苫小牧市の「気候の特徴」とは?季節ごとの傾向などを解説【太平洋側】

自然・気候

北海道最大の工業地・港湾を持ち、複数のフェリー航路も乗り入れる拠点都市「苫小牧市」。当ページでは、苫小牧市の気候について、各季節ごとの傾向や札幌市との比較を詳しく解説・考察していきたいと思います。

苫小牧市の気候「全体的な特徴」

苫小牧市の雨温図
平均気温降水量日照時間平均風速降雪量最深積雪降雪日数
年間平年値7.9℃1239.2mm1711.5時間3.2m/s145cm31cm103.5日

苫小牧市は、北海道内のやや南側、胆振地方最大の都市であり、太平洋に直接面しています。

気候は海に面するため、海の影響が大きい地域で、気温は冷たい海水の影響で春から夏にかけては上がりにくく、逆に海水が冷えるのが遅い秋は気温がやや高めとなります。

また、海からの湿った気流の影響で夏場は道内の中でも特に天候が悪くなりやすく、雨は主要な都市の中で最も多くなります。

一方で、日本海側ではないため雪は少なく、わずか50km程度しか離れていない札幌とは「雪事情」が根本的に異なるなど、冬場の気候は安定する傾向が強い地域です。

市内全体を見ると、市街地一帯は全て海から近い地域で、大きな天候の差はありませんが、少し内陸へいくだけで朝晩の冷え込みは一気に強まるため、場所によっては大きな気温差が生じる可能性があります。また、樽前山方面などの山間部は標高が高いため、雪がかなり多くなるなど気候は全く異なります。

苫小牧市「季節ごとの気候」

【春の気候】気温は低め・天気は1年のうちで最も安定傾向

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
3月0.5℃4.4℃-3.7℃53.5mm165.6時間26cm19cm20.3日
4月5.3℃9.6℃1.3℃75.7mm173.5時間2cm2cm6.4日
5月10.0℃14.1℃6.6℃130.8mm171.9時間なしなしなし
平年値(1991年~2020年)
積雪深月間降雪量
観測史上最大の値
(春シーズン)
77cm(1978年3月11日)96cm(1978年3月)

春の苫小牧市は、端的に言えば「寒い」傾向が強い季節です。

3月の場合はまだ冬に近い状況で、年によっては3月が雪のピークとなる年もあり、気温も氷点下の時間が長くなります。雪が積もり続ける「根雪」は、冬場の積雪が少ない地域のため、概ね3月上旬頃に消える場合が多いですが、年によっては3月の下旬まで残る年があります。

4月以降は雪の可能性は少なくなり、気温も少しは上がりますが、内陸部と比べ気温の上昇が極めて鈍く、3月までは苫小牧より寒かった地域が、次第に苫小牧よりも気温が高い温暖な状況に変わる逆転現象が生じます。

気温が上がりにくい原因は、比較的冷たい海水温の影響によるもので、冬に冷やされた海は、地上と比べすぐには暖まりにくいため、結果として内陸部との大きな気温差が生じていきます。気温は特に昼間の気温が低めですが、苫小牧の場合、海に近い一方で朝晩もやや冷えやすい地域となっています。

春の天候は、全体を通して1年の中では最も晴れが多い時期で、特に3月~4月は天気が安定する傾向がありますが、5月以降は天気が周期的に変わりやすく、まとまった雨となる場合も増えていきます。

【夏の気候】暑い日が特に少ない地域・雨は道内の都市部では最多

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間霧日数平均湿度
6月14.0℃17.3℃11.5℃111.6mm119.7時間9.6日86%
7月18.2℃21.0℃16.1℃163.5mm108.1時間10.1日88%
8月20.4℃23.4℃18.0℃197.5mm122.2時間6.4日86%
平年値(1991年~2020年)
月間降水量日降水量1時間降水量
観測史上最大の値697.0mm(1981年8月)447.9mm(1950年8月1日)126.0mm(1950年8月1日)

夏の苫小牧市は、春から続く冷たい海水温の影響で、特に7月までは気温の上昇が鈍い傾向が見られます。

市内は海からの風が吹き込むため真夏でも涼しく、道内で高温となる主な要因である「フェーン現象(山を越えて暖かい風が吹き込む)」は、市の南西~南~南東側が海であるため地理的に起こりにくい条件のため、「暑い日の少なさ」は道内で最も少ない都市部と言えます。平均すれば最高気温30℃以上の真夏日は、約2年に1回のペースでしか観測されておらず、これは同じく涼しい室蘭よりも更に少ない数字です。

天候を見ると、苫小牧市は北海道内で最も夏の雨量が多く、晴れ間(日照時間)は少ない地域となります。

雨の多さについては、太平洋に直接面しているため前線・低気圧の通過時に雨が増えやすい上、周辺には山地があるため、海からの気流が山にぶつかって雨雲を発達させることも一つの要因で、苫小牧周辺だけが局地的な大雨になることもあります。過去のデータを見ると、本州の都市部でも観測されないような、1時間100mm前後の雨が降った記録もあり、北海道らしからぬ「雨事情」を持つ地域と言えます。

日照時間の少なさは、必ずしも雨が多いことだけが要因ではなく、特に7月を中心に、太平洋高気圧から暖かく湿った空気が入る際に、冷たい海水の影響を受けて「海霧」が発生(同じような事例は室蘭・広尾・釧路・根室など太平洋沿いの都市では一般的に見られる)することも大きな要因で、比較的近い札幌と比べ、倍程度の日照時間差が生じる年もあります。

【秋の気候】当初は雨が多い季節・気温はやや高い

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
9月17.8℃21.7℃13.8℃174.9mm153.1時間なしなしなし
10月11.5℃16.2℃6.4℃113.2mm156.0時間なしなし1.2日
11月4.9℃9.2℃0.2℃85.7mm127.1時間4cm3cm9.7日
平年値(1991年~2020年)
初雪初積雪(1cm以上)
平年日11月2日11月30日

苫小牧市の秋は、春~夏とは異なり、上がった海水温が今度は下がりにくいため、その影響で比較的温暖な傾向が強くなります。気温は朝晩の冷え込みが一定程度見られるため近隣の室蘭よりは低めで、同じ海沿いでは小樽と同じくらいの気温となっています。

天候を見て行くと、9月から10月の初頭くらいまでは、暖かく湿った気流や秋雨前線の影響を受けやすく、時には台風の影響も受けて雨量がまとまる場合があります。過去には1時間100mmの雨が降った記録(2014年9月11日)もあり、時には大雨・豪雨への警戒が必要です。

なお、台風については、過去には最大瞬間風速30m/s以上を記録した台風もあり、特に西を通る場合(日本海上)は要注意ですが、来襲する頻度は北海道のため多くありません。

雪については、太平洋側のため秋の時点では大きな影響を及ぼすことは少なくなっっています。初雪は11月の初めに降ることも一般的ですが、11月中の積雪はない年も多く、降ってもまとまった雪となる頻度はかなり少な目です。

【冬の気候】海沿いの地域としては冷えやすい・雪はかなり少ない

平均気温平均最高気温平均最低気温降水量日照時間降雪量最深積雪降雪日数
12月-1.2℃2.8℃-5.4℃56.6mm127.6時間29cm14cm20.8日
1月-3.6℃0.5℃-8.1℃38.7mm142.0時間42cm23cm23.3日
2月-3.2℃0.9℃-7.9℃37.5mm144.7時間42cm28cm21.1日
平年値(1991年~2020年)
積雪深日降雪量月間降雪量年間降雪量
観測史上最大の値77cm(1978年3月11日)47cm(1968年2月20日)96cm(1978年3月)245cm(2005年)


苫小牧市の冬は、大まかに言えば「海沿いの中ではやや寒い・雪は少ない・晴れ間は比較的多い」気候が特徴です。

気温については、道内の他の都市と比べ特段寒い訳ではありませんが、市街地は地形上海に突き出してはおらず「海に面している」だけなので、朝晩の冷え込み(熱が逃げる「放射冷却」)がある程度起きやすく、毎年の気温を見ると-15℃以下まで下がる年もあるなど、周辺の海沿いの地域(室蘭や小樽)と比べると気温は低めです。

天候については、道内では道東の太平洋側・日高地方の次に晴れ間が多い地域で、日本海側と比べると天候はかなり安定しています。雪は市街地では降る量がかなり少なくなっており、積雪50cmを超えるような年は極めてまれで、少ない年は最も多い時期で10cm少々という年すらあります。

苫小牧市は、雪の多い札幌に近いため一見すると雪が多いと勘違いされる場合もありますが、60~70kmほど離れた石狩湾一帯からの雪雲は、ほとんどの場合苫小牧に到達する前に消えてしまいます。そのため、苫小牧で雪が降るケースは、低気圧や気圧の谷の影響で雪が降る場合か、石狩湾方面からのごくわずかな「おこぼれ」に限られます。

なお、市内全体で見た場合、「ノーザンホースパーク」がある千歳市寄りの地域は寒さも厳しく、雪もやや増える傾向があり、市街地とは気候がやや異なります。

苫小牧と札幌の気候を比較する

札幌と苫小牧「月間平均気温」の比較
札幌と苫小牧「月間降水量」の比較
年間平均気温冬の平均気温年間降水量年間降雪量年間最深積雪年間日照時間
札幌管区気象台9.2℃-2.3℃1146.1mm479cm97cm1718.0時間
苫小牧特別地域気象観測所7.9℃(-1.3℃)-2.6℃(-0.3℃)1239.2mm(+93.1mm)145cm(-334cm)31cm(-66cm)1711.5時間(-6.5時間)
いずれも平年値、括弧内は札幌との比較

苫小牧市の気候と、札幌市の気候を比較すると、わずか50km程度の距離ながら、季節ごとにかなりの差が見られます。

気温については、冬場の気温は概ね同じである一方、海水温の影響を受ける苫小牧は春~夏にかけて大幅に低くなり、暑い日となる頻度も札幌の方が圧倒的に多くなります。

降水量は、年間の数字はそれほどの差はない一方、苫小牧は5月~9月の間かなり雨が多くなり、札幌は雪雲が流れ込みやすい冬場の降水量の多さが特徴となります。日照時間についても同じ構図で、苫小牧は雨が多い夏場に減り、札幌は雪が増える冬場に苫小牧より少なくなる状況です。

苫小牧市のある「胆振地方」全体の気候、また比較的近い「室蘭市」の気候については、上記の記事で別途解説しております。