過去の「南岸低気圧」による主な「大雪事例」まとめ【首都圏・平成以降】

自然・気候

こちらでは、首都圏に積雪をもたらすことがある「南岸低気圧」について、基本的に「東京で積雪10cm前後~となった」ような特にまとまった雪(大雪)となった事例について、一般的に記憶に残っていることも多い「平成以降」の事例に関して、過去の事例をまとめて紹介していきます。

なお、情報は2022年時点の情報で、以下では「新しい順」で各事例の状況を見て行きます。

2022年1月6日の大雪【雪の中心が東京都心】

東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪1087なしなし87なしなしなし2
単位はcm(センチ)

2022年1月6日の大雪は、東京で10cmとまとまった雪となったものの、しっかり降った範囲は海に近い場所に限られるなどかなり狭く、その他の首都圏の観測地点では全て「東京以下」の積雪、または「積雪ゼロ」となるという、かなり珍しい積もり方をするケースとなりました。

このケースは、通常の南岸低気圧とはやや異なるもので、当日の天気図では「南岸低気圧」の存在はかなり南側に見られるなど、一見雪が降りそうにない気圧配置となっていました。しかしながら、関東平野の近くで風向きが急に変わる「シアーライン」と呼ばれる部分が形成され、結果として異なる風向きの風がぶつかり合い、天気図には現れないほどの小さな前線・低気圧が別途生まれ、この局地的な大雪を発生させました。

当日は比較的強い寒気が残った状況であったことも影響し、雪は東京都心では予測されたよりも多く降り、道路交通などに一定の影響が生じました。

2018年1月22日の大雪【広い範囲で大雪】

東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪231810191712192927525
単位はcm(センチ)

2018年1月22日の大雪は、都心部も含め関東の広い範囲で10~30cm程度の大雪となるなど、2014年の大雪事例を除いて見た場合、かなり記録的な大雪となり、各地で交通などに大きな影響がしょうじました。

当日の天気図は、南岸低気圧のみならず日本海にも別の低気圧が見られる「二つ玉低気圧」と呼ばれる形で、通常このケースでは「温暖な空気」が入りやすい(雨になりやすい)傾向がありますが、この1月22日のケースではそれがなく、北から寒気が急速に流れ込み、雪のピークの時間帯には強い寒気に覆われ続けたため、広い範囲で0℃程度~氷点下の降雪が見られました。

2014年2月14~15日の大雪【記録的豪雪・内陸で1m級】

東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪27281462981227332114143
単位はcm(センチ)

2014年2月14日~15日の大雪は、東京周辺でも30cm程度、八王子などの郊外では50cmを超えるとされる積雪となり、秩父98cm・前橋73cm、山梨県内では甲府で114cm・河口湖で143cmという観測史上最多の積雪を記録し、大雪というよりは「豪雪」の名がふさわしい記録的な雪となりました。

各地で農業用ハウスの倒壊など大きな被害が出たほか、山梨県内など山間部や内陸部では交通が完全にマヒし、数日以上に渡り物流や移動に大きな支障が出るなど、首都圏の災害史に名を残すほどのものでした。

なお、低気圧は「南岸」というよりは、最終的には関東平野に「上陸」して進むルートを取りました。そのため、途中で大雪からみぞれ・雨に変わった場所も多かったほか、千葉県や茨城県などは温暖な空気が入り「大雨」となった場所も多く、水戸2cm、前橋73cmといったように、地域ごとの積雪差がかなり目立つ状況も見られました。

また、特に山間部・内陸部で1mを超える雪となった要因としては、5日前の2月9日に降った大雪が残っていたという要因も大きく、大雪に豪雪がプラスされるという極端な気象状況が短い期間で生じた事例でもありました。

2014年2月8~9日の大雪【氷点下で降り続いた大雪】

2014年2月8日9時の天気図
天気図の出典:気象庁「日々の天気図」(https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/hibiten/index.html)※トリミングの上利用
東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪2716334348261433144365
単位はcm(センチ)

2014年2月8日~9日にかけて通過した南岸低気圧は、一貫して関東平野を寒気で覆い続けながら、比較的強い雪を降らせ続けました。

気温は東京都心などでも氷点下の時間が長く、通常雨やみぞれになりやすい千葉県内・茨城県内の地域も氷点下で強い雪が降り続けたため、東京都心では21世紀以降はじめて10cm以上の積雪を観測し27cmとなったほか、千葉では33cmと観測史上最多の積雪を記録しました。また、他の地点でも数十年ぶりの大雪となった所があり、交通や農業設備などに大きな影響・被害を生じました。

郊外・山間部ではこの時の積雪が残り続けたまま、5日後にはこれを上回る豪雪に見舞われる結果となったため、雪による影響が長期間続く結果となりました。

2013年1月15日の大雪【熱帯低気圧の影響を受けた南岸低気圧】

東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪813841431なし31043
単位はcm(センチ)

2013年1月14日の大雪は、発達の度合いが急激ないわゆる「爆弾低気圧」として日本の南岸を通過した低気圧により発生しました。

この低気圧は、台湾付近で発生した際に、フィリピン付近から進んできた「熱帯低気圧」の影響を受けて発達したというかなり珍しい特徴を持っており、真冬の雪でありながら「熱帯低気圧」に間接的なつながりを持つ低気圧となっています。

当日の低気圧通過時は、必ずしも強い「寒気」が残っているような環境ではなかったものの、低気圧が急速に発達したため北から寒気を引き込む風などが強くなり、結果として「無理やり」寒気を首都圏に引き込むような形となり、降水量が強かった(雪が特に強く降った)関東南部を中心に平野部でも積雪が多くなりました。

2006年1月21日の大雪【関東南部・茨城のみで大雪】

2006年1月21日9時の天気図
天気図の出典:気象庁「日々の天気図」(https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/hibiten/index.html)※トリミングの上利用
東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪911100なし1617なしなしなし10
単位はcm(センチ)

2006年1月21日の大雪は、2022年1月6日の大雪に比較的似たパターンで、当初天気図に見られた南岸低気圧の北側に別途小さな低気圧が発生したことで、関東南部の一部地域で局地的な大雪となりました。

低気圧の規模が小さく、影響は局地的であったため、栃木・群馬県や甲府では積雪が観測されませんでしたが、雪雲の範囲が比較的北側に広がった茨城県内では大雪となり、水戸やつくばは15cmを超えるまとまった積雪を観測しました。

また、東京でも9cmの積雪と、1999年~2013年の冬期間の間では最も多い積雪を観測しました。

2001年1月27の大雪【関東地方の西側でかなりの大雪】

東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪8171319532523143884
単位はcm(センチ)

2001年1月27日は、発達中の低気圧が八丈島周辺を通るという、南岸低気圧の中では王道とも言えるルートを取り、広い範囲で大雪となりました。

雪は一部の沿岸部を除く関東のほぼ全域で積もり、特に53cmを観測した秩父など関東地方西側の山間部・内陸部を中心に積雪が多くなり、山梨県内でも甲府38cm・河口湖84cmという積雪記録の上位に入る大雪をとなりました。

東京周辺では気温が徐々に上がり、最終的には雨に変わった所も多かったものの、横浜では17cmなどと、かなりまとまった雪となった所もありました。

1998年1月15日の大雪【20世紀最後の大雪・山梨では豪雪】

東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪161422148141033274989
単位はcm(センチ)

1998年1月15日の大雪は、一部地域ではそれ以前(8日・12日)に既に積もった雪が残った状態で新しく積もったため、北関東の平野部や関東の山間部、山梨県内を中心に記録的な大雪となりました。

低気圧は比較的発達しながら進みましたが、比較的陸地に近い場所をぬうように通ったため、千葉方面などは雨となった場所も多くなりましたが、「強く降った」こともあり、東京都心周辺までは寒気が引き込まれまとまった雪となりました。

山梨県内で観測された積雪(甲府49cm・河口湖89cm)は、2014年の豪雪で大幅に記録を塗り替えられるまでは過去最多の大雪記録となっていました。

1998年1月8日~9日の大雪【雷を伴った雪も】

東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪15204252816831291622
単位はcm(センチ)

1998年1月8日~9日にかけては、南海上を発達しながら進んだ「王道」とも言える南岸低気圧により、関東の広範囲で大雪となりました。

この南岸低気圧では、東京・横浜などでかなり強い雪が降ったことが特徴で、横浜では1時間に最大9mmの降水量が観測されています。また、雪が強まったタイミングで「雷」も観測(東京・横浜)されるという、比較的静かに雪が降る「南岸低気圧」の特徴とは異なる珍しい現象も発生しました。

なお、北関東や山間部の地域などは、この時積もった雪が解け残り、更に12日・15日と新しい雪が降り積もったため、記録的な大雪につながる結果となりました。

1996年2月17日~18日の大雪【実質丸2日降り続いた雪】

東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪14221411141361210223
単位はcm(センチ)

1996年2月17日~18日は、気圧の谷・前線・南岸低気圧の影響が長時間続き、関東の広い範囲で大雪となりました。

この際の「降り始め」自体は、気圧の谷が形成され始めた「2月16日」の昼頃まで遡り、その後2月17日の朝以降は積もるような本格的な雪となる所が増え、更に1日経った2月18日の午前までその雪が続きました。また、最終的に降りやんだ時間はその日の夜になった所もあり、少なくとも丸2日程度、長い場所では2日半程度雪が続くという、これまでの南岸低気圧関連の歴史を見ても、ほぼ見られないような珍しい「長い雪」となりました。

このような状況は、途中で「低気圧」が通過するのみならず、気圧の谷や動きの遅い前線による雪雲が掛かり続けたことが大きな要因であり、単なる「南岸低気圧」の通過というパターンではなかったことが大きなポイントとなっています。

なお、この際には寒気が非常に強い一方、雪の強さはそれほど強くなかったため、都市部で30cm以上など極端な積雪は見られなかったものの、「少ない降水量で多くの降雪(横浜の場合16mmで22cmの積雪)」となるなど、効率的に積もる傾向が顕著でした。また、静岡・三島・館山など、通常南岸低気圧で雪が積もらないような場所でも積雪が観測されました。

1994年2月12日の大雪【広い範囲で満遍なく大雪に】

東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪2322231717181620192324
単位はcm(センチ)

1994年2月12日は、本州の南海上を低気圧が急速に発達しながら進み、かなり広い範囲で大雪となりました。当日は寒気がしっかり残る環境であったため、都心部を含め氷点下の気温で降った時間が長く、積雪がしっかり増加しました。

雪は一部の沿岸部を除き満遍なく積もり、東京周辺から北関東、山梨県内に至るまで概ね20cm前後の積雪が観測されました。

1992年1月31日~2月1日の大雪【6℃台の雨から雪へ】

東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪17151315191513820535
単位はcm(センチ)

1992年1月31日~2月1日にかけての大雪は、関東の広い範囲で15~20cm程度の積雪をもたらしました。

この際には、降り始めの気温はかなり高く、東京では6℃台の雨でしたが、南岸低気圧が関東沖で急発達しながら進んだこと・強く降ったことで寒気が引き込まれたことや、低気圧の後ろ側にはシベリアからの比較的強い寒波が控えていたことなどから、途中から雪に変わり、比較的まとまった積雪を観測しました。

もっとも、東京では積もる最中の気温は概ね0.6~0.8℃と雪が積もる気温の中では高めの気温で、雪の強さ(降水量で1時間最大8mmという強い雪)で無理やりまとまった積雪となった側面が大きいと言えるでしょう。

1990年1月31日~2月1日の大雪【2連続の南岸低気圧】

東京横浜千葉熊谷秩父つくば水戸前橋宇都宮甲府河口湖
最深積雪111392427232722262127
単位はcm(センチ)

1990年1月31日~2月1日の大雪は、南岸低気圧が2日間で「2つ」連続して通過する形となり、北関東を中心にかなりの大雪となりました。

通過した南岸低気圧は、勢力としては必ずしも強く発達した低気圧ではなかったものの、比較的北側まで雪雲の範囲を広げ、水戸・宇都宮では1日半以上0℃前後の気温で雪が降り続きました。

なお、東京や横浜など関東南部は、1回目の低気圧通過時は積雪とならず、2回目の通過時に大雪となりました。

「南岸低気圧」に関する一般的な知識については、上記の記事で別途解説しております。