秩父地方の「雪事情」とは?【首都圏では雪が比較的多い地域】

自然・気候

こちらのページでは、埼玉県の西部に位置し、秩父山地に囲まれるなど関東平野一帯とは環境が異なる秩父市とその周辺地域(横瀬町・皆野町・長瀞町・小鹿野町)=秩父地方について、その「雪事情(雪の降る・積もる傾向)」を解説していきます。

秩父市・秩父地方は埼玉県の中でも特に内陸側・山沿いに位置する地域のため、雪は関東平野一帯と比べると特に多めになり、過去にはかなりまとまった量の雪が積もったケースもあります。

掲載情報は2022年時点のものです。その後の観測状況などにより、データなどが変化していることも考えられますので、その点はご留意下さい。

秩父地方「雪に関する基本データ」

観測地点名平年年間降雪量
(cm)
平年年間最深積雪
(cm)
平年年間降雪日数過去最大の積雪深
(cm)
秩父361819.498(2014/2/15)
【参考】東京868.546(1883/2/8)
気象庁の平年データ・観測データによる
平年月間降雪量
(cm)
平年月間最深積雪
(cm)
過去最大の積雪深
(cm)
11月22(1950/11/29)
12月2120(2004/12/31)
1月151153(2001/1/27)
2月121098(2014/2/15)
3月6540(1927/3/13)
4月1019(1988/4/8)
観測地点:秩父
気象庁の平年データ・観測データによる
積雪量1cm≧5cm≧10cm≧20cm≧
平年年間積雪日数4.62.11.20.4
観測地点:秩父
気象庁の平年データによる

気象庁の秩父特別地域気象観測所で観測された雪に関するデータを見ると、雪の量は東京と比べ総じて多めの傾向が見られます。

積雪はこれまで2008年を除き基本的に毎年観測されており、うっすら~数センチに留まる年もありますが、10~20cm程度となる年も比較的多く、場合によってはそれ以上の大雪が観測される場合も見られます。

とりわけ、2014年2月の豪雪では観測史上最多の98cm(約1m)の積雪を記録しており、この他にも2001年1月には53cmの積雪を観測した記録が残されています。

秩父地方「月別の降雪・積雪傾向」

秩父地方の「雪事情」について、各月ごとの大まかな傾向をまとめると以下のような形になります。

なお、こちらで述べる傾向は「秩父市中心部(市街地)」を前提としたものです。

雪の傾向
11月・雪は基本的に降らない
・過去にわずかな積雪記録あり、但し平成以降で1cm以上の記録はなし
12月・雪が全く降らない年が多い
・積雪はかなりまれ
1月・1回以上積雪する年の方が多い
・「南岸低気圧」による影響を受けやすい
・時折10cm以上のまとまった積雪、大雪となる
2月・1回以上雪が積もる年の方がやや多い
・「南岸低気圧」による影響を受けやすい
・時折10cm以上のまとまった積雪、大雪となる
3月・雪が積もる年、積もらない年が半々程度
・関東平野一帯と比べ「南岸低気圧」による影響を依然受けやすい
・まれに大雪となるケースも
4月・まれに積雪を観測するケースあり
・平成以降では積雪の記録なし
秩父市街地を基準とした場合

秩父市内・秩父地域は大半が山間部であり、秩父駅周辺よりもより山に近いエリア・より川の上流側のエリアなどでは、雪の頻度・量はより増える傾向があります。また、人が住んでいないような標高の高い場所では雪が降る期間も含め長くなり、大量の根雪が残ることも考えられますので、登山などをする際には注意が必要と言えます。

埼玉県内における比較で見た場合、秩父市は「市」としては最も雪が多い地域であり、さいたま市・熊谷市などと比べると雪が積もる頻度・量ははっきり多い傾向が見られます。

秩父地方「雪の量の変化」

記録が概ねしっかり残る1962年冬以降について、秩父で積もった雪の量がどのように変化しているかをグラフで表すと、下記のような形になります。

秩父における1962~2022年の年間最深積雪の推移(気象庁の観測データによる)

1年の中で最も雪が多く積もった「最深積雪」は、過去の観測記録の中では2014年の1m近い豪雪が極端に突出した数字になっているため、グラフ上でも2014年だけ異常な形を示しています。

但し、2014年を除いてみると、毎年積もる雪の量はは明らかに減少傾向です。かつてはほぼ毎年のように10~20cm台程度の積雪があった状況が、近年は雪がわずかしか積もらない年も増えており、10cm単位の雪が積もる頻度が概ね半々程度にまで減ってきています。

秩父地方の雪事情「ここがポイント」

首都圏では雪が多い・絶対値では多くない

秩父地域は、山に囲まれ、秩父市街地でも標高200m台とやや高いことから、首都圏一帯の中では雪が多い地域です。

東京のみならず、宇都宮・前橋といった関東平野一帯の各観測地点との比較でも、秩父は最も雪が多くなっており、東京から電車で乗り換えせずに気軽にアクセスできる範囲内では、箱根に次いで雪が多い場所とも言えます。

但し、秩父の雪は「雪国」と呼べるほどの雪では到底ありません。

秩父の雪は「市街地」の場合、長野の松本や仙台よりも大幅に少なく、甲府より少しだけ多い程度で、冬の中では雪が積もっていない期間が大半で、近年は雪が余り積もらない年も増えてきています。市街地で降る雪の量の絶対値では「雪はそれほど多くない」とも言える状況です。

東京積雪ゼロ・秩父20cm以上のケースも

秩父地方でで雪が降る場合、多くのケースでは関東で一般的に雪をもたらす「南岸低気圧」によるケースが大半です。

南岸低気圧については、秩父地方は山沿いにあるため、関東山地付近で発達した雪雲が掛かりやすいケースがあり、気温の低さもあいまって平野部と比べ雪の量が時にかなり多くなるケースがあります。

2014年2月15日に1m近い豪雪となった際は、東京周辺も含め大雪となりましたが、例えば2002年1月27日の秩父33cm・東京積雪ゼロ、2010年3月10日の秩父24cm・東京積雪ゼロ、2016年1月18日の秩父34cm・東京6cmなど、秩父と東京で雪の量が極端に違う事例はいくつも見られます。

スタッドレスタイヤは必要

秩父地方へ冬に車でアクセスする場合、スタッドレスタイヤは基本的に必要な地域と言えます。

もちろん、先述の通り「雪の多さ」はあくまでも「首都圏」基準に過ぎない側面はありますが、東京やさいたまが雨でも、秩父は雪というケースが多く、予期せぬ雪に見舞われやすいことは確かです。

また、朝晩の冷え込みがかなり厳しい地域のため、雪が降らなくても路面凍結の可能性が高い環境です。周辺には標高の高い山道も多く、スタッドレスタイヤを使わない場合行動範囲が狭くなってしまう場合もあります。

地域ごとの雪事情の差が大きい

秩父地方は、かなり広い面積を占める地域で、関東平野西端付近にあたる飯能市とも、また長野県の川上村とも隣接しているなど東西の幅が特に長くなっています。

標高の差も非常に大きく、最も高い場所では標高2000m級の甲武信ヶ岳周辺から、逆に皆野町・長瀞町中心部など標高100m台の場所もあり、気候(気温)には大きな差が見られます。

雪の降る頻度・量も同様で、山岳地帯では場合によってはメートル級の雪が積もり、春まで根雪となるケースもある一方、平地では先述の通り「首都圏では雪が多い」程度に留まる状況です。

こちらのページでは秩父駅周辺など主に秩父市街地を基準とした解説を行っていますが、市内のどこへ行くかによってイメージすべき「雪」の状況は異なりますので、その点はご留意下さい。

秩父市の雪事情【まとめ】

  • 首都圏の中では雪が特に多い(秩父市街地の雪の量は絶対値では多くない)
  • 積雪は1~2月に見られやすく、3月にも積もる場合もあり(12月以前・4月はまれ)
  • まとまった量の雪となる場合もあり、東京が積雪なし・秩父積雪20cm以上のケースも
  • 雪は大半が「南岸低気圧」による
  • スタッドレスタイヤなどは必要
  • 標高の高い山地ではかなり雪が多いなど、同じ秩父地方でも状況は大きく異なる

埼玉県内全体の「雪事情」については、上記の記事で別途解説しております。