初は冬からの比較的温暖な傾向が続くものの、次第に室蘭より寒かった地域との気温が逆転するようになり、「低温傾向」がはっきり見られるようになる季節です。

気温が上がりにくい理由は「海水温」の低さによるもので、冬場に冷やされた海は、地上とは違い温度が上がるのに時間が掛かるため、冷たい海からの気流を直接受ける室蘭市では春の気温上昇が遅れます。朝晩の気温差も比較的小さいのが特徴で、内陸部とは異なり昼間に「汗ばむ陽気」になることはほぼありません。

天気については、気温が低いイメージからは想像しにくいですが春の期間を通して「良く晴れる」ことが特徴で、特に春の序盤ほど、道内の日本海側と比べ晴れやすい傾向があります。

なお、3月までは雪が降ることもあり、まれに大雪が降ることもありますが、全体を見た場合根雪が残りやすいほどの積雪がない年がほとんどで、3月の初めには既に雪が消えている場合もあります。

また、5月は日照時間は多いですが、低気圧・前線が周期的に通過し、海からの気流の影響が加わり雨がまとまって降りやすくなる他、この時期からは夏にかけて「海霧」がやや発生しやすくなります。

桜については、海からの冷たい気流の影響・寒暖差が小さい影響を受け、札幌や旭川・帯広と比べ開花時期がわずかに遅くなる傾向があります。なお、開花を確認するための「標本木」は本州と同じ「ソメイヨシノ」で、帯広・旭川の「エゾヤマザクラ」とは種類が違います。

【夏の気候】暑くなりにくい・雨量は道内の都市ではかなり多い

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間霧日数
6月14.4℃18.0℃11.9℃109.1mm155.8時間9.7日
7月18.5℃21.6℃16.4℃159.2mm133.2時間9.3日
8月20.6℃23.6℃18.6℃187.3mm144.9時間5.0日
平年値(1991年~2020年)

室蘭市の夏は、昼間に暑くなりにくく過ごしやすい気候である一方、降水量の合計は道内の都市部で最も雨が多いという特徴を持つ地域もあります。

気温については、海沿いのため春から引き続き海水温の影響を受け、特に6月・7月は内陸部と比べ気温の低さが目立ちます。8月は平均気温こそ20℃を越えますが、海沿いは朝晩の気温差が小さくなるため、昼間に30℃以上の真夏日となるケースは平均1年に1回あるかないかという頻度で、過去に最高気温35度以上の猛暑日を観測したことは一度もないなど、海沿いらしい涼しさが特徴です。

降水量については、低気圧・前線の通過に加え、北側の山地(オロフレ山)に海からの気流がぶつかって雨雲が発達しやすいこともあり、7月から一気に増え、8月は200mmに近い平年雨量(年によっては300mm以上)となります。

晴れ間については、夏場は特に7~8月の日照時間は春よりも大幅に少な目です。晴れにくい要因は、雨の頻度もさることながら、7~8月にかけて冷たい空気を運んでくる「オホーツク海高気圧」の勢力にや、南の太平洋高気圧からの暖かい気流が冷たい海水の影響を受けて「海霧」をもたらす頻度にも左右され、冷夏の場合でも、特に温暖な夏となる場合でも晴れ間が減る可能性があります。

【秋の気候】春とは逆に海の影響で温暖に・まれに台風の影響も

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
9月18.4℃21.5℃15.7℃156.6mm166.5時間なしなしなし
10月12.9℃16.1℃9.8℃101.8mm165.2時間なしなし1.3日
11月6.4℃9.3℃3.5℃83.2mm102.7時間5cm2cm12.6日
平年値(1991年~2020年)
初霜初氷初雪初積雪(1cm以上)
平年日11月12日11月13日11月2日11月24日
最大瞬間風速(過去最大)55.0m/s(1954年9月26日)

秋の室蘭市は、春から初夏とは逆に、一度暖まった海水温がなかなか冷えてこない影響で、気温は道内でも特に温暖な地域となります。

9月中の気温を見ると、最低気温が10℃を下回らない年も目立ち、10月についても10℃以上のケースが多いなど、朝晩の冷え込みはかなり抑えられます。霜や氷が見られるのは平年値では11月中旬に入ってからと道内では最も遅く、盛岡・山形・長野など本州の内陸部と比べても温暖な傾向がはっきりしています。

天候を見ると、9月から10月は秋雨前線の影響を受けやすく雨がまとまって降る場合もあり、頻度は少ないものの「台風」の影響も道内では受けやすい地域です。

データを見ると過去には1954年の洞爺丸台風で最大瞬間風速55m/sを観測し、平成以降も最大瞬間風速30m/s以上を複数回の台風で記録しています。台風が室蘭より西側(日本海上など)を進む際(いわゆる「危険半円」に入る場合)には暴風が吹く可能性が高くなるため、一定の注意が必要です。

雪については、初雪は11月の初めまでに降ることもありますが、11月中の積雪は降っても1~3cm程度で済むことがほとんどで、道内の内陸部や日本海側のようなまとまった雪はまず降りません。

【冬の気候】道内の都市部で最も温暖・雪は「降る頻度」の割に少ない

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
12月0.5℃2.9℃-1.8℃65.8mm71.1時間27cm9cm26.8日
1月-1.8℃0.6℃-4.0℃53.6mm88.3時間49cm19cm28.6日
2月-1.6℃1.0℃-4.0℃44.3mm123.6時間45cm22cm25.1日
平年値(1991年~2020年)
積雪深日降雪量年間降雪量
観測史上最大の値68cm(1958年2月13日)47cm(1984年4月6日)248cm(2006年)

冬の室蘭市は、本州のほとんどの平地と比べれば非常に寒い地域ではありますが、「道内」という観点でみた場合、最も気温が高い温暖な都市となっています。

これは、地上の温度ほど下がらない海水温の影響で、海からの比較的暖かい空気が入りやすいこと、風が強いため地上の熱が奪われる「放射冷却」が海沿いでは起きにくいことが大きな要因で、特に朝の冷え込みの弱さは釧路・函館といった海沿いの都市と比べてもかなり顕著です。

雪については、距離的には日本海からそれほど遠くないため、せたな・長万部・寿都方面から抜けてきた雪雲が毎日のように掛かることも多く、ただ「降っている」だけの時間・頻度で見ると、道内では日本海側に準ずるくらい雪をよく見る地域です。

但し、雪雲がかなり弱く、途切れ途切れに少しだけ降るケースが多いこと、気温が高く他地域と比べ積もりにくいことが影響し、積雪の量は道内でもかなり少ない地域となっています。同じ太平洋側でも、帯広方面では「日高山脈」に寒気がせき止められて大雪が降りやすい一方、室蘭はそういった環境でもないため、「まとまった雪」が降ること自体少なく、積雪が50cm以上になる機会はほぼありません。

雪が積もり続ける「根雪」については、どのような年でも一定の根雪期間がありますが、年によっては数センチ程度の積雪が長く続く場合もあり、札幌や旭川とは全く状況が異なります。

なお、市内でも気象台のある絵鞆半島と室蘭工業大学のある少し内陸側の地域では、冬場の寒さ・雪の量には違いがあり、内陸側ほど寒く、雪がやや多い傾向があります。特に朝の冷え込みの差は大きく、数℃程度の違いが生じることも一般的です。

室蘭と札幌の気候を比較する

札幌と室蘭「月間平均気温」の比較
札幌と室蘭「月間降水量」の比較
年間平均気温冬の平均気温年間降水量年間降雪量年間最深積雪年間日照時間
札幌管区気象台9.2℃-2.3℃1146.1mm479cm97cm1718.0時間
室蘭地方気象台8.9℃(-0.3℃)-0.9℃(-1.4℃)1188.9mm(+42.8mm)157cm(-322cm)26cm(-71cm)1728.1時間(-10.1時間)
いずれも平年値、括弧内は札幌との比較

室蘭市の気候を、札幌市の気候と比較した場合、年間のデータではほぼ同じような数字が揃っている部分もありますが、各季節ごとに見ると違いも大きくなっています。

気温で見ると、海からの風・冷たい海水温の影響を受ける室蘭は札幌と比べ春の終わり~夏にかけての気温がかなり低い一方、冬場は道内でも比較的温暖な札幌以上に気温が高いため、夏場とは気温差が逆転します。

降水量は、海からの湿った気流・北側の山地の影響で雨が増える夏場は室蘭で、日本海からの強い雪雲が入りやすい冬場は札幌で多く、1年間でならしてみると結局同じくらいの雨量となります。

差が最も大きいのは雪で、室蘭は札幌と比べ降雪量では約3分の1、最深積雪では約4分の1しか雪が降らず、冬の暮らしにおける「雪」の存在感(除雪等)は全く違う環境です。但し、冬場の晴れ間で見た場合、室蘭の方が日照時間が減る特徴もあり、雪の量と冬場の天候のイメージが必ずしも一致しているとは言えません。

室蘭市のある「胆振地方」の気候・比較的近い「苫小牧市」の気候については、上記の記事で別途解説しております。