長野県はなぜ「寒い」のか?

自然・気候

関東甲信越地方の中でも「長野県」は、一般にかなり「寒い」地域として知られています。

当ページでは長野県がなぜ「寒い」のか?という疑問について、一般的に考えられる要因などをなるべくシンプルに解説していきたいと思います。

最大の寒い理由「標高の高さ」

長野県が全体的に「寒い」と言われることが多い、その最大の要因となっているものは、一般論として考えた場合「標高」そのものが高いという点、この一点が最も大きな理由と言えます。

長野松本諏訪飯田軽井沢東京
標高418m610m760m516m999m25m
年間平均気温(℃)12.312.211.413.18.615.8
1月の最低気温平均(℃)-3.9-4.9-5.5-3.6-8.21.2
気温の単位は℃・気温は気象庁の平年データ(2020年まで)による

上記の表からも分かるように、長野県は人口が多く住む主要都市であっても標高が400~700m程度となっており、諏訪市など一部は東京スカイツリーの高さよりも高い場所に位置します。別荘地と知られる軽井沢に至っては1000m程度とかなりの標高であり、海沿いの都市部では考えられない条件となっています。

広く知られている一般的な知識として、標高が100m上がると、気温は平均的には0.6℃程度下がるとされており、乾燥した条件などでは100mで1℃程度下がる場合もあります。

すなわち、標高の高い長野県は、県内のどこであっても首都圏の都市部や名古屋・京阪神といった標高の低い地域と比べ、気温が大幅に低くなりやすい条件を備えているのです。

「内陸」・「冷気湖」という地理的条件

標高の高さが「寒さ」に直結している長野県ですが、観測される気温を見て行くと、標高だけでは説明がつかないほどの低温となっている場合があります。

特にその傾向は冬場にはっきりしており、一部の都市部でも-10℃台、都市部ではない地域では-15℃以下といった記録も珍しくなく、最も寒いとされる「菅平高原」では-20℃を下回る気温を毎年観測しています。

これについては、長野県の位置する「地理的条件」が大きな要因であると一般論としては考えられます。

長野県は、日本ではそう多くない「内陸県」の一つであり、海には一切面していません。また、海に面していないのみならず、周囲を高い山(北アルプス・南アルプスを筆頭に)で囲まれているため、海の方からの空気がそう簡単には入って来ない環境にもなっています。

風が入りにくい内陸部では、一般に「放射冷却」と呼ばれる地表の熱がどんどん奪われる現象が起きやすく、結果として朝晩は急激な気温低下が見られやすくなります。

また、特に気温が下がりやすい場所の地理を見て行くと、そもそも標高が高い地域でありながら、更に周囲に標高の高い山で囲まれたような地形、小さな盆地地形になっている場所が大半です。

最も寒い菅平高原はその典型的な事例であり、標高が1,200m程度ありながら比較的平坦な地形となっており、周囲を山に囲まれているため、結果として「放射冷却」が強まり、更にその冷やされた空気が溜まる(冷気湖と呼ばれる現象)ことで、極端な低温記録が生じやすくなっています。

冬に「よく晴れる」ことも一つの要因

標高や地理的条件(地形)に大きな影響を受け、「寒い」地域となっている長野県ですが、冬の気温の低さは単純に「よく晴れる」ことも一つの要因です。

晴れた場合、昼間の気温はやや高くなる場合もありますが、雲という「蓋」がない分夜になると地上の熱はどんどん空中に奪われていき「放射冷却」が起きる絶好の環境となります。

長野県内については、北アルプス寄りの地域・新潟県境に近い地域は、日本海からの雪雲がどんどん入りやすい地域で、寒さもさることながら「雪の多さ」が目立つ地域ですが、他の大半の地域(長野市の南側や松本なども含む)は、余り雪雲が流れ込むことなく、首都圏のように冬場は長期間晴れ間が続く気候の場所が多くなっています。

晴れてしっかり気温が下がり、それが連日続きやすい結果、冬の気温の低さ(基本的に最低気温)が「より目立つ」ようになっている側面もあるのです。

都市化の度合いも一つの要因

寒さが目立ちやすい一つの要因としては、この他には「都市化」の度合いというものも一定程度関わってきます。

例えば、首都圏・京阪神・中京圏などと比べた場合に、長野県内の各地点はかなり気温が低くなっていますが、大都市側の「気温の高さ」には少なからず「都市化」による気温上昇の要素が見られます。

逆に、長野県内の場合、長野市や松本市であれば、市街地周辺では一定程度都市化の影響が否定できない(松本の観測地点では特に気温上昇幅が大きい)かもしれませんが、地域全体で見れば、都市化が気温にもたらす影響は大都市圏と比べかなり小さいと言えます。

県内の大半が山地や自然にあふれた環境で、気温上昇は概ね地球温暖化のみによる部分によるところが大きい点が、長野県の「寒い」イメージをより目立つものにしている側面もあると言えるのです。

ポイント・まとめ

長野県が「寒い」地域である一般的な要因としては、以下のような点が考えられます。
・標高がそもそも「高い」
・内陸県、山に囲まれた地理的条件(「放射冷却」が強まりやすい)
・一部を除き「冬に晴れやすい=放射冷却が起きやすい」
・都市化の度合いが抑えられている

長野県内で最も「寒い場所」については、上記の記事で別途解説しております。

長野県の寒さを北海道と比較するというテーマについては、上記の記事で別途解説しております。