立山黒部アルペンルートの「雪事情」とは?【雪を楽しむ観光地】

自然・気候

立山黒部アルペンルートは、立山連峰の生み出す絶景を満喫できる世界有数の「山岳観光ルート」として絶大な人気を集めています。アルペンルートでは各季節の風景ごとに様々な魅力があり、「雪の大谷」をはじめ、壮大な「雪」が織りなす風景がとりわけ大きな観光資源となっています。

こちらでは、立山黒部アルペンルート一帯における「雪」に関する状況の「基本」について、一般的な過去の状況に基づき解説していきます。

解説する内容は、あくまでも過去の大まかな状況に基づく一般論です。個別具体的な状況を示すものではなく、状況はその時々に応じ様々に変化する場合があります。

アルペンルートは毎年4月半ば〜11月中のみ営業されます。こちらでは、その営業期間内に関する状況を解説するものです。

時期ごとの「雪」

雪の「降る」状況
(基本的に「室堂」基準)
積雪の状況
(基本的に「室堂」基準)
4月雪がまだ降る場合あり
まとまって降るケースも見られる
冬の時期からの大量の積雪が残る(数m以上)
5月まれに雪が降る場合あり
・GW頃などにはまれにまとまった雪となる場合も
GW頃までは特に大量の積雪が楽しめる
その後も雪は多いものの、次第に減っていく
6月降る機会は基本的にない・残雪はある一方、減り方はより大きくなる
雪の大谷のシーズンが終了
7月雪が降らない時期残雪がどんどん減っていく(雪がほとんどない状況へ)
8月雪が降らない時期雪は基本的にない
9月一部の年で月末などに初雪となる場合あり
降らない年も多い
一部の年で月末などに立山の初冠雪となる場合あり
10月多くの年で初雪となる時期
・一部である程度まとまった雪となる場合あり
積雪が見られる機会が増え始める
雪が遅い年は積雪なしの期間が大半を占める場合あり
11月雪が当たり前に降る時期
まとまった雪が降る機会も増加
積雪が一般的な時期に入る(根雪)
雪が多い年は、この時期から比較的多くの雪に覆われるケースも
過去の一般的な傾向

立山黒部アルペンルート一帯について、観光拠点であり最も標高が高い(2,500m近い)室堂周辺を基準にした場合、大まかな雪の傾向は上記の通りです。

平地とは全く異なり、雪の影響を受ける時期が非常に長く、積雪もかなり長期間に渡って見られます。「雪山」そのものである立山連峰は、数m単位の積雪が当たり前で、特に吹き溜まりとなるような場所では10mを大きく上回る積雪があります。

観光の目玉とも言える「雪の大谷(雪の壁)」は、その高さは15m以上になることも多く、6月に入ってからもしばらくの間雪の間を通り抜ける体験をお楽しみ頂けます。

雪と交通機関の状況について

立山黒部アルペンルートは、春や秋の期間に「営業期間中」であっても雪が降ることがあります。

とりわけ11月は雪が降る機会が多く、営業開始後早いGW頃までの時期も状況よっては雪に見舞われる場合がある状況です。また10月・GW後に雪が降るケースもあります。

雪が降れば必ず交通に影響が出る訳ではありませんが、大雪となる場合、吹雪となる場合美女平〜室堂間の「立山高原バス」が運休になるケースがあります。

アルペンルートの交通機関は、ケーブル・一般的なバス・トロリーバス・ロープウェイなど多種多様な「交通博物館」のような存在となっています。このうち一般的なバスとしてケーブル駅のある「美女平」から、観光拠点「室堂」を結ぶ「立山高原バス」は雪による影響を受けやすくなっています。

「富山側」からアクセスする場合、室堂へ行くには必ず高原バスを利用する必要があります。一方でアルペンルートは「長野側(扇沢)」からのアクセスも可能です。長野側からの場合、高原バスを使わずにトロリーバス・ロープウェイ・ケーブルを乗り継いで室堂へアクセスすることになります。

すなわち、雪で高原バスが運休となるようなケースでも、長野側から室堂へアクセス可能な場合があります(個別具体的な運行状況については、アルペンルートの公式サイトなど運行事業者が発表する情報を随時ご確認下さい)。

その他ポイント・注意点

雪の大谷のシーズンは「最初の約2ヶ月間」

アルペンルート沿いの「雪」に関する観光の目玉スポットである巨大な「雪の壁」である「雪の大谷」。こちらは高さが15m以上に達することもある壮大なスケールの風景がお楽しみ頂けますが、観光スポットとして訪れることが可能なシーズンは4月の営業開始後〜6月下旬頃までの約2ヶ月間となっています。

なんとなくのイメージで、7月や8月にも見られるという思い違いをされる方が時折おられるようですが、雪山といってもさすがに夏のシーズンに入ると雪は消えていきますので、あくまでも6月下旬頃(初夏のシーズン)で終わりを迎えるという点に注意が必要です。

地点によって雪の状況は大きく異なる

アルペンルートという観光周遊ルートは、各交通機関のルート・各拠点の位置ごとに標高差が非常に大きくなっています。

主な地点標高
立山駅475m
美女平977m
弥陀ヶ原1,930m
室堂2,450m
大観峰2,316m
黒部平1,828m
黒部ダム1,470m
扇沢駅1,433m

標高差は立山駅〜室堂では約2,000m、黒部ダム〜室堂でも約1,000mとなっています。一般論として100mにつき0.6℃程度気温が下がるという状況に従って考えれば、アルペンルート内でも「雪・みぞれ・雨」など天気が全く異なるケースがごく一般的ということになります。

例えば秋の雪が降り始めるような時期であれば、室堂で雪が降っている・雪化粧しているからと言って、必ず黒部ダムで雪が見られるとは限りません。

また、冬からの大量の「残雪」についても、室堂周辺では遅くまで残りやすい一方、標高が低い地点ほど早く消えていきやすい状況となります。

一概に「アルペンルート」と言っても、雪が降る時期・残る時期には大きな差があるという点を考慮した上で、「雪のある風景」をお楽しみ下さい。

服装に少し注意が必要

アルペンルート沿いのエリアは、拠点となる「室堂」の場合標高は2,450m程度となっており、富山市など平地と比べ気温は大きな差があり、15℃程度の違いが生じることが一般的です。

15℃も違うとなると、平地で20℃の場合でも、山の上は5℃くらいの場合もあるということになりますので、服装などは気温の低さなどを考慮したものとする必要があります。状況次第では気温はより低くなるケースもあり、例えば営業期間に-5℃未満まで下がるような気象状況も見られます。

一般論としては春の時期であれば着脱しやすいような上着や防水仕様の靴、秋の雪が増えていくシーズンであれば完全な防寒対策を施した服装・滑りにくい靴など、状況に応じて適切な装いで訪れるのが無難です。

「吹雪」で視界不良のケースも

先述の通り、アルペンルートは「営業期間内」であっても雪が降ることがあります。決していつでも雪が降るという訳ではなく、もちろん晴れている日も多いですが、降る場合の雪の降り方は様々で、少し降る程度の場合もある一方、本格的な雪・吹雪となることもあります。

登山ではなく軽い散策・乗り物に乗って楽しむ程度のつもりで訪れる場合でも、雪が降り続いて遠くの風景は何も見えない状況となるケースもゼロではありません。もっとも、それはそれで雪山の気候を体験するという意味ではユニークな機会となるとは言えるでしょう。但し、そういったケースでは雪化粧した立山連峰全体の風景などを見ることは出来ません。

なお、大雪・吹雪の場合は先述の通り交通に影響が生じ、運休などが生じることがあります。

雪山の美しい風景をご覧頂ける時期ほどに、雪が実際に降る割合も増えていきますので、気象情報・アルペンルートの運行事業者による公式的な情報・ライブカメラによる情報などで状況を随時確認することをおすすめします。

富山県一般の「雪事情」については、上記の記事で解説しています。