札幌の冬「路面凍結」はどんな感じ?【基本を知る】

自然・気候

1年間に100日以上雪が積もり、真冬には1か月の半分くらいが最高気温0℃未満の「真冬日」になる札幌のまち。

冬場の札幌は、まさに「雪」と「氷」のまちと言っても過言ではありませんが、そのような中で生活する上で、一番気になる部分と言えば「道路」の状況。もちろん冬の札幌では「路面凍結」は当たり前なのですが、こちらのページでは、その「時期」や「凍結の度合い」、交通への影響など「路面凍結の基礎知識」とも言える内容をじっくり解説していきたいと思います。

路面凍結のシーズンは?

札幌市内では、郊外や山間部を含めると1年のうち半分以上、10月(主に後半)~5月(主に前半)頃までは路面凍結のリスクがあります。

10月・雨の翌朝の冷え込みなどで凍結が発生(主に郊外・山間部)
・まれに積雪によって凍結することも
11月・凍結の頻度が平均的にはやや増加(年による差が大きい)
・積雪しても融けやすい一方、水たまりなどが凍りやすい状況
12月・降雪量が一気に増加
・踏みしめられた雪が少し融けた後再凍結を繰り返し「ツルツル路面」が増える
1月・凍結状態が「通常」の季節
2月・凍結状態が「通常」の季節
3月・期間全体で見ると凍結状態の方が多い
・気温上昇で雪が融けた場合、その水たまりなどが再凍結する危険も
4月・凍結の頻度は大幅に減少も、郊外などを中心に発生は一般的
5月・都心部周辺で凍結の可能性はほぼなし
・雨の翌朝の冷え込みなどで凍結が発生の場合も(主に郊外・山間部)

凍結する環境について非常に大まかにまとめると、上記のような形になります。

秋や春の路面凍結は、本州の日本海側の冬場にあるような、融けたり凍ったりを繰り返すパターンが基本ですが、概ね12月の中頃から1・2月、そして3月のはじめ頃までの期間は、どちらかと言えば「凍結状態が基本」とも言える状況になり、最高気温0℃未満の真冬日も多いことから、昼間でもカチカチ・ツルツルの路面状態が常時続くようなことが多くなります。

札幌における路面凍結リスクの一つの目安となる「冬日」・「真冬日」については、上記の記事で詳しく解説しています。

どんな風に凍結するの?

凍結の種類を一般的に区分すると?

札幌市内では冬場になればごく一部を除き、どのような環境でも路面凍結が発生する可能性がありますが、その「凍結」の状態というものは、具体的にはどのようなものなのでしょうか?

凍結状態については、その路面の位置や気温、雪の積もり方によって様々ですが、種類としては以下のように大別できます。

圧雪アイスバーン【降雪後に主に発生】
・雪が多く積もり、道路の表面などは一切見えない
・凍結というよりも、多くの雪がタイヤで固く踏み固められた(圧縮)状態
・冬場新しい雪が積もった後はこの状態が多い
・圧雪の下は、固い氷の板となっている場合も
・滑る危険は高いが、その他の凍結路面と比べるとややまし
ミラーバーン【特定の場所で発生しやすい】
・圧雪された上に表面が磨かれて「鏡」のようになった路面
・一目見ただけで「滑りやすそう」な状況と判断可能
・交差点付近など、自動車が停止及び発進を繰り返す場所で主に発生
・最も滑りやすい
一般的なアイスバーン(凍結)【秋・春の無積雪期間も注意】
・雨の翌朝や一度雪解けした後などに、水が再び凍って生じる
・晩秋や春先、気温が上がった翌日の冷え込みなどで発生しやすい
・非常に滑りやすい
・目視出来ない場合は下記の「ブラックアイスバーン」
ブラックアイスバーン【秋・春の無積雪期間も注意】
・雪がない路面に薄い氷が張っている状態
・見た目では「凍結していない」ように見えがち
・凍結路面と知らずに突入し、事故が発生することが多い
・非常に滑りやすい

札幌市内では、季節や雪の有無など状況によって生じる凍結の種類は変わりますが、いずれの路面凍結も発生しやすく、状況に応じて常に注意が必要となります。

道路状況(凍結防止の対策)によって様々

路面凍結の発生状況は、先に解説した凍結の種類により概ね区分されますが、実際にどこで発生するかという点については、凍結防止対策の実施状況により大きく異なります。

札幌市では、降雪に関わらず路面凍結が発生しやすい状態となった場合、「対象路線」と「路面管理水準」を設定してパトロールの上、随時路面凍結対策を行っています。対策は、「凍結防止剤」・「滑り止め(小さな砕石)」の散布という形で実施されます。

道路区分冬場の路面状態目標
主要幹線・幹線道路こな雪・つぶ雪・シャーベット状態
補助幹線圧雪・つぶ雪下層氷板
生活道路氷膜・氷板・こな雪下層氷板
対象外非常に滑りやすい状態
凍結防止対策実施区間・交通量の多い幹線道路やバス路線
・生活道路のうち急勾配区間
・ロードヒーティング停止区間
・人通りの多いJR駅・地下鉄駅や公共施設周辺の歩道
を中心とした区間

路面凍結対策では、幹線道路以外については一定の凍結状態となることは当初から織り込まれており、必ずしも市内の全域で凍結を完全に回避することが目的になっている訳ではありません。

比較的走りやすい状態が維持されるのは、路線バスが通ったり多くの車両が行き交うような幹線道路など一部に留まり、除雪の体制を合わせて考えた場合、多くの生活道路は幹線道路と比べると路面環境は悪くなる場合が大半です。

歩道については、特段の対策が実施されない場所も多いですが、駅の近くや主要施設の周辺では対策が行われています。

除雪との兼ね合いについては、除雪作業後に凍結防止剤等を散布するといった手順が定められています。

ツルツル路面はあちこちに【歩道などの方が怖いケースも】

一部の路面では凍結防止対策が常に行われている札幌の道路ですが、上述の通り全ての道路で凍結防止剤や滑り止めが散布されているとまでは言えません。

特に坂道ではない一般の生活道路や、幹線道路に面していない歩道、個々の建物や家にかけて伸びる細い道といった場所は、個人が行う場合を除き、特に路面凍結対策が行われていない場合が多くなっています。

真冬の期間は、わずかに気温が上がったタイミングで少し雪が解けてもすぐ凍ってしまい、それが繰り返すことでツルツル・カチカチの路面が昼間も含め一日中続くようなことが増えていきます。

ツルツルした路面は、除雪との兼ね合いにもよりますが、そのまま放置されると更にタイヤや靴によって「磨き」がかかり、より一層滑りやすい危険な状態が増していきます。夜に凍り、朝に融けるのではなく、一日中同じような状態が続く以上、生活上の各種の移動で「ツルツル路面」を回避することがほぼ不可能です。

場所によっては一般の路上よりも歩道の方が危険な状態になっている場所もあり、歩き方に慣れない場合は転倒してしまったりすることもよくあることです。自動車のみならず、歩行者の方についても滑りにくい靴や、滑りにくい場所を選んで歩くなど、路面凍結への十分な対応が求められます。

まだ夏タイヤ?わかりづらい凍結に注意!

冬場は多くの道路は雪に覆われ、凍結している状態は目で見て分かることが多くなりますが、秋の終わりや春先の時期については、まだ雪が積もっていない・既に雪がなくなったといった状況がある一方で、雨などが降るタイミング・雪解けのタイミングと、翌朝の冷え込みのタイミングが一致してしまうと路面凍結が広範囲で発生します。

雪を伴わない路面凍結は、先に解説した区分のうち「ブラックアイスバーン」として生じることも多く、路面は黒・グレーの一般的な道路の色であるにも関わらず、実は薄い氷が張って凍結している。といった紛らわしい状況になり、「気づかずに」道路をそのまま通行してしまう場合が少なくありません。

とりわけ秋の季節については、10月下旬頃の段階で初雪が降っていない年の場合、「まだ夏タイヤ」という方が札幌市内でも比較的多くの割合を占めており、そういった時期に雪は降らずに強い冷え込みだけが発生した場合、特に橋の上といった区間でブラックアイスバーンによる交通事故が発生することがあります。

札幌の特に郊外部は、10月かつ雨の翌日といった条件でも、場合によっては0℃前後の冷え込みになり、路面凍結が発生しうる環境です。とりわけ「夏タイヤ」のままになっている車両は、秋の寒い朝は十分な注意が必要となっています。

交通や生活への具体的影響は?

路面凍結が具体的な冬の暮らしに与える影響は、どのようなものがあるでしょうか。これについては、積雪・除雪の状況と一体化していますので、凍結だけでどうこう。という話ではありませんが、例えば以下のような状況が考えられます。

交通への影響・積雪による道路事情の悪化も合わせ、交通渋滞の増加
・凍結路面を避け、一部の幹線道路への交通が集中
・マイカー利用が回避され、公共交通機関の利用者が増加
人的影響・転倒事故の増加(冬場だけで1000件程度の場合も)
・高齢者を中心とした外出機会の減少

特に大きなものはやはり交通への影響で、一般に全国のほとんどの地域では冬場は公共交通機関の利用が減る傾向にあるのに対し、札幌は1年の中で見ても多い時期となるなど、凍結・積雪路面を避けるために「人流」自体がある程度変化する状況が生まれます。

自動車の運転については、そもそも生活道路の凍結対策は一定程度に留まる上、雪の量が多くなると除雪の関係上、道幅そのものが狭くなります。そういった総合的な道路交通事情の悪化により、渋滞・一部の道路混雑が増加し、運転するメリットが減り、公共交通に流れやすくなる傾向が多くなっています。ちなみに、郵便物の配達などは、通常通り原付バイクでチェーンを使用の上実施されています。

なお、凍結路面については、非常に滑りやすくなります。やはり「転倒事故」も一定数生じており、年間で1000件を超える年もあるなど、決して珍しいことではありません。転倒者は高齢者に偏っており、近年では外国人旅行者の転倒事故などが目立つケースも見られました。滑りやすい路面をあえて歩くのは億劫になるということから、冬場は外出機会も減る時期と言えるでしょう。

凍結路面を歩く際には、北海道特有の「滑り止め」を付けた靴が基本で、万全を期すという意味では雪や氷の上に強いタイプの「長靴」がより安全と言えます。但し、豪雪時の雪かきを除き、札幌の市民が一般的に無骨な長靴を履くようなことはなく、滑り止めを付けた一般的な靴で凍結路面を慎重に歩かれる方が大半です。