札幌は晴れやすい?それとも曇りが多い?日照時間のデータから考える

自然・気候

札幌の気候というと、夏は涼しい・冬は寒い・雪が多い・災害が少ないといったイメージを持つ人が多くなっています。一方で、観光や自然を満喫するために必要な気象の条件としては、「晴れた天気」というのもまた重要です。

本記事では、札幌における「晴れやすさ」について、その指標として用いることができる「日照時間」の気象データを見ながら解説していきます。

平年の日照時間は?

札幌市やその他国内の主要都市の「月間平年日照時間」データは以下の通りです(単位は時間)。

札幌仙台新潟東京大阪福岡那覇
1月90.4149.056.4192.6146.5104.193.1
2月103.5154.774.3170.4140.6123.593.1
3月144.7178.6136.8175.3172.2161.2115.3
4月175.8193.7177.7178.8192.6188.1120.9
5月200.4191.9202.8179.6203.7204.1138.2
6月180.0143.7179.2124.2154.3145.2159.5
7月168.0126.3162.1151.4184.0172.2227.0
8月168.1144.5205.2174.2222.4200.9206.3
9月159.3128.0156.2126.7161.6164.7181.3
10月145.9147.0138.2129.4166.1175.9163.3
11月99.1143.491.5149.8152.6137.3121.7
12月82.7136.362.9174.4152.1112.2107.4
1718.01836.91639.61926.72048.61889.41727.1

札幌の日照時間は、ここに挙げた都市の中では新潟に次いで少なくなっています。但し、日照時間というもの自体は全国的に極端な差は生じにくく、どの都市でもある程度は確保されていることがわかります。

国内では太平洋側の地域、特に大阪から瀬戸内にかけての地域が最も日照時間が多く、冬場に天気が悪くなりやすい日本海側、また南西諸島では日照時間が減る傾向が見られます。

季節ごとの傾向

一番晴れやすいシーズンは「春」

3月の日照時間4月の日照時間5月の日照時間
2011年※159.7164.6158.6
2012年143.6166.2207.2
2013年116.1128.1142.1
2014年155.5257.8207.7
2015年144220.4263.2
2016年164.1174.9229.5
2017年184.1193.2212.4
2018年159.1184.1205.4
2019年157.3223.4270.8
2020年174.2187.3205.3
平年値144.7175.8200.4
2011~2020年の日照時間(※は観測データ不備あり)

札幌の1年間で、一番晴れやすいシーズンは概ね「春」のシーズンとなっています。この時期は3月はまだ冬らしい傾向が残り、春先は強風も吹きやすいなどといった条件はありますが、次第に昼間の時間が長くなることから晴れやすい条件が整う上、全体的には降水量もかなり少なく、天気は4月の後半から5月をピークに安定する傾向がはっきりしています。

なお、札幌の春の訪れ自体は遅く、桜は4月の終わり、新緑は5月の終わりと約1か月遅れで季節が進むため、春らしさは6月に入ってからもしばらくは続くような環境となっています。

晴れる日も多いがごくまれに日照不足も「夏」

6月の日照時間7月の日照時間8月の日照時間
2009年133.182.6156.3
2010年222.773.9158.4
2011年164.6170.2214.4
2012年215.6205.6146.7
2013年233.2215.4142
2014年182.4214.3178.9
2015年151.4175158.6
2016年157.7211.1225.3
2017年165.8200.8184.4
2018年160.1177.4123.4
2019年193.1185.1164.6
2020年142.4200189.5
平年値180.0168.0168.1
2009~2020年の日照時間

夏の日照時間については、初夏の6月については「春」の延長線上にあたり、1年の中で昼間の時間が一番長い時期ということもあいまって日照時間は比較的多い状況が続きます。いわゆる「蝦夷梅雨」という言葉もありますが、そのような影響は札幌では多くて数日単位で、長期間日照不足になることは6月中にはほぼありません。

一方、区切りの良い10年ではなく、更に少しさかのぼってデータを見てみると、極端に日照時間の少ない7月が2009年・2010年に記録されています。大半の年はそれなりに「晴れる夏」となっている場合がほとんどですが、更にさかのぼれば2002年8月(105.2時間)・1998年8月(99.9時間)・1987年8月(84.4時間)・1975年7月(97.1時間)平均すれば10年に1回~数年に1回くらいは日照時間が100時間少々~100時間以下といった日照不足の月が生じているのです。

これは、寒冷なオホーツク海からの気流の影響、前線・低気圧などの影響を受けるケースで生じるもので、特にエルニーニョ現象(一般に冷夏と暖冬をもたらすことで知られる)が発生している年に起きるケースが目立ちます。

急速に日照時間が減る「秋」

9月の日照時間10月の日照時間11月の日照時間
2011年127.4129.9116.5
2012年166.2153.279.5
2013年149.6125.298.7
2014年188.8145.4109.0
2015年151.8150.9108.2
2016年155.0145.089.6
2017年183.3152.994.0
2018年184.4161.4106.8
2019年208.5158.6121.5
2020年140.1152.984.0
平年値159.3145.999.1
2011~2020年の日照時間

秋の日照時間は、春や夏と比べると少ない傾向が見られます。これは、冬に向けて昼間の時間が短くなる影響もありますが、特に11月については季節風の影響を受け、冬型の気圧配置となり雨や雪の天気が増えて来ることも大きな要因となっています。

日照時間は夏場のように極端な日照不足となる年と良く晴れる年に分かれることはなく、年ごとの差はそれほど大きくはなりません。

日本海側として見れば晴れる日も多い?「冬」

12月の日照時間1月の日照時間2月の日照時間
2011年91.4115.5140.8
2012年70.5131.5133.8
2013年75.2111.2111.1
2014年66.387.8118.8
2015年91.6102.595.4
2016年78.888.299.3
2017年84.877.287
2018年75.888.4115.3
2019年※88.2102.5114.1
2020年95.293.899.6
平年値82.790.4103.5
2011~2020年の日照時間

冬場は月間の日照時間が100時間に満たないことの方が多く1年で最も晴れ間が少ない時期です。

月ごとの傾向を見ると、12月が特に極端に少ない傾向があり、これは昼間の時間が1年で最も短いという理由のみならず、12月に最も季節風・寒気の影響で天気が崩れやすいということが大きく影響しています。

寒気が流れ込んで「雪雲」が発達する場合、強い寒気と比較的高い海水温という「コンボ」があると特に発達しやすく、12月はまだ海の温度が高めのため、雪雲が発達しやすい=天気が崩れやすい傾向が特に強くなっているのです。

逆に2月になると海水温が冷えすぎるため、12月より気温は低い年でも、雪雲の発達度合いが抑えられる=晴れ間がのぞきやすいというパターンが目立ち、年によっては100時間を大幅に上回る日照時間が観測されることもあります。

なお、日本海側として見た場合、北陸の日本海側のように、冬型の気圧配置による雪や雨の頻度がより多い地域と比べ、札幌は冬場の晴れ間は「まだ多い」部類と言えます。

ずっと雪が続くかと言うと、必ずしもそうではなく「乾燥してよく晴れた日」もあるという点を把握しておくとよいでしょう。

時代ごとの「変化」はある?【統計データの解釈には注意】

札幌で年間の日照時間が観測されはじめた1891年以降の年間日照時間の変化をグラフ化すると、上記のような形になります。

日照時間のデータについては、一定程度解釈に注意が必要な点もあります。

札幌管区気象台では、1986年1月1日に旧型の太陽電池式日照時間計から、新型のものに交換がなされています。新型の日照時間計は、主に夏場の日照時間をこれまでより「過小評価(少なく観測する)」傾向があるため、実際に1985年までとそれ以降では、日照時間のデータに明らかな違いが見られます。

すなわち、データの変動としては、1985年までとそれ以降の大きな変動を無視してそれ以外の動きを見る必要があります。

1985年の変動以外を見ると、近年やや日照時間が増える傾向があること、また明治期~戦前までは大きな変化はないこと、昭和の時期には日照時間が多い時期と少ない時期が数年単位で見られる場合があること。などが挙げられます。

この微妙な一定期間単位(数年単位以上)でのデータの動きについては、必ずしも特定の要因などを挙げることは難しく、様々な気象条件、数年単位以上の世界的な気候の動きなどが複雑に関係しているものと考えられます。但し、1年単位で見た場合、冷夏であるケース・春先の日照不足が響いたケースなど、個々の要因は比較的はっきりしています。

なお、2021年には各地の「アメダス」でこれまで「日照時間計」によって日照時間を独自に計測していたものが、機械による計測を廃止し、気象衛星による観測データを利用した「推計気象分布」による推計値に置き換えられました。札幌を含む気象台での観測体制は以前と変わりありませんが、各アメダスで計算される数字は、従来のものと明らかに変わってしまっていますので、気象台同士ではなく、各アメダスのデータと比較する場合には、データの取り扱いに注意が必要です。

札幌市における「紫外線」については、上記の記事で別途解説しております。