札幌・北海道に「黄砂」は飛んでくる?【頻度・濃さ・影響などを解説】

「春の天気」と言えば、過ごしやすく穏やかなイメージがありますが、時に飛んでくる「黄砂」により視界が悪くなったりするという現象も春に発生することはよく知られている通りです。

春の訪れが遅い北海道・札幌は、黄砂の発生する中国の砂漠地帯から離れていることもあり、「黄砂」のイメージは薄い地域ですが、実際の所「黄砂事情」はどのようになっているのでしょうか。

本ページでは、札幌における黄砂の観測日数のデータなどを参考に、黄砂の影響について考えていきたいと思います。

黄砂は西日本だけの話ではない?

日本における「黄砂」とは、中国のゴビ砂漠一帯で巻き上げられた砂が、強い「偏西風」に乗って海を越え、日本各地へと飛んでくる現象です。

一般に黄砂が飛んでくる地域としては、福岡・広島といった西日本エリアがイメージされることが多く、確かに毎年のように黄砂が観測され、時には10日を超える日数が観測されるような地域は西日本となっています。

しかしながら、札幌でも黄砂は観測されることがあります。

黄砂は偏西風に乗って流れていきますが、風向きは時に蛇行したり北・南に偏った動きとなることも見られるため、朝鮮半島から日本海を通り直接北日本・北海道へ黄砂が飛んでくることもまれにありますし、黄砂の濃度が高い場合も、本州・西日本各地のみならず札幌など北海道地方まで黄砂が確認されるケースがあります。

「黄砂と言えば西日本」というのは頻度で見ればその通りなのですが、だからと言って「札幌・北海道で黄砂が全くない」という訳ではないのです。

北海道の「黄砂」観測データ

札幌の黄砂観測日数
観測日数
2021年2日2009年0日1997年0日1985年0日1973年0日
2020年0日2008年0日1996年0日1984年0日1972年0日
2019年0日2007年2日1995年0日1983年1日1971年0日
2018年2日2006年0日1994年0日1982年0日1970年0日
2017年2日2005年0日1993年0日1981年1日1969年0日
2016年0日2004年3日1992年0日1980年1日1968年0日
2015年3日2003年0日1991年0日1979年0日1967年0日
2014年2日2002年10日1990年0日1978年0日
2013年0日2001年1日1989年0日1977年2日
2012年0日2000年0日1988年0日1976年0日
2011年0日1999年0日1987年0日1975年0日
2010年2日1998年0日1986年0日1974年0日

北海道で長期間に渡り比較可能な形で黄砂を観測している場所は札幌のみです。

札幌における黄砂観測日数を見ていくと、0日の年の方が多いように見え、確かに西日本や本州各地と比べると黄砂は少ない地域と言えます。

一方で、2002年には唯一10日観測しているなど、頻繁に黄砂が観測されたこともゼロではありません。

日数の推移を見ていくと、1984年から2000年まで、17年間にも渡り札幌では黄砂の観測がありません。しかし、2001年に観測してからは平均すれば2年に1回近いペースで観測されており、時期によってかなり傾向に差があります。

札幌のものではなく、全国のどこかで観測された日数の合計を見ていくと、時期による差が目立ちますが、札幌で観測された日数との相関はそれほどないようにも見えます。

全国で過去最多の日数(38日)を観測した2002年こそ、札幌でも断トツの観測日数(10日)となりましたが、それ以外の年の多くでは必ずしも全国の観測日数が多い年は札幌でも観測されやすい。ということにはなっていません。

特に2010年以降は全国の観測日数が減る傾向にある中でも、札幌は平均2年に1回ペースでの観測となっていますので、相対的には札幌で観測される日が増えているとも言えます。

観測される時期は?

1967年からの「累計」観測日数
1967年からの「累計」観測日数

黄砂が観測されるシーズンは「春」が定番で、実際に観測された日数を見ても3~5月が大半を占めていることが分かります。

全国と札幌の傾向を比較すると、やや5月に観測されやすい傾向があるように見えます。全国の場合3・4月に特に大きな山が来ているのに対し、札幌の日数は3か月ともそれほど大きな差が見られません。

これは冬から春の早い時期は北寄りの風向きになりやすい(中国の砂漠地帯から北海道方面へ直接空気が運ばれにくい)ことが影響していると推定可能ですが、札幌での黄砂観測日数がそれほど多くないため、統計的にはっきり傾向があるとまでは断定出来ません。

なお、春のイメージが強い黄砂ですが、ごくまれに秋や冬にも観測されているように、発生する可能性自体は南風が強くなる真夏の期間以外はいつでもあり得る現象と言えます。

黄砂による影響・対策は?

黄砂は一般に視界を悪化させ、洗濯物や自動車に汚れをもたらし、呼吸器が敏感な方には健康面での影響も懸念されたり、一部の研究では川崎病との関係性も指摘されるなど、「良いこと」は特にない春の気象現象です。

黄砂対策が一つの重点的なテーマである福岡市では、見通し(視程)が5km以下、概ね濃度としては400μg/m3(マイクログラム/立方メートル)以上を特に濃い黄砂の基準としています。

札幌で黄砂が観測される場合、主な発生源である中国のゴビ砂漠からの距離が2000km程度は離れているため、例えば比較的近い北京・ソウルで観測されるようなすぐ近くですら見えにくいような極端な「濃度」には通常なりません。また、国内で最も発生源に近い西日本も比較的見通しが悪くなる(5km以下、場合によっては2km前後なども)ケースがあり、先の福岡市のような基準が設けられていますが、札幌でそこまでの酷い黄砂に見舞われることは過去の状況などを見る限り、ほとんど見られません。

すなわち、九州の一部であるように航空便が黄砂の影響で一部欠航や遅れが発生する事象、また不要不急の外出を控えることが自治体から推奨されるような状況は一般論としては極めてまれな現象・ほぼ見られないくらいの現象と言えます。

札幌で黄砂が観測される場合、とりわけ下記のような内容に留意しておくとよいかもしれません。

・洗濯物に付着する可能性があるので、室内干しとしたほうがよいでしょう。
・黄砂が予想される直前の洗車は非効率的ですので、黄砂の後にするのが無難でしょう。
・換気に留意しながらも、外からの黄砂が過度に入るようにすることは避けた方が無難でしょう。
・ソーシャルディスタンスが保たれる場合でも、黄砂対策として屋外でのマスクの着用をしてもよいでしょう。

札幌・北海道における黄砂は頻度は少ないものですが、観測されることが予測される場合、少なくとも前日までにはニュースなどで注意喚起がなされることが多くなっていますので、特に春の期間には情報に留意して頂ければと思います。

大気汚染物質である「pm2.5」の状況については、上記の記事で別途解説しております。