毎年長い冬があり、雪に一面が覆われ続ける札幌のまち。その冬の訪れを告げる最も象徴的な瞬間としては、「初雪」の観測というものがあります。
初雪の日というものは、年によって違いがあり遅い年もあれば早い年もあり、必ずしも同じではありませんが、概ねどのくらいの時期に降るものなのでしょうか。
こちらの記事では、札幌における初雪というテーマのみに特化して、過去の観測データなどを見ながら札幌の初雪の状況を詳しく考えていきたいと思います。
初雪とは?その定義について
札幌の初雪は、札幌管区気象台ではじめて雪を観測した日を初雪日としています。
気象庁で観測している「雪」というのは、雪またはみぞれを観測した日を指すもので、気温が高くても降る場合があるあられやひょうは、完全な「氷」ではあっても観測上の「雪」には含まれません。逆にもし見た目がほとんど雨であっても、ほんの少しでも雪の破片が混じっているみぞれであれば、それは「雪」ということになります。
また、気象台から見える山に初めて雪が積もった日を「初冠雪」と言い、こちらは手稲山で観測していますが、これはあくまでも手稲山で雪が積もった様子が見えた日のことであり、気象台で初雪を観測した日とは直接の関係はありません。基本的には手稲山の標高は高いため、同じ日になることもありますが、初冠雪は初雪よりも早く観測されることの方が多くなっています。
札幌管区気象台では、2021年現在雪が降ったかどうかの判断を「目視」で行っています。近年は目視による観測が減少し、道内でも旭川・網走・釧路・帯広・函館・室蘭では、その時の湿度と気温から自動で雨か雪かを判別する計算を行うことで、初雪の日を判断しています。すなわち、自動化された地点では、実際に何が降っていたのかは厳密には観測していない状況です。
目視と自動では、自動の方が雪と判断しやすい特徴があり、札幌で自動観測をもし開始すれば、初雪の時期が早まることも考えられます。
平年の初雪日・他地域との比較
初雪を観測する平年値(1991年~2020年の観測値の平均)を見てみると、以下のようになります。札幌の初雪は、平年値で「11月1日」と区切りの良い日付となっています。
地点 | 初雪の平年日 | 地点 | 初雪の平年日 |
---|---|---|---|
稚内 | 10月19日 | 札幌 | 11月 1日 |
旭川 | 10月19日 | 帯広 | 11月 1日 |
倶知安 | 10月20日 | 函館 | 11月 1日 |
留萌 | 10月25日 | 室蘭 | 11月 2日 |
羽幌 | 10月27日 | 苫小牧 | 11月 2日 |
雄武 | 10月27日 | 浦河 | 11月 4日 |
紋別 | 10月27日 | 江差 | 11月 4日 |
北見枝幸 | 10月28日 | 広尾 | 11月 5日 |
寿都 | 10月28日 | 根室 | 11月 6日 |
網走 | 10月30日 | 釧路 | 11月 7日 |
岩見沢 | 10月30日 | ||
小樽 | 10月31日 |
地点 | 初雪の平年日 | 札幌との比較 |
---|---|---|
青森 | 11月8日 | 7日遅い |
盛岡 | 11月9日 | 8日遅い |
仙台 | 11月26日 | 25日遅い |
新潟 | 11月26日 | 25日遅い |
金沢 | 11月24日 | 24日遅い |
東京 | 1月3日 | 63日遅い |
名古屋 | 12月22日 | 51日遅い |
大阪 | 12月26日 | 55日遅い |
鳥取 | 12月5日 | 34日遅い |
広島 | 12月13日 | 42日遅い |
福岡 | 12月18日 | 47日遅い |
鹿児島 | 1月6日 | 66日遅い |
各地と札幌の初雪日を比較して見ると、札幌は道内では特段遅い地域というほどではなく、日本海側ということもあり、太平洋側の多くの地域よりはやや早い傾向があります。基本的には北へ行くほどに・標高が高いほどに早まる傾向が強く、稚内や旭川では10月半ばの初雪も珍しくありません。
なお、寒気の流れ込み次第では道内でも上記の平年値以上に初雪時期が大きくずれることもあり、例えば2021年には稚内・旭川の初雪は10月17日であったにも関わらず、札幌は11月19日と、1か月以上の間が開く事態も発生しました。
全国の主要な都道府県庁所在地で見た場合、札幌は最も初雪が早い場所となっています。東京のように日本海からの雪雲の影響を受けにくい場所では、平年データでは2か月以上初雪の時期に差が生じるほどで、札幌の冬の訪れの早さが伺えます。
初雪日の変化・期間の幅
初雪の状況について、過去の初雪日を一覧形式で見てみると、以下のようになっています。
年 | 初雪日 | 年 | 初雪日 | 年 | 初雪日 | 年 | 初雪日 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1990年 | 11月10日 | 2000年 | 10月18日 | 2010年 | 10月26日 | 2020年 | 11月4日 |
1991年 | 11月4日 | 2001年 | 11月4日 | 2011年 | 11月14日 | 2021年 | 11月19日 |
1992年 | 11月1日 | 2002年 | 10月30日 | 2012年 | 11月18日 | 2022年 | 11月16日 |
1993年 | 11月1日 | 2003年 | 11月8日 | 2013年 | 11月8日 | 2023年 | 11月11日 |
1994年 | 11月4日 | 2004年 | 10月26日 | 2014年 | 10月28日 | 2024年 | 10月20日 |
1995年 | 11月2日 | 2005年 | 11月9日 | 2015年 | 10月25日 | ||
1996年 | 10月26日 | 2006年 | 11月12日 | 2016年 | 10月20日 | ||
1997年 | 10月8日 | 2007年 | 11月15日 | 2017年 | 10月23日 | ||
1998年 | 11月3日 | 2008年 | 11月7日 | 2018年 | 11月20日 | ||
1999年 | 10月17日 | 2009年 | 11月1日 | 2019年 | 11月7日 |
現在の初雪平年日である11月1日というデータを計算する上では、1991年から2020年までのデータを用いてその平均値を取っています。
上記では概ねその期間にあたる1990年~2024年までの初雪日を一覧にしていますが、極端な変化は読み取れないものの、近年初雪が極端に遅れる日が時折出現しており、2012年には11月18日、2018年には11月20日、2021年には11月19日と、11月の後半まで初雪がずれこむようなこともあります。
初雪は最も早い年では10月上旬、最も遅い年では11月下旬と、各年の初雪の時期には最大で1か月以上の幅があり、10月半ば~11月中は広く初雪の可能性がある期間と言えるでしょう。
なお、初雪が早い年と遅い年は、1年単位で上下に動くというよりは、上記のグラフからも分かる通り、2~5年程度のまとまりをもって分布しているようにも見えます。但し、これについては1年単位を越える気候の動きということになってしまうため、このような傾向がなぜ生じているのかについて断定的なことは言えません。
注意点としては、2024年春からは観測方法が「目視観測」から「自動判別による観測」に転換されています。自動判別になると、基本的に「降雪」が「観測されやすくなる」傾向が否定できないため、今後の初雪日は、統計上異なる取り扱いはされないものの、目視観測による過去の初雪日と厳密には比較しづらくなる点を考慮しておく必要があります。
初雪と積雪の関係は?【タイヤを換えるのはいつ】
初雪については、初めて雪(またはみぞれ)が降る日ということで、一瞬舞うだけ・降るだけのこともあれば、初日からしっかり降って少し雪が積もることもあるなど、その降り方は様々です。
初雪が降ったタイミング(観測されてから1日以内)に積雪となった(うっすらを含む)事例をまとめてみると、1990年~2021年の間で16回あります。32年間で16回ということはちょうど半分ですので、初雪のタイミングで雪が積もることは決して珍しいことではありません。
初雪が降っただけ | 1993年・1995年・1997年・1998年・1999年・2000年・2002年・2003年・2009年・2011年・2013年・2014年・2017年・2018年・2019年・2021年・2022年・2023年・2024年 |
初雪のタイミングで積雪 | 1990年・1991年・1992年・1994年・1996年・2001年・2004年・2005年・2006年・2007年・2008年・2010年・2012年・2015年・2016年・2020年 |
最も多い積雪(初雪観測から24時間以内) | 8cm(2004年10月27日) |
札幌の場合、車を運転される方が冬用タイヤに履き替える時期は比較的早く、10月~11月にかけて事実上全ての車のタイヤが冬用タイヤとなりますが、必ずしも初雪のタイミングでタイヤ交換がなされているとは限りません。
初雪くらいであれば…。のように、少しタイミングをずらして後回しにしようとする方も中にはいらっしゃいますが、初雪=積雪となる頻度の高さからも分かるように、また、初雪より前に「路面凍結」の可能性もあることから、冬用タイヤはできれば初雪の前、概ね10月の半ばくらいには交換しておいたほうがよいでしょう。
関連するテーマについては、上記の記事で別途解説しております。