すっきりと晴れた天気は、どの季節でも気持ちの良いものですが、そのような日には皮膚に影響を及ぼすることがある「紫外線」が気になる方も多いかもしれません。
紫外線というものは、一般的に晴れた日に多く、曇ったり雨・雪の日には少なくなるものですが、寒冷・涼しい気候で冬に雪が多い札幌・北海道ではその「紫外線」事情はどのようになっているのでしょうか。
こちらでは、観光で訪れる上でも知っておきたい札幌・北海道における紫外線の強さや季節ごとの傾向について、その実態を解説していきます。
札幌・北海道「紫外線の基本」
日本国内では紫外線量が少ない地域
紫外線というものは、一般に緯度の低い地域ほど強く、緯度の高い地域ほど弱くなる傾向があります。これは、太陽の上がる高度(仰角)が高いほど強い日差しとなり、結果多くの紫外線が降り注ぐことによるものです。
つまり、日本国内では最も太陽高度が低い北海道は、紫外線は一般に弱いということになります。
また、秋の後半から冬場・春先にかけて雪や雨が降りやすい(雲に覆われやすい)日本海側の地域では、晴れる頻度自体が限定されることで、紫外線の降り注ぐ量は一層減る傾向があります。これは、北海道に限らず金沢・新潟をはじめ本州日本海側でも同様です。
紫外線は日差しと太陽の高度に左右され、ある日だけ突然極端に増えたりするものではありませんので、同じ天候の条件であれば、札幌よりも本州各地の紫外線量の方がほぼ確実に多くなります。
東京・那覇と比べてみると?
日最大UVインデックス値の平均 | 札幌 | 東京 | 那覇 |
---|---|---|---|
1月 | 0.8 | 1.8 | 3.1 |
2月 | 1.4 | 2.6 | 4.3 |
3月 | 2.3 | 3.5 | 5.6 |
4月 | 3.0 | 4.3 | 6.1 |
5月 | 4.0 | 5.1 | 6.6 |
6月 | 4.8 | 5.1 | 7.5 |
7月 | 5.0 | 6.1 | 8.8 |
8月 | 4.9 | 6.0 | 8.4 |
9月 | 3.8 | 4.4 | 7.1 |
10月 | 2.2 | 3.2 | 5.7 |
11月 | 1.0 | 2.1 | 4.0 |
12月 | 0.7 | 1.7 | 3.1 |
紫外線という存在は、波長によって強度・影響が異なるため、わかりやすくその強さを表す数字として「UVインデックス」という指標が使われています。
この数字では11以上が「極端に強い」・8~10は「非常に強い」・6~7が「強い」・3~5が「中程度」・1~2が「弱い」と区分され、3以上の場合は一定の日焼け対策が必要とされています。
日本国内の地点のうち、札幌・東京・那覇という地理的にそれぞれ全く違い特徴を持つ地域(亜寒帯・温帯・亜熱帯)を日最大値の平均で比較してみると、緯度が低いほどに太陽高度が高く紫外線が強いという傾向に沿う形で、札幌が最も紫外線が少なく、東京・那覇と南へ行くほどに増えていくというわかりやすい構図となっています。
紫外線の強さで分けた場合、札幌の場合「弱い」に区分される時期が長く、沖縄では「弱い」に区分される時期が存在しないなど、必要とされる日焼け対策にも違いがあることが分かります。
誤解が多い北海道の紫外線
札幌・北海道の紫外線については、その季節ごとの傾向以前に、一部でかなりの誤解があることも確かです。
例えば、インターネット上では「北海道は紫外線が強い」という内容で記されたページが一部で見られますが、それは必ずしも正しい情報ではありません。基本的にデマであると考えて頂いてよいでしょう。先述した通り、北海道は、全国の中では紫外線量はどちらかと言えば少ない地域です。
北海道の紫外線事情で特有の点としては、後述するように「晴れている」状態で「雪が積もっている」ケース、とりわけ「標高が高い」地域で紫外線がやや多くなる場合があると言った点が挙げられます。これは主に「スキー場」での日焼け対策に当てはまりますが、これは必ずしも一般的な日常生活で常にあてはまるものとは言えません。
また、太陽高度が高いほど紫外線量が多いというイメージから、夏場は北へ行くほどに昼間の時間が長い(世界の極北地域では「白夜」と呼ばれる夜のない季節もあり)ため、北の方が紫外線が強いという誤解も時折見られますが、昼間の時間が長くても太陽は低いままのため、少なくとも日中時間帯の紫外線量は熱帯地域など低緯度の場所の方が大幅に増えますので、こちらも正しい解釈とは言えません。
雪と紫外線
札幌・北海道では冬場の紫外線は、絶対値としてはかなり低くなり、晴れた日の日中でも「弱い」と区分されるような数字になります。
但し、北海道ではほとんどの地域が冬場になると雪に覆われ、この雪という存在は紫外線のほとんどを反射してしまうことから、空から浴びる紫外線の量に加え、雪で反射した紫外線を浴びることで、雪がない同じ条件と比べると多くの紫外線を浴びることになります。反射の割合は8~9割に達し、草地の場合1~2%でほとんど吸収してしまうことを考えると、通常の倍近い量を受けることになります。
この場合でも、そもそもの紫外線量が非常に低いため、市街地や一般的な平地での日常生活上は、特に大きな問題はありません。
しかしながら、スキー場のように反射した紫外線を非常に浴びやすい地域では、特に紫外線量が一気に増えて来る2月後半以降、スキーシーズンが終わるまでの間は日焼け対策などがあったほうが無難な場合が多いでしょう。春スキーでの日焼けには要注意です。
季節ごとの紫外線事情
紫外線の傾向【春】
月 | 札幌の日最大UVインデックス値平均 |
---|---|
3月 | 2.3(弱い) |
4月 | 3(中程度) |
5月 | 4(中程度) |
北海道は、早い年では3月頃から雪解けが進み、春らしさを実感しやすい日が増えていきますが、一方で晴れる日も増えていきます。特に4~5月は札幌など日本海側では1年間で最もよく晴れるシーズンとなり、日差しが降り注ぐ頻度が他の季節より多くなります。
晴れるということは紫外線の量も多くなるということで、冬場と比べると紫外線量が一気に増える日が増えていきます。日の最大値を見て行くと、平均値では4月から日焼け対策が必要な目安となる3を越えるほか、晴れた日に限って見た場合、3月中から3以上になることもあります。
とりわけ、紫外線量が増える春になってから標高の高いスキー場で「晴れた日」にスキーをする場合、元より反射光による紫外線量が多い状況の中で、冬場より更に浴びる量が増加しますので、日焼け対策を行うことが無難です。
よく晴れた日の春スキーで、反射した紫外線を全て浴びてしまうと仮定した場合、紫外線量は札幌市内で真夏に日常生活上で浴びる紫外線量を大幅に上回る可能性があります。
紫外線の傾向【夏】
月 | 札幌の日最大UVインデックス値平均 |
---|---|
6月 | 4.8(中程度) |
7月 | 5(中程度) |
8月 | 4.9(中程度) |
夏の札幌・北海道は本州各地などと比べ涼しい傾向が強くなっており、昼の長さは長いものの太陽高度はやや低いため、全国との比較では紫外線が強い地域ではありません。
しかしながら、絶対値としての紫外線量は、北の大地であっても夏場になると大幅に増加し、外出時は一定の日焼け対策が求められる季節となっていきます。
紫外線は晴れている日とそうでない日では大きな差があり、全ての日を平均すると最大値の平均は5程度となりますが、晴天時については夏の間を通して正午を挟む2~3時間程度の間、UVインデックスが「強い」とされる6~7程度となることが一般的で、ごくまれに「非常に強い」とされる8以上となることもあります。但し、沖縄のように10以上、12以上といった極端な数字になることは、太陽の高度の関係上物理的に考えられません。
夏場の晴天時は、日焼けを避けるため長袖・帽子の着用をしたり、日焼け止めクリームを塗るといった対策を行うことが望ましいでしょう。
紫外線の傾向【秋】
月 | 札幌の日最大UVインデックス値平均 |
---|---|
9月 | 3.8(中程度) |
10月 | 2.2(弱い) |
11月 | 1.0(弱い) |
秋になると、9月中まではやや強い紫外線量となることがあり対策は必要ですが、10月以降は紫外線量が大幅に減っていき、秋の深まりとともに紫外線対策の必要性は薄れていきます。
夜の時間が長くなり、太陽も低い位置を通るため11月に入ると冬場でも2月よりも紫外線量は少なくなり、晴れた日の最大値でもUVインデックス値は1~1.5程度と低く、紫外線は「弱い」区分に入ります。
また、この時期はまだ雪に覆われておらず、スキー場のオープンもまだ先の所が多いため、雪に射した日差しが反射して実質的な紫外線量が倍増するような現象もほぼ起きません。秋の終わり頃は、場合によっては真冬以上に紫外線の少ない期間と言えるでしょう。
紫外線の傾向【冬】
月 | 札幌の日最大UVインデックス値平均 |
---|---|
12月 | 0.7(弱い) |
1月 | 0.8(弱い) |
2月 | 1.4(弱い) |
冬は、「上空からの紫外線量」は1年間で最も少ないシーズンとなります。太陽の高さ・昼間の長さの関係上、紫外線量は冬至のある12月に最も少なくなり、その後は少しずつ増加の傾向が見られますが、2月までは晴れた日のUVインデックス値が2以上となることはありません。
冬場については、先述した通り「雪」の存在があるため、雪から反射する紫外線量の影響で単純なUVインデックス値で見る基準と比べ、実際に浴びる紫外線量が多くなる可能性がある時期です。雪の反射率は8割以上となるため、その全てを浴びた場合日差しから直接受ける量の2倍近くになる可能性があります。
但し、空からの紫外線量が「絶対値」として非常に少ないこと・都市部では建物も多く、全てが雪に反射する訳ではないこと・一部の業務やレジャーなどを除き、日差しが反射する雪上に常時いるようなことはないことなどから、一般的な日常生活を送る上で、雪から反射する紫外線を必要以上に避ける必要性は大きくありません。冬場に日焼け対策をすることも通常は不要と言えるでしょう。
冬場に紫外線・日焼け対策が必要となるタイミングは、スキー場でのレジャーなど、長時間に渡り晴れた雪上で活動する場合となります。この場合でも、12月・1月くらいまでは紫外線量はそれほど多くならない状況ですが、冬場でも春が近づく2月に入ると、晴天時の紫外線量は増加傾向となり、反射する分を考慮すると「弱い」とは言えなくなります。
札幌の晴れやすさ・日照時間については、上記の記事で別途解説しております。