冬の訪れを告げる最も一般的な記録と言えば、「初雪」の観測というものがあります。一方で天気ではなく「気温」で見た場合は、そのシーズンではじめて「霜」や「氷」が観測された「初霜」・「初氷」の記録というものも冬の訪れを実感する上で大きな節目と言えます。
本記事では、札幌における「初霜」・「初氷」について、平年値や過去の最も早い・遅い観測日、近年の状況など、基本的な情報を確認していきます。
初霜の平年値・史上最早(最遅)記録
都市 | 初霜の平年日 | 観測史上最早 | 観測史上最遅 | 観測開始 |
---|---|---|---|---|
札幌 | 10月25日 | 1888年9月9日 | 2005年11月15日 | 1877年 |
稚内 | データなし | 1969年10月1日 | 1972年11月28日 | 1939年 |
旭川 | 10月9日 | 1913年9月14日 | 1972年11月25日 | 1889年 |
網走 | 10月26日 | 1913年9月15日 | 2012年11月16日 | 1890年 |
帯広 | 10月11日 | 1913年9月14日 | 1979年10月30日 | 1893年 |
釧路 | 10月20日 | 1935年9月16日 | 2003年11月5日 | 1911年 |
室蘭 | 11月12日 | 1969年10月5日 | 1965年12月21日 | 1924年 |
函館 | 10月22日 | 2001年9月22日 | 2005年11月14日 | 1877年 |
北海道内の主要都市の初霜の状況を見ていくと、当然ながら内陸部ではより早く、沿岸部な道南寄りではより遅くなるという傾向が見られます。
札幌は道内では一番遅いという訳ではなく、沿岸部の各地域と同じくらいになっています。なお、室蘭だけが異常に遅い時期なのは、室蘭市が沿岸部の中でも海上に突き出した地形になっており、秋の高めの海水温の影響を受け、気温が下がりにくいといった理由、また風が強く放射冷却しにくいことから、気温が下がった場合でも霜が見られにくいといった理由が挙げられます。
初氷の平年値・史上最早(最遅)記録
都市 | 初霜の平年日 | 観測史上最早 | 観測史上最遅 | 観測開始 |
---|---|---|---|---|
札幌 | 10月28日 | 1904年9月25日 | 2010年11月15日 | 1880年 |
稚内 | 11月5日 | 1955年10月11日 | 2012年11月18日 | 1939年 |
旭川 | 10月18日 | 1987年9月20日 | 1966年11月6日 | 1926年 |
網走 | 10月30日 | 1984年10月8日 | 2018年11月16日 | 1904年 |
帯広 | 10月15日 | 1893年9月17日 | 1979年10月30日 | 1893年 |
釧路 | 10月22日 | 1940年9月30日 | 2020年11月9日 | 1911年 |
室蘭 | 11月13日 | 1983年10月21日 | 1997年12月1日 | 1924年 |
函館 | 11月2日 | 1984年10月5日 | 1946年11月18日 | 1880年 |
初氷の記録を見ると、札幌は道内では特に遅い地域という訳ではなく、道南や海に直接面した地域で11月にずれこむ形になっています。
なお、札幌はそうではありませんが、旭川・室蘭など初霜の最も遅い記録よりも初氷の最も遅い記録が「早くなっている」ケースがあります。霜は放射冷却によって気温が下がった晴れた朝に生じることが一般的で、風が強い日や湿度が下がらない日、曇り空の日などは気温が0℃以下になっても霜が見られないケースがあります。
この場合、水は湿度や風に関わらず氷になりやすいため、初霜ではなく初氷が先に見られることになるのです。
近年の初霜・初氷観測日は?
年 | 初霜 | 平年との差 | 初氷 | 平年との差 |
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2021年 | 10月24日 | 1日早い | 11月18日 | 21日遅い |
2020年 | 10月21日 | 4日早い | 10月21日 | 6日早い |
2019年 | 10月16日 | 9日早い | 10月18日 | 9日早い |
2018年 | 10月20日 | 5日早い | 11月4日 | 8日遅い |
2017年 | 10月19日 | 6日早い | 10月19日 | 8日早い |
2016年 | 10月15日 | 10日早い | 10月15日 | 12日早い |
2015年 | 10月16日 | 9日早い | 10月16日 | 11日早い |
2014年 | 10月19日 | 6日早い | 10月19日 | 8日早い |
2013年 | 10月19日 | 6日早い | 10月19日 | 8日早い |
2012年 | 10月25日 | 平年と同じ | 10月25日 | 平年と同じ |
2011年 | 10月28日 | 3日遅い | ||
2010年 | 10月30日 | 5日遅い | 11月15日 | 20日遅い |
近年の初霜・初氷の観測状況を見ていくと、直近も含め平年より早く観測されている日も目立ちます。温暖化により初霜・初氷が遅れる。といった議論もありますが、札幌については、極端に遅くなったりすることはまれで、全体的には初氷も含め10月中に観測される場合が多くなっています。
なお、初霜・初氷が「冬の兆し」であることは間違いありませんが、初霜・初氷が早い年は寒い冬・雪が多いといった関係性があるかと言うと、そうとは言えません。過去最も雪がも少ない冬であった2020年については、平年と大きな差はありませんし、過去最も気温が高い冬であった2015年に至っては、初氷が10日以上平年より早く観測されています。
早く気温が下がるから、冬も寒いというのは平均気温全体で見ればはある程度真実ですが、初霜・初氷をもたらす一時的な寒さだけでは、必ずしもその裏付けにはならない点留意が必要です。
札幌における「冬日(最低気温0℃未満)」・「真冬日(最高気温0度未満)」の状況については、上記の記事で別途解説しております。