長野県で「最も寒い場所」はどこなのか?

自然・気候

こちらでは、長野県内の気候について「最も寒い場所」というテーマに絞り、それは一体どこであると考えられるのか?気象庁の観測データに基づいた場合どこで「最低気温記録」が見られるのか?などを見て行きたいと思います。

厳密な意味での「最も寒い場所」は判断が難しい

長野県で最も寒い場所はどこか?このような素朴な疑問は、各種のデータなどを参考に、ある程度の答えを出すことは可能ですが、厳密に、しっかりと考えてみた場合、この疑問に答えることは簡単ではありません。

例えば、「最も寒い」といっても、それが「どこの内容」を指すのかによって、大まかに以下のような区分に分けることが可能です。

ただ単に「気温が低い」ことにこだわる標高が3000m級の山岳地帯(日本アルプス)が最も寒いという「一般論」が考えられる
人が住む場所で「最も寒い」場所気象庁の観測データなどからも分かる通り、一般的に「菅平高原」とされることが多い
長野県の都市部で「最も寒い」場所気象庁の観測データからは大町市が最も寒いと推定
人口10万人以上の都市に限って見れば

人が立ち入ることが出来るかなどを考えなければ、とにかく「気温の低さ」だけにこだわれば、長野県内には3000m級の日本アルプスの山々がある訳ですので、そういった山岳地帯では想像できないほどの「極寒」となっていることは、それほど難しく考えなくても(気象庁などの観測は行われていないものの)、一般論としてイメージすることが可能です。

但し、通常「寒い場所」と言うような場合、恐らくはそのような人が一般的にアクセスすることが不可能な場所ではなく、人が住んでいる場所や観光地、または都市部という基準で見ることが多いと思われます。

単に寒いだけではなく、「~の地域で」という区分を設定して見た場合、「最も寒い場所」となる場所は異なってくるのです。

観測データ上は「菅平高原」が最も寒い

年平均気温冬の平均気温1月の最低気温平均観測史上最低気温観測史上「最低」の最高気温
菅平アメダス6.6-4.9-13.0-29.2-12.1
県内での状況最も低い平年値最も低い平年値最も低い平年値最も低い記録最も低い記録
単位は℃・気象庁の平年データ(2020年まで)または過去の観測データによる

長野県内では気象庁の観測地点が多数ありますが、その中で最も気温が低い場所、最も寒い場所としてデータ上明らかな地点は、上田市菅平高原に位置する「菅平アメダス」です。

こちらは年間の平均気温も、冬場の平均気温も、過去の最低気温記録なども、ほとんどの「低温」に関する記録が「県内最低」となっており、その寒さは北海道の札幌よりも更に寒く、道東の平野部並みとなっています。

菅平がどうして最も寒いのか?という点については、様々な側面がありますが、主な要因としては下記のようなものが考えられます。

標高が高い・長野県内の気象庁観測地点では「2番目」に標高が高い(1253m)
冷えやすい地形・標高が高い一方「平坦」な地形で、周囲を山に囲まれた「菅平盆地」となっている
・盆地地形は一般に地上の熱が奪われ冷気が溜まる「放射冷却」が発生しやすいとされる
冬に晴れやすい・日本海からの雪雲が入りにくく、朝によく晴れて「放射冷却」となりやすい
緯度が高い・大きな要因とは言えないが、県内では北側に位置し、寒気が入りやすい環境

特に、地形による影響は大きいと考えられ、気温が急激に下がるには単に標高が高いのみならず、冷たい空気が溜まりやすい盆地状、山に囲まれたような地形が重要であることが分かります。

なお、長野県内で一般に一定数の人がお住まいになっている地域として見た場合も、菅平高原一帯は最も標高が高い地域ですので、人里として見た場合「最も寒い場所」と解釈してもよいと考えられます。

また、御嶽山に近い開田高原や、八ヶ岳連峰に近い野辺山高原一帯も、かなり寒い場所として知られており、特に野辺山の観測地点では-25℃未満の最低気温が観測されたことがあります。

「都市部」で見た場合どこが最も寒いのか?

長野県内について「都市部」で見た場合、「最も寒い」場所がどこになるかは、都市の規模をどう解釈するかにもよりますが、ただ単に「市」という単位で見た場合は標高が高い大町市が最も気温が低いデータとなっています。

また、人口が10万人程度ある県内の主要都市として見れば、佐久市が最も寒い地域と言える状況です。

年平均気温冬の平均気温1月の最低気温平均標高
長野12.30.8-3.9418m
松本12.21.0-4.9610m
諏訪11.40.2-5.5760m
上田12.00.7-5.0502m
佐久10.9-0.4-7.2683m
伊那11.70.5-6.2633m
飯田13.12.2-3.6516m
大町9.7-1.6-7.5784m
単位は℃・気象庁の平年データ(2020年まで)による

データの利用で難しい点は、例えば長野・松本などの観測地点は100年以上の歴史を持つ観測が行われている一方、地点によっては統計データが1970年代後半以降の観測となっているなど、観測期間にかなりの差がある点が挙げられます。

例えば、戦前には松本市で-20℃未満の「極寒」の最低気温が観測されており、これは他都市では見られないような低温記録ですが、あくまでも戦前のデータであり、都市化や温暖化が進む前のデータであるため、それをもって「松本が最も寒い」とは言えないということになります。

また、観測地点のある場所の環境も重要で、最も気温が低い大町のアメダス(観測地点)は、市街地から少し離れた自然の多い場所にあるため、気温がより低く出やすくなっている可能性もないとは言えません。特に「朝の最低気温」については大町・佐久の差は小さいため、一概にどちらが寒いと断定することは難しい状況です。

ポイント・まとめ

長野県で最も寒い場所は、必ずしも断定的なことが言えませんが、一般論としては下記のような状況と考えられます。
【単に気温が低い場所】日本アルプスなど標高3000m級の山岳地帯
【人が住む地域で最も寒い場所】菅平高原一帯
【市部】大町市
【主要都市】佐久市

長野県が寒い要因については、上記の記事で別途解説しております。

長野県の寒さを北海道と比較するというテーマについては、上記の記事で別途解説しております。