日本で2番目に雪の多い都道府県庁所在地である札幌市は、1月・2月については「積もる」だけではなく単に「降る・舞う」ことも含めると、ほぼ毎日雪が降る地域です。
当ページでは、札幌で雪が降る際には一体「どういった要因」で降るのかというテーマについて解説する中で、3つある「雪」の原因のうち、もっともありふれた「一般的な冬型の気圧配置」について解説していきます。
「冬型の気圧配置」とは?
いわゆる「西高東低」
札幌に雪をもたらす基本中の基本とも言える気圧配置である「冬型の気圧配置」。
「冬型の気圧配置」というものは、「西高東低」とも呼ばれるもので、大雑把に言えば西側に高気圧・東側に低気圧があるように天気図上では描かれるものです。高気圧と低気圧の間は気圧の差が大きいことが多く、天気図上では「等圧線」と呼ばれるラインが幾重にも描かれて「縦縞」のように見えるのが一般的なパターンです。
冬場は大陸側(シベリア)には極めて強い「寒気(シベリア気団)」が居座り、その寒気の一部が寒い年であれば次々に日本付近・北海道付近へ流れ込んで来ます。
気団は天気図上では強い「シベリア高気圧」として描かれ、高気圧からは風が吹き出す・低気圧に向かっては風が吹き込むこと、また等圧線が込み合って縦縞になっている場所では強い風が吹くのが気象の基本ですので、日本付近では寒気が流れ込む際にはシベリア方面(北西・北など)からの強い季節風が吹くことになります。
「筋状の雲」が日本海側に雪をもたらす
寒気が季節風に乗って流れ込む際に、日本・北海道付近へたどり着くには必ず「日本海」を通ります。日本海は特に日本の近海では冬場でもやや温暖で、本州付近では10℃台、北海道日本海側でも数℃程度の海水温が維持されています。強烈な寒気が入って来ると、海上ではかなりの「温度差」が生じます。
気象に関する一般論としては、温暖な空気は上へ上へと進む「上昇気流」を発生させ、その結果冷やされて雲となり、最終的には雨粒や雪の結晶を発生させますので、冬の日本海は、雪雲などを発生させる上で非常に適した環境となり、実際に冬型の気圧配置となった際には「筋状の雲」と呼ばれる特徴的な雲の帯で日本海上は埋め尽くされます。
冬場に日本海側で雪になる。というのは、要はこの「筋状の雲」が主に直撃することで降るというのが基本であり、札幌で雪が降る。という場合も、要因としてはこの冬型の気圧配置に伴う雪が一番多くなっています。
ただの「冬型」ではドカ雪は少ない
札幌で雪が降る場合に、最も多い気圧配置である「冬型の気圧配置」。
但し、冬型の気圧配置といっても、「筋状の雲」といっても、詳しく見ると全てが全て、同じパターンとは言えない点があります。
雪のパターン | 特徴・降り方 |
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ごく一般的な冬型による雪 | ・海から概ね真っすぐ雪雲の列が伸びて来る ・雪の強さはそこまで強くない場合が多い ・同じ風向きの場合雪がまとまることもあるが、ドカ雪にはならない |
石狩湾小低気圧・西岸収束雲による雪 | ・様々な要因で風がぶつかるなどし、雪雲が渦を巻いたり巨大な帯になって直撃する ・雪が1時間5cm以上の場合もあるなど強く降る ・毎日のように起こるものではないが、まれに「ドカ雪」をもたらすことも |
大まかにまとめると、「冬型の気圧配置」に関連する雪の降り方は、上記の2パターンがあります。
最も一般的な冬型による雪は、筋状の雲が概ね一列に伸びて北海道方面へ流れ込むというもので、この場合「風向き」によって降るかどうかが決まります。また、雪雲はそれほど強くはならず、ダラダラと降るか、時折晴れ間を見せながら雪が断続的に降るような状況が目立ちます。
札幌の場合、雪の降る風向きは場所によっても違いますが、北寄りから雪雲が入って来る場合に雪が比較的降りやすく、西北西の風である場合に雪は最も降りにくい環境です。但し、西北西よりも更に西に寄って「真西」に近い風になった場合は、市内の西側では時折雪が降りやすくなる場合があります。なお、風の強さも一定程度重要で、風が強ければ内陸側に雪雲が流れ込みやすくなる一方、冬型が弱く風も弱い場合には沿岸部~都心部周辺でむしろ雪が降りやすくなることもあります。
上空の風向き | 雪の傾向 |
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北 | 単なる「筋状の雲」では余り見られない・「石狩湾小低気圧・西岸収束雲」発生時に真北から強い雪雲が直撃する場合が大半 |
北北西 | 冬型の気圧配置の際に様々な状況で見られる・札幌市内の広い範囲で雪が降りやすいパターン |
北西 | 市内の北側や東側では雪が比較的降りやすい・市内の南側では雪が降りにくくなる |
西北西 | 多く見られる風向き・岩見沢で大雪となり、札幌市内では概ねよく晴れるパターン |
西 | 全体的には雪が降りにくく晴れる場合が多い・市内の西側を中心に雪が降る場合も |
雪がまとまる場合については、2番目の要因である「石狩湾小低気圧」または「西岸収束帯」と呼ばれる雪雲の塊によるパターンが大半です。こちらは一列に伸びる雪雲ではなく、異なる方向からの風向きがぶつかって雪雲が発達し、それが直撃することで大雪になるというものであり、単なる小さな「筋状の雲」とは言えない気象現象です。
これらは大半のケースで留萌・羽幌沖など北側で発生し、札幌を含む石狩湾一帯を直撃します。逆に言えば、札幌では「筋状の雲」が流れ込むだけの冬型の気圧配置では、大雪・ドカ雪になることはほぼありません。
石狩湾小低気圧・西岸収束雲については、上記の記事で詳しく解説しています。
なお、札幌近郊で雪が非常に多い平地としては、「岩見沢」が挙げられますが、岩見沢は上記の「小低気圧」や「収束帯」のみに大雪の傾向は左右されません。岩見沢では西北西からの風が吹くだけで雪がまとまりやすい上、北海道付近で冬型となる場合、雪雲の向きとしては西北西方向からが一番多いことが「雪をもたらす好条件」となっています。加えて、ロシアの山岳地形(シホテアリニ山脈)に影響されて雪雲が更に発達し、それが岩見沢方向に直撃し時に50cm単位の「ドカ雪」をもたらすという地域特有のパターンがある(村松バンド)ことから、札幌より雪がかなり多い地域となっています。
寒くなるほど雪が弱く降る?
冬型の気圧配置に伴う雪は、札幌の冬の天気では最も一般的なものですが、その降り方を冬の期間全体で見た場合、時期によって少し差が見られることも確かです。
例えば、初雪の便りが聞かれ始めるような時期から12月頃にかけては、寒気が流れ込むと毎度のようにしっかりとした雪雲が発達し、気温の割には雪が降る・積もる頻度が多くなります。
一方で、真冬の時期になると、非常に強い寒気が流れ込む場合で、かつ風向きが札幌で雪が降りやすい場合でも、弱い雪雲を伴った筋状の雲が断続的に流れ込むだけで、雪はほぼ1日中降るような場合でも、積雪量としてはごくわずか・ほとんどまとまらない。というケースがやや増えていきます。
これは、海水温の変化による要因が大きく、11月~12月まではある程度高い海水温であったものが、真冬になって水温が下がり、温度差が少なくなる・暖かく湿った空気の供給が抑えられることで、雪雲の発達度合いが抑えられやすい。雪雲の塊が発生しにくい。ということに由来します。
天気予報では、強烈な寒気が流れ込む。とかいった内容が述べられていても、時折寒いだけで雪がまとまらないケースがあるのは、「寒すぎる」時期のため海水温が冷え切っているためであり、必ずしも冬型の気圧配置が弱いであるとか、気候変動の影響であるとか、札幌だけの特徴であるといった理由がある訳ではありません。
冬型の気圧配置(石狩湾小低気圧)以外の降雪要因である「太平洋などを通る低気圧」については、上記の記事で別途解説しております。