石狩湾の基礎知識【札幌から最も近い海】

北海道日本海側・石狩地方に面し、札幌市にとっては最も身近な「海」である「石狩湾」。名前では当たり前のように知っていても、「石狩湾」そのものについて何か知っているかと言えば、余りよくわからないという場合もあるかもしれません。

当記事では、札幌観光をする際にも大変身近な存在である「石狩湾」という存在にテーマを絞って、石狩湾に関するごく基本的な知識を改めて見て行きたいと思います。

石狩湾とは【基本の地理】

石狩湾の範囲
出典:地理院タイル<海域部は海上保安庁海洋情報部の資料を使用して作成>(一部作図の上利用)

石狩湾とは、北海道日本海側のうち、積丹郡積丹町入舸町に位置し、積丹半島の最北端にあたる「積丹岬(しゃこたんみさき)」と、石狩市浜益区の国道231号線沿いに位置する「雄冬岬(おふゆみさき)」を直線距離で結び、その区切った範囲の陸側(南東側)にあたる区域を指す名称です。

海岸線沿いは、積丹岬から雄冬岬までの区間を車で走るだけでも150km以上に達し、入り組んだ海岸線の延長ではこれより大幅に長くなるなど、湾の範囲は広くなっています。

なお、湾という名の通り内側にくぼんだ形状をしているものの、内浦湾(噴火湾)・陸奥湾・東京湾・伊勢湾・大阪湾・大村湾・鹿児島湾のように陸地に大きく取り囲まれた地形ではありません。形としては若狭湾・相模湾・土佐湾のように比較的外側の海に開かれた湾と言って良いでしょう。

後志総合振興局管内小樽市・余市町・古平町・積丹町
石狩振興局管内石狩市
石狩湾内に位置する各自治体

石狩湾沿岸に位置する自治体としては、上記の自治体があります。札幌市については、石狩湾のすぐそばまで市域を広げていますが、厳密には海に接していないため、沿岸自治体には入りません。

沿岸の地形は差が大きい

石狩湾一帯は、地図でみるとゆるやかなお椀状の海岸線となっているように見えますが、海岸線沿いの地形は非常に差が大きいことが特徴です。

小樽市銭函~石狩市厚田区望来付近までの約30km程度の区間は、札幌市のある「石狩平野」一帯からのゆるやかな地形となっており、ほぼ一直線上の海岸線と、遠浅の海という比較的穏やかな地形が特徴となっています。

他方、小樽市の銭函から西側は、急に地形が変わり、山地が海にせり出すような形で「海食崖(かいしょくがい)」となった険しい地形が続き、JR銭函駅~JR朝里駅間などは電車が頻繁に走っている場所でも、海と急斜面に挟まれた秘境のような場所となっています。これら地域は道を辿って海沿いに出ることは難しく、カヌーなど海側からを除きアクセスすることはほぼ不可能な状況です。

この他の地域についても、石狩市厚田区望来以北の地域は一部を除き山が近い比較的厳しい自然環境、小樽港より西側の地域は、余市町の市街地一帯を除きやはり海食崖が連なる非常に険しい地形が続いており、全体的に見ると石狩湾一帯は海と山が隣り合わせとなった場所が多くなっています。

重要な港が複数ある地域

小樽港・北海道開拓に重要な役割を果たした港
・本州日本海側と北海道を結ぶ海の拠点(新日本海フェリー)
・ロシアとの関係性が比較的深い
石狩湾新港・昭和の終わりに開設された歴史の浅い港湾
・現在では小樽港以上の貨物量を有する
・港の周辺がエネルギー産業、各種工業の拠点として発展
余市港・江戸時代、松前藩の時代から歴史を持つ規模の大きな漁港
この他厚田港・浜益漁港・古平漁港・美国漁港・濃昼漁港・古潭漁港・祝津漁港・塩谷漁港・忍路漁港・湯内漁港・幌武意漁港

石狩湾一帯は、やや入り組んだ地形を持つ地域も多いことから、比較的古い時期から「天然の良港」として港が発達してきました。

最大の港としては、小樽港は石狩湾一帯で歴史的に最も大きな意味を持つ港となっており、現在も新日本海フェリーが発着することで関西・北陸・新潟方面からの物流や人流の面で大きな役割を果たしているほか、近年は観光での注目が大きくなっています。

また、札幌からの距離が近い石狩湾新港は平成以降大いに発展しており、札幌都市圏では最も大きなエネルギー関連の拠点、工業地域として機能しています。

但し、北海道の主要港湾の座は太平洋側からのアクセスが容易な「苫小牧港(札幌から約50km少々)」が圧倒的な地位を築いており、石狩湾一帯の港が物流・貿易の面で道内トップという訳ではありません。札幌の海の玄関口は、小樽・石狩新港であるとともに苫小牧港である。という側面も非常に大きくなっています。

漁業について

天然の良港を有する石狩湾一帯は、古くから漁業の盛んな地域としての歴史も有しています。

現在では道内を見るとオホーツク管内・宗谷管内・釧路管内のように非常に規模の大きな漁業が行われている地域もあり、そういった地域と比べると水揚げのスケールはかなり小さめですが、沿岸の全ての自治体で一定規模の漁港があり、現在も様々な魚介類が水揚げされています。

水揚げに関する統計(『北海道水産現勢』)を見ると、石狩市内の漁港ではサケ(鮭)が最も多く水揚げされ、次いでニシン・ヒラメ・ミズダゴ等も比較的多く、ホタテ養殖も一定程度行われています。

小樽や余市など後志管内では、港によってかなり差がありますが、ホッケ・タラ(スケトウダラ)がどの地域でも比較的多く、この他は小樽ではソウハチガレイやカニ類、余市町・積丹町はブリが比較的多いといった特徴が見られます。

なお、重量ベースではそれほどの量ではありませんが、どの地域でも「なまこ」の売り上げは比較的多く、中国における高値での取り引きが影響しているものと考えられます。

歴史を見ると、石狩湾一帯の漁業はニシン漁一色に近い時期もありましたが、昭和期に実質水揚げがゼロに近づくなど漁獲が激減し、漁業のスタイルは大きく変化していきました。但し、近年では「石狩湾系」と呼ばれるニシンが増加し資源量が確保されるようになったため、石狩市を中心にニシンの漁獲が占める割合が再び大きくなり、今後の更なる水揚げの増加が期待されています。

海水浴場もある

地形面では非常に差が大きい石狩湾一帯では、穏やかな環境となっている場所を中心に「海水浴場」も複数設けられています。

石狩市あそびーち石狩 (石狩浜海水浴場)・望来浜中央海水浴場・厚田ビーチセンター
小樽市銭函海水浴場・銭函スターライトビーチ・おたるドリームビーチ・朝里海水浴場・東小樽海水浴場・塩谷海水浴場・蘭島海水浴場
余市町浜中・モイレ海水浴場

海水浴場は札幌市内からアクセスしやすい小樽市・石狩市内に多く、特に小樽市内は市内の西の端から東の端まであちこちに海水浴場があります。石狩湾の水温は本州各地と比べると低く、高くても最大23℃程度ですが、北海道でも海水浴は一般的で、夏の貴重なシーズンには比較的多くの海水浴客でにぎわいを見せます。

石狩湾沿いで海水浴を楽しんだ日に、札幌の観光も楽しむ。そういったスケジュールを組むことも可能となっているのです。

冬には「石狩湾小低気圧」が直撃

石狩湾は、気象条件という意味では比較的過酷な条件を持っています。冬場は日本海からの強烈な季節風が毎日のように吹き付け、海に近い沿岸部では雪が降るとブリザードのような視界不良状態になることも多く、厳しい「北海道の冬」を実感しやすい地域と言えます。

また、石狩湾そのものが雪雲の通り道・発生場所にもなっており、最も特徴的な存在としては、羽幌・留萌沖などでまとまった雪雲が渦を巻いて南下し、石狩湾を通って石狩平野や小樽方面を直撃するという「石狩湾小低気圧」というものがあります。

この低気圧は、旭川・名寄方面など道央地域で厳しい放射冷却による冷え込みが生じた場合に、小さな局地的な高気圧が季節風とは反対の方角から風を吹かせることで発生するもので、1日で20~50cm程度の大雪をもたらすことがあります。

この低気圧が発生しない場合でも、石狩湾を雪雲の帯が発達しながら進むことは多く、札幌市内でも頻繁に雪となるほか、特に厚田~新篠津~岩見沢のラインでは同じ方向からの雪雲が長時間掛かり続け「ドカ雪」が降ることがあります。また、積丹半島の一部は倶知安に匹敵する道内屈指の豪雪地域で、美国方面など一部では極端に雪が多くなることがあります。

札幌市における「海」というテーマからは、上記の記事で別途解説しております。