本州内陸部に位置する長野県は、その「気候」を見た場合一般に「冬の寒さ」で広く知られている地域です。
その寒さは、時に「北海道より寒い」と言われるようなことすらありますが、こちらのページでは、「長野県は北海道より寒い」という表現が正しいのか、適切なのかについて、なるべくわかりやすく考察・解説していきたいと思います。
全体的な気候としては「間違い」
長野県は北海道より寒い?という議論について、まず最初に「結論」から述べてしまえば、「県全体の気候」として見た場合、さすがにそれは適切ではなく、概ね間違った表現であると言えます。
長野 | 松本 | 上田 | 諏訪 | 佐久 | 飯田 | 伊那 | 大町 | 軽井沢 | |
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冬の平均気温 | 0.8 | 1.0 | 0.7 | 0.2 | -0.4 | 2.2 | 0.5 | -1.6 | -2.1 |
札幌 | 函館 | 旭川 | 帯広 | 釧路 | 苫小牧 | 小樽 | 室蘭 | 岩見沢 | 網走 | 紋別 | 稚内 | 根室 | |
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冬の平均気温 | -2.3 | -1.4 | -5.7 | -5.5 | -3.6 | -2.6 | -2.3 | -0.9 | -4.1 | -4.3 | -4.3 | -3.5 | -2.5 |
上記のデータは、長野県・北海道のそれぞれ「主要な気象観測地点(人口が多い主要都市など)」の冬の平均気温(12月~2月)です。
北海道は「全ての主要な地点」が氷点下となっていますが、長野県の場合氷点下でない地点の方が多くなっています。また、北海道では旭川など規模の大きな都市でも-5℃台ですが、長野県の場合最も寒い都市である大町市でも-1.6℃となっています。
平均的に考えた場合、いくらなんでも長野県の方が北海道より寒いとは言えないことは、数字の面からはっきりしています。
長野県内の「寒い地域」に限って見た場合は?
全体的な傾向で見れば、長野県よりも「北海道の方が寒い」ことは明らかな状況ですが、比較というものは、全体ではなく個別具体的に見た場合、その結果が変わることもあります。
例えば、長野県内でも「特に寒い」場所のみをピックアップしてみた場合、冬の平均気温は「北海道の主要都市」よりも低くなるケースが存在します。
札幌 | 函館 | 旭川 | 帯広 | 釧路 | 苫小牧 | 小樽 | 室蘭 | 岩見沢 | 網走 | 紋別 | 稚内 | 根室 | |
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菅平 (-4.9℃) | 〇 | 〇 | × | × | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
野辺山 (-3.9℃) | 〇 | 〇 | × | × | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | × | 〇 | 〇 |
開田高原 (-3.6℃) | 〇 | 〇 | × | × | 同じ | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | × | 〇 | 〇 |
奈川 (-2.9℃) | 〇 | 〇 | × | × | × | 〇 | 〇 | 〇 | × | × | × | 〇 | 〇 |
信濃町 (-2.6℃) | 〇 | 〇 | × | × | × | 同じ | 〇 | 〇 | × | × | × | × | 〇 |
白馬 (-2.4℃) | 〇 | 〇 | × | × | × | × | 〇 | 〇 | × | × | × | × | × |
原村 (-2.2℃) | × | 〇 | × | × | × | × | × | 〇 | × | × | × | × | × |
軽井沢 (-2.1℃) | × | 〇 | × | × | × | × | × | 〇 | × | × | × | × | × |
東御 (-2.0℃) | × | 〇 | × | × | × | × | × | 〇 | × | × | × | × | × |
大町 (-1.6℃) | × | 〇 | × | × | × | × | × | 〇 | × | × | × | × | × |
比較は冬の平年気温データ(気象庁・2020年まで)による
「〇」は長野県側が寒い場合、「×」は北海道側が寒い場合
つまり、「菅平は札幌より寒い・菅平は釧路より寒い…」・「大町は函館より寒い・大町は室蘭より寒い…」といったように、「長野県の特に寒い地域」と「北海道の主要都市など一部地域」を個別に比較した場合は、「長野県側の方が寒い」という構図は成り立ちます。
特に函館・室蘭という道内では極めて温暖な地域との比較では、長野側が寒い地点は多数存在します。但し、それでも旭川や帯広よりも寒い地域は存在しません。
なお、菅平などは標高1,000m級の高原にある特殊な環境(気温が下がる上での様々な条件を揃えた地域)であり、道内の主要都市は標高が低い(場合によっては海沿い)であることを考慮すると、数字としては確かであっても、このような比較がどの程度適切なのかは、また別の問題と言えるでしょう。
史上最低気温では北海道側の「圧勝」
県全体や地域ごとの「平均気温」ではなく、最もわかりやすい「寒さ」のデータとも言える「最低気温」の過去最も低い値で見た場合、北海道と長野県の記録は、比較にならないほどの差があります。
観測地点 | 史上最低気温 | 観測年 |
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旭川 | -41.0 | 1888年 |
帯広 | -38.2 | 1892年 |
江丹別 | -38.1 | 1977年 |
歌登 | -37.9 | 1977年 |
幌加内 | -37.6 | 1977年 |
美深 | -37.0 | 1977年 |
和寒 | -36.8 | 1977年 |
下川 | -36.1 | 1977年 |
中頓別 | -35.9 | 1977年 |
占冠 | -35.8 | 1977年 |
観測地点 | 史上最低気温 | 観測年 |
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菅平 | -29.2 | 1978年 |
野辺山 | -26.0 | 1978年 |
松本 | -24.8 | 1898年 |
諏訪 | -23.1 | 1945年 |
開田高原 | -22.0 | 1978年 |
軽井沢 | -21.0 | 1925年 |
奈川 | -20.9 | 1978年 |
立科 | -20.7 | 1978年 |
飯山 | -19.7 | 1978年 |
原村 | -19.7 | 1978年 |
最も低い気温を観測した地点について見た場合、北海道の場合「-35℃未満」という極端な低温記録が並んでいます。
一方で、長野県の場合極めて寒いことは確かですが、「-30℃台」は過去一度も観測されておらず、-20℃程度の場所も目立ちます。
長野県と北海道の「寒さ」を比べる場合、その違いを最もわかりやすく捉えられるデータはこの「史上最低気温」のデータと言えるでしょう。
ポイント・まとめ
・長野県は寒い地域ですが、県全体の気候として「北海道より寒い」とは言えません。
・菅平、開田高原を筆頭に「長野県内の特に寒い地域」と、北海道の主要都市を比べた場合「長野側が寒い」ケースは見られます。
・過去の「史上最低気温」で見た場合、北海道側は-35℃未満の記録があるなど、長野側の記録を圧倒しています。
長野県内で最も「寒い場所」については、上記の記事で別途解説しております。
長野県が寒い要因については、上記の記事で別途解説しております。