札幌の桜は、開花時期は首都圏や京阪神など本州の温暖な地域と比べると1か月以上遅く、時期に応じた「季節感」にも大きな違いがあります。
当ページでは札幌市の桜について、「開花の時期の気温」・「開花前の気温」など具体的な気温との関係性について、複数のテーマから見て行きたいと思います。
開花時の気温はどのくらい?
都市 | 開花日(平年) | 平均気温 | 平均最高気温 | 平均最低気温 |
---|---|---|---|---|
札幌 | 5月1日 | 10.6℃ | 15.5℃ | 6.5℃ |
仙台 | 4月8日 | 9.3℃ | 14.0℃ | 5.0℃ |
新潟 | 4月8日 | 9.9℃ | 14.5℃ | 5.7℃ |
東京 | 3月24日 | 10.4℃ | 15.3℃ | 6.0℃ |
金沢 | 4月3日 | 10.1℃ | 14.7℃ | 5.9℃ |
名古屋 | 3月24日 | 10.3℃ | 15.7℃ | 5.6℃ |
大阪 | 3月27日 | 11.4℃ | 15.9℃ | 7.3℃ |
広島 | 3月25日 | 10.7℃ | 15.7℃ | 6.3℃ |
福岡 | 3月22日 | 11.6℃ | 15.9℃ | 7.9℃ |
桜が開花する時期は、札幌と全国各地には大きな差がありますが、桜が開花する時期の「気温」がどうなっているかを見ると、札幌と各地には小幅な差はありますがそれほど大きな差はありません。
全国を見ると、元から気温が高い温暖な地域(西日本)では開花時の気温がやや高めで、比較的気温が低い仙台や日本海側の新潟などでは気温が低めの傾向があります。一方で、年間の気温が最も低いはずの札幌では、開花が本州と比べ1か月前後遅いこともあり、平均気温は特に低くなっていません。むしろ、小幅ながら東京より高いくらいの数字ですので、桜が咲く時期の札幌が特別寒いというイメージを持つ必要はありません。
桜が咲く時期の札幌は、積雪(根雪)が消えてから概ね1か月経過した時期で、雪は積もることはまずなく、雪やみぞれが「降る」ことも極めてまれで、冬の名残は山に残った残雪が主となる時期です。
開花までの平均気温の変化は?
都市 | 開花日(平年) | 開花時の平均気温 | 開花2週間前の平均気温 | 開花1か月前の平均気温 | 開花2か月前の平均気温 |
---|---|---|---|---|---|
札幌 | 5月1日 | 10.6℃ | 7.6℃ | 4.2℃ | -1.3℃ |
仙台 | 4月8日 | 9.3℃ | 6.7℃ | 4.3℃ | 2.0℃ |
新潟 | 4月8日 | 9.9℃ | 7.3℃ | 5.1℃ | 2.5℃ |
東京 | 3月24日 | 10.4℃ | 8.5℃ | 6.9℃ | 5.2℃ |
金沢 | 4月3日 | 10.1℃ | 7.9℃ | 5.8℃ | 3.5℃ |
名古屋 | 3月24日 | 10.3℃ | 8.2℃ | 6.6℃ | 4.5℃ |
大阪 | 3月27日 | 11.4℃ | 9.4℃ | 7.9℃ | 5.8℃ |
広島 | 3月25日 | 10.7℃ | 8.7℃ | 7.3℃ | 5.1℃ |
福岡 | 3月22日 | 11.6℃ | 9.8℃ | 8.5℃ | 6.6℃ |
開花時期の気温は他地域との差が大きくない札幌ですが、札幌は本来非常に寒冷な気候ですので、開花前の気温データを見て行くと、他地域とは大きく異なる傾向が見えてきます。
開花前2週間程度については、他との大きな気温差はありませんが、開花1か月前の気温は平均4.2℃と各地の中で最も低く、開花までの1か月で上昇する気温は6.4℃と、他地域が3.5~5℃程度の中で、かなり急ピッチで気温が上昇することが分かります。
開花から更にさかのぼり、2か月前(冬)の段階まで見た場合、札幌の平均気温は氷点下となっており、当然ながら他とは比べ物にならない寒さとなります。
桜という植物(花)は、開花にあたっては厳しい寒さで目覚める「休眠打破」がしっかりとした成長に必要な特性があるため、温暖なだけでよい訳ではありません。
一方で、芽が目覚めた後も気温が高くならなければ、芽の成長は進みませんので、気温の高さも重要な条件となります。
札幌の場合、休眠打破に必要な寒さこそ十分でも、そこから気温上昇に至るまでの期間は非常に長くなっています。例えば開花1か月前の4月初めの気温は平均4℃程度で、これま首都圏の真冬並みの気温のため、これでは十分に成長することはありません。
開花までの1か月程度の間に、全国的に見ても特に急な気温上昇を経験するからこそ、遅くとも5月の初め頃には咲くことが出来る訳で、首都圏・京阪神よりも開花が1か月以上遅いからと言って、気温のデータから考えれば、決して遅すぎるということはなく、むしろ比較的スムーズに咲いているとも言えるでしょう。
過去の観測データから見る開花日と気温の関係
非常に長いデータですが、過去の桜の開花日と、開花前の平均気温データを具体的に比較した場合、以下のような形になります。
年 | 開花日 | ←平年差 | 3月平均気温 | ←平年差 | 4月平均気温 | ←平年差 |
---|---|---|---|---|---|---|
2021年 | 4月22日 | -9日 | 3.8℃ | +2.7℃ | 7.9℃ | +0.6℃ |
2020年 | 4月30日 | -1日 | 3.8℃ | +2.7℃ | 6.8℃ | -0.5℃ |
2019年 | 4月24日 | -7日 | 3.3℃ | +2.2℃ | 8.0℃ | +0.7℃ |
2018年 | 4月26日 | -5日 | 2.5℃ | +1.4℃ | 8.2℃ | +0.9℃ |
2017年 | 4月28日 | -3日 | 2.4℃ | +1.3℃ | 7.7℃ | +0.4℃ |
2016年 | 4月25日 | -6日 | 1.4℃ | +0.3℃ | 7.8℃ | +0.5℃ |
2015年 | 4月22日 | -9日 | 2.1℃ | +1.0℃ | 8.7℃ | +1.4℃ |
2014年 | 4月29日 | -2日 | 3.8℃ | +2.7℃ | 7.3℃ | ±0.0℃ |
2013年 | 5月13日 | +12日 | 0.5℃ | -0.6℃ | 6.3℃ | -1.0℃ |
2012年 | 5月1日 | ±0日 | 0.0℃ | -1.1℃ | 7.0℃ | -0.3℃ |
2011年 | 5月7日 | +6日 | 0.1℃ | -1.0℃ | 6.9℃ | -0.4℃ |
2010年 | 5月7日 | +6日 | 0.7℃ | -0.4℃ | 5.5℃ | -1.8℃ |
2009年 | 5月1日 | ±0日 | -0.1℃ | -1.2℃ | 7.7℃ | +0.4℃ |
2008年 | 4月21日 | -10日 | 1.5℃ | +0.4℃ | 9.4℃ | +2.1℃ |
2007年 | 5月4日 | +3日 | 3.3℃ | +2.2℃ | 6.3℃ | -1.0℃ |
2006年 | 5月8日 | +7日 | 0.9℃ | -0.2℃ | 5.2℃ | -2.1℃ |
2005年 | 5月10日 | +9日 | 1.3℃ | +0.2℃ | 6.2℃ | -1.1℃ |
2004年 | 5月5日 | +4日 | 0.1℃ | -1.0℃ | 6.6℃ | -0.7℃ |
2003年 | 5月1日 | ±0日 | 0.7℃ | -0.4℃ | 8.2℃ | +0.9℃ |
2002年 | 4月22日 | -9日 | 0.7℃ | -0.4℃ | 9.6℃ | +2.3℃ |
2001年 | 4月29日 | -2日 | 2.5℃ | +1.4℃ | 8.3℃ | +1.0℃ |
2000年 | 5月8日 | +7日 | 0.2℃ | -0.9℃ | 6.1℃ | -1.2℃ |
1999年 | 5月3日 | +2日 | 0.2℃ | -0.9℃ | 6.9℃ | -0.4℃ |
1998年 | 4月23日 | -8日 | -0.5℃ | -1.6℃ | 9.0℃ | +1.7℃ |
1997年 | 5月1日 | ±0日 | 1.6℃ | +0.5℃ | 7.2℃ | -0.1℃ |
1996年 | 5月5日 | +4日 | 0.2℃ | -0.9℃ | 5.8℃ | -1.5℃ |
1995年 | 5月1日 | ±0日 | 0.5℃ | -0.6℃ | 7.3℃ | ±0.0℃ |
1994年 | 5月6日 | +5日 | 0.9℃ | -0.2℃ | 7.0℃ | -0.3℃ |
1993年 | 5月6日 | +5日 | -0.5℃ | -1.6℃ | 6.2℃ | -1.1℃ |
1992年 | 5月4日 | +3日 | 1.3℃ | +0.2℃ | 6.9℃ | -0.4℃ |
1991年 | 5月2日 | +1日 | 1.0℃ | -0.1℃ | 8.0℃ | +0.7℃ |
1990年 | 4月25日 | -6日 | 0.3℃ | -0.8℃ | 7.9℃ | +0.6℃ |
年 | 開花日 | ←平年差 | 3月平均気温 | ←平年差 | 4月平均気温 | ←平年差 |
---|---|---|---|---|---|---|
1989年 | 4月29日 | -2日 | 2.9℃ | +1.8℃ | 7.3℃ | ±0.0℃ |
1988年 | 5月3日 | +2日 | 2.4℃ | +1.3℃ | 7.1℃ | -0.2℃ |
1987年 | 5月6日 | +5日 | -0.1℃ | -1.2℃ | 6.0℃ | -1.3℃ |
1986年 | 5月5日 | +4日 | -0.1℃ | -1.2℃ | 6.9℃ | -0.4℃ |
1985年 | 5月3日 | +2日 | -0.4℃ | -1.5℃ | 7.6℃ | +0.3℃ |
1984年 | 5月12日 | +11日 | -0.1℃ | -1.2℃ | 5.0℃ | -2.3℃ |
1983年 | 4月28日 | -3日 | -2.2℃ | -3.3℃ | 9.5℃ | +2.2℃ |
1982年 | 5月4日 | +3日 | 0.1℃ | -1.0℃ | 6.1℃ | -1.2℃ |
1981年 | 5月5日 | +4日 | 0.7℃ | -0.4℃ | 6.6℃ | -0.7℃ |
1980年 | 5月14日 | +13日 | -0.5℃ | -1.6℃ | 4.1℃ | -3.2℃ |
1979年 | 5月9日 | +8日 | -0.5℃ | -1.6℃ | 4.6℃ | -2.7℃ |
1978年 | 5月10日 | +9日 | -0.6℃ | -1.7℃ | 5.4℃ | -1.9℃ |
1977年 | 5月11日 | +10日 | -0.7℃ | -1.8℃ | 5.2℃ | -2.1℃ |
1976年 | 5月7日 | +6日 | -0.1℃ | -1.2℃ | 5.9℃ | -1.4℃ |
1975年 | 5月4日 | +3日 | 0.0℃ | -1.1℃ | 7.6℃ | +0.3℃ |
1974年 | 5月11日 | +10日 | -0.3℃ | -1.4℃ | 6.4℃ | -0.9℃ |
1973年 | 5月5日 | +4日 | -0.9℃ | -2.0℃ | 6.8℃ | -0.5℃ |
1972年 | 4月29日 | -2日 | -1.9℃ | -3.0℃ | 6.9℃ | -0.4℃ |
1971年 | 5月9日 | +8日 | 0.2℃ | -0.9℃ | 6.4℃ | -0.9℃ |
1970年 | 5月3日 | +2日 | 0.0℃ | -1.1℃ | 5.9℃ | -1.4℃ |
1969年 | 5月5日 | +4日 | -3.0℃ | -4.1℃ | 6.0℃ | -1.3℃ |
1968年 | 4月26日 | -5日 | -1.4℃ | -2.5℃ | 7.1℃ | -0.2℃ |
1967年 | 5月1日 | ±0日 | 1.8℃ | +0.7℃ | 6.5℃ | -0.8℃ |
1966年 | 5月3日 | +2日 | 0.6℃ | -0.5℃ | 5.4℃ | -1.9℃ |
1965年 | 5月13日 | +12日 | 0.8℃ | -0.3℃ | 4.6℃ | -2.7℃ |
1964年 | 5月4日 | +3日 | -1.2℃ | -2.3℃ | 6.2℃ | -1.1℃ |
1963年 | 5月2日 | +1日 | 0.2℃ | -0.9℃ | 6.6℃ | -0.7℃ |
1962年 | 4月30日 | -1日 | 1.1℃ | ±0.0℃ | 8.4℃ | +1.1℃ |
1961年 | 5月4日 | +3日 | -0.9℃ | -2.0℃ | 7.4℃ | +0.1℃ |
1960年 | 5月5日 | +4日 | 0.0℃ | -1.1℃ | 5.2℃ | -2.1℃ |
1959年 | 5月5日 | +4日 | -0.4℃ | -1.5℃ | 8.4℃ | +1.1℃ |
1958年 | 観測なし | 観測なし | 1.6℃ | +0.5℃ | 5.8℃ | -1.5℃ |
1957年 | 5月9日 | +8日 | -0.5℃ | -1.6℃ | 6.5℃ | -0.8℃ |
1956年 | 5月4日 | +3日 | -1.9℃ | -3.0℃ | 6.3℃ | -1.0℃ |
1955年 | 5月1日 | ±0日 | 0.0℃ | -1.1℃ | 6.0℃ | -1.3℃ |
1954年 | 5月4日 | +3日 | -0.8℃ | -1.9℃ | 6.8℃ | -0.5℃ |
1953年 | 5月7日 | +6日 | -1.3℃ | -2.4℃ | 5.5℃ | -1.8℃ |
開花前の気温観測データと、開花日を照らし合わせてみると、非常に強いつながりが見られます。
端的に言えば、3月・4月の気温が高ければ開花も早く4月になる場合が多く、逆に気温が低ければ開花は遅く5月にずれこむ可能性が高くなるということになります。
これまでの記録から見ると、3月の平均気温が0℃程度か0℃未満、4月の平均気温が6℃台程度であることが、4月開花・5月開花の大まかな分かれ目になっていると言えるでしょう。
なお、気温は特に「4月の気温」が重要で、3月の気温が平年より少し高くても、4月の気温が平年より大幅に低い場合は開花がかなり遅れる場合があります。逆に、3月の気温が低くても、4月の気温が高ければ結果として早く咲くこともあります。
世界的な温暖化による気温上昇は、札幌でも同様で、昭和の頃と比べると春の気温は大幅に上昇しています。特に近年は冬の気温よりも春の気温の高さが目立ち、3月の気温は異常とも言える高温となる年が続いているため、4月の開花がほとんどになり、30年間の平均値である「平年」の開花日データが、比較対象としてあまり意味を成さなくなってきているとも言えます。
札幌における桜の開花日・満開日に関する一般的知識については、上記の記事で別途解説しております。