札幌の「初冠雪」とは?時期はいつ?【手稲山】

札幌における「冬の便り」としては、最も象徴的な「初雪」のほか、「初霜」や「初氷」そして「初冠雪」といった項目が気象庁によって観測されています。

当ページでは、その中でも最も早く訪れることが多い「初冠雪」について、その時期などを全国的な比較も交えながら、各種データも参考に詳しく見て行きたいと思います。

初冠雪とは?

気象庁によって観測が行われている「初冠雪」。

これは、札幌では「手稲山(ていねやま)」を基準に観測が行われていますが、全国各地でも同様の観測が行われています。

2021年現在では、44の山で初冠雪の観測が行われており、前橋地方気象台のように、1つの気象台で多くの山を観測している場所もあります。但し、以前と比較すると観測される山は大幅に減っており、例えば北海道であれば羊蹄山、鳥取県であれば大山など、全国的な高い知名度を持つ有名な山であっても、必ずしも観測が行われているとは限りません。

全国各地の平年の初冠雪日は以下の通りです。初冠雪は標高よりも緯度が重要であり、北海道の旭岳は富士山よりも初冠雪日が早い傾向があります。また、札幌の手稲山は全国的に見ると初冠雪がかなり早い山であることが分かります。

山岳名標高初冠雪日
(平年)
担当気象台山岳名標高 初冠雪日
(平年)
担当気象台
旭岳2291m9月25日旭川地方気象台雁戸山1485m11月2日山形地方気象台
富士山3776m10月2日甲府地方気象台瀧山1362m11月3日山形地方気象台
利尻山1721m10月3日稚内地方気象台男体山2486m11月4日宇都宮地方気象台
立山3015m10月12日富山地方気象台太平山1170m11月7日秋田地方気象台
岩手山2038m10月13日盛岡地方気象台武尊山2158m11月7日前橋地方気象台
斜里岳1547m10月14日網走地方気象台泉ヶ岳1175m11月13日仙台管区気象台
雌阿寒岳1499m10月17日釧路地方気象台扇ノ山1310m11月18日鳥取地方気象台
手稲山1023m10月18日札幌管区気象台伊吹山1377m11月20日彦根地方気象台
八甲田山1584m10月19日青森地方気象台比良山1214m11月21日彦根地方気象台
月山1984m10月20日山形地方気象台赤城山1828m11月22日前橋地方気象台
岩木山1625m10月21日青森地方気象台由布岳1583m11月29日大分地方気象台
白山2702m10月21日金沢地方気象台鷲峰山921m11月30日鳥取地方気象台
朝日岳1870m10月25日山形地方気象台皿ヶ嶺1271m12月8日松山地方気象台
東方連山2354m10月25日長野地方気象台榛名山1449m12月9日前橋地方気象台
吾妻山2035m10月26日福島地方気象台天山1046m12月9日佐賀地方気象台
蔵王山1841m10月28日仙台管区気象台脊振山1055m12月10日福岡管区気象台
横津岳1167m10月29日函館地方気象台極楽寺山693m12月14日広島地方気象台
仙ノ倉山2026m10月29日前橋地方気象台讃岐山脈1060m12月18日高松地方気象台
白砂山2140m10月30日前橋地方気象台桜島1117m12月18日鹿児島地方気象台
甲斐駒ヶ岳2967m10月30日甲府地方気象台国見山926m1月8日高知地方気象台
鷲別岳911m10月31日室蘭地方気象台金峰山665m1月15日熊本地方気象台
浅間山2568m10月31日前橋地方気象台鰐塚山1118m1月24日宮崎地方気象台

初冠雪は、その年の最高気温を観測した日の後に、初めて雪が積もった日を初冠雪日としています。2021年の富士山では、9月7日に初冠雪の発表がありましたが、その後2021年で最も高い最高気温を観測したことで「記録取り消し」となり、改めて9月26日に正式な初冠雪が観測されたこともあります。

また、初冠雪は「見えている」必要がありますので、仮に雪が降って積もっていた場合でも、山の上が雲に覆われて見えない場合は、当然ながら初冠雪の扱いにはなりません。そのため、一瞬降って積もった後すぐに解けた。といった場合は初冠雪にならない場合もあります。また、降っただけでも初冠雪とは関係ありませんので、その山における「初雪」と「初冠雪」は分けて考える必要もあります。

手稲山の環境について

札幌管区気象台では、札幌市手稲区と西区の境界に位置する「手稲山」のみで初冠雪の観測を行っています。手稲山は、標高1023.1mの山で、札幌市内では余市岳や札幌岳・空沼岳といった山々と比べると標高は低いものの、市内にある山の中で見ると比較的標高が高い山となっています。

手稲山は石狩湾(日本海)のすぐそばにあり、秋から冬にかけては季節風の影響を受け雪や雨が降りやすいため、例えば雌阿寒岳のように、手稲山よりも標高が高く気温が更に2~5℃程度低い(より雪になりやすい)「太平洋側」の山と比べても、初冠雪日にほぼ変わりはないなど、初冠雪は全国的に見てもかなり早い山となっています。

手稲山の標高を考慮すると、気温は平地と比べ平均で6℃程度、状況次第で最大10℃程度の差が生じると考えられ、寒気が流れ込むタイミングでは、札幌市内の平地ではみぞれにすらならない場合(気温5~6℃など)でも、手稲山の頂上付近では雪が積もる気温になっている場合があります。

山の一帯は、「サッポロテイネ(スキー場)」と呼ばれるレジャー空間となっており、「手稲山シャンツェ」と呼ばれるジャンプ台もあるなど、札幌におけるウインタースポーツの最も大きな拠点として機能しており、真冬のシーズンなどには多くの人が訪れる地域でもあります。

初冠雪は、この各種施設があることで「地面・芝生」となっている部分があることから、通常の木々に覆われた山と比べ「見つけやすい」ことも特徴で、気象台の発表のみならず、実際に札幌市内から誰でも「目視」をして初冠雪の様子を確かめることが可能です。但し、いくら山の上とは言え、初冠雪はごくうっすらの場合もあることから、目視できるのは朝方に限られることもあります。

近年の初冠雪日をデータから見る

手稲山の初冠雪と、札幌で初雪と初積雪を記録した日について、近年できりのよい2010年以降のデータを見てみると、下記のような形になります。

初冠雪日初雪日初冠雪から初雪まで初積雪日初冠雪から初積雪まで
2010年10月26日10月26日同日10月26日同日
2011年10月2日11月14日43日11月16日45日
2012年10月19日11月18日30日11月18日30日
2013年10月17日11月8日22日11月11日25日
2014年10月28日10月28日同日11月13日16日
2015年10月13日10月25日12日10月25日12日
2016年10月11日10月20日9日10月20日9日
2017年10月5日10月23日18日11月18日44日
2018年10月30日11月20日21日11月21日22日
2019年11月6日11月7日1日11月14日8日
2020年10月15日11月4日20日11月9日25日
2021年10月17日11月19日33日

初冠雪については、平年の10月18日に近い10月中旬頃が最も多いですが、早い年では10月に入ってすぐ、過去最も遅かった2019年では11月に入ってからなど、最大で1か月以上の差があり、その年の「秋の気候」次第で大きく変動します。

また、「初雪」・「初積雪」日との関係を見てみると、基本的には初雪よりも初冠雪日が早いことが多く、長い年は初冠雪から平地の雪まで1か月程度の時間差が生じることもあります。

但し、状況によっては同じ日になることもあり、2010年に至っては、手稲山の初冠雪と札幌都心部の初積雪が同じ日という現象も発生しています。

なお、より古い時代に遡って考えた場合、初冠雪も、初雪も、初積雪も次第に遅くなる傾向があり、長期的な温暖化の影響が見られることは間違いありません。

札幌における「初雪」については、上記の記事で別途解説しております。