こちらでは、北関東に位置する栃木県内において、「雪」が多い場所・少ない場所はどこか?というテーマについて、様々な側面から見ていきたいと思います。
雪の量というものは、「人が住んでいる場所」・「一般的にアクセスできる場所」・「実際に積雪が観測されている場所」など、様々な「物差し」で考えた場合、「多い場所」となる地点は異なってきます。
また、その年の雪の降り方などによっても違いが生じる可能性はあり、こちらではあくまでも一般論として地理的な条件で見た場合の「雪の多さ」を「推定」して解説をしていくものです。
観測地点では「土呂部(日光市)」が最多
栃木県内で気象庁が「雪」に関する観測を行っている地点の中で見た場合、雪が降る・積もる量が最も多いのは「土呂部(日光市)」の観測地点です。
観測地点 | 年間平年降雪量 (cm) | 平年年間最深積雪 (cm) | 観測史上最深積雪 (cm) |
---|---|---|---|
土呂部 | 365 | 74 | 129(2014/2/15) |
那須高原 | 296 | 41 | 88(2014/2/15) |
奥日光 | 227 | 40 | 125(1984/3/21) |
宇都宮 | 18 | 9 | 32(2014/2/15) |
栃木県では4か所で雪に関する観測が行われていますが、土呂部は宇都宮と比べると桁違いの雪が降っており、那須高原や奥日光と比べても雪は多い傾向にあります。
土呂部地域は地図で見ても分かる通り、関東平野一帯や那須野が原一帯からはかなり離れた地域にあり、帝釈山脈と日光連山などに囲まれたような環境で、標高は集落一帯で1,000m弱に達します。
「冬型の気圧配置」となり日本海側から雪雲が入る際、新潟県魚沼地域・福島県桧枝岐村方面から流れ込む雲はちょうどこの一帯まで入る形になっており、「日本海側」の気候的特徴を持つ結果として雪の量はかなり多くなっています。
市街地では「日光市街地・那須塩原市街地」周辺が多め
基準は大きく変わり、あくまでも「市街地」という条件のみに限って考えた場合、雪が最も多くなりやすいのは日光市街地または那須塩原市街地周辺と言えます。
いずれの市街地も、山地のようにずっと雪が積もる「根雪」状態になる訳ではなく、雪が多い地域とまでは言えないかもしれませんが、「南岸低気圧」が通過する際などには宇都宮・東京などが雨でも雪となるケースがあり、雪が降る頻度はやや多くなる傾向です。
積雪は特段「ドカ雪」が見られる訳ではありませんが、条件によっては20cm以上~の大雪となるケースも時折見られます。
また、基本的に大雪にはなりませんが、「冬型の気圧配置」が強まるタイミングなどでうっすら雪が積もることもあり、これも積雪頻度の増えやすさにつながっています。
人が一般的に住む地域での場合「川俣温泉(日光市)」周辺が最多?
観光地であるかどうかに関わらず、一般的な集落(複数の人家など)がある地域という観点から見た場合、雪が最も多いのは日光市内の川俣温泉周辺地域と推定されます。
こちらは標高が土呂部周辺より少しだけ高く、距離面でも新潟県・福島県・群馬県方面に少しだけ近いため、雪雲もより入りやすい環境と考えられます。
積雪はさすがに福島県会津地方、新潟県内、群馬県北部の一部などには及ばないと言えますが、それでも1m程度の積雪になるケースはあると言えます。
一般的にアクセス可能な場所では「奥鬼怒温泉」が最多?
人が住む集落などではないものの、一般的にアクセスが可能な場所について雪の多さを見た場合、日光市川俣の川俣温泉一帯から更に山奥へと入っていった先にある「奥鬼怒温泉」周辺が最も雪が多い地域であると考えられます。
観測地点ではないため具体的な積雪量は現地の状況や気象庁の推計積雪分布などを指標にすることになりますが、土呂部などと比べても比較にならないくらいの積雪量が見られ、1m前後どころではなく、1.5m以上、場合によってはそれ以上の豪雪も考えられる環境です。
雪が多くなる要因は、日本海側からの雪雲が特に入りやすい環境となっている点に加え、標高1,500m近くに達する環境ということで、札幌よりもかなり寒い気候=雪が非常に効率的に積もりやすい点が大きな要因となっています。
条件なしで雪が最も多い場所は「尾瀬に近い福島・群馬県境付近」
実際にアクセスが出来るかどうかなど、人が立ち入ることが出来る現実性を一切問わずに「場所」だけで見た場合、雪が一番多いのは「日本海側」からの雪雲が最も入りやすい、奥鬼怒温泉の北側などに広がる、尾瀬地域に近い県内の「福島・群馬県境」付近の険しい山地と推定されます。
この地域については、場所によっては標高が2,000mを越えるため多い年は「3m以上~」の雪が積もっていてもおかしくはない環境で、雪が消えるのも5月以降で、6月でも多くの残雪が見られるなど、関東平野一帯とは全く環境が異なります。
気候は標高から推測される気温ベースでは富山県の立山(室堂)に近いような環境と言え、10月や5月に新しく雪が積もる可能性もある地域です。
なお、基本的に県境沿いは車道もなく登山者以外は立ち入る余地がない地域であり、積雪シーズンは登山者も含め見られないような環境ですので、一般的な生活・観光を行う上では余り関係はないと言えるでしょう。
雪が少ない地域は山地・那須高原周辺を除く平地
栃木県の場合、山地や那須高原周辺を除いてはどの地域でも雪は少な目です。
宇都宮市・小山市・真岡市・那須烏山市など、標高が高くなく関東平野一帯から続く平坦な土地が広がる地域では、雪の量に差は余り見られず、どの地域でも「冬に時々雪が積もる程度」で、場合によってはほとんど雪が見られない年もあるなど、山地とは状況が大きく異なります。
なお、雪は少ないものの、東京よりは積もる頻度は少しだけ多めとなり、時にはまとまった雪が降ることがある他、冷え込みやすく雪の有無に関わらず路面凍結などが起こりやすいため、スタッドレスタイヤなどの必要性は比較的高いと言えます。
まとめ
栃木県内全体の「雪事情」については、上記の記事で詳しく解説しています。